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「長屋のとある日常。または家主からのご挨拶。」(2007/04/10 (火) 20:06:29) の最新版変更点
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「・・・どーぉにか間に合ったか。」
例によってまた徹夜。窓から差し込むのは黄色い日差し。
軋む体を思い切り伸ばした。
ごきっ
「おほ、いい音♪」
「・・・『いい音』じゃねぇだろ。アホか。」
可愛らしいが、なんともガラの悪い声が背後から聞こえた。
誰かは知っているので、あえてそちらを見ずに返す。
「起きてたのかジュリ。」
「あぁ?あんだけ近くで負のオーラじゃんじゃか撒かれてンのに、暢気にぐーすか寝てられっか。死なすぞボケ。」
・・本心かどうかは別として、どこでそんな言葉遣い覚えて来るんだかなコイツは・・・
思いながら振り向けば、足元に15センチほどの女性型の人形。・・・いわゆる『武装神姫』が仁王立ちしていた。
彼女の名は『ジュリ』。本当は『ジュリエット』にしたかったのだが、ジュリ曰く「サムライの名前じゃねぇだろ。少しは脳使えナス」ってんだからまぁ仕方ない。
大して変わらんと思うんだが。
一応は侍型と言うだけあって、黙って立ってればキリリとした和風美人だ。
・・黙って立ってれば、な。
「・・・なんか今失礼なこと考えなかったかコラ?」
「なんも言ってねぇだろうが。にゃー共はどうした?」
「『修羅場中の慎の字は教育上悪いから』って浩子姐さんが連れてったよ。パットとアイリも一緒だ。」
「・・・・・・お前も教育上どーかと思うけどな。」
ぼそっと言ったらすげぇ目で睨まれた。地獄耳め。
「とりあえず浩子サン起こしてきてくれ。原稿上がったって。」
「ん。慎の字は?」
「飯作ってくる。どーせにゃー共も一緒だろ。あいつらの分も用意せにゃならんしな。」
「わかった。・・・あんま無理すんなよ?」
ホンの一瞬、気遣わしげな表情を浮かべたジュリに気付かないフリをして手を振る。
ついこないだ風邪でぶっ倒れた時の事は、まだ記憶に新しいのだろうか。
えらい心配かけた気はするが、治った翌朝蹴りが飛んできたので、まぁチャラだ。
台所で包丁握って十数分後。
「あー。いいにおーい。」
「にゃー」
「にゃー」
「にゃー」
亡者が4匹現れた。
「居間で待ってろよお前らー。もうすぐ出来っから。」
「えー。お腹空いたよー。我慢できないよー。ねー?」
「「「にゃー」」」
「・・・まぁなんでもいいから頭直してこいよ浩子サン。ぐしゃぐしゃだぞ」
「えー。めんどーい。」
この目の前で寝癖満点の頭したお姉さんは『緋上浩子』サン。俺の担当編集者で、美人で子供の頃からの近所の幼馴染で年上で未婚。
表ではデキる女を自称するだけあって、切れ者に見えるが・・・
ご覧の通り、素はえらい子供じみていて、かつ寝起きは悪い。
彼女の腕の中にもまた小さな人影がみっつ。
猫型神姫の三つ子だ。
名前は『ノゾミ』『カナエ』『タマエ』。付けたのは浩子サン。
区別がつかんのでそれぞれの腹にそれぞれの名前を書いてある。
浩子サンには「神姫虐待よっっ!」とか言われたが、当人達はむしろ気に入ってるらしいので問題はない。
「にゃー」
「にゃー?」
「にゃー!」
「「「にゃー♪」」」
・・別にこいつらはわざとこう話してるワケじゃない。「にゃー」としか言えないのだそうだ。
詳しいところはよく解らなかったが、どうも俺が拾う前のマスターに変な改造を施されたとかなんとか。
実はこう見えて、かなり頭が回るので侮れない。
ウチにある本を、俺の趣味のラノベから参考程度にナナメ読みで放置してた学術書まで片っ端から読破しやがった。
おかげで偶に辞書代わりに活躍してくれる。
「・・・あぁあ、こちらにいらしたのですかぁ。家中探し回ってしまいましたよぅ。」
よたよたと更に一匹追加。
「あ、ごめんねパトリシアちゃーん。寝てたから起こすのも悪いと思ってー。」
「・・・だったらせめて居間まで運んでやれ。三匹も四匹も手間は変わらんだろうが。」
ふらふらとへたり込んだのは、天使型神姫。名を『パトリシア』。
初期不良品で、空間認識に欠陥があるらしく、ぶっちゃけ空を飛べない。
「はふぅ・・・大家さぁん。疲れましたぁ。」
「大家言うな。どんだけ迷ってたんだお前。」
「えぇとえぇと・・・」
「いいから居間に行って待ってろ。」
「はぁいぃ。」
「っていきなり逆だ!そっち玄関!」
・・しかも方向音痴のオマケつきと来た。
我が家は祖父譲りの平屋建て。実質住んでる人間は俺一人だというのに、多分3~4人でもちと広い。
そのせいか、よく迷ってへたり込んでいるのを見かける。
・・まぁ、人間じゃないとはいえ住人もそこそこいるから、大事になったことは無いけどな。
もっとも、そのおかげでウチは一部で『神姫長屋』とかあんま有難くない渾名で呼ばれてるそうだが。
「ほら浩子さんも。あいつ一人じゃ心配だ。」
「はーい。じゃ、行こっか」
「「「にゃー☆」」」
猫どもめ。流石に名付け親相手だと素直に言うこと聞きやがる。
更に数分。いい感じに魚が焼けてきたところでどたどたと足音が・・・
だんっ!
「ご隠居おぉおおっっ!!」
誰がご隠居だ誰が。
駆け込んできたのは我が家の神姫6匹目。砲台型神姫の『アイリーン』。
「ご隠居はやめれっつってんだろーが。毎度毎度家壊す気かお前は。」
「知るかっ!それよかジュリ姉どこっ!」
何故か怒っていて何故か完全武装してて何故か鼻の下に綺麗なカールのドジョウヒゲ(@マジック描き)。
バイザー降ろしてるから解らんが、恐らく額にはえらく達筆な『中』の一文字(@マジック描き)があるんだろう。
・・また寝てる隙に悪戯されたのか。
アイリが怒りに任せてばっしんばっしん柱を叩く度に、冗談抜きで家が軋む。
どうもコイツは腕力にリミッターがかかっておらず、危険視されて廃棄処分となったところを逃げてきたらしい。
元は闇バトルに出ていたとか言ってたが、どこまで本当なのだか・・・
「あー。ジュリのあほたれだったら・・・」
-やれやれ。一仕事終わったというのに・・・寝るのはしばらく後になりそうだ。
・・・・・・あ?あぁ失礼。申し遅れた。
俺の名前は『都竹慎之介』。
デタラメに嘘くさいが本名だ。物書きをやっている。
頭に「売れない」って冠詞が付くのが、まぁアレだが。
まぁそんな感じで、今日も長屋住まいの連中との騒がしい日常が続いていくのだ。
・・正直、疲れるけどな。
ページの最後にエンドマークを打つ。
「・・・どーぉにか間に合ったか。」
例によってまた徹夜。窓から差し込むのは黄色い日差し。
軋む体を思い切り伸ばした。
ごきっ
「おほ、いい音♪」
「・・・『いい音』じゃねぇだろ。アホか。」
可愛らしいが、なんともガラの悪い声が背後から聞こえた。
誰かは知っているので、あえてそちらを見ずに返す。
「起きてたのかジュリ。」
「あぁ?あんだけ近くで負のオーラじゃんじゃか撒かれてンのに、暢気にぐーすか寝てられっか。死なすぞボケ。」
本心かどうかは別として、どこでそんな言葉遣い覚えて来るんだかなコイツは・・・
思いながら振り向けば、足元に15センチほどの女性型の人形。・・・いわゆる『武装神姫』が仁王立ちしていた。
彼女の名は『ジュリ』。本当は『ジュリエット』にしたかったのだが、ジュリ曰く「サムライの名前じゃねぇだろ。少しは脳使えナス」ってんだからまぁ仕方ない。
大して変わらんと思うんだが。
一応は侍型と言うだけあって、黙って立ってればキリリとした和風美人だ。
黙って立ってれば、な。
「・・・なんか今失礼なこと考えなかったかコラ?」
「なんも言ってねぇだろうが。にゃー共はどうした?」
「『修羅場中の慎の字は教育上悪いから』って浩子姐さんが連れてったよ。パットとアイリも一緒だ。」
「・・・・・・お前も教育上どーかと思うけどな。」
ぼそっと言ったらすげぇ目で睨まれた。地獄耳め。
「とりあえず浩子サン起こしてきてくれ。原稿上がったって。」
「ん。慎の字は?」
「飯作ってくる。どーせにゃー共も一緒だろ。あいつらの分も用意せにゃならんしな。」
「わかった。・・・あんま無理すんなよ?」
ホンの一瞬、気遣わしげな表情を浮かべたジュリに気付かないフリをして手を振る。
ついこないだ風邪でぶっ倒れた時の事は、まだ記憶に新しいのだろうか。
えらい心配かけた気はするが、治った翌朝蹴りが飛んできたので、まぁチャラだ。
台所で包丁握って十数分後。
「あー。いいにおーい。」
「にゃー」
「にゃー」
「にゃー」
亡者が4匹現れた。
「居間で待ってろよお前らー。もうすぐ出来っから。」
「えー。お腹空いたよー。我慢できないよー。ねー?」
「「「にゃー」」」
「・・・まぁなんでもいいから頭直してこいよ浩子サン。ぐしゃぐしゃだぞ」
「えー。めんどーい。」
この目の前で寝癖満点の頭したお姉さんは『緋上浩子』サン。俺の担当編集者で、美人で子供の頃からの近所の幼馴染で年上で未婚。
表ではデキる女を自称するだけあって、切れ者に見えるが・・・
ご覧の通り、素はえらい子供じみていて、かつ寝起きは悪い。
彼女の腕の中にもまた小さな人影がみっつ。
猫型神姫の三つ子だ。
名前は『ノゾミ』『カナエ』『タマエ』。付けたのは浩子サン。
区別がつかんのでそれぞれの腹にそれぞれの名前を書いてある。
浩子サンには「神姫虐待よっっ!」とか言われたが、当人達はむしろ気に入ってるらしいので問題はない。
「にゃー」
「にゃー?」
「にゃー!」
「「「にゃー♪」」」
別にこいつらはわざとこう話してるワケじゃない。「にゃー」としか言えないのだそうだ。
詳しいところはよく解らなかったが、どうも俺が拾う前のマスターに変な改造を施されたとかなんとか。
実はこう見えて、かなり頭が回るので侮れない。
ウチにある本を、俺の趣味のラノベから参考程度にナナメ読みで放置してた学術書まで片っ端から読破しやがった。
おかげで偶に辞書代わりに活躍してくれる。
「・・・あぁあ、こちらにいらしたのですかぁ。家中探し回ってしまいましたよぅ。」
よたよたと更に一匹追加。
「あ、ごめんねパトリシアちゃーん。寝てたから起こすのも悪いと思ってー。」
「・・・だったらせめて居間まで運んでやれ。三匹も四匹も手間は変わらんだろうが。」
ふらふらとへたり込んだのは、天使型神姫。名を『パトリシア』。
初期不良品で、空間認識に欠陥があるらしく、ぶっちゃけ空を飛べない。
「はふぅ・・・大家さぁん。疲れましたぁ。」
「大家言うな。どんだけ迷ってたんだお前。」
「えぇとえぇと・・・」
「いいから居間に行って待ってろ。」
「はぁいぃ。」
「っていきなり逆だ!そっち玄関!」
しかも方向音痴のオマケつきと来た。
我が家は祖父譲りの平屋建て。実質住んでる人間は俺一人だというのに、多分3~4人でもちと広い。
そのせいか、よく迷ってへたり込んでいるのを見かける。
まぁ、人間じゃないとはいえ住人もそこそこいるから、大事になったことは無いけどな。
もっとも、そのおかげでウチは一部で『神姫長屋』とかあんま有難くない渾名で呼ばれてるそうだが。
「ほら浩子さんも。あいつ一人じゃ心配だ。」
「はーい。じゃ、行こっか」
「「「にゃー☆」」」
猫どもめ。流石に名付け親相手だと素直に言うこと聞きやがる。
更に数分。いい感じに魚が焼けてきたところでどたどたと足音が・・・
だんっ!
「ご隠居おぉおおっっ!!」
誰がご隠居だ誰が。
駆け込んできたのは我が家の神姫6匹目。砲台型神姫の『アイリーン』。
「ご隠居はやめれっつってんだろーが。毎度毎度家壊す気かお前は。」
「知るかっ!それよかジュリ姉どこっ!」
何故か怒っていて何故か完全武装してて何故か鼻の下に綺麗なカールのドジョウヒゲ(@マジック描き)。
バイザー降ろしてるから解らんが、恐らく額にはえらく達筆な『中』の一文字(@マジック描き)があるんだろう。
また寝てる隙に悪戯されたのか。
アイリが怒りに任せてばっしんばっしん柱を叩く度に、冗談抜きで家が軋む。
どうもコイツは腕力にリミッターがかかっておらず、危険視されて廃棄処分となったところを逃げてきたらしい。
元は闇バトルに出ていたとか言ってたが、どこまで本当なのだか・・・
「あー。ジュリのあほたれだったら・・・」
やれやれ。一仕事終わったというのに・・・寝るのはしばらく後になりそうだ。
あ?あぁ失礼。申し遅れた。
俺の名前は『都竹慎之介』。
デタラメに嘘くさいが本名だ。物書きをやっている。
頭に「売れない」って冠詞が付くのが、まぁアレだが。
まぁそんな感じで、今日も長屋住まいの連中との騒がしい日常が続いていくのだ。
正直、疲れるけどな。
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