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「鳳凰杯編Ⅱ 「二人のナイヴスロッテ」」(2007/03/27 (火) 03:02:45) の最新版変更点
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この世に「剣の姫君」と呼ばれる神姫は多数居る。槙縞ランキングにもクイントスさまを始めとして、エルギールやかす・・・認めない、奴はナイヴスロッテというには泥臭過ぎる
兎に角、クイントスさまやエルギールの様な強力で凛々しいナイヴスロッテが居る
特にクイントスさま・・・その戦いを目の前で見たのはこの前の決勝戦が初めてだったが、強さも凛々しさも、私が知る中では最高の「剣の姫君」だ
だが、人間のなかにも稀に、そういう表現が似合う人物も存在する
クイントスさまとは全くタイプが違うし、武人ですら無いのだが、剣と共にあるのが余りにも当たり前な存在・・・私の中では、神浦琥珀は何故かそういう位置付けだった
彼女の店に言った事はない(私は銃撃と体術だから、お世話になる事は余り無さそうなのが残念だ)し、彼女が実際に剣を帯びているのを見た事も無いのだが、初めて会った時から、そういう印象を抱いていた
だから今日こうして、人ごみの中に彼女の小さな店構えを見つけた時に、遠目で姿をはっきり確認する事は出来なかったが、そこに彼女が居る事を明確に確認する事が出来たのだった
「やぁ、誰かと思ったら西さんか・・・貴女達ならここよりも、他のブースの展示を見に行った方が良いんじゃないかな」
「知った顔がいるのだから寄ろうと思って・・・というよりも、ヌルちゃんが来たがったの」
「・・・?君は銃撃型だと思ったけど」
「見たいんです・・・お邪魔・・・でしたか?」
「いや・・・別に良いけどね。それなら好きなだけ見て行って。どうせまだ始まったばかりで、人も来てないしね」
「それじゃぁお邪魔しましょうか、ヌルちゃん」
「はい、梓姉さま」
*鳳凰杯編Ⅱ 「二人のナイヴスロッテ」
「クイントスの所には・・・行かなくて良いの?」
並んだ刀剣には茶色い照明がぼんやり当てられており、前を通り過ぎる度にぬめる様な独特の光沢を放っていた
「え?あぁ、何かクイントスさまの試合、二時間も後からなのだそうです、それで・・・」
「あによ?暇つぶしに冷やかしに来ただけって事!?」
高飛車な声、真正面暗幕の裏から顔だけ出して、エルギールが私をにらんでいた
「エルギール・・・良いじゃない?別にそれでも」
「イヤだわ琥珀。ただでさえ退屈なのに冷やかしの相手だなんて・・・別に客じゃないなら相手しなくて良いでしょう?私はALChemistの服を見に行きたいのよ!」
「・・・買い物途中で呼び戻されたら厭だろう?だから待機してもらってるのに・・・」
エルギールは凄い剣幕だった・・・戦闘の時の息の合い方は槙縞ランカー中でも最高の二人だけど、普段はいつもこんな感じだ
「・・・あの・・・それだったら、エルギールは梓姉さまと一緒に買い物行ってきたらどうだ?私がここに残って代わりに手伝いをしても良いが・・・?」
「・・・どういうつもりよ?」
「別に・・・ただ、私個人はここに来ても欲しい物は無いんだ・・・姉さまの代わりに、来ただけだから・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「いいだろう、じゃぁ手伝って貰う事にしよう。エルギール、西さんを誘って行って来て。ただし、二時間以内に帰ってくるんだよ。いいね?」
「はいはい、そんなシンデレラの魔法使いみたいに念押さなくて良いわよ、どうせ剣を作る時以外は魔法んて使えない癖に」
「・・・え?何、魔法って・・・?」
「何でもないよ。さぁ、そうと決まったら仕様とスペックの説明をしっかりしとかなきゃね。少なくともこれから二時間、君はうちの看板娘なんだからね」
ふん、と少し気にいらなげに鼻を鳴らしながらしかし、足取りはお祭りに行く事を許された子供そのものだった
「・・・一つ、聞いて良いですか?神浦さん」
「琥珀で良いよ・・・で、何?」
「エルギールってもしかしてツン・・・」
「それ以上言ってはいけない!ヌル!!」
彼女とは思えない厳しく、大きな声で台詞を遮られる
「それ以上その話題を言ってはいけない、特にまだエルギールが聞いているかも知れない状況ではね」
「・・・!?」
「・・・やはり君だったか、ヌル。最初にその事実に気付くのは・・・」
表情には、殆ど変化は見られない・・・だが、感情が毀れているのがわかる
「・・・判りました・・・妙だと思ったんです、こういう時は結構良く喋るのに、エルギールと居る時は基本的に黙っている」
「おそらく貴女が沈黙を強いられるのは、貴女の発言で彼女がそういう反応をしてしまうことが無いようにする為・・・エルギールがそれを隠せぬのならば貴女が黙る以外にない」
「・・・それ以上は言わなくて良い」
右手を上げて私の台詞を制する
「ほぼ正解だ とだけ言っておこう」
前髪で目が隠れて、表情は伺えなかったが、明らかに肩を落として、項垂れていた
五分後
「以上で外注品と僕の打った刀剣の説明は終わり。きちんと憶えた?」
無事立ち直った琥珀の説明はかなり大雑把なもので、それ程時間も掛からないものだった。問題ない、うん、憶えたぞ
「ん、次は『魔剣』の方だね」
「『魔剣』・・・」
そうだ
彼女、神浦琥珀と、その店『鬼奏(キソウ)』を尋常な神姫刀匠と明確に隔てるものはその『魔剣』の製造技術に他ならない
折れず、曲がらず、良く斬れる・・・彼女の打ち鍛えた『魔剣』はその三つを尋常ならざる高次元でバランスさせている事のみならず、原理説明不能の異常な能力迄武器に付与してしまっている
文字通りの「魔法の剣」なのだった
「始めに言っておくけど、僕は『魔剣を打つ』スキルは持っているけど、その方法を他人に説明出来る術を持たない。もし製法その他について聞かれたら、一々僕を呼ばずに、そう答えるんだ、良いね?」
そこはかとなく奇妙な感じがしたが、一応頷いておく事にした・・・ただ、同時にその掟は私の疑問の幾つかを封殺するものでもあった
「どうせ頑張れば、見目は兎も角、機械でも代用出来る様な程度の代物が殆どなんだ、多分そんな事聞いて来る人は少数だと思うけど、そういう事でお願いするよ」
「判りました、琥珀」
「それじゃぁ個別の説明に入ろうか・・・と?」
「店は開いておらんのか?」
「仕方ないな・・・広告にある説明に一応目を通しておいて、細かい所は一回目は僕がなんとかするから、あとは合間で・・・じゃ」
結局重要な所は聞けないまま、接客をする羽目になる
来たのは白い『ストラーフ』だった
マスターの姿は見えない
「・・・」
取り敢えず、何か話した方が良いのかな・・・?
「あの・・・」
「む?この刃紋の仕上げは見事じゃ・・・職人芸の一品モノはやはり違うのぉ」
「え・・・と・・・」
「ほぅ、これが噂の『魔剣』とやらか・・・一見普通じゃが・・・否、違うな」
「魂的に儂の烈龍刀と同じものを感じる・・・何と言うか、闘わねばならない宿命?」
やけに丸々した文字で『ファントムハーケン』と書かれたビラのついた巨大な鎌を前に頷く白ストラたん
「え・・・っと・・・ファントムハーケンをお求めですか?」
ようやく私の方を見る
「これについて説明せよ店員」
その手には黒光りする、異様に重そうな短剣が握られている
「え・・・と・・・その、なんかぁゃιぃオーラを発してそれで敵を斬るとか・・・なんとか・・・もごもご」
「ぁゃιぃオーラでは判らぬではないか?一体どうなっておるのかと聞いておる」
軽く振り回す
なんか見えた
なんかぼんやりと、紫色の陽炎みたいなのが・・・
見た目の割りに、もしかして滅茶苦茶長い?
びし
と、棚が一つ、崩れる
「む?今のがぁゃιぃオーラか?」
「ちょ・・・っ!?」
うわわっ!棚が倒れるっ!!
必死になって支える
「いや済まぬ済まぬ・・・うむ、だがこれで大体どのような剣かは判った、これを頂いてゆく事にしよう」
その時の彼女の立ち姿は、ひどく印象に残った
ここにもまたひとり、ナイヴスロッテは居るのだ
棚で押し潰されかけながらも、私は思っていた
そしてこうして、『鬼奏』在庫中現在最強の品と目される魔剣『狩闇』は『剣帝』アスモディスの手に渡ったのであった
「・・・それにしても店長も看板娘も、二人揃って色気が無いのう」
「・・・それ、セクハラじゃないですか?」
別の意味でも印象に残りそうだった
[[鳳凰杯・まとめページ]]
[[剣は紅い花の誇り]] [[前へ>鳳凰杯編Ⅰ 「蒼い翼」]] [[『鬼奏』在庫確認へ>魔剣匠工房『鬼奏』]]
この世に「剣の姫君」と呼ばれる神姫は多数居る。槙縞ランキングにもクイントスさまを始めとして、エルギールやかす・・・認めない、奴はナイヴスロッテというには泥臭過ぎる
兎に角、クイントスさまやエルギールの様な強力で凛々しいナイヴスロッテが居る
特にクイントスさま・・・その戦いを目の前で見たのはこの前の決勝戦が初めてだったが、強さも凛々しさも、私が知る中では最高の「剣の姫君」だ
だが、人間のなかにも稀に、そういう表現が似合う人物も存在する
クイントスさまとは全くタイプが違うし、武人ですら無いのだが、剣と共にあるのが余りにも当たり前な存在・・・私の中では、神浦琥珀は何故かそういう位置付けだった
彼女の店に言った事はない(私は銃撃と体術だから、お世話になる事は余り無さそうなのが残念だ)し、彼女が実際に剣を帯びているのを見た事も無いのだが、初めて会った時から、そういう印象を抱いていた
だから今日こうして、人ごみの中に彼女の小さな店構えを見つけた時に、遠目で姿をはっきり確認する事は出来なかったが、そこに彼女が居る事を明確に確認する事が出来たのだった
「やぁ、誰かと思ったら西さんか・・・貴女達ならここよりも、他のブースの展示を見に行った方が良いんじゃないかな」
「知った顔がいるのだから寄ろうと思って・・・というよりも、ヌルちゃんが来たがったの」
「・・・?君は銃撃型だと思ったけど」
「見たいんです・・・お邪魔・・・でしたか?」
「いや・・・別に良いけどね。それなら好きなだけ見て行って。どうせまだ始まったばかりで、人も来てないしね」
「それじゃぁお邪魔しましょうか、ヌルちゃん」
「はい、梓姉さま」
*鳳凰杯編 「二人のナイヴスロッテ」
「クイントスの所には・・・行かなくて良いの?」
並んだ刀剣には茶色い照明がぼんやり当てられており、前を通り過ぎる度にぬめる様な独特の光沢を放っていた
「え?あぁ、何かクイントスさまの試合、二時間も後からなのだそうです、それで・・・」
「あによ?暇つぶしに冷やかしに来ただけって事!?」
高飛車な声、真正面暗幕の裏から顔だけ出して、エルギールが私をにらんでいた
「エルギール・・・良いじゃない?別にそれでも」
「イヤだわ琥珀。ただでさえ退屈なのに冷やかしの相手だなんて・・・別に客じゃないなら相手しなくて良いでしょう?私はALChemistの服を見に行きたいのよ!」
「・・・買い物途中で呼び戻されたら厭だろう?だから待機してもらってるのに・・・」
エルギールは凄い剣幕だった・・・戦闘の時の息の合い方は槙縞ランカー中でも最高の二人だけど、普段はいつもこんな感じだ
「・・・あの・・・それだったら、エルギールは梓姉さまと一緒に買い物行ってきたらどうだ?私がここに残って代わりに手伝いをしても良いが・・・?」
「・・・どういうつもりよ?」
「別に・・・ただ、私個人はここに来ても欲しい物は無いんだ・・・姉さまの代わりに、来ただけだから・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「いいだろう、じゃぁ手伝って貰う事にしよう。エルギール、西さんを誘って行って来て。ただし、二時間以内に帰ってくるんだよ。いいね?」
「はいはい、そんなシンデレラの魔法使いみたいに念押さなくて良いわよ、どうせ剣を作る時以外は魔法んて使えない癖に」
「・・・え?何、魔法って・・・?」
「何でもないよ。さぁ、そうと決まったら仕様とスペックの説明をしっかりしとかなきゃね。少なくともこれから二時間、君はうちの看板娘なんだからね」
ふん、と少し気にいらなげに鼻を鳴らしながらしかし、足取りはお祭りに行く事を許された子供そのものだった
「・・・一つ、聞いて良いですか?神浦さん」
「琥珀で良いよ・・・で、何?」
「エルギールってもしかしてツン・・・」
「それ以上言ってはいけない!ヌル!!」
彼女とは思えない厳しく、大きな声で台詞を遮られる
「それ以上その話題を言ってはいけない、特にまだエルギールが聞いているかも知れない状況ではね」
「・・・!?」
「・・・やはり君だったか、ヌル。最初にその事実に気付くのは・・・」
表情には、殆ど変化は見られない・・・だが、感情が毀れているのがわかる
「・・・判りました・・・妙だと思ったんです、こういう時は結構良く喋るのに、エルギールと居る時は基本的に黙っている」
「おそらく貴女が沈黙を強いられるのは、貴女の発言で彼女がそういう反応をしてしまうことが無いようにする為・・・エルギールがそれを隠せぬのならば貴女が黙る以外にない」
「・・・それ以上は言わなくて良い」
右手を上げて私の台詞を制する
「ほぼ正解だ とだけ言っておこう」
前髪で目が隠れて、表情は伺えなかったが、明らかに肩を落として、項垂れていた
五分後
「以上で外注品と僕の打った刀剣の説明は終わり。きちんと憶えた?」
無事立ち直った琥珀の説明はかなり大雑把なもので、それ程時間も掛からないものだった。問題ない、うん、憶えたぞ
「ん、次は『魔剣』の方だね」
「『魔剣』・・・」
そうだ
彼女、神浦琥珀と、その店『鬼奏(キソウ)』を尋常な神姫刀匠と明確に隔てるものはその『魔剣』の製造技術に他ならない
折れず、曲がらず、良く斬れる・・・彼女の打ち鍛えた『魔剣』はその三つを尋常ならざる高次元でバランスさせている事のみならず、原理説明不能の異常な能力迄武器に付与してしまっている
文字通りの「魔法の剣」なのだった
「始めに言っておくけど、僕は『魔剣を打つ』スキルは持っているけど、その方法を他人に説明出来る術を持たない。もし製法その他について聞かれたら、一々僕を呼ばずに、そう答えるんだ、良いね?」
そこはかとなく奇妙な感じがしたが、一応頷いておく事にした・・・ただ、同時にその掟は私の疑問の幾つかを封殺するものでもあった
「どうせ頑張れば、見目は兎も角、機械でも代用出来る様な程度の代物が殆どなんだ、多分そんな事聞いて来る人は少数だと思うけど、そういう事でお願いするよ」
「判りました、琥珀」
「それじゃぁ個別の説明に入ろうか・・・と?」
「店は開いておらんのか?」
「仕方ないな・・・広告にある説明に一応目を通しておいて、細かい所は一回目は僕がなんとかするから、あとは合間で・・・じゃ」
結局重要な所は聞けないまま、接客をする羽目になる
来たのは白い『ストラーフ』だった
マスターの姿は見えない
「・・・」
取り敢えず、何か話した方が良いのかな・・・?
「あの・・・」
「む?この刃紋の仕上げは見事じゃ・・・職人芸の一品モノはやはり違うのぉ」
「え・・・と・・・」
「ほぅ、これが噂の『魔剣』とやらか・・・一見普通じゃが・・・否、違うな」
「魂的に儂の烈龍刀と同じものを感じる・・・何と言うか、闘わねばならない宿命?」
やけに丸々した文字で『ファントムハーケン』と書かれたビラのついた巨大な鎌を前に頷く白ストラたん
「え・・・っと・・・ファントムハーケンをお求めですか?」
ようやく私の方を見る
「これについて説明せよ店員」
その手には黒光りする、異様に重そうな短剣が握られている
「え・・・と・・・その、なんかぁゃιぃオーラを発してそれで敵を斬るとか・・・なんとか・・・もごもご」
「ぁゃιぃオーラでは判らぬではないか?一体どうなっておるのかと聞いておる」
軽く振り回す
なんか見えた
なんかぼんやりと、紫色の陽炎みたいなのが・・・
見た目の割りに、もしかして滅茶苦茶長い?
びし
と、棚が一つ、崩れる
「む?今のがぁゃιぃオーラか?」
「ちょ・・・っ!?」
うわわっ!棚が倒れるっ!!
必死になって支える
「いや済まぬ済まぬ・・・うむ、だがこれで大体どのような剣かは判った、これを頂いてゆく事にしよう」
その時の彼女の立ち姿は、ひどく印象に残った
ここにもまたひとり、ナイヴスロッテは居るのだ
棚で押し潰されかけながらも、私は思っていた
そしてこうして、『鬼奏』在庫中現在最強の品と目される魔剣『狩闇』は『剣帝』アスモディスの手に渡ったのであった
「・・・それにしても店長も看板娘も、二人揃って色気が無いのう」
「・・・それ、セクハラじゃないですか?」
別の意味でも印象に残りそうだった
[[鳳凰杯・まとめページ]]
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