「幻・其の三」(2007/03/08 (木) 20:46:46) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
「さてと・・・・・・」
パソコンのウィンドウを閉じて、俺――上岡修也は一息ついた。
「記憶喪失の神姫・・・・・・か」
今日・・・・・・いや、もう日付が変わってるから昨日か・・・・・・、センターでその神姫と出会った時、すぐに俺は小林に連絡して、偽装データを作ってもらった。とっさに出た行動だと、今思い返しても感じる。
彼女をメーカーなり警察なりに渡さなかったのには、それなりの理由がある。
「マスター」
つらつら考えてたら、俺の神姫であるアーンヴァルのリュミエが声をかけてきた。
「ああ、悪い。今パソコン空けるから・・・・・・」
「いえ・・・・・・。あの、マスター」
「ん?」
「今日、何かあったんですか?」
・・・・・・なぜにそんなことを聞く。
「明日話すよ。とりあえずもう寝ろ。な?」
「マスター、日付変わってます。そんなに待たせるおつもりで?」
「・・・・・・」
夜が明けて、俺とリュミエはいつもの神姫センターに・・・・・・正確には、そこに併設されている研究所に来ていた。
正式名称『御影市神姫センター附属研究所』というここは、センター側の店長が所長を兼任している研究所で、主として一点物の武装やらパーツやらを開発している。と、
「平日の昼間から、何しに来てるんですか?」
ちょうどいい、さがす手間が省けた。
「夏休みだ、別に問題ないだろ?」
冗談のつもりで言ったが、
「それは学生の特権です。あなたは仮にも社会人でしょうが」
と、目的の人物である、白衣を着た見た目子供の女性、青葉かすみは返す。
「で、本当に何の用ですか? わざわざここに来るということは、何か理由があるんでしょう?」
「ああ、ちょっと聞きたいことがあってな。長くなるかもしれないから・・・・・・」
「場所を移せ、ということですね。わかりました」
というわけで、俺はかすみの研究室にお邪魔させてもらった。
「あれ? 珍しいですね、上岡さんがこっちにいらっしゃるなんて」
そう出迎えてくれたのは、かすみの神姫の一体、ハウリンの秋葉。一方、
「・・・・・・」
「相変わらず、アネーロと胸部アーマーはつけっぱなしなのな」
無言でこっちに視線を送ってくるのは、アーンヴァルの舞姫。
「それで、聞きたいこととは?」
「・・・・・・過去に、何らかの理由でロストした神姫について調べたいんだが・・・・・・」
「それ、例の記憶喪失の神姫と関係ありますか?」
・・・・・・へ?
「今のところ、知ってるのは高明さんと私だけですが」
「マスター、何ですか、それ?」
あ、リュミエに説明するの忘れてた。
「ああ、つまりな・・・・・・」
結局一から説明して、その後。
「要するに、記憶に引っ掛かると?」
「そう」
ネロという名前が、どうも引っ掛かる。
「・・・・・・わかりました。調べてみます」
「頼むな」
仮に、ネロがロストした神姫だとしたら。彼女は断片的とはいえ、元のオーナーの記憶を持っているし、登録も解除されていないようだった。
メーカー側からすれば、絶好の研究材料になるだろう。そうなったら、持ち主をさがすどころではない。過去に何件かそういう事例もあるし、ロストした神姫が復元後、元のオーナーの知らぬところで別の人物の神姫となっていた、という事もあるらしい。
「あ、今度駅前の和菓子屋のようかん、おごってくださいね」
「・・・・・・」
事情が事情だけに、断れなかった。
[[幻の物語]]へ
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: