「2-2」(2007/03/30 (金) 18:22:40) の最新版変更点
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[[凪さん家の弁慶ちゃん]]
**第二話 それは剣を持つ者 2-2
爆音一つ…巨大なコンクリートの塊が崩れ落ち、あたりに塵が舞う。
「っち。避けやがったな」
「当たり前です。誰が好んで当たりますか」
「そりゃそうかっと」
身の丈ほどもあるメイス状の武器を担ぐ猫型。その名はハンゾー。
周囲には三体の龍が敵に睨みをきかせていた。
ちゃきん。
サブアームに持った二丁のハンドビームガンのEパックを装填する悪魔型。体にイエローラインが施された素体を持つ。名を義経という。
小型のマニュピレーターに換装されたサブアームは各部が調整され、拡張ハンガーがサブアーム基部から伸びている。その背部にはブースターポッドが三つ三方向に取り付けられている。それを「TR-1トライブースター装着型」と呼んでいた。
「ったくちまちましてんなぁ~これだからリアル系は」
メイスを担いだまま接近するハンゾー。
「は?」
何を言っているのか?という表情で迎える義経。
「やっぱよぉスーパー系だろぉぉぉ!とうぅぅぅ!」
「またそれですか…!」
「いくぜ!ムゲンメイス!!氷龍爆砕ぃぃぃぃぃ!!!」
まるでエコーが聞こえてきそうな声で叫ぶハンゾー。
しかしこの攻撃はさっきから何度も繰り出していた技。パターンは読めている。
義経は正確に、そして冷静に銃を構えた。
・
・
・
「また避けやがったなぁ!?」
「ハンゾー…単調すぎだ。馬鹿かお前」
ハンゾーの頭にオーナーの名が響く。
「うっせ!じゃあ【アレ】を使わせろよ!」
「駄目だ。【アレ】はまだ調整中だ」
「くそ!早く使いたいぜ!」
「というか…他のも使えよ」
「あ?これが一番燃えるんだっての」
「それしか使わないから最近負けてんだろ?」
「わーったよ。使えば良いんだろ?」
燃えるってお前…それ氷系の属性持ってるんだが…と思うオーナーをほっといてメイスを投げるハンゾー。その瞬間形を変え、メイスは青い龍になった。
「…ふぅ…話し合いは終わりましたか?」
「うるせぇ。このサード野郎が」
「好きでサードに留まっている訳じゃありませんよ。別に上がろうとかも無いですが」
「強がってんなって。セカンドの俺がうらやましいんだろう?」
「全然」
「く、この野郎~。いいぜ。見せてやるぜセカンドの力!!」
「どうぞ、ご自由に…!」
「よし!炎龍!!ムゲンバイン!!」
ギャァァァァン!!という雄叫び。赤い龍がバラバラになり形を変えていく。
「装着!ムゲンランス!!」
手には炎のように燃え上がる槍が装備された。
「義経、距離をとってライフルで攻撃」
義経のオーナー、未来の声がする。
「了解…というか単調ですね」
「う~ん、でも何があるかわから無いから注意してね」
「はい、お嬢様」
義経はブースターを再び噴射、高く飛び上がる。
「な、逃げるなこの!!」
「やってられません。とっとと終わらせて弁慶の援護に…」
「てんめぇ!!雷龍!!」
ビュン!と義経の横をかする影
「…!!」
「ムゲンバイン!装着!ムゲンボウガン!!くらえぇぇ!」
「っち…近距離特化ではないと…」
「おらおらおらぁ!!」
無数のビームが義経を襲う。
「く…」
近づけない…狙いは無茶苦茶だが…。
「どうしたどうした!」
くそ…誘導されてる…!あの猫型…無意識か…?
逃げよう、避けようとしてもそれよりも前に弾幕が張られる。
「承知で行くしかないか…!」
「義経!」
「はい!」
ゴウゥ!!
トライブースターの本領発揮…リミッターを解除。可動範囲の制限状態を解除する。
このことによるメリットは無限の機動性を持つということ。その代わり体に対する負荷は凄まじい。
ボウガンから吐き出される弾をあり得ない機動で避けつつ接近する義経。
「うお!これだからまったくリアル系って奴は!!」
やっと狙う事を始めたハンゾー。だが…
ビャァァァン!
「な!」
「力場系ブレードを選択して正解でした」
ビームが次々と弾かれる。ビームブレードには現在二種類が確認されている。放出系と力場系だ。放出系は高出力だが鍔迫り合いなどが出来ない。その代わり大型のブレードを形成する事が出来る。と言うより大型でなければエネルギーがすぐに尽きてしまう。力場系は出力、刀身のサイズが限られるものの、鍔迫り合いが可能で、防御に使えるというメリットがある。
基本的に小型の武装を使用する義経にとって、容易に携帯可能な力場系ブレードは扱いやすいのだ。
「はぁぁぁぁ!」
青い光線剣がハンゾーに迫る。
「うお!地龍!!」
「…ん!?」
迫る緑色の物体それは手裏剣の形をしていた。
「な…に?」
「ムゲンシュリケン!盾にもなるんだぜ!」
「ふん…」
「そっちが剣ならこっちはこれだぜ!!」
「!」
手を高々と上げるハンゾー。
「ムゲンバイィィンン!!ムゲンGハンマー!!」
「な、馬鹿!それもまだ調整が!」
「【アレ】が使えないならこれしかねぇだろ!」
「な、なんだ…」
「すごい…」
義経と未来はただただ見ていることしか出来なかった。
「「大きい…」」
「ふふふん、恐れをなしたか!これぞムゲンゴルディオンハンマー!!!」
黄金に輝く巨大すぎるハンマーの力で飛び上がるハンゾー。
「あ、義経!」
「は、はい!」
くそ、私とした事が…あんなの見掛け倒しに決まっている…はず
「くらえ!ちゃー!」
大きく振りかぶって
「しゅー!!」
一気に!
「メェェェェン!!」
「それはごるf!!」
ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!
見掛け倒し?そんなはずは無い。それは間違いなく強力だった。
・
・
・
「ぬ!何だ!」
「…あ?」
一方こちらは弁慶とアーサー。
「ハンゾーか!美琴!どうなっているんです!?」
「ちょい待ち、何してんのよ咲矢!」
「馬鹿、俺は指示してねぇ!」
「ったくただ力を見るためなんだから壊しちゃ意味無いんだからね!?」
「おい、なんなんだ」
「…なんでもない!関係のないことだ!」
アーサーは騒がしい外界からの通信を切って剣を構えた。
「しかし、そろそろ決めさせてもらうぞ。時間が無いのでな」
「は?なんだそれ」
「早くハンゾーを止める」
「味方を止めるのか?」
「あいつは馬鹿だからな…今回の戦闘の意味をわかってはいない」
「知るかそんなの」
「君のパートナーも危険だ」
「義経…あいつは大丈夫だ」
「だと良いが…」
「…!」
「どちらにしても私が勝ってからだ!!」
「そうはいくか!」
「いくぞ!アルベイン流奥義!!」
周囲に青いオーラが現われる。
「ふん…ハーケンロック!!アイン!ドライ!!セット!!!」
弁慶は首輪型のリードハーケンを射出、アーサーの後方に突き刺し、背中のアーミーブレード「アインファング」と足に装備した拡張スペーサー付きの「ドライファング」を接続させた。
「はぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「決める…!」
「魔神!千裂破!!!!!」
剣から放たれる波と雨。弁慶はひるむ事無く向かっていく。
ガキィィィィィン!!
剣が止まる。
「!?」
「止まった…!」
接続されたアインとドライによりはさまれたアーサーの剣はまったく微動だにしない。
「く!」
「はぁ!」
ドン!
と壁にぶち当たるまで突き進む弁慶。
「ぐほぁ!」
ザン!!
打ち付けられるアーサーとともに壁に突き刺さるアインファング。
アインとドライ、二つの牙に挟まれる騎士。まるでクワガタにはさまれた様…?
「な…」
「ライダー…」
「…!?」
それはあの技…あまりにもえげつないからか残酷だったからか…あまり使われなかった蒼き勇気から放たれた必殺技の一つ
「カッティング!!!」
一思いにアインとドライの幅を縮める弁慶。
「ぐあぁぁぁぁぁ!!」
鎧を砕き深々と侵攻する刃
「これでおわ…」
らなかった。いや…終わったのだが勝因は弁慶のカッティングではなかった。
なぜなら…
・
・
・
「外したか!次はいくぜぃぃぃぃ!!」
「く!」
「避けて!義経!!」
「はい!」
すぽーん…
「あり?」
「!?」
ハンゾーの手から離れるハンマー…その力を解放したまま真っ直ぐ義経に向かう。
なんせ予想とはまったく別方向に飛んだおかげで義経に見事直撃…さらにその先に…。
ドッゴガァァァァァァン!!
「試合終了 アーサー・ハンゾー組の規定値反則武器使用により、勝者 弁慶・義経組」
屍が三体…瓦礫に埋もれていた。
「べ、弁慶…がく…」
「ぐ…ぬぁ…」
「き、貴様ぁぁぁ…」
「あは…わりぃ…ここまでするつもりじゃなかったんだ~ぜ?」
・
・
・
「弁慶…大丈夫??」
「くそ…ひどい目にあった…」
「あの猫…許さん」
試合終了。僕たちは唖然としていた。とりあえず弁慶や義経に異常は無いみたい。
「…えっと」
未来も困惑気味。一体何がしたかったんだろう…あの人達。
「あちゃぁ~」
「申しわけありません美琴」
「いや、別にアーサーが悪いわけじゃ」
「すまねぇ俺としたことが」
「まったくだ…だから調整中だと…とりあえず行くぞ美琴…」
「え、どこに」
「スカウトするんだろ?それに…」
「?」
「あやまんねぇとな」
「あ、同意」
・
・
・
帰り道、結局すぐにエルゴから出てきた僕達はさっきの人達の事を話しながら歩いていた。
「おい!」
「?」
「あ…」
僕たちの後ろから声。って!さっきの二人だ。
「…なんですか?」
勇気を出して返事してみる…怖いなぁこの男の人。
「あぁ~俺は柊咲矢だ。すまなかったな。さっきは」
「私は渡瀬美琴。ほんとごめんね?」
へ?てっきりなんか因縁つけられるかと思った。
「私からも謝罪を」
「俺も謝るぜ。わりぃ」
制服の間から顔を出す神姫二体。アーサーとハンゾーだ。
「…まったくだ…折角決めてやる所だったのに」
「ふん…まぁ良いでしょう」
弁慶と義経が答える。
「えっと…大丈夫ですよ?何も異常なかったんですし」
「そ、そうですよ。大丈夫ですから」
「で、種明かしと言うか…なんというか」
「?」
「私たちの仲間にならない?」
「へ?それってどういう」
「俺達は今、新しい部活を作ろうとしていてな」
「部活ですか?」
「そ、黒葉学園神姫部!」
「「しんきぶ?」」
「でも確か同じような部活があったような…」
未来が顎に手を当てて考える。
「あぁ~それって武装神姫競技部でしょ?それじゃなくって」
「俺達も入っていたんだが、あそこはなぁ?」
「うん、なんていうか…堅いというか怖い感じ。勝つことしか考えて無いっていうか【神姫を使ってプロになって一攫千金】みたいな部活じゃない?」
「はぁ」
「まぁそりゃ私達も勝ちたいけど…まぁそこで!規則とか規律とかそんな軍隊みたいなのじゃなくって!【神姫と一緒に楽しむ】部活をつくろうって思ったのよ!」
「まぁ軽い方が俺達に合ってるしな。でだ、君達さえよければ仲間にならないか?と」
「そゆこと」
「はぁ…」
いきなりすぎて話が…分かりません。
「いいですね~それ!」
と反応したのは未来。
「未来…?」
「だって楽しそうじゃない?気楽に神姫と遊ぶってことでしょ?丁度私達部活やって無いし~部活に参加しろって言われてたし!」
「あ、君達フリーなんだ!」
「え、はい…」
黒葉学園、ここは基本的に部活動参加が義務みたいになっている。中には僕達みたいに中々部活をしない生徒もいるけど、そうすると入れ、部活やれと先生に言われるので毎回毎回弁解が大変だったりする。
「私入ります」
「本当!ありがとう!!」
「よろしくな!」
「で、そっちの君はどうかな?」
「え、僕…」
「おぉうボクっ娘」
「へ?」
「ボクっ娘でしょ君!良いわね!ナイスキャラ。女の子がボクって言う…一種の萌えね!」
「女の…子?」
「そう、まったく可愛い顔しちゃって~でも制服は男子系なのも良いけど…ここであえて女子系で行ってみるもの良いんじゃない??」
「えと、その…」
「可愛い~!ね!是非入ってよ~!」
と回り込んで後ろから抱きしめてくる美琴先輩。せ、背中にやわらかい…!あ、未来が怖い顔してる…ひぃ~。
「あの、それ以上言うと…弁慶が…」
「ん~??」
ビュン…影が僕の目の前を通る。
「…へ…?」
「べ、弁慶!」
「お前、千空は男だ。女じゃない!」
先輩の額に突きつけられる弁慶のハンドガン。
「ま、まったまたぁ」
「男だ!」
「うそ…そうなの?」
「…は、はい…」
「…ちょっときて!」
「え、えぇぇ!!」
「実際に見ないと信じないわ!」
「な、なにを!?」
ずりずりと千空を引っ張る美琴。向かったのは…。
カランカラン~
「あら、いらっしゃい…って美琴ちゃん?」
喫茶店LENだった。エルゴから近いこともあり、美琴と咲矢の行き付けとなっていた。
「トイレ借ります!」
ずかずかと入っていく美琴。
「ども」
「あ、いらっしゃい…あ、未来ちゃんも」
「ん?知り合いなんですか?」
「えぇ、常連さんよ」
「そうだったのか…」
「先輩方も?」
「まぁな」
「で、今美琴ちゃんといたのは…千空君?」
「はい」
「…君?ってことはやはり…」
バッタァァァァン!!
店の奥、トイレのドアが豪快に開く。
「こら、美琴ちゃん?ドアは静かに閉める!」
「つ、ついてた…信じられない…」
「うぅ…ぐず」
後ろから泣き崩れた千空が登場。これがアウトだった。
「美琴ちゃん?どういうことかしらねぇ?」
「え、あ、京都さん…これは~」
「いきなり店に入って男の子トイレに連れ込んで泣かせて~???」
笑っているが怖いオーラを放つ京都。
「ひぃ」
がっしぃぃぃぃん
美琴の顔に当てられる京都の手。
「お仕置きが必要かしらぁぁ??」
「ギブギブギブ!!!」
「「南無」」
手を合わせる咲矢とハンゾー。
「ちょ、たすけ」
「自業自得です…美琴」
剣を掲げて黙祷するアーサー。
「問答無用!!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
店に轟く悲鳴。必殺京都フィンガー…その叫びはエルゴまで響いたという…。
・
・
・
「なるほど。それで一緒に来たのね」
「はい」
事の次第を話す僕。店はすっかり暇暇モードなので京都さんも客席に座って僕達の話を聞いている。
「ほら、コーヒーとカフェオレとオレンジジュースだ。飲め」
ウイングユニットをつけたこの店の看板神姫、犬型のレンが店のカウンター奥から器用に飛んできて神姫達に配る。
「で?千空君は入るの?」
「え、僕ですか…」
「まぁこんな娘だけど、悪い子じゃないから良いと思うけど?」
「反省してま~す…」
「えと…僕は…」
「入れ、千空」
「え、弁慶?」
「こいつらの目は良い目だ。弁慶気に入った」
「そっか…」
「あぁ」
弁慶が良いといった。じゃあ間違いないんだろうなぁ。確かにさっきはショックだったけど…。
「じゃあ…入ろうかな」
「やったぁぁぁ!」
一気に立ち上がる美琴。
「よろしくな。千空君」
「はい、よろしくお願いします」
「これで四人!部活結成まであと一人ね!」
「じゃ、親睦を深めるためになんか作りますかね」
「ほんと!じゃあカツサンド!」
「まったく…材料あったかしら?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ作っちゃいますかね」
「あ、僕手伝いますよ」
「あら、本当?でも大丈夫よ?座ってなさい。ね?」
「はぁ」
とキッチンに消えていく京都さんとレン。なんか嬉しそうだなぁ。
ちなみにその後は宴会チックになった。途中で兄さんと創さんも呼んだ。だって夕飯担当僕だし…LENのキッチンを借りて作っちゃった。
「千空をよろしく頼むよ」
「もうまっかせてくださいよ!」
胸をドンと叩く美琴先輩
「ははは、良い仲間ができたようですね」
「はい」
そんな感じで僕の、いや…僕達の神姫部としての生活が始まった。
**以下予告
美琴「やっと始まったわね!覇道が!!」
咲矢「まぁ落ち着け…次は…何だこの神姫は…」
ハンゾー「変身するハウリンだぁ?なんだかしらねぇが楽しそうだぜ!」
千空「次回!凪さん家の弁慶ちゃん第三話!」
未来「[[それは龍を従えし者]]」
ハンゾー「行くぜ!龍皇合体!覚悟しろドキd」
ボッガァァァァン!!!
???「言うなぁぁぁぁぁ!!」
全員「!?」
[[凪さん家の弁慶ちゃん]]
**第二話 それは剣を持つ者 2-2
爆音一つ…巨大なコンクリートの塊が崩れ落ち、あたりに塵が舞う。
「っち。避けやがったな」
「当たり前です。誰が好んで当たりますか」
「そりゃそうかっと」
身の丈ほどもあるメイス状の武器を担ぐ猫型。その名はハンゾー。
周囲には三体の龍が敵に睨みをきかせていた。
ちゃきん。
サブアームに持った二丁のハンドビームガンのEパックを装填する悪魔型。体にイエローラインが施された素体を持つ。名を義経という。
小型のマニュピレーターに換装されたサブアームは各部が調整され、拡張ハンガーがサブアーム基部から伸びている。その背部にはブースターポッドが三つ三方向に取り付けられている。それを「TR-1トライブースター装着型」と呼んでいた。
「ったくちまちましてんなぁ~これだからリアル系は」
メイスを担いだまま接近するハンゾー。
「は?」
何を言っているのか?という表情で迎える義経。
「やっぱよぉスーパー系だろぉぉぉ!とうぅぅぅ!」
「またそれですか…!」
「いくぜ!ムゲンメイス!!氷龍爆砕ぃぃぃぃぃ!!!」
まるでエコーが聞こえてきそうな声で叫ぶハンゾー。
しかしこの攻撃はさっきから何度も繰り出していた技。パターンは読めている。
義経は正確に、そして冷静に銃を構えた。
・
・
・
「また避けやがったなぁ!?」
「ハンゾー…単調すぎだ。馬鹿かお前」
ハンゾーの頭にオーナーの名が響く。
「うっせ!じゃあ【アレ】を使わせろよ!」
「駄目だ。【アレ】はまだ調整中だ」
「くそ!早く使いたいぜ!」
「というか…他のも使えよ」
「あ?これが一番燃えるんだっての」
「それしか使わないから最近負けてんだろ?」
「わーったよ。使えば良いんだろ?」
燃えるってお前…それ氷系の属性持ってるんだが…と思うオーナーをほっといてメイスを投げるハンゾー。その瞬間形を変え、メイスは青い龍になった。
「…ふぅ…話し合いは終わりましたか?」
「うるせぇ。このサード野郎が」
「好きでサードに留まっている訳じゃありませんよ。別に上がろうとかも無いですが」
「強がってんなって。セカンドの俺がうらやましいんだろう?」
「全然」
「く、この野郎~。いいぜ。見せてやるぜセカンドの力!!」
「どうぞ、ご自由に…!」
「よし!炎龍!!ムゲンバイン!!」
ギャァァァァン!!という雄叫び。赤い龍がバラバラになり形を変えていく。
「装着!ムゲンランス!!」
手には炎のように燃え上がる槍が装備された。
「義経、距離をとってライフルで攻撃」
義経のオーナー、未来の声がする。
「了解…というか単調ですね」
「う~ん、でも何があるかわから無いから注意してね」
「はい、お嬢様」
義経はブースターを再び噴射、高く飛び上がる。
「な、逃げるなこの!!」
「やってられません。とっとと終わらせて弁慶の援護に…」
「てんめぇ!!雷龍!!」
ビュン!と義経の横をかする影
「…!!」
「ムゲンバイン!装着!ムゲンボウガン!!くらえぇぇ!」
「っち…近距離特化ではないと…」
「おらおらおらぁ!!」
無数のビームが義経を襲う。
「く…」
近づけない…狙いは無茶苦茶だが…。
「どうしたどうした!」
くそ…誘導されてる…!あの猫型…無意識か…?
逃げよう、避けようとしてもそれよりも前に弾幕が張られる。
「承知で行くしかないか…!」
「義経!」
「はい!」
ゴウゥ!!
トライブースターの本領発揮…リミッターを解除。可動範囲の制限状態を解除する。
このことによるメリットは無限の機動性を持つということ。その代わり体に対する負荷は凄まじい。
ボウガンから吐き出される弾をあり得ない機動で避けつつ接近する義経。
「うお!これだからまったくリアル系って奴は!!」
やっと狙う事を始めたハンゾー。だが…
ビャァァァン!
「な!」
「力場系ブレードを選択して正解でした」
ビームが次々と弾かれる。ビームブレードには現在二種類が確認されている。放出系と力場系だ。放出系は高出力だが鍔迫り合いなどが出来ない。その代わり大型のブレードを形成する事が出来る。と言うより大型でなければエネルギーがすぐに尽きてしまう。力場系は出力、刀身のサイズが限られるものの、鍔迫り合いが可能で、防御に使えるというメリットがある。
基本的に小型の武装を使用する義経にとって、容易に携帯可能な力場系ブレードは扱いやすいのだ。
「はぁぁぁぁ!」
青い光線剣がハンゾーに迫る。
「うお!地龍!!」
「…ん!?」
迫る緑色の物体それは手裏剣の形をしていた。
「な…に?」
「ムゲンシュリケン!盾にもなるんだぜ!」
「ふん…」
「そっちが剣ならこっちはこれだぜ!!」
「!」
手を高々と上げるハンゾー。
「ムゲンバイィィンン!!ムゲンGハンマー!!」
「な、馬鹿!それもまだ調整が!」
「【アレ】が使えないならこれしかねぇだろ!」
「な、なんだ…」
「すごい…」
義経と未来はただただ見ていることしか出来なかった。
「「大きい…」」
「ふふふん、恐れをなしたか!これぞムゲンゴルディオンハンマー!!!」
黄金に輝く巨大すぎるハンマーの力で飛び上がるハンゾー。
「あ、義経!」
「は、はい!」
くそ、私とした事が…あんなの見掛け倒しに決まっている…はず
「くらえ!ちゃー!」
大きく振りかぶって
「しゅー!!」
一気に!
「メェェェェン!!」
「それはごるf!!」
ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!
見掛け倒し?そんなはずは無い。それは間違いなく強力だった。
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「ぬ!何だ!」
「…あ?」
一方こちらは弁慶とアーサー。
「ハンゾーか!美琴!どうなっているんです!?」
「ちょい待ち、何してんのよ咲矢!」
「馬鹿、俺は指示してねぇ!」
「ったくただ力を見るためなんだから壊しちゃ意味無いんだからね!?」
「なに?」
「…なんでもない!関係のないことだ!」
アーサーは騒がしい外界からの通信を切って剣を構えた。
「しかし、そろそろ決めさせてもらうぞ。時間が無いのでな」
「は?」
「早くハンゾーを止める」
「味方を止める?」
「あいつは馬鹿だからな…今回の戦闘の意味をわかってはいない」
「知るか」
「君のパートナーも危険だ」
「義経…大丈夫」
「だと良いが…」
「…!」
「どちらにしても私が勝ってからだ!!」
「そうはいかない!」
「いくぞ!アルベイン流奥義!!」
周囲に青いオーラが現われる。
「ふん…ハーケンロック!!アイン!ドライ!!セット!!!」
弁慶は首輪型のリードハーケンを射出、アーサーの後方に突き刺し、背中のアーミーブレード「アインファング」と足に装備した拡張スペーサー付きの「ドライファング」を接続させた。
「はぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「決める…!」
「魔神!千裂破!!!!!」
剣から放たれる波と雨。弁慶はひるむ事無く向かっていく。
ガキィィィィィン!!
剣が止まる。
「!?」
「止まった…!」
接続されたアインとドライによりはさまれたアーサーの剣はまったく微動だにしない。
「く!」
「はぁ!」
ドン!
と壁にぶち当たるまで突き進む弁慶。
「ぐほぁ!」
ザン!!
打ち付けられるアーサーとともに壁に突き刺さるアインファング。
アインとドライ、二つの牙に挟まれる騎士。まるでクワガタにはさまれた様…?
「な…」
「ライダー…」
「…!?」
それはあの技…あまりにもえげつないからか残酷だったからか…あまり使われなかった蒼き勇気から放たれた必殺技の一つ
「カッティング!!!」
一思いにアインとドライの幅を縮める弁慶。
「ぐあぁぁぁぁぁ!!」
鎧を砕き深々と侵攻する刃
「これでおわ…」
らなかった。いや…終わったのだが勝因は弁慶のカッティングではなかった。
なぜなら…
・
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「外したか!次はいくぜぃぃぃぃ!!」
「く!」
「避けて!義経!!」
「はい!」
すぽーん…
「あり?」
「!?」
ハンゾーの手から離れるハンマー…その力を解放したまま真っ直ぐ義経に向かう。
なんせ予想とはまったく別方向に飛んだおかげで義経に見事直撃…さらにその先に…。
ドッゴガァァァァァァン!!
「試合終了 アーサー・ハンゾー組の規定値反則武器使用により、勝者 弁慶・義経組」
屍が三体…瓦礫に埋もれていた。
「べ、弁慶…がく…」
「ぐ…ぬぁ…」
「き、貴様ぁぁぁ…」
「あは…わりぃ…ここまでするつもりじゃなかったんだ~ぜ?」
・
・
・
「弁慶…大丈夫??」
「…ひどい目…あった…」
「あの猫…許しません」
試合終了。僕たちは唖然としていた。とりあえず弁慶や義経に異常は無いみたい。
「…えっと」
未来も困惑気味。一体何がしたかったんだろう…あの人達。
「あちゃぁ~」
「申しわけありません美琴」
「いや、別にアーサーが悪いわけじゃ」
「すまねぇ俺としたことが」
「まったくだ…だから調整中だと…とりあえず行くぞ美琴…」
「え、どこに」
「スカウトするんだろ?それに…」
「?」
「あやまんねぇとな」
「あ、同意」
・
・
・
帰り道、結局すぐにエルゴから出てきた僕達はさっきの人達の事を話しながら歩いていた。
「おい!」
「?」
「あ…」
僕たちの後ろから声。って!さっきの二人だ。
「…なんですか?」
勇気を出して返事してみる…怖いなぁこの男の人。
「あぁ~俺は柊咲矢だ。すまなかったな。さっきは」
「私は渡瀬美琴。ほんとごめんね?」
へ?てっきりなんか因縁つけられるかと思った。
「私からも謝罪を」
「俺も謝るぜ。わりぃ」
制服の間から顔を出す神姫二体。アーサーとハンゾーだ。
「…ふん」
「…まぁ良いでしょう」
弁慶と義経が答える。
「えっと…大丈夫ですよ?何も異常なかったんですし」
「そ、そうですよ。大丈夫ですから」
「で、種明かしと言うか…なんというか」
「?」
「私たちの仲間にならない?」
「へ?それってどういう」
「俺達は今、新しい部活を作ろうとしていてな」
「部活ですか?」
「そ、黒葉学園神姫部!」
「「しんきぶ?」」
「でも確か同じような部活があったような…」
未来が顎に手を当てて考える。
「あぁ~それって武装神姫競技部でしょ?それじゃなくって」
「俺達も入っていたんだが、あそこはなぁ?」
「うん、なんていうか…堅いというか怖い感じ。勝つことしか考えて無いっていうか【神姫を使ってプロになって一攫千金】みたいな部活じゃない?」
「はぁ」
「まぁそりゃ私達も勝ちたいけど…まぁそこで!規則とか規律とかそんな軍隊みたいなのじゃなくって!【神姫と一緒に楽しむ】部活をつくろうって思ったのよ!」
「まぁ軽い方が俺達に合ってるしな。でだ、君達さえよければ仲間にならないか?と」
「そゆこと」
「はぁ…」
いきなりすぎて話が…分かりません。
「いいですね~それ!」
と反応したのは未来。
「未来…?」
「だって楽しそうじゃない?気楽に神姫と遊ぶってことでしょ?丁度私達部活やって無いし~部活に参加しろって言われてたし!」
「あ、君達フリーなんだ!」
「え、はい…」
黒葉学園、ここは基本的に部活動参加が義務みたいになっている。中には僕達みたいに中々部活をしない生徒もいるけど、そうすると入れ、部活やれと先生に言われるので毎回毎回弁解が大変だったりする。
「私入ります」
「本当!ありがとう!!」
「よろしくな!」
「で、そっちの君はどうかな?」
「え、僕…」
「おぉうボクっ娘」
「へ?」
「ボクっ娘でしょ君!良いわね!ナイスキャラ。女の子がボクって言う…一種の萌えね!」
「女の…子?」
「そう、まったく可愛い顔しちゃって~でも制服は男子系なのも良いけど…ここであえて女子系で行ってみるもの良いんじゃない??」
「えと、その…」
「可愛い~!ね!是非入ってよ~!」
と回り込んで後ろから抱きしめてくる美琴先輩。せ、背中にやわらかい…!あ、未来が怖い顔してる…ひぃ~。
「あの、それ以上言うと…弁慶が…」
「ん~??」
ビュン…影が僕の目の前を通る。
「…へ…?」
「べ、弁慶!」
「お前、千空、男。女じゃない!」
先輩の額に突きつけられる弁慶のハンドガン。
「ま、まったまたぁ」
「男!」
「うそ…そうなの?」
「…は、はい…」
「…ちょっときて!」
「え、えぇぇ!!」
「実際に見ないと信じないわ!」
「な、なにを!?」
ずりずりと千空を引っ張る美琴。向かったのは…。
カランカラン~
「あら、いらっしゃい…って美琴ちゃん?」
喫茶店LENだった。エルゴから近いこともあり、美琴と咲矢の行き付けとなっていた。
「トイレ借ります!」
ずかずかと入っていく美琴。
「ども」
「あ、いらっしゃい…あ、未来ちゃんも」
「ん?知り合いなんですか?」
「えぇ、常連さんよ」
「そうだったのか…」
「先輩方も?」
「まぁな」
「で、今美琴ちゃんといたのは…千空君?」
「はい」
「…君?ってことはやはり…」
バッタァァァァン!!
店の奥、トイレのドアが豪快に開く。
「こら、美琴ちゃん?ドアは静かに閉める!」
「つ、ついてた…信じられない…」
「うぅ…ぐず」
後ろから泣き崩れた千空が登場。これがアウトだった。
「美琴ちゃん?どういうことかしらねぇ?」
「え、あ、京都さん…これは~」
「いきなり店に入って男の子トイレに連れ込んで泣かせて~???」
笑っているが怖いオーラを放つ京都。
「ひぃ」
がっしぃぃぃぃん
美琴の顔に当てられる京都の手。
「お仕置きが必要かしらぁぁ??」
「ギブギブギブ!!!」
「「南無」」
手を合わせる咲矢とハンゾー。
「ちょ、たすけ」
「自業自得です…美琴」
剣を掲げて黙祷するアーサー。
「問答無用!!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
店に轟く悲鳴。必殺京都フィンガー…その叫びはエルゴまで響いたという…。
・
・
・
「なるほど。それで一緒に来たのね」
「はい」
事の次第を話す僕。店はすっかり暇暇モードなので京都さんも客席に座って僕達の話を聞いている。
「ほら、コーヒーとカフェオレとオレンジジュースだ。飲め」
ウイングユニットをつけたこの店の看板神姫、犬型のレンが店のカウンター奥から器用に飛んできて神姫達に配る。
「で?千空君は入るの?」
「え、僕ですか…」
「まぁこんな娘だけど、悪い子じゃないから良いと思うけど?」
「反省してま~す…」
「えと…僕は…」
「入れ」
「え、弁慶?」
「気に入った」
「そっか…」
「あぁ」
弁慶が良いといった。じゃあ間違いないんだろうなぁ。確かにさっきはショックだったけど…。
「じゃあ…入ろうかな」
「やったぁぁぁ!」
一気に立ち上がる美琴。
「よろしくな。千空君」
「はい、よろしくお願いします」
「これで四人!部活結成まであと一人ね!」
「じゃ、親睦を深めるためになんか作りますかね」
「ほんと!じゃあカツサンド!」
「まったく…材料あったかしら?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ作っちゃいますかね」
「あ、僕手伝いますよ」
「あら、本当?でも大丈夫よ?座ってなさい。ね?」
「はぁ」
とキッチンに消えていく京都さんとレン。なんか嬉しそうだなぁ。
ちなみにその後は宴会チックになった。途中で兄さんと創さんも呼んだ。だって夕飯担当僕だし…LENのキッチンを借りて作っちゃった。
「千空をよろしく頼むよ」
「もうまっかせてくださいよ!」
胸をドンと叩く美琴先輩
「ははは、良い仲間ができたようですね」
「はい」
そんな感じで僕の、いや…僕達の神姫部としての生活が始まった。
**以下予告
美琴「やっと始まったわね!覇道が!!」
咲矢「まぁ落ち着け…次は…何だこの神姫は…」
ハンゾー「変身するハウリンだぁ?なんだかしらねぇが楽しそうだぜ!」
千空「次回!凪さん家の弁慶ちゃん第三話!」
未来「[[それは龍を従えし者]]」
ハンゾー「行くぜ!龍皇合体!覚悟しろドキd」
ボッガァァァァン!!!
???「言うなぁぁぁぁぁ!!」
全員「!?」
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