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「「そして明日は笑おう」」(2006/11/27 (月) 00:18:03) の最新版変更点
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*そのじゅうよん「そして明日は笑おう」
「ティキ。いつまでもそんな所にハマってると、大好きなフィナンシェとマドレーヌがなくなっちゃうよ?」
僕は本棚の、本と本の隙間で僕に背を向けて体育座りしているティキに声をかける。
僕の部屋のテーブルの上には、ティキお気に入りの洋菓子と、温かいロイヤルミルクティーが用意してあった。
しかし当のティキの返事はと言うと、
「……要らないのですよぉ」
……餌付け失敗、か?
あの日の敗北以来、ティキは時折唐突にこんな風に落ち込む。
思い出しては、その度に自身の不甲斐なさを噛み締めている様だ。
そしてそれは僕も同じなのだけれども。
「そっ……か。じゃあ仕方ない。これは全部僕がいただくと言う事で」
僕はそう言って洋菓子に手をつけようとする。
がたっ
本棚から聞こえるその音に、僕は笑みを浮かべて手にした洋菓子を音がした方向へ差し出した。
「無理が持続しないなら、最初から素直になろうね」
「うにゅぅぅぅ~~~~ わかったですよぉ~」
しおしおと本棚から這い出てきたティキは、テーブルの上まで器用に色々と伝ってやってくると、ちょこんと音がしそうなくらい可愛らしく座る。
ティキがそうすることがわかっていた僕は、ティキが座った事を確認し、手に持った洋菓子を改めてティキに差し出す。
ティキは不機嫌そうな顔を隠すわけでもなく、黙ってその洋菓子を食べ始めた。
「……食べる時くらいは笑って食べようよ」
無駄な事は分かりきっているけど、それでも僕はティキに笑う事を薦める。
それに対し、もぐもぐと咀嚼しながらあっさりと無視を決め込んでくれた。
……武装神姫ってのはオーナーの指示には従うものだろうに。
でも実際のところ、彼女たちにも擬似的とは言え意思があるわけだから、オーナーの全ての欲求に答える事は出来ないんだろうと僕は思っている。
感情、意思がそこに存在する限り、常に命令に従っていては彼女達自身にストレスが生じるわけで。
大体、オーナーと呼ばれるものが人間である限り、矛盾を内包しない命令を与え続ける事は出来はしない。
そんな負荷や矛盾からの安全装置として、『非絶対服従』が用意されていると僕は思っている。……あくまでも個人的な考えで、実際はそんなもの無いのかもしれないけど。
でも、もし『絶対服従』が根底に存在しているなら、神姫達にはなぜ感情があるのか?
完全に命令を遂行する為の機械でいいのなら、もちろん感情なんてものは障害にしか成りえない。
感情や意思がある事で柔軟な対応を求めるのであれば、絶対服従なんてありうるはずも無い。
しかし現実にはオーナーの命令に逆らえず、違法改造とかを受けてしまう神姫も居る訳で。
……なんだか話がそれた。
「お……おいしいね」
無駄な努力を繰り返す僕。こういう時、女の子の扱いに慣れる人ならどんな行動を起こすんだろうか?
だけど生憎と僕は、女の子の扱いに疎い一高校生で、その手合いの経験が圧倒的に不足している。付き合った女の子に一切手を出せないくらいに。
「マスタ」
「はい?」
「こういう時は黙って見守って欲しいのですよぉ」
「……ハイ」
神姫に諭されるオーナーって一体……
って、僕なんだけど。
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……マスタ、こういう時は慰めて欲しいものなのですよぉ~」
……なんて理不尽な!!
もちろんそんな事口に出したりしないけど。
「あー、なんて言うか、元気出せ?」
「心がこもっていないですぅ」
「ソンナコトナイデスヨ、マゴコロイッパイデス」
「なんで棒読みですかぁ?」
「それはね、牛肉が入っているからだよ」
「そんな昔の、しかもマイナーなCMネタ、誰もわからないですよぉ?」
「そんなツッコミが素敵なキミにはこのお菓子をあげよう」
「元々テーブルにあったのですよぅ」
「いやぁ、やっぱりフィナンシェはセブ○イレブ○に限るよね」
「誤魔化すにしてもミエミエ過ぎですぅ」
「イヤだなぁ、ティキ。まるで僕に誠意が無いみたいじゃないか」
「今まで一緒にいて、今が一番誠意が感じられないですよぉ!」
「それはきっとティキの瞳が曇っているからさ」
「今曇っているのはきっとマスタの性根ですぅ!!」
「そこまで言うと僕が可哀想でしょ?」
「自分で自分のことを可哀想って言っても説得力無いですよぉ!?」
「そうだね。……だからティキも自分が可哀想だなんて思っちゃダメだよ」
「――!!」
何も言えないティキ。
言葉を続ける僕。
「負けた事に対する悔しさも、それに囚われてるばかりじゃ意味が無いよ。だから…… だから僕達はその悔しさを糧にしよう。時には立ち止まることも、間違いじゃないけど、ただ失敗や敗北に落ち込むだけじゃ僕もティキもそこで終わっちゃうから」
僕をジッと見つめるティキに、ぎこちないながらも精一杯の笑顔を浮かべて。
「だから、我慢しないで今はいっぱい泣いてさ、そして明日からはまた一緒に前を見ようよ。ね?」
ティキは僕を見つめたまま、ぽろぽろと涙をこぼす。
そしてそのまま顔をクシャクシャにして、わあわあと声をあげて泣き出した。
僕はそんなティキの頭を、指でそっと撫でる。
その僕の指を両の腕で抱きしめ、ティキは泣き続けた。
ひとしきり泣いた後、ティキは僕に照れた様に笑いかけ、そして何も言わずに洋菓子を口にする。
それを見て僕も照れ笑いをすると紅茶をすすった。
紅茶はすでに冷め切ってしまったが、それでも悪くないと僕は思った。
[[終える>僕とティキ]] / [[つづく!>「さあ反撃の狼煙を上げろ・1――いまはおやすみ――」]]
*そのじゅうよん「そして明日は笑おう」
「ティキ。いつまでもそんな所にハマってると、大好きなフィナンシェとマドレーヌがなくなっちゃうよ?」
僕は本棚の、本と本の隙間で僕に背を向けて体育座りしているティキに声をかける。
僕の部屋のテーブルの上には、ティキお気に入りの洋菓子と、温かいロイヤルミルクティーが用意してあった。
しかし当のティキの返事はと言うと、
「……要らないのですよぉ」
……餌付け失敗、か?
あの日の敗北以来、ティキは時折唐突にこんな風に落ち込む。
思い出しては、その度に自身の不甲斐なさを噛み締めている様だ。
そしてそれは僕も同じなのだけれども。
「そっ……か。じゃあ仕方ない。これは全部僕がいただくと言う事で」
僕はそう言って洋菓子に手をつけようとする。
がたっ
本棚から聞こえるその音に、僕は笑みを浮かべて手にした洋菓子を音がした方向へ差し出した。
「無理が持続しないなら、最初から素直になろうね」
「うにゅぅぅぅ~~~~ わかったですよぉ~」
しおしおと本棚から這い出てきたティキは、テーブルの上まで器用に色々と伝ってやってくると、ちょこんと音がしそうなくらい可愛らしく座る。
ティキがそうすることがわかっていた僕は、ティキが座った事を確認し、手に持った洋菓子を改めてティキに差し出す。
ティキは不機嫌そうな顔を隠すわけでもなく、黙ってその洋菓子を食べ始めた。
「……食べる時くらいは笑って食べようよ」
無駄な事は分かりきっているけど、それでも僕はティキに笑う事を薦める。
それに対し、もぐもぐと咀嚼しながらあっさりと無視を決め込んでくれた。
……武装神姫ってのはオーナーの指示には従うものだろうに。
でも実際のところ、彼女たちにも擬似的とは言え意思があるわけだから、オーナーの全ての欲求に答える事は出来ないんだろうと僕は思っている。
感情、意思がそこに存在する限り、常に命令に従っていては彼女達自身にストレスが生じるわけで。
大体、オーナーと呼ばれるものが人間である限り、矛盾を内包しない命令を与え続ける事は出来はしない。
そんな負荷や矛盾からの安全装置として、『非絶対服従』が用意されていると僕は思っている。……あくまでも個人的な考えで、実際はそんなもの無いのかもしれないけど。
でも、もし『絶対服従』が根底に存在しているなら、神姫達にはなぜ感情があるのか?
完全に命令を遂行する為の機械でいいのなら、もちろん感情なんてものは障害にしか成りえない。
感情や意思がある事で柔軟な対応を求めるのであれば、絶対服従なんてありうるはずも無い。
しかし現実にはオーナーの命令に逆らえず、違法改造とかを受けてしまう神姫も居る訳で。
……なんだか話がそれた。
「お……おいしいね」
無駄な努力を繰り返す僕。こういう時、女の子の扱いに慣れる人ならどんな行動を起こすんだろうか?
だけど生憎と僕は、女の子の扱いに疎い一高校生で、その手合いの経験が圧倒的に不足している。付き合った女の子に一切手を出せないくらいに。
「マスタ」
「はい?」
「こういう時は黙って見守って欲しいのですよぉ」
「……ハイ」
神姫に諭されるオーナーって一体……
って、僕なんだけど。
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……マスタ、こういう時は慰めて欲しいものなのですよぉ~」
……なんて理不尽な!!
もちろんそんな事口に出したりしないけど。
「あー、なんて言うか、元気出せ?」
「心がこもっていないですぅ」
「ソンナコトナイデスヨ、マゴコロイッパイデス」
「なんで棒読みですかぁ?」
「それはね、牛肉が入っているからだよ」
「そんな昔の、しかもマイナーなCMネタ、誰もわからないですよぉ?」
「そんなツッコミが素敵なキミにはこのお菓子をあげよう」
「元々テーブルにあったのですよぅ」
「いやぁ、やっぱりフィナンシェはセブ○イレブ○に限るよね」
「誤魔化すにしてもミエミエ過ぎですぅ」
「イヤだなぁ、ティキ。まるで僕に誠意が無いみたいじゃないか」
「今まで一緒にいて、今が一番誠意が感じられないですよぉ!」
「それはきっとティキの瞳が曇っているからさ」
「今曇っているのはきっとマスタの性根ですぅ!!」
「そこまで言うと僕が可哀想でしょ?」
「自分で自分のことを可哀想って言っても説得力無いですよぉ!?」
「そうだね。……だからティキも自分が可哀想だなんて思っちゃダメだよ」
「――!!」
何も言えないティキ。
言葉を続ける僕。
「負けた事に対する悔しさも、それに囚われてるばかりじゃ意味が無いよ。だから…… だから僕達はその悔しさを糧にしよう。時には立ち止まることも、間違いじゃないけど、ただ失敗や敗北に落ち込むだけじゃ僕もティキもそこで終わっちゃうから」
僕をジッと見つめるティキに、ぎこちないながらも精一杯の笑顔を浮かべて。
「だから、我慢しないで今はいっぱい泣いてさ、そして明日からはまた一緒に前を見ようよ。ね?」
ティキは僕を見つめたまま、ぽろぽろと涙をこぼす。
そしてそのまま顔をクシャクシャにして、わあわあと声をあげて泣き出した。
僕はそんなティキの頭を、指でそっと撫でる。
その僕の指を両の腕で抱きしめ、ティキは泣き続けた。
ひとしきり泣いた後、ティキは僕に照れた様に笑いかけ、そして何も言わずに洋菓子を口にする。
それを見て僕も照れ笑いをすると紅茶をすすった。
紅茶はすでに冷め切ってしまったが、それでも悪くないと僕は思った。
[[終える>せつなの武装神姫~僕とティキ~]] / [[もどる>「強敵と書いてもテキとしか呼ばない!」]] / [[つづく!>「さあ反撃の狼煙を上げろ・1――いまはおやすみ――」]]
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