「人形の家」(2012/05/27 (日) 10:47:55) の最新版変更点
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全く、神姫なんてつまらないよね。こんなにお金をかけていい装備をかってあげてるのに勝てないし。最新型だって言うからかってあげたのに弱っちいのよあなた。それに何、戦いたくないって、あなた武装神姫でしょ。戦わないと意味ないじゃないのよ。はぁ、ママは何でこんな子買ってくれたのかしら。あとパパが帰ってきたら神姫バトルのこと教えてもらうんだ。もっと強い神姫も買ってもらわなくっちゃ。ちょっと、オモチャのくせに泣かないでよ、うっとおしい。はぁ、パパもママも早く帰ってこないかしら。
連続神姫ラジオ
浸食機械
7:人形の家
「全く物好きなのだわ。せっかくの脱出する機会を見逃すなんて」
<そういうグレーテルさんこそ島に残ってるじゃないですか。おまけに生身で神姫と戦うなんて無茶苦茶ですよ>
結局僕が怪しいとにらんだ場所に着くまでグレーテルさんと行動を共にすることになった。相手は数で押してくるのでお互い一人は避けたかったからだ。
<それにしてもすごいですね>
ステッキを指さしながら話しかける。
「自分で言うのも何ですが、普通の人が完全武装した神姫と渡り合えるなんて考えられないですよ」
「だがらぐれーでるはずごいんだよ」
「ヘンゼル、余計なことは言わなくていいわ」
言葉を遮ったグレーテルさんの表情はどこかつらそうに感じた。
しばらく歩くと森の木立が切れてきた。もうすぐ目的地だ。そう思っているといきなり足下が崩れた。
「きゃあ」
グレーテルさんの足下を中心に地面に穴が開いて僕たちはその中に落ちていった。とっさにブースターをかけて上に上がろうとするが上から何かが降ってきて結局グレーテルさんの上に落ちてしまう。
「あなたたち、無事なのかしら?無事ならどいてくれるとうれしいんだけど」
「ぐれーでる、だいじょうぶ?」
慌てて動こうとしたが体が動かない。ヘンゼルも武装が網に絡まって動けないでいるようだ。
「全く、網まで落としてくるなんて念の入ったことだわ…もっとも足をくじいてしまったようだからこれが無くても自力ではあがれないけど」
「あはははは、反応があったから来てみたらまたニンゲンがかかったのだ」
穴の上から声が聞こえる。見上げると穴の縁を神姫が取り囲んでいた。そのうち一体が身を乗り出してくる、先ほど声をかけてきたのはこのマオチャオ型のようだ。
「お姉さん、よかったら助けてあげようか?ただしお姉さんの神姫は私たちがもらっていくのだ」
「ほんど?ほんどにぐれーでるたずけでくでるの?」
「ヘンゼル!みっともないまねをするんじゃないのだわ」
グレーテルの言葉に穴の上の神姫達全ての目つきが変わるのが分かる。それでも変わらぬ口調でマオチャオ型が話しかけてきた。
「あったりまえなのだ。あたしは約束は守る神姫なのだ。お姉さんも神姫の言うことは聞いた方がいいのだ。イーダ型が欲しければまた買い直せばいいのだ。」
その言葉にプルミエもヘンゼルも曇る。上の神姫達は何かを期待した目でこちらを見ている。
「お断りよ」
グレーテルさんが短く答えた。その途端上の神姫達が騒ぎ出した。恨むような悲しんでいるようなあきれているような何ともいえない表情を向けてくる。
「ふざけるんじゃないのだ。お前達ニンゲンは助かりたいはずなのだ。神姫なんて買い直せばいいのだ。そんな言葉のおかしくなった神姫になんかこだわる必要ないのだ」
マオチャオの叫びはとても痛々しかった。他の神姫達も偽善者だの嘘つきだの暴言を吐きかけていた。誰かが小石をグレーテルに投げつけてきた。石の数は多くなっていきグレーテルの肌はあちこち赤く染まっていった。
「やめで、ぐれーでるをいじめないで!」
ヘンゼルがグレーテルを石から庇うために駆け出した。網に武装が絡まって動けなかったので四肢と武装を強制パージして。ヘンゼルの背中を石が打っていた。小さな石と入っても神姫にとっては拳より大きな石でずっと殴られているようなものだ。
「ぐれーでる。やっぱりあだじをずてでよ。わるいごだったあだじをずでてよ」
「…ばか、あんたを守ってあげられなくて何の意味があるのよ」
泣き顔で懇願するヘンゼルにグレーテルがきっぱり言い放つ
「ふざけるななのだ!お涙頂戴はいらないのだ!なんでそんな欠陥神姫を捨てないのだ!!何でそんな神姫を大切にするのだ!!!」
マオチャオが石を投げる。それはヘンゼルの背を打つ。あっと声を上げヘンゼルが倒れ込むのがスローモーションで僕の目に映った。グレーテルの目が大きく見開かれる。
「どうしてお前みたいな神姫にマスターがいるのだ…」
マオチャオが石を投げ続ける。みんなの視線がヘンゼルに注がれている。恨みで神姫が殺せたらといわんばかりの勢いだ。誰も僕達に注意を払っていない。後一本もロープを切れば逃げられるとしても。こっそりバーニアの暖気を進めていたとしても。
「マスター、準備完了です」
プルミエの言葉が合図だった。
次回:[[蟲毒の底]]に続く・[[戻る>浸食機械]]
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