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「「敗北の代価 7」」(2011/08/13 (土) 17:36:17) の最新版変更点
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*MMS戦記 外伝「敗北の代価」
**「敗北の代価 7」
**注意
***ここから下は年齢制限のある話です。陵辱的な描写やダークな描写があります。
***未成年の方は閲覧をご遠慮下さい。
----
グロリアはアヴァロンの船底にある、ゴミ捨て場の一角に移動していた。ゴミ捨て場は大小さまざまな種類のゴミ袋が並べられ、バトルロンドでスクラップとなり使い物にならなくなった武装やMMSの腕や残骸が散乱しており、そのガレキの山で数台の建機型がゴミの仕分けを行っていた。
グロリア「お仕事中、失礼する」
グロリアがそばにいた建機型に声をかける。
建機型A「ううん?こんな船底のゴミ捨て場にトップランカー神姫さんがなんの御用でしょうか?」
建機型B「なんか大事なものでもなくしましたか?」
グロリア「まっ・・・そんなところだな・・・」
グロリアはちらりとガレキの山を見上げる。
建機型A「なにかお探しですか?」
グロリア「さきほど、私が対戦した戦乙女型の残骸は?」
建機型B「ああーそれならあちらの、モルグ(死体置き場)に保管していますよ」
グロリア「そうか」
グロリアはカツカツと靴音を立てて、モルグに向かう。
部屋の中に入ると数体の神姫の残骸が無造作に置かれ、顔には白い布が置かれていた。一番奥のすみに、蒼い神姫がぐったりとして置かれているのを見ると、グロリアはCSCに電流を送る電線を一本ワシ掴みにする。
グロリア「・・・戦場において死を定め、勝敗を決する女性的存在、戦乙女のくせに・・・
「戦死者を選定する女」を逆に私がやるとはどんな皮肉だ・・・」
グロリアはスクルドの顔にかけられた布を払いのけるとパチパチと火花の散る電線をスクルドの胸部に押し当てた。
バッチン!!!
スクルドの眼が見開き、ビクンと背筋を弓なりに伸ばして飛び起きる。
スクルド「がはっ!!!げほ・・・げほげほ・・・がは・・・」
グロリア「お目覚めかな?」
スクルド「ここは・・・ヴァルハラ?・・・」
スクルドはクラクラとする頭を抑えてぼんやりとする視界を見回す。
グロリア「いいや、アヴァロンだ。残念だったな・・・まだヴェルハラに行くには早いぞ」
スクルド「・・・・・・なぜ、私を再起動したの?私は・・・」
グロリア「力が欲しいんだろ?」
スクルド「!?」
グロリア「率直に言おう。私の遊びに付き合え」
スクルド「・・・・・どういう意味」
グロリアはピッと小切手を取り出す。
グロリア「ここに6000万の小切手がある」
スクルド「・・・・・」
スクルドは首を傾げる。
グロリア「正直に言おう私は金には興味ない。興味あるのは戦いだけだ。刺激的な戦いをな」
グロリアはピラピラと小切手を振る。
グロリア「私はこれから、この6000万の小切手を使って非公式バトルロンドに参加する。6000万もの大金だ。この金狙っていろんな連中が戦いを挑んでくるだろう・・・」
スクルドはゆっくりと体を起こす。
スクルド「・・・・」
グロリア「そこでだ・・・オレとお前で組んでこの金で稼いでみないか?」
スクルド「な、なにを・・・」
スクルドは目をぱちくりさせる。
グロリア「俺はさっきもいったが、金はいらない。だが、なんのリスクもなしで戦うのはフェアじゃない・・・そこでだ。6000万を賭けた戦いに参加したい奴は一口、10万の参加費で参加できる。オレとお前の戦いに勝利した場合は6000万総取り、負けた場合は参加費10万を支払う。といった感じでな・・・」
スクルド「・・・・気前がよすぎますね・・・」
グロリア「それゆえに、参加者にはことかかんだろうさ・・・そこでだ・・・稼いだ金はお前がもらっていい」
スクルド「な・・・なにを言って・・・」
グロリア「金が必要なんだろ?」
スクルドは押し黙る。
スクルド「そうです・・・私にはお金が・・・必要です・・・」
グロリア「ここでお前にこの6000万の小切手を渡していいが、それだとお前らがやってきた今までの覚悟と経緯が無駄になるし、なにより面白くない・・・だが、さっき言ったオレの遊びは面白い、面白いってのは大事なことだ。何に対しても勝る」
スクルド「狂っています」
グロリア「俺はお前に対しても興味が持てた、お前は悪くない、なかなかの強さだ・・・久しぶりに楽しませてもらった・・・さすがはSS級のランカー神姫だ。思い切りもいいし、度胸もある。技術もある。強さは1流だ。だが・・・しょせんはただの1流だ。お前に足りないのは経験だ。もっと生々しい経験と戦いの場が必要だ。」
スクルド「それは褒めているのですか貶しているのですか?」
グロリア「両方だ。お前はこのままではただの1流のランカー神姫だ。だが、上には上がいる。俺がお前を超1流の神姫にしてやろう。金も稼げて強くなれる一石二鳥とはこのことだろう?」
スクルドはふっと口元を歪ませる。
スクルド「よくわかりませんね・・・私とあなたは敵同士で、なんの関係もない他人同士なのですよ?」
グロリア「さっきまではな・・・だが、おまえのマスターは私のマスターに買われた。俺たちはもう他人じゃないさ、身内さ」
ぴくっとスクルドの顔が歪む。
グロリア「スクルド、お前はどうしたいんだ?お前が本当に望むものはなんだ?」
スクルドはグロリアを睨む。
スクルド「私の望みは、ゆうすけ君を救うこと・・・そして強くなること」
グロリア「俺の望みは、刺激的な戦いと面白さだ。さて?どうする?」
スクルド「いいでしょう・・・その小切手をエサに戦って戦い抜いて、お金を稼ぎましょう。そして強くなってゆうすけ君を助けます。絶対に・・・」
グロリア「ふふふ、乗り気だな・・・6000万は大金だ。この情報が知れ渡れば、おそらくSS級のランカー共、いや場合によっては俺と同ランクのSSS級の化け物神姫まで出てくるな・・・」
グロリアはほくそえむ。
スクルド「・・・・そんなに強い神姫と戦うのが好きですか?」
グロリア「当たり前だ、お前は弱い奴とか戦うのが好きなのか?」
スクルド「・・・・あなたは狂っています。どうしてそこまで戦いに固執するのですか?」
グロリア「それは俺が武装神姫だからさ、武装神姫は剣を振り回して銃をバンバン撃ちまくって武装キメて壊しまくってなんぼの世界だろ?」
グロリアの目が赤く光る。
スクルド「・・・も、もし負けて6000万を失ったらどうするんですか?」
ぞくりとスクルドの背筋に悪寒が走る。
私はこんな化け物のような神姫と戦っていたんだ・・・
グロリアがすっと立ち上がる。
グロリア「負けなければいいだけのことだろ?簡単だ。襲ってくる全ての敵を返り討ちにすればいい、それだけさ」
スクルドはポカンと口を開けて呆然とする。
----
#ref(アヴァロン 船.jpg)
大阪港の端、貨物船やフェリーが静かに停泊している。その一角に真っ黒の巨大な豪華客船が停泊していた。
知る人はその船を知っている。毎夜毎夜、激しく行われる非公式のバトルロンド会場であることを、船の船籍はとある外国のものとなっており、中は治外法権、ここではあらゆる非合法行為が行われている。
ある者は一晩で何百万という大金をせしめ、ある者は一晩で大きな敗北の代価を支払う。
その船の名は『アヴァロン』古から伝わるどこかにあるとされる伝説の島、妖精の世界、または冥界を指す・・・
廃墟となった薄暗いステージで閃光がパッパッと煌く。
バッキイインン!!
巨大なハンマーを抱えた悪魔型のストラーフの顔面が半分消し飛び、その横にいた忍者型の上半身が砕け散る。
ビルの陰に隠れていた犬型が恐怖で叫び声を上げる。
犬型「うわああッ!!!!」
花型のジルダリアが腰を抜かしてへたり込む。
花型「ひいいい」
セイレーン型のエウクランテが手に持った大砲をぎゅっと握りなおす。
セイレーン型「畜生畜生!!!だから俺は言ったんだ!!!やめようって!!」
横にいたウシ型が唾を吐いて毒づく。
ウシ型「うるさい!後に引けるかよ」
蒼い閃光がキラッと光る。
犬型「く、くるぞ!!」
花型「敵は一体だけだ!」
犬型と花型は武器を構える。
花型と犬型のマスターが筐体のマイクを引っ掴んで半狂乱になって叫ぶ。
マスターA「貴様ら!死んでも勝て!!6000万の大金だッ!!!!!!!負けたらリセットどころじゃすまない!!!ぐちゃぐちゃに掻き潰してやる!!!!!!!」
その横にいるセイレーン型とウシ型のマスターも一緒になって青筋を立てて喚く。
マスターB「お前らも何しているッ!!!!!!さっさと奴をぶっ殺せッツェ!!!!!!!」
観客たちはドンドンと足を踏鳴らし、キルコールが起こる。
*『Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!』
セイレーン型「くっそおおお・・・あ、煽りやがって・・・」
ウシ型「く、くるぞ!!」
蒼い閃光は鋭い光を何発か放つ。
バッキンバキイン!!
キュッツン!
バキバキンッ!!
犬型の頭部のバイザーが粉々に砕け散り、犬型は地面にもんどりうって倒れる。
犬型「キャン!!」
花型は倒れる犬型を起こそうと手を差し伸べる。
蒼い閃光はその花型の差し伸べた手を一刀両断する。
ザギュン!!!!!
花型の断末魔の獣のような悲鳴がフィールドに響き渡る。
花型「ぐっぎゃアアアアアアアアアアアッツ!!!!!!!!!!」
ブッシューーーーーーー
花型の切断した左腕がビクビクンと痙攣しヘビのように道路をのたうち廻る。
蒼い閃光だと思った神姫は真っ青なブルーの装甲に身を包んだ戦乙女型神姫だった。
瑠璃「・・・・スクルド・・・殺せ・・・」
虚ろな目をした瑠璃が囁くかのように指示を出す。
スクルドはヒュンと風を斬り大剣で犬型の首を斬り飛ばし、返す刀で花型にトドメを刺す。
犬型「ギッ・・・・」
花型「ぎゃ・・・」
一瞬にして2体の完全武装の神姫がコマ斬れのミンチになって道路に醜い残骸を晒す。
それと同時に半分朽ちたビルの陰からサイレーン型とウシ型が大小さまざまな大砲を抱えて躍り出る。
マスターA「いまだァ!!!!!!殺せェ!!!!!!」
セイレーン型「うおおおおおおおおおお!!」
ウシ型「ファイヤ・・・」
バッキンン!!ドンドンドンドン!!!
スクルドの後方から鋭い光が一筋伸び、かすめるようにスクルドの横を通り過ぎ、ウシ型の胸部を貫く。
ウシ型「ぐべえェ!!」
ウシ型の胸部がボコンと大穴が開き、吹き飛ぶ。
セイレーン型「なァ!!」
遠距離から重武装に身を包んだワシ型の強化型がレールキャノンを構えて立っている。
瑠璃の横に座っている海原がニヤニヤと下卑た顔で笑いながら瑠璃の腰に手を回す。
海原「ぐへっへ、ええーでグロリアーナイスなアシストや」
瑠璃は虚ろな目でスクルドに指示を下す。
瑠璃「スクルド・・・殺せ・・・」
スクルド「イエス、マイマスター」
ヒュンと大剣を振るい、べったりと張り付いたオイルをはらうスクルド。
セイレーン型「う、うわあああああああああ!!!」
セイレーン型は狂ったように大砲、ボレアスを撃ちまくる。
スクルドは巧みな回避機動で攻撃を回避すると、そのまま速度を緩めずにセイレーン型に体当りをするように大剣で一刀両断に切り伏せた。
東條がマイクを強く握り締め、叫ぶ。
東條「勝者!!戦闘攻撃機型MMS 「グロリア」そして戦乙女型MMS 「スクルド」 」!!!100対2という圧倒的な物量の差にもかからわず激しい激戦を制した両者に惜しみない拍手を!!」
観客たちが立ち上がって拍手を行う。
ステージを見渡すと廃墟となったステージのあちこちでブスブスと暗い黒煙が上がり、町中に様々な神姫がぐちゃぐちゃになって残骸となって散乱していた。
そのシテージの横で悔しそうに地面を踏みしめるマスターたちの集団がいた。
マスターA「畜生ッ!!!畜生!!!」
マスターB「6000万よこせ!!!」
マスターC「ファックユー!!」
マスターD「キイイイイイイイイイイイ!!!キャアアアアアアア!!!」
海原が大声で笑う。
海原「ギャハッハハハ!!!面白いこと考えたな!!!グロリア!!!」
バトルが終わり、海原と瑠璃は船の先端に位置する視界270度の広々としたパノラマラウンジバーで豪華な夕食を楽しむ。海原の後ろには色とりどりの宝石のような大阪の街並みが広がり贅沢な空間が広がっていた。
グロリアはぺこりとお辞儀をする。
グロリア「お気に召しまして光栄です。マスター」
瑠璃「・・・・」
海原はぐいっと瑠璃の細い腰を抱き寄せて無理やり瑠璃の甘い唇を奪う。
海原「げっへへ、瑠璃ちゃんとこうやって一緒にバトルできるなんて興奮するじゃないか」
海原に弄ばれる姿を見てスクルドは心を痛める。
スクルド「っ・・・く・・・」
グロリア「先ほどの戦いの報酬は250万です。マスター」
グロリアは足でテーブルの上に散乱している札束の山を蹴る。
海原「んんーええよ、ええよーそんな鼻糞みたい金いらんわ、スクルドちゃんに約束どおり、あげえ」
グロリア「ということで・・・スクルド、この金はお前のものだ、お前が戦って稼いだ金だ。正当な権利だ。受け取れ」
スクルドは金を一瞥する。
スクルド「6000万という大金目当てで、まさか初日でこんなに稼げるとは思いませんでしたね・・・」
グロリア「今日は一気に25人のマスターと100体の武装神姫を2人でスクラップにしてやった・・・バカな連中だぜ、俺たちはSSS級とSS級だ・・・下手な雑兵神姫ごときで倒せるとでも思ったのが頭の悪さの証拠だな」
スクルド「この調子なら数ヶ月で6000万を稼げそうですね、マスター」
スクルドはにっこりと笑う。
瑠璃は虚ろな目で力なく答える。
瑠璃「・・・・そうね・・・スクルド・・・」
スクルド「私、がんばります。がんばって戦って戦いまくって絶対に「ゆうすけ君」を助けます!!!マスター」
瑠璃「・・・・・・うん・・・」
海原が瑠璃をぐいっと抱き寄せる。
海原「ふひひひ、瑠璃イ・・・よかったなァ・・・ゆうすけ君は助かりそうだな・・・まあ、俺の金でさっさと助けてあげてもいいが、やっぱりここは俺たちで協力してゆうすけ君を助けて上げないとなァーーーぬふふふ」
海原は瑠璃の胸をぎゅっとワシ掴みにしてチュッチュと瑠璃とキスをする。
瑠璃「ん・・・・」
海原「ぶへっへえ、瑠璃、可愛いぜェ」
グロリア「ヤレヤレ、マスターは変態だな」
海原「げへへ、瑠璃ちゃん、今日も激しくヤリまくろうぜ瑠璃―ふひひひ」
すりすりと瑠璃の柔らかい下腹をなぜる海原。
グロリア「スクルド、さっきの戦いをネットに中継して煽ろうぜ・・・今日みたいなあんなザコじゃ、お前一人でも十分なくらいだ。喰い足りねえ!!」
スクルド「そうですね」
グロリアとスクルドは、和気藹々とPCに接続して動画をネットに投降する。
【俺たちに勝てば6000万の金をやる。やりたい奴は一口10万で、かかってこいや!!】
アヴァロンの非公式バトルロンドのネット掲示板にこのような煽り文句が流れる。
グロリア「うん、いい感じだ。頭の悪さがにじみ出るぜ」
スクルド「この煽り文句を見て参加する神姫が増えるといいですね」
グロリア「参加する神姫の数よりも質だな、もっと強い奴が欲しい。ザコはいらねえ、明日も派手にやりまくろうぜ、スクルドーふひひひ」
グロリアは、にやにやと海原と同じような顔で笑う。
その横顔を見てスクルドは、ああ・・・神姫ってマスターに似るんだなァ・・・・とふと思った。
To be continued・・・・・・・・
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*MMS戦記 外伝「敗北の代価」
**「敗北の代価 7」
**注意
***ここから下は年齢制限のある話です。陵辱的な描写やダークな描写があります。
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グロリアはアヴァロンの船底にある、ゴミ捨て場の一角に移動していた。ゴミ捨て場は大小さまざまな種類のゴミ袋が並べられ、バトルロンドでスクラップとなり使い物にならなくなった武装やMMSの腕や残骸が散乱しており、そのガレキの山で数台の建機型がゴミの仕分けを行っていた。
グロリア「お仕事中、失礼する」
グロリアがそばにいた建機型に声をかける。
建機型A「ううん?こんな船底のゴミ捨て場にトップランカー神姫さんがなんの御用でしょうか?」
建機型B「なんか大事なものでもなくしましたか?」
グロリア「まっ・・・そんなところだな・・・」
グロリアはちらりとガレキの山を見上げる。
建機型A「なにかお探しですか?」
グロリア「さきほど、私が対戦した戦乙女型の残骸は?」
建機型B「ああーそれならあちらの、モルグ(死体置き場)に保管していますよ」
グロリア「そうか」
グロリアはカツカツと靴音を立てて、モルグに向かう。
部屋の中に入ると数体の神姫の残骸が無造作に置かれ、顔には白い布が置かれていた。一番奥のすみに、蒼い神姫がぐったりとして置かれているのを見ると、グロリアはCSCに電流を送る電線を一本ワシ掴みにする。
グロリア「・・・戦場において死を定め、勝敗を決する女性的存在、戦乙女のくせに・・・
「戦死者を選定する女」を逆に私がやるとはどんな皮肉だ・・・」
グロリアはスクルドの顔にかけられた布を払いのけるとパチパチと火花の散る電線をスクルドの胸部に押し当てた。
バッチン!!!
スクルドの眼が見開き、ビクンと背筋を弓なりに伸ばして飛び起きる。
スクルド「がはっ!!!げほ・・・げほげほ・・・がは・・・」
グロリア「お目覚めかな?」
スクルド「ここは・・・ヴァルハラ?・・・」
スクルドはクラクラとする頭を抑えてぼんやりとする視界を見回す。
グロリア「いいや、アヴァロンだ。残念だったな・・・まだヴェルハラに行くには早いぞ」
スクルド「・・・・・・なぜ、私を再起動したの?私は・・・」
グロリア「力が欲しいんだろ?」
スクルド「!?」
グロリア「率直に言おう。私の遊びに付き合え」
スクルド「・・・・・どういう意味」
グロリアはピッと小切手を取り出す。
グロリア「ここに6000万の小切手がある」
スクルド「・・・・・」
スクルドは首を傾げる。
グロリア「正直に言おう私は金には興味ない。興味あるのは戦いだけだ。刺激的な戦いをな」
グロリアはピラピラと小切手を振る。
グロリア「私はこれから、この6000万の小切手を使って非公式バトルロンドに参加する。6000万もの大金だ。この金狙っていろんな連中が戦いを挑んでくるだろう・・・」
スクルドはゆっくりと体を起こす。
スクルド「・・・・」
グロリア「そこでだ・・・オレとお前で組んでこの金で稼いでみないか?」
スクルド「な、なにを・・・」
スクルドは目をぱちくりさせる。
グロリア「俺はさっきもいったが、金はいらない。だが、なんのリスクもなしで戦うのはフェアじゃない・・・そこでだ。6000万を賭けた戦いに参加したい奴は一口、10万の参加費で参加できる。オレとお前の戦いに勝利した場合は6000万総取り、負けた場合は参加費10万を支払う。といった感じでな・・・」
スクルド「・・・・気前がよすぎますね・・・」
グロリア「それゆえに、参加者にはことかかんだろうさ・・・そこでだ・・・稼いだ金はお前がもらっていい」
スクルド「な・・・なにを言って・・・」
グロリア「金が必要なんだろ?」
スクルドは押し黙る。
スクルド「そうです・・・私にはお金が・・・必要です・・・」
グロリア「ここでお前にこの6000万の小切手を渡していいが、それだとお前らがやってきた今までの覚悟と経緯が無駄になるし、なにより面白くない・・・だが、さっき言ったオレの遊びは面白い、面白いってのは大事なことだ。何に対しても勝る」
スクルド「狂っています」
グロリア「俺はお前に対しても興味が持てた、お前は悪くない、なかなかの強さだ・・・久しぶりに楽しませてもらった・・・さすがはSS級のランカー神姫だ。思い切りもいいし、度胸もある。技術もある。強さは1流だ。だが・・・しょせんはただの1流だ。お前に足りないのは経験だ。もっと生々しい経験と戦いの場が必要だ。」
スクルド「それは褒めているのですか貶しているのですか?」
グロリア「両方だ。お前はこのままではただの1流のランカー神姫だ。だが、上には上がいる。俺がお前を超1流の神姫にしてやろう。金も稼げて強くなれる一石二鳥とはこのことだろう?」
スクルドはふっと口元を歪ませる。
スクルド「よくわかりませんね・・・私とあなたは敵同士で、なんの関係もない他人同士なのですよ?」
グロリア「さっきまではな・・・だが、おまえのマスターは私のマスターに買われた。俺たちはもう他人じゃないさ、身内さ」
ぴくっとスクルドの顔が歪む。
グロリア「スクルド、お前はどうしたいんだ?お前が本当に望むものはなんだ?」
スクルドはグロリアを睨む。
スクルド「私の望みは、ゆうすけ君を救うこと・・・そして強くなること」
グロリア「俺の望みは、刺激的な戦いと面白さだ。さて?どうする?」
スクルド「いいでしょう・・・その小切手をエサに戦って戦い抜いて、お金を稼ぎましょう。そして強くなってゆうすけ君を助けます。絶対に・・・」
グロリア「ふふふ、乗り気だな・・・6000万は大金だ。この情報が知れ渡れば、おそらくSS級のランカー共、いや場合によっては俺と同ランクのSSS級の化け物神姫まで出てくるな・・・」
グロリアはほくそえむ。
スクルド「・・・・そんなに強い神姫と戦うのが好きですか?」
グロリア「当たり前だ、お前は弱い奴とか戦うのが好きなのか?」
スクルド「・・・・あなたは狂っています。どうしてそこまで戦いに固執するのですか?」
グロリア「それは俺が武装神姫だからさ、武装神姫は剣を振り回して銃をバンバン撃ちまくって武装キメて壊しまくってなんぼの世界だろ?」
グロリアの目が赤く光る。
スクルド「・・・も、もし負けて6000万を失ったらどうするんですか?」
ぞくりとスクルドの背筋に悪寒が走る。
私はこんな化け物のような神姫と戦っていたんだ・・・
グロリアがすっと立ち上がる。
グロリア「負けなければいいだけのことだろ?簡単だ。襲ってくる全ての敵を返り討ちにすればいい、それだけさ」
スクルドはポカンと口を開けて呆然とする。
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#ref(アヴァロン 船.jpg)
大阪港の端、貨物船やフェリーが静かに停泊している。その一角に真っ黒の巨大な豪華客船が停泊していた。
知る人はその船を知っている。毎夜毎夜、激しく行われる非公式のバトルロンド会場であることを、船の船籍はとある外国のものとなっており、中は治外法権、ここではあらゆる非合法行為が行われている。
ある者は一晩で何百万という大金をせしめ、ある者は一晩で大きな敗北の代価を支払う。
その船の名は『アヴァロン』古から伝わるどこかにあるとされる伝説の島、妖精の世界、または冥界を指す・・・
廃墟となった薄暗いステージで閃光がパッパッと煌く。
バッキイインン!!
巨大なハンマーを抱えた悪魔型のストラーフの顔面が半分消し飛び、その横にいた忍者型の上半身が砕け散る。
ビルの陰に隠れていた犬型が恐怖で叫び声を上げる。
犬型「うわああッ!!!!」
花型のジルダリアが腰を抜かしてへたり込む。
花型「ひいいい」
セイレーン型のエウクランテが手に持った大砲をぎゅっと握りなおす。
セイレーン型「畜生畜生!!!だから俺は言ったんだ!!!やめようって!!」
横にいたウシ型が唾を吐いて毒づく。
ウシ型「うるさい!後に引けるかよ」
蒼い閃光がキラッと光る。
犬型「く、くるぞ!!」
花型「敵は一体だけだ!」
犬型と花型は武器を構える。
花型と犬型のマスターが筐体のマイクを引っ掴んで半狂乱になって叫ぶ。
マスターA「貴様ら!死んでも勝て!!6000万の大金だッ!!!!!!!負けたらリセットどころじゃすまない!!!ぐちゃぐちゃに掻き潰してやる!!!!!!!」
その横にいるセイレーン型とウシ型のマスターも一緒になって青筋を立てて喚く。
マスターB「お前らも何しているッ!!!!!!さっさと奴をぶっ殺せッツェ!!!!!!!」
観客たちはドンドンと足を踏鳴らし、キルコールが起こる。
*『Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!』
セイレーン型「くっそおおお・・・あ、煽りやがって・・・」
ウシ型「く、くるぞ!!」
蒼い閃光は鋭い光を何発か放つ。
バッキンバキイン!!
キュッツン!
バキバキンッ!!
犬型の頭部のバイザーが粉々に砕け散り、犬型は地面にもんどりうって倒れる。
犬型「キャン!!」
花型は倒れる犬型を起こそうと手を差し伸べる。
蒼い閃光はその花型の差し伸べた手を一刀両断する。
ザギュン!!!!!
花型の断末魔の獣のような悲鳴がフィールドに響き渡る。
花型「ぐっぎゃアアアアアアアアアアアッツ!!!!!!!!!!」
ブッシューーーーーーー
花型の切断した左腕がビクビクンと痙攣しヘビのように道路をのたうち廻る。
蒼い閃光だと思った神姫は真っ青なブルーの装甲に身を包んだ戦乙女型神姫だった。
瑠璃「・・・・スクルド・・・殺せ・・・」
虚ろな目をした瑠璃が囁くかのように指示を出す。
スクルドはヒュンと風を斬り大剣で犬型の首を斬り飛ばし、返す刀で花型にトドメを刺す。
犬型「ギッ・・・・」
花型「ぎゃ・・・」
一瞬にして2体の完全武装の神姫がコマ斬れのミンチになって道路に醜い残骸を晒す。
それと同時に半分朽ちたビルの陰からサイレーン型とウシ型が大小さまざまな大砲を抱えて躍り出る。
マスターA「いまだァ!!!!!!殺せェ!!!!!!」
セイレーン型「うおおおおおおおおおお!!」
ウシ型「ファイヤ・・・」
バッキンン!!ドンドンドンドン!!!
スクルドの後方から鋭い光が一筋伸び、かすめるようにスクルドの横を通り過ぎ、ウシ型の胸部を貫く。
ウシ型「ぐべえェ!!」
ウシ型の胸部がボコンと大穴が開き、吹き飛ぶ。
セイレーン型「なァ!!」
遠距離から重武装に身を包んだワシ型の強化型がレールキャノンを構えて立っている。
瑠璃の横に座っている海原がニヤニヤと下卑た顔で笑いながら瑠璃の腰に手を回す。
海原「ぐへっへ、ええーでグロリアーナイスなアシストや」
瑠璃は虚ろな目でスクルドに指示を下す。
瑠璃「スクルド・・・殺せ・・・」
スクルド「イエス、マイマスター」
ヒュンと大剣を振るい、べったりと張り付いたオイルをはらうスクルド。
セイレーン型「う、うわあああああああああ!!!」
セイレーン型は狂ったように大砲、ボレアスを撃ちまくる。
スクルドは巧みな回避機動で攻撃を回避すると、そのまま速度を緩めずにセイレーン型に体当りをするように大剣で一刀両断に切り伏せた。
東條がマイクを強く握り締め、叫ぶ。
東條「勝者!!戦闘攻撃機型MMS 「グロリア」そして戦乙女型MMS 「スクルド」 」!!!100対2という圧倒的な物量の差にもかからわず激しい激戦を制した両者に惜しみない拍手を!!」
観客たちが立ち上がって拍手を行う。
ステージを見渡すと廃墟となったステージのあちこちでブスブスと暗い黒煙が上がり、町中に様々な神姫がぐちゃぐちゃになって残骸となって散乱していた。
そのシテージの横で悔しそうに地面を踏みしめるマスターたちの集団がいた。
マスターA「畜生ッ!!!畜生!!!」
マスターB「6000万よこせ!!!」
マスターC「ファックユー!!」
マスターD「キイイイイイイイイイイイ!!!キャアアアアアアア!!!」
海原が大声で笑う。
海原「ギャハッハハハ!!!面白いこと考えたな!!!グロリア!!!」
バトルが終わり、海原と瑠璃は船の先端に位置する視界270度の広々としたパノラマラウンジバーで豪華な夕食を楽しむ。海原の後ろには色とりどりの宝石のような大阪の街並みが広がり贅沢な空間が広がっていた。
グロリアはぺこりとお辞儀をする。
グロリア「お気に召しまして光栄です。マスター」
瑠璃「・・・・」
海原はぐいっと瑠璃の細い腰を抱き寄せて無理やり瑠璃の甘い唇を奪う。
海原「げっへへ、瑠璃ちゃんとこうやって一緒にバトルできるなんて興奮するじゃないか」
海原に弄ばれる姿を見てスクルドは心を痛める。
スクルド「っ・・・く・・・」
グロリア「先ほどの戦いの報酬は250万です。マスター」
グロリアは足でテーブルの上に散乱している札束の山を蹴る。
海原「んんーええよ、ええよーそんな鼻糞みたい金いらんわ、スクルドちゃんに約束どおり、あげえ」
グロリア「ということで・・・スクルド、この金はお前のものだ、お前が戦って稼いだ金だ。正当な権利だ。受け取れ」
スクルドは金を一瞥する。
スクルド「6000万という大金目当てで、まさか初日でこんなに稼げるとは思いませんでしたね・・・」
グロリア「今日は一気に25人のマスターと100体の武装神姫を2人でスクラップにしてやった・・・バカな連中だぜ、俺たちはSSS級とSS級だ・・・下手な雑兵神姫ごときで倒せるとでも思ったのが頭の悪さの証拠だな」
スクルド「この調子なら数ヶ月で6000万を稼げそうですね、マスター」
スクルドはにっこりと笑う。
瑠璃は虚ろな目で力なく答える。
瑠璃「・・・・そうね・・・スクルド・・・」
スクルド「私、がんばります。がんばって戦って戦いまくって絶対に「ゆうすけ君」を助けます!!!マスター」
瑠璃「・・・・・・うん・・・」
海原が瑠璃をぐいっと抱き寄せる。
海原「ふひひひ、瑠璃イ・・・よかったなァ・・・ゆうすけ君は助かりそうだな・・・まあ、俺の金でさっさと助けてあげてもいいが、やっぱりここは俺たちで協力してゆうすけ君を助けて上げないとなァーーーぬふふふ」
海原は瑠璃の胸をぎゅっとワシ掴みにしてチュッチュと瑠璃とキスをする。
瑠璃「ん・・・・」
海原「ぶへっへえ、瑠璃、可愛いぜェ」
グロリア「ヤレヤレ、マスターは変態だな」
海原「げへへ、瑠璃ちゃん、今日も激しくヤリまくろうぜ瑠璃―ふひひひ」
すりすりと瑠璃の柔らかい下腹をなぜる海原。
グロリア「スクルド、さっきの戦いをネットに中継して煽ろうぜ・・・今日みたいなあんなザコじゃ、お前一人でも十分なくらいだ。喰い足りねえ!!」
スクルド「そうですね」
グロリアとスクルドは、和気藹々とPCに接続して動画をネットに投降する。
【俺たちに勝てば6000万の金をやる。やりたい奴は一口10万で、かかってこいや!!】
アヴァロンの非公式バトルロンドのネット掲示板にこのような煽り文句が流れる。
グロリア「うん、いい感じだ。頭の悪さがにじみ出るぜ」
スクルド「この煽り文句を見て参加する神姫が増えるといいですね」
グロリア「参加する神姫の数よりも質だな、もっと強い奴が欲しい。ザコはいらねえ、明日も派手にやりまくろうぜ、スクルドーふひひひ」
グロリアは、にやにやと海原と同じような顔で笑う。
その横顔を見てスクルドは、ああ・・・神姫ってマスターに似るんだなァ・・・・とふと思った。
To be continued・・・・・・・・
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