「7th」(2011/05/11 (水) 01:57:53) の最新版変更点
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同日
20:30
アフガニスタン南部 パキスタン国境付近 ポイント216
“テキサス『特技兵』”
「モンタナちゃんが!?」
軍曹がモンタナちゃんにトラブルが起きたのを教えてくれたのは、銃声から数分後のことだった。
《通信が途絶えたが上空から確認できる限りIRビーコンは途絶えていないし、武装勢力の連中も気がついてない。恐らく何かの隙間に飛ばされたんだろう》
「だったら早く助けに!」
上空のシャドーは位置を教えてくれるだけで、相棒の状態はわからない。
《いや、モンタナの状況が把握できない以上『全損』の可能性も視野に入れる。 モンタナの任務を引き継げ。今ならまだ警戒が強化された様子もない》
「でも!」
《これ以上の議論の余地はない。 夜明けにパキスタンに逃げられたら手が出せなくなる。 急げ》
ボクは唇をぎゅっとかみ締めると次の目標に走り出す。
「モンタナちゃん……」
相棒がいるはずの方向に目を凝らすけど建物が立ち並んでいるので見えるはずもないし、シャドーは何も言わずにただ上空を旋回してるだけ。
頭を振って走り始めるけど生まれて初めての感覚……まるで背中から誰かに引っ張られるようなソレのせいで上手に走れない。
「んっ~! あぁっ!もう!」
結局、ボクはモンタナちゃんのほうに足を向けた。
《テキサス! 言うことを聞け》
「聞いてるもんっ! モンタナちゃんの方の目標を優先するだけだよっ!」
とにかく走ってモンタナちゃんの反応の近くまでたどり着いたとき、地面に白いものが見えた。
「も、モンタナちゃん?」
見覚えのあるそれは相棒のレッグパーツ(いつも砂で表面に傷がつくと文句を言っていた)。 その付近にはいくつかのパーツも転がっていて、通信端末やIRセンサーのついたバックパックも転がっている。
ボクはフラフラと引き寄せられるようにそれに近づいて……突然、暗闇から手が伸びてきてボクの口を押さえた。
「んー!」
「静かにしてよ! 気づかれたらどうするの!」
その声は軍曹の声と同じくらいボクに力をくれた。
「モンタナちゃん!」
手から力が緩まると同時に、腕の中で体を回してモンタナちゃんに飛びついた、けど、相棒はいつものように受け止めるのではなく、そのまま後ろに倒れてしまう。
「モンタナ……ちゃん?」
よく見ると相棒は右足がなく、背中のバックパックと接続していた部位からは配線ケーブルが垂れ、左腕は奇妙な方向に捻じれていた。 そして何より、ボクが外で遊ぼうと誘っても傷がつくから嫌だといっていた自慢の純白のボディーは傷だらけで……大型犬の大きな歯形が残っていた。
「モンタナちゃん! 起きてよモンタナちゃん!」
「うるさ、い。聞こえて、るわよ、いいから任務を、続行し、て、ぐんそ、うさんに、迷惑かけた、くない」
弱々しく、抱き起こそうとするボクの手を無事な方の手で払いのける。
「戦争、なん、だよ? これいじょう、失敗、ぐん、そうさん、本当に、やめさせられちゃ、う」
きっと内部の回路にも大きな損傷があるのだろう。幼児英語のような単語の羅列で、ところどころの単語の区切りさえおぼつかない。
ボクは黙って相棒を助け起こすと無事なほうの手を肩に回し、引きずるように歩き出す。
「覚えてる、モンタナちゃん」
相棒は返事する力さえ残っていないのか、虚ろな視線を宙に漂わせる。
「ボクたちが軍曹のところにお世話になって、最初の頃のお昼はクレイドルの上から動くこともなかったから、夜に軍曹さんがかえってきてから一緒に遊んで!ってお願いしたよね」
「軍曹、さ、ん」
ゆっくりと吐き出すように一言を吐き出す相棒の手を力を込めて、一歩、一歩、砂で頼りない地面を踏みしめるように進む。
「軍曹は、疲れてたけど、ご本を読んでくれて、ボク難しかったから殆ど判らなかったけど……」
向かう先は村の端の小屋。
少数の熱源があるだけで、他にもっと大規模な熱源はいくつもある。
だけど、ボクの頭の中のきっと感情制御用チップ以外の、よく判らない何かがボクに目標はそこだと教えてくれる。
「でね、ボク軍曹さんにいっぱい質問したんだ。 お姫様はどうしてドラゴンにつかまったの? とか、騎士さまはドラゴンと戦うのに怖くなかったの? とか」
「だ、らご、ん」
肩にかかる重みが強くなり、相棒のろれつがいよいよ回らない。
「軍曹は、騎士さまだってきっと怖かっただろう。って言った後に、人には自分が持ってる力以上に強くなれる時があるんだって、教えてくれたよね」
きっと、さっきのモンタナちゃんが吹き飛ばされそうになる気持ちの中で、ボクを否定したのもきっと……
「大切な、なに、かを、守り、たいから」
呟き返してきた相棒の手を再び強く握り、わずかに明かりの漏れる目標の小屋へとドアの隙間から立ち入る。
中にはお髭の人が6人……みんな軍曹が写真で教えてくれた顔だった。
ボクはモンタナちゃんを担ぐようにして持ち上げると、壁沿いに一気に走り、椅子の下に飛び込む。
「現在、目標直下! マークして!」
モンタナちゃんの頭が床にぶつかりコンッと小さい音を立てたけど(本人は「あうっ」と呟いた)椅子に座ってる人たちは皆深刻そうな顔で何かを話していて、その音には気がつかなかったみたいだ。
《こちらでも確認した。お疲れ様、よくやった!》
ボクがさっきみた人の名前を一人ずつ言うのを、軍曹が中継し司令部が沸くのが聞こえる。
「回収地点に向かうね! もう少しだよ! 頑張って……」
担いでいる相棒に声をかけると彼女が力なく、それでも精一杯の力でボクにしがみついているのを感じた。
《待ってください! まだ友軍が……》
次の瞬間、目の前の壁が崩れボクの前に降り注いだ。
[[前へ>http://www19.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2412.html]]/[[TOP>http://www19.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2402.html]]
同日
20:30
アフガニスタン南部 パキスタン国境付近 ポイント216
“テキサス『特技兵』”
「モンタナちゃんが!?」
軍曹がモンタナちゃんにトラブルが起きたのを教えてくれたのは、銃声から数分後のことだった。
《通信が途絶えたが上空から確認できる限りIRビーコンは途絶えていないし、武装勢力の連中も気がついてない。恐らく何かの隙間に飛ばされたんだろう》
「だったら早く助けに!」
上空のシャドーは位置を教えてくれるだけで、相棒の状態はわからない。
《いや、モンタナの状況が把握できない以上『全損』の可能性も視野に入れる。 モンタナの任務を引き継げ。今ならまだ警戒が強化された様子もない》
「でも!」
《これ以上の議論の余地はない。 夜明けにパキスタンに逃げられたら手が出せなくなる。 急げ》
ボクは唇をぎゅっとかみ締めると次の目標に走り出す。
「モンタナちゃん……」
相棒がいるはずの方向に目を凝らすけど建物が立ち並んでいるので見えるはずもないし、シャドーは何も言わずにただ上空を旋回してるだけ。
頭を振って走り始めるけど生まれて初めての感覚……まるで背中から誰かに引っ張られるようなソレのせいで上手に走れない。
「んっ~! あぁっ!もう!」
結局、ボクはモンタナちゃんのほうに足を向けた。
《テキサス! 言うことを聞け》
「聞いてるもんっ! モンタナちゃんの方の目標を優先するだけだよっ!」
とにかく走ってモンタナちゃんの反応の近くまでたどり着いたとき、地面に白いものが見えた。
「も、モンタナちゃん?」
見覚えのあるそれは相棒のレッグパーツ(いつも砂で表面に傷がつくと文句を言っていた)。 その付近にはいくつかのパーツも転がっていて、通信端末やIRセンサーのついたバックパックも転がっている。
ボクはフラフラと引き寄せられるようにそれに近づいて……突然、暗闇から手が伸びてきてボクの口を押さえた。
「んー!」
「静かにしてよ! 気づかれたらどうするの!」
その声は軍曹の声と同じくらいボクに力をくれた。
「モンタナちゃん!」
手から力が緩まると同時に、腕の中で体を回してモンタナちゃんに飛びついた、けど、相棒はいつものように受け止めるのではなく、そのまま後ろに倒れてしまう。
「モンタナ……ちゃん?」
よく見ると相棒は右足がなく、背中のバックパックと接続していた部位からは配線ケーブルが垂れ、左腕は奇妙な方向に捻じれていた。 そして何より、ボクが外で遊ぼうと誘っても傷がつくから嫌だといっていた自慢の純白のボディーは傷だらけで……大型犬の大きな歯形が残っていた。
「モンタナちゃん! 起きてよモンタナちゃん!」
「うるさ、い。聞こえて、るわよ、いいから任務を、続行し、て、ぐんそ、うさんに、迷惑かけた、くない」
弱々しく、抱き起こそうとするボクの手を無事な方の手で払いのける。
「戦争、なん、だよ? これいじょう、失敗、ぐん、そうさん、本当に、やめさせられちゃ、う」
きっと内部の回路にも大きな損傷があるのだろう。幼児英語のような単語の羅列で、ところどころの単語の区切りさえおぼつかない。
ボクは黙って相棒を助け起こすと無事なほうの手を肩に回し、引きずるように歩き出す。
「覚えてる、モンタナちゃん」
相棒は返事する力さえ残っていないのか、虚ろな視線を宙に漂わせる。
「ボクたちが軍曹のところにお世話になって、最初の頃のお昼はクレイドルの上から動くこともなかったから、夜に軍曹さんがかえってきてから一緒に遊んで!ってお願いしたよね」
「軍曹、さ、ん」
ゆっくりと吐き出すように一言を吐き出す相棒の手を力を込めて、一歩、一歩、砂で頼りない地面を踏みしめるように進む。
「軍曹は、疲れてたけど、ご本を読んでくれて、ボク難しかったから殆ど判らなかったけど……」
向かう先は村の端の小屋。
少数の熱源があるだけで、他にもっと大規模な熱源はいくつもある。
だけど、ボクの頭の中のきっと感情制御用チップ以外の、よく判らない何かがボクに目標はそこだと教えてくれる。
「でね、ボク軍曹さんにいっぱい質問したんだ。 お姫様はどうしてドラゴンにつかまったの? とか、騎士さまはドラゴンと戦うのに怖くなかったの? とか」
「だ、らご、ん」
肩にかかる重みが強くなり、相棒のろれつがいよいよ回らない。
「軍曹は、騎士さまだってきっと怖かっただろう。って言った後に、人には自分が持ってる力以上に強くなれる時があるんだって、教えてくれたよね」
きっと、さっきのモンタナちゃんが吹き飛ばされそうになる気持ちの中で、ボクを否定したのもきっと……
「大切な、なに、かを、守り、たいから」
呟き返してきた相棒の手を再び強く握り、わずかに明かりの漏れる目標の小屋へとドアの隙間から立ち入る。
中にはお髭の人が6人……みんな軍曹が写真で教えてくれた顔だった。
ボクはモンタナちゃんを担ぐようにして持ち上げると、壁沿いに一気に走り、椅子の下に飛び込む。
「現在、目標直下! マークして!」
モンタナちゃんの頭が床にぶつかりコンッと小さい音を立てたけど(本人は「あうっ」と呟いた)椅子に座ってる人たちは皆深刻そうな顔で何かを話していて、その音には気がつかなかったみたいだ。
《こちらでも確認した。お疲れ様、よくやった!》
ボクがさっきみた人の名前を一人ずつ言うのを、軍曹が中継し司令部が沸くのが聞こえる。
「回収地点に向かうね! もう少しだよ! 頑張って……」
担いでいる相棒に声をかけると彼女が力なく、それでも精一杯の力でボクにしがみついているのを感じた。
《待ってください! まだ友軍が……》
次の瞬間、目の前の壁が崩れボクの前に降り注いだ。
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