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「「たまには勝敗の無いゲームを」」(2006/11/12 (日) 22:20:19) の最新版変更点
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*そのきゅう「たまには勝敗の無いゲームを」
「ティキ、大丈夫かな?」
「心配性だね。大丈夫だよ。オレ達の神姫だっているんだからね」
「お前は初めてかもしれないけど、俺たちは何回かやってるから、安心しろよ」
「しっ。待って、うちの子が何かを見つけたみたい」
その言葉に反応し、僕らはモニターに釘付けになる。
そこにはティキと、他三体の神姫たちの姿があった。
その日僕は、弓道部の仲間で、武装神姫のオーナー仲間でもある式部敦詞に誘われ、チョット大き目のセンターに遊びに来ていた。
式部が言うには、
『武装神姫の、バトル以外の楽しみ方を教えてやるよ』
との事。
一体何の事かまったく理解せず、僕はティキと一緒に半ば強引に式部について行った。
まずそこで僕は二人の男女を紹介される事になる。
チョット背の高い優しそうな顔立ちのお兄さんと、アーンヴァルの素体にストーラーフのコアをつけた神姫。そして眼鏡のクールな女の子とチョット珍しいフブキの神姫。
「はじめまして。オレは司馬仙太郎。君よりはチョット年上の大学生だよ。で、コッチがオレの相棒、ナイア。よろしくね」
「私は結城セツナ。高校二年生。こちらが私の海神(わだつみ)。よろしく」
で、僕はその女の子――お姉さんの名前を聞いて驚くわけだ。チロッと式部の方を見ると、ヤツはニヤニヤと笑っている。
コンチクショウ! わざとだな!
僕は腹をくくって自己紹介をする。
結城さんが僕の名前を聞いて、驚いてから、やわらかく笑った。
『カードキーの様であります』
海神がそのカードを拾いながら言っている。基本装備をほとんど持たない忍者型の海神は、忍者刀・風花に大手裏剣・白詰草、黒き翼プラス一部ヴァッフェバニーの装備で武装している。
『なるほど。それでさっきの扉を開けろというワケね』
そう言ったのは式部の神姫、ツガルのきらり。こいつは先行特別販売でGETしたツガルを事あるごとに自慢していた。きらりは基本的なツガルの武装。
『パターンだネ。もう少し凝ってくれてもイイのにネ』
ナイアはそういうとやれやれとでも言いた気にため息を吐く仕草をしている。ナイアは悪魔型フル装備に天使型のウイングユニットを無理やりつけたような、一際巨大なシルエットをしていた。
『あのあの、そういうものなのですかぁ?』
この中でティキだけがオドオドしているのがなんだか情けない。ちなみにティキはバトル用の武装。だって何やるか聞いてなかったんだから仕方ない。
『そ。こういう探索ものではありきたりの、要するにスペースを無駄にしないためだけの処置ね』
ティキとはすでに見知った仲の、きらりが答える。
『それじゃ扉まで戻る前に、一応奥まで行ってみよっか? 何も無いとは思うけど、初参加がいるからその方がいいでショ?』
その言葉にティキ以外の二体が頷いた。
今ティキ達がいるのはPC上に再現された機械遺跡。ジオラマ作成ツールを利用して作られたモジュールの一つ。そのジオラマに設定されたイベントをこなしてクリアを目指す。
本来はネットを介してやるらしいんだけど、こんな風にオーナー同士集まってやるのもまた一般的。
実際ならそれぞれのユーザーが自作するものらしいんだけど、今回使用しているのはオフィシャルなもの。それでも元は一ユーザーが作ったもので、それを調整したものらしい。
……ジイ様に聞いたTRPGとか、母さんに聞いたMMOとか、そんなのを彷彿させる。
で、僕達オーナーはなにをするのかと言えば、神姫たちに時限式で送られる後情報を基にした指示を与えたり、一緒になって謎解きなどする事などなど。ま、中にはオーナーが一切何も出来ずに、ただ見守るだけのモジュールもあるみたいだけど。
艱難辛苦を乗り越え、ようやく最深部への扉の前に到着。
そしてここにきてオーナーに向けたテキストが現れた。
『この扉より先、オーナーの指示は神姫に届きません』
なんだよ。最後の最後で観戦モードか。
当然僕らはそれを神姫たちに伝えた。
『ふええぇぇぇぇ? 心細いのですよぉ~』
さすがにティキは不安を隠せないでいる。
しかし他の三体は慣れたもの。動じることなく扉を開ける意思を示す。
そうなるとティキにも僕にも拒否権なんてあるわけもなく、しぶしぶと同意する。
躊躇無く扉を開けるナイア。
広い空間。その空間で複数の神姫が一点を目標に攻撃してる。
『あなたたち、ここは危険よ! すぐに退避しなさい』
目標に向かってマシンガンを打ちながら、こちらを振り返る事無くそのアーンヴァルは言う。
『えっと、そう言われても……困るのですよぉ~』
『ティキちゃん、自動起動するイベントだから。なーに言っても無駄だから。ネ?』
困惑するティキに、ナイアはにこやかに答える。答えながら、臨戦態勢を整えた。
『ふぇ? え?』
何をして良いのか見当もついていないティキ。その脇では海神ときらりも攻撃の態勢を取っていた。
それに習い、ティキもレーザーライフルを構える。
四体が準備をするしないに関わらず、多くのNPC神姫がほぼ同じポイントに攻撃を続ける。
『いける?』
NPCの一体がそうつぶやいた時だった。
しゅるるるるるる
あからさまな音を立てながら無数のコードが大勢いるNPC神姫たちに襲い掛かる。
『きゃああぁぁぁぁぁぁぁ!!』
そのコードはまるで自我を持つかのように自在に動き、多数の神姫を一人残らず絡め取る。滑る様に神姫の肌を蹂躙し、手足の自由を奪う。
そして動けない神姫を侵す様にソケットの穴や口に侵入した。……それ以外のところにも。
『いやぁぁぁぁぁぁーーーーー!!』
『あああぁぁぁぁぁぁ!!』
コードに犯された神姫たちが悲鳴を上げた。
それをモニター上で見ていた僕は赤面した。
「……なんかこれってエッチくない?」
小声で隣に座っている式部に話す。
「同感。……女のクセになんで結城はこんなの選んだんだ」
僕と同じく小声で言った式部の言葉を受け、僕はチラリと結城さんを見る。
だが僕には眼鏡をかけたそのお姉さんの表情を図る事が出来ない。
『~~~~~~~!!!』
ティキが真っ赤に顔を染めながら左手のハンドガンで射撃を開始する。狙いはコードの一本一本。
「弾が六発しかないリボルバーで何やってんだよ~」
僕の声がティキに届かない事は自覚していたが、それでも言ってしまった。
『まだターゲットそのものが現れていません。無駄弾を消費するのは賢明では無いと忠告します』
海神が僕の代わりにティキに注意してくれた。
『どうやら大ボスのお出ましのようよ。ティキちゃん』
きらりが両腕のライフルを構える。
そこに現れたのは現行通常販売している神姫五種の首を持つ鋼鉄の大蛇。尻尾の変わりに無数のコードが生えている。その尻尾コードが、他の神姫たちを犯していた。
『……悪趣味~』
ナイアは心底嫌そうな表情で、吐き捨てるようにそう言うと、レ-ザーライフルを発射させる。
それを神姫が繋がれたままのコードで大蛇は防御。その結果、レーザーはNPC神姫を焼き、溶かす。
『ますます持って悪趣味!!』
きらりはそう言うなり、狂った様に二つのライフルを乱射させる。
だが大蛇も防戦ばかりではない。大蛇のコードがきらりの足に巻きつく。
『ひぃっ!』
巻きついたコードに嫌悪感を顕にする。
きらりに向かって更にコードが迫る。
『いやっ!!』
きらりは目を閉じた。
が、いつまでたってもきらりにコードが巻きついては来ない。
恐る恐る目を開けるきらり。そこには海神が立っていた。海神の刀が、きらりに向かってきたコードを断ち切っていた。
「なるほど。神姫の怒りと恐怖をあおる為の演出なんだ」
モニターを注視していた司馬さんが感心した様に呟く。
「いや、だとしても悪趣味なのは変わらないと思うんですが……」
「そうね。でも計算されているわ。オーナーとの連絡は届かず、敵は悪趣味。あの子達、冷静に判断できているかしら?」
僕の言葉に対し、結城さんは冷静に答える。心配じゃないのかな? と思わずにいられないくらいに、冷静。
そういう意味じゃ、とても普段の態度からは想像も出来ないくらいに我を失っている男が隣にいる。
「きらり! きらり!! 大丈夫かーーーーっ!!」
……お前、最初に僕になんて言ったよ。
そんな間にも状況は変化しているようだ。
大蛇に犯されていた神姫たちが、攻撃に参加し始めた。
もちろん、エネミーとして。
『このままじゃ手詰まりだヨッ! 海神ちゃん、ティキちゃん。私たち援護するから、二人でアイツに接敵して!』
『任務、了解』
『ハイですぅ! レーザーライフル置いて行くですので、使って欲しいのですよぉ♪』
『ありがと。きらりちゃん、行くヨ!』
『あんな目に遭って、更にあんなのに利用されたくないもの。全力で行くわ!』
どうやら作戦が決まったらしい。それぞれ武器を改めて構える。
ティキも西洋剣をスラリと抜いた。
何の合図も無く、四体は同じタイミングで動き出す。
二本の巨大な銃口から光の筋を打ち出すナイア。
そのフォローをするように、ナイアの撃ち洩らしはきらりが両の手のライフルで粉砕させる。
縦横無尽に宙を飛び、地を駆け、時には障害になる敵を刀や大手裏剣でなぎ払い、海神は大蛇へと近づく。
ティキは、味方の援護、敵の銃弾、大蛇の尻尾のその事ごとくを超反応で避け、一足飛びで大蛇に接した。
『一つっ……ですぅ☆』
ティキは大蛇の傍らに到着するなりそう言った。そう言った後、大蛇の首の一つ、マオチャオの首が爆散する。
『ティキとおんなじ顔を、つけてて欲しくないですよぉ♪』
そう言うなりすぐにその場から移動。一拍遅れてその場にコードが叩き付けられる。
『……………………』
何も言わず、海神が大手裏剣を投げる。それはそのまま吸い込まれるようにアーンヴァルの顔がついた大蛇の首を断つと、そのまま勢いを保ち、大蛇の背後の壁に突き刺さった。
ここにきてようやく大蛇に侵された神姫たちの攻撃がティキと海神に向けられる。しかしそれらの攻撃が開始される前に、ナイアときらりが大蛇の手足となった神姫を破壊する。
すでに勝敗は決していた。
「マスタ、恐かったですよぉ~」
現実の体に意識が戻るなり、ティキは僕の頭に飛びついてきた。正確に言えば顔に向かってきたティキを心持避けたら、頭に飛び込んで来たんだけど。
僕は頭の上でじたばたしているティキに意識を向けながら、それでも三人に目を向けずにはいられなかった。僕は、自分以外の神姫オーナーを知らなすぎる。
司馬さんはナイアを肩の上に乗っけて、ナイアの健闘を称えていた。ナイアはそれに胸を張って答える。
式部は…… あー、なんて言うか、あの普段の態度は何処行ったんだか。頬ずりでもせんばかりにきらりを抱きしめて離さない。
……正直、付き合い方を改めようかと、本気で思う。
で、結城さんは。
眼鏡の奥の瞳に優しげな光を湛え、そっと海神の頭をなでる。フブキは表情を豊かに表すことが出来ないらしいけど、海神のその顔はなんだかうれしそうで照れくさそうに見えた。
僕は頭の上でなおじたばたとしているティキを自分の掌に乗せて、
「お疲れ様」
と言う。
それにティキは満面の笑顔で答えてくれた。
[[終える>僕とティキ]] / [[つづく!>「そして少年は少女と再会す」]]
*そのきゅう「たまには勝敗の無いゲームを」
「ティキ、大丈夫かな?」
「心配性だね。大丈夫だよ。オレ達の神姫だっているんだからね」
「お前は初めてかもしれないけど、俺たちは何回かやってるから、安心しろよ」
「しっ。待って、うちの子が何かを見つけたみたい」
その言葉に反応し、僕らはモニターに釘付けになる。
そこにはティキと、他三体の神姫たちの姿があった。
その日僕は、弓道部の仲間で、武装神姫のオーナー仲間でもある式部敦詞に誘われ、チョット大き目のセンターに遊びに来ていた。
式部が言うには、
『武装神姫の、バトル以外の楽しみ方を教えてやるよ』
との事。
一体何の事かまったく理解せず、僕はティキと一緒に半ば強引に式部について行った。
まずそこで僕は二人の男女を紹介される事になる。
チョット背の高い優しそうな顔立ちのお兄さんと、アーンヴァルの素体にストーラーフのコアをつけた神姫。そして眼鏡のクールな女の子とチョット珍しいフブキの神姫。
「はじめまして。オレは司馬仙太郎。君よりはチョット年上の大学生だよ。で、コッチがオレの相棒、ナイア。よろしくね」
「私は結城セツナ。高校二年生。こちらが私の海神(わだつみ)。よろしく」
で、僕はその女の子――お姉さんの名前を聞いて驚くわけだ。チロッと式部の方を見ると、ヤツはニヤニヤと笑っている。
コンチクショウ! わざとだな!
僕は腹をくくって自己紹介をする。
結城さんが僕の名前を聞いて、驚いてから、やわらかく笑った。
『カードキーの様であります』
海神がそのカードを拾いながら言っている。基本装備をほとんど持たない忍者型の海神は、忍者刀・風花に大手裏剣・白詰草、黒き翼プラス一部ヴァッフェバニーの装備で武装している。
『なるほど。それでさっきの扉を開けろというワケね』
そう言ったのは式部の神姫、ツガルのきらり。こいつは先行特別販売でGETしたツガルを事あるごとに自慢していた。きらりは基本的なツガルの武装。
『パターンだネ。もう少し凝ってくれてもイイのにネ』
ナイアはそういうとやれやれとでも言いた気にため息を吐く仕草をしている。ナイアは悪魔型フル装備に天使型のウイングユニットを無理やりつけたような、一際巨大なシルエットをしていた。
『あのあの、そういうものなのですかぁ?』
この中でティキだけがオドオドしているのがなんだか情けない。ちなみにティキはバトル用の武装。だって何やるか聞いてなかったんだから仕方ない。
『そ。こういう探索ものではありきたりの、要するにスペースを無駄にしないためだけの処置ね』
ティキとはすでに見知った仲の、きらりが答える。
『それじゃ扉まで戻る前に、一応奥まで行ってみよっか? 何も無いとは思うけど、初参加がいるからその方がいいでショ?』
その言葉にティキ以外の二体が頷いた。
今ティキ達がいるのはPC上に再現された機械遺跡。ジオラマ作成ツールを利用して作られたモジュールの一つ。そのジオラマに設定されたイベントをこなしてクリアを目指す。
本来はネットを介してやるらしいんだけど、こんな風にオーナー同士集まってやるのもまた一般的。
実際ならそれぞれのユーザーが自作するものらしいんだけど、今回使用しているのはオフィシャルなもの。それでも元は一ユーザーが作ったもので、それを調整したものらしい。
……ジイ様に聞いたTRPGとか、母さんに聞いたMMOとか、そんなのを彷彿させる。
で、僕達オーナーはなにをするのかと言えば、神姫たちに時限式で送られる後情報を基にした指示を与えたり、一緒になって謎解きなどする事などなど。ま、中にはオーナーが一切何も出来ずに、ただ見守るだけのモジュールもあるみたいだけど。
艱難辛苦を乗り越え、ようやく最深部への扉の前に到着。
そしてここにきてオーナーに向けたテキストが現れた。
『この扉より先、オーナーの指示は神姫に届きません』
なんだよ。最後の最後で観戦モードか。
当然僕らはそれを神姫たちに伝えた。
『ふええぇぇぇぇ? 心細いのですよぉ~』
さすがにティキは不安を隠せないでいる。
しかし他の三体は慣れたもの。動じることなく扉を開ける意思を示す。
そうなるとティキにも僕にも拒否権なんてあるわけもなく、しぶしぶと同意する。
躊躇無く扉を開けるナイア。
広い空間。その空間で複数の神姫が一点を目標に攻撃してる。
『あなたたち、ここは危険よ! すぐに退避しなさい』
目標に向かってマシンガンを打ちながら、こちらを振り返る事無くそのアーンヴァルは言う。
『えっと、そう言われても……困るのですよぉ~』
『ティキちゃん、自動起動するイベントだから。なーに言っても無駄だから。ネ?』
困惑するティキに、ナイアはにこやかに答える。答えながら、臨戦態勢を整えた。
『ふぇ? え?』
何をして良いのか見当もついていないティキ。その脇では海神ときらりも攻撃の態勢を取っていた。
それに習い、ティキもレーザーライフルを構える。
四体が準備をするしないに関わらず、多くのNPC神姫がほぼ同じポイントに攻撃を続ける。
『いける?』
NPCの一体がそうつぶやいた時だった。
しゅるるるるるる
あからさまな音を立てながら無数のコードが大勢いるNPC神姫たちに襲い掛かる。
『きゃああぁぁぁぁぁぁぁ!!』
そのコードはまるで自我を持つかのように自在に動き、多数の神姫を一人残らず絡め取る。滑る様に神姫の肌を蹂躙し、手足の自由を奪う。
そして動けない神姫を侵す様にソケットの穴や口に侵入した。……それ以外のところにも。
『いやぁぁぁぁぁぁーーーーー!!』
『あああぁぁぁぁぁぁ!!』
コードに犯された神姫たちが悲鳴を上げた。
それをモニター上で見ていた僕は赤面した。
「……なんかこれってエッチくない?」
小声で隣に座っている式部に話す。
「同感。……女のクセになんで結城はこんなの選んだんだ」
僕と同じく小声で言った式部の言葉を受け、僕はチラリと結城さんを見る。
だが僕には眼鏡をかけたそのお姉さんの表情を図る事が出来ない。
『~~~~~~~!!!』
ティキが真っ赤に顔を染めながら左手のハンドガンで射撃を開始する。狙いはコードの一本一本。
「弾が六発しかないリボルバーで何やってんだよ~」
僕の声がティキに届かない事は自覚していたが、それでも言ってしまった。
『まだターゲットそのものが現れていません。無駄弾を消費するのは賢明では無いと忠告します』
海神が僕の代わりにティキに注意してくれた。
『どうやら大ボスのお出ましのようよ。ティキちゃん』
きらりが両腕のライフルを構える。
そこに現れたのは現行通常販売している神姫五種の首を持つ鋼鉄の大蛇。尻尾の変わりに無数のコードが生えている。その尻尾コードが、他の神姫たちを犯していた。
『……悪趣味~』
ナイアは心底嫌そうな表情で、吐き捨てるようにそう言うと、レ-ザーライフルを発射させる。
それを神姫が繋がれたままのコードで大蛇は防御。その結果、レーザーはNPC神姫を焼き、溶かす。
『ますます持って悪趣味!!』
きらりはそう言うなり、狂った様に二つのライフルを乱射させる。
だが大蛇も防戦ばかりではない。大蛇のコードがきらりの足に巻きつく。
『ひぃっ!』
巻きついたコードに嫌悪感を顕にする。
きらりに向かって更にコードが迫る。
『いやっ!!』
きらりは目を閉じた。
が、いつまでたってもきらりにコードが巻きついては来ない。
恐る恐る目を開けるきらり。そこには海神が立っていた。海神の刀が、きらりに向かってきたコードを断ち切っていた。
「なるほど。神姫の怒りと恐怖をあおる為の演出なんだ」
モニターを注視していた司馬さんが感心した様に呟く。
「いや、だとしても悪趣味なのは変わらないと思うんですが……」
「そうね。でも計算されているわ。オーナーとの連絡は届かず、敵は悪趣味。あの子達、冷静に判断できているかしら?」
僕の言葉に対し、結城さんは冷静に答える。心配じゃないのかな? と思わずにいられないくらいに、冷静。
そういう意味じゃ、とても普段の態度からは想像も出来ないくらいに我を失っている男が隣にいる。
「きらり! きらり!! 大丈夫かーーーーっ!!」
……お前、最初に僕になんて言ったよ。
そんな間にも状況は変化しているようだ。
大蛇に犯されていた神姫たちが、攻撃に参加し始めた。
もちろん、エネミーとして。
『このままじゃ手詰まりだヨッ! 海神ちゃん、ティキちゃん。私たち援護するから、二人でアイツに接敵して!』
『任務、了解』
『ハイですぅ! レーザーライフル置いて行くですので、使って欲しいのですよぉ♪』
『ありがと。きらりちゃん、行くヨ!』
『あんな目に遭って、更にあんなのに利用されたくないもの。全力で行くわ!』
どうやら作戦が決まったらしい。それぞれ武器を改めて構える。
ティキも西洋剣をスラリと抜いた。
何の合図も無く、四体は同じタイミングで動き出す。
二本の巨大な銃口から光の筋を打ち出すナイア。
そのフォローをするように、ナイアの撃ち洩らしはきらりが両の手のライフルで粉砕させる。
縦横無尽に宙を飛び、地を駆け、時には障害になる敵を刀や大手裏剣でなぎ払い、海神は大蛇へと近づく。
ティキは、味方の援護、敵の銃弾、大蛇の尻尾のその事ごとくを超反応で避け、一足飛びで大蛇に接した。
『一つっ……ですぅ☆』
ティキは大蛇の傍らに到着するなりそう言った。そう言った後、大蛇の首の一つ、マオチャオの首が爆散する。
『ティキとおんなじ顔を、つけてて欲しくないですよぉ♪』
そう言うなりすぐにその場から移動。一拍遅れてその場にコードが叩き付けられる。
『……………………』
何も言わず、海神が大手裏剣を投げる。それはそのまま吸い込まれるようにアーンヴァルの顔がついた大蛇の首を断つと、そのまま勢いを保ち、大蛇の背後の壁に突き刺さった。
ここにきてようやく大蛇に侵された神姫たちの攻撃がティキと海神に向けられる。しかしそれらの攻撃が開始される前に、ナイアときらりが大蛇の手足となった神姫を破壊する。
すでに勝敗は決していた。
「マスタ、恐かったですよぉ~」
現実の体に意識が戻るなり、ティキは僕の頭に飛びついてきた。正確に言えば顔に向かってきたティキを心持避けたら、頭に飛び込んで来たんだけど。
僕は頭の上でじたばたしているティキに意識を向けながら、それでも三人に目を向けずにはいられなかった。僕は、自分以外の神姫オーナーを知らなすぎる。
司馬さんはナイアを肩の上に乗っけて、ナイアの健闘を称えていた。ナイアはそれに胸を張って答える。
式部は…… あー、なんて言うか、あの普段の態度は何処行ったんだか。頬ずりでもせんばかりにきらりを抱きしめて離さない。
……正直、付き合い方を改めようかと、本気で思う。
で、結城さんは。
眼鏡の奥の瞳に優しげな光を湛え、そっと海神の頭をなでる。フブキは表情を豊かに表すことが出来ないらしいけど、海神のその顔はなんだかうれしそうで照れくさそうに見えた。
僕は頭の上でなおじたばたとしているティキを自分の掌に乗せて、
「お疲れ様」
と言う。
それにティキは満面の笑顔で答えてくれた。
[[終える>せつなの武装神姫~僕とティキ~]] / [[もどる>「そうだ、有名ショップに行こう♪」]] / [[つづく!>「そして少年は少女と再会す」]]
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