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「無頼4「バトルロンド!」」(2008/02/28 (木) 07:16:40) の最新版変更点
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6月の終わり頃のこと。
今日は氷男先輩にバトルロンドのお手合せを頼んだ。
風間でもよかったのだが、親戚の葬式の関係でここのところ休んでいる。
…グレースも連れて行ったのだろうか。
人の死に向き合った時、神姫は何を考えるのか?
…こんな事まで考えてしまうとは僕らしい。
それよりも、今回はヒカルの公式デビュー戦でもあるのだ。
しっかりしなきゃな…。
&bold(){~・~・~・~・~・~・~}
この町の神姫センターはここら辺のセンターとしては比較的規模が大きい。
時々公式戦で有名なオーナーと神姫も来る故に、それらを見ようと人が多い。
ネットコミュニティで知った話によると、このセンターの出身で有名な神姫は
『蒼穹の猟犬』…零牙と、『まるかじり猫子』と呼ばれる奇妙なマオチャオらしい。
「まるかじり」って…。
約束の時間の三分前に来たが、何故か氷男先輩はいなかった。バックヤード近くに人が集まっていたがそれが何なのかは知らない。
そう思っていると、館内放送が流れだす。
『お客様にお知らせします。ただいま一階、神姫ショップ裏にてイリーガルによる襲撃騒ぎが発生しました。
イリーガルは現在逃走中で、館内にて黒くて右脚が無い花型神姫を見かけたお客様は、速やかにお近くの係員までお知らせ下さい』
ふとこんなフレーズが頭をよぎった。
&italic(){『知ってるか? 神姫による対戦は三つに分けられる}
&italic(){デジタル戦闘『バトルロンド』}
&italic(){実際に作りこまれたフィールドで戦う『リアルバトル』}
&italic(){違法改造を施した神姫でどちらかが壊れるまで戦う『アウトロー』}
&italic(){この三つだ。あいつは…(あいつって誰だ)』}
ここで言う「違法改造」とは、アウトロー用に改造され、神姫はおろか人をも殺すことのできる『狂った』存在を指す。近年はそれらによる殺傷事件も発生しており、大きな社会問題になっていると言う。
まさかこんな身近で発生するとはなぁ…。
「形人、どうしたの?」
深く思案していたが、ヒカルの呼びかけでハッとする。
「いや、なんでもない」
いつもと同じく、さり気なく本音も混ぜる。
「まさか零牙が襲われたんじゃないかなって」
あくまで予感ではあるが…。
「それ、当たってるかも…」
&bold(){~・~・~・~・~・~・~}
結局、氷男先輩がバトルは無理だと謝りにきた。
さっきの違法神姫騒ぎで精密検査を受けていて今日いっぱいかかると言っていた。
「ヒマ~」
ヒカルがバトルに対する情熱を持て余し始めた、お前には人を心配する感情がないのか。
既にICカードは作成したしなぁ…どうするか?
と、ここで
「そこの君。今、対戦相手を探しているのかな?」
突然声をかけられ、そちらの方に振り向く。
オールバックで髪を後ろで縛っている長身のメガネ男がそこにいた。
「まあ、確かに探していますけど」
「ならちょうどいい!、今我々も相手を探していた所だ」
「え、あの、ちょっと!?」
問答無用で対戦申込み場所まで引っ張られてゆく、なんだよこのおさげバカ。
……
「申し遅れた。ぼくの名は&bold(){真 光一(じん こういち)}、以後よろしく」
「あ、僕は彩聞形人」「わたしはヒカル」
名前を言いあった後、光一はおもむろに上着の裏に手を突っ込み
「そしてこれがウチの猫子である!」
勢いよくそれを出した。
「ハラへった~」
ぐったりしているマオチャオがいた。
初登場が「ハラへってる」ってどうよ?
「「………」」
僕ら、呆然。
ふと見ると、光一のマオチャオはヒカルをジッと見ている。
「肉~…」
などと呟きながら。
「え…何…?」
危機を察知したのか、ヒカルが後ずさる。
その直後だったね、それが起きたのは。
***「鳥~~!!」
*ガリッ
**「きょえ~っ!? わたしは鳥じゃなーい!!」
噛みついたよ、こいつ。
「はっはっは。どうだウチの猫子は!」
訳もわからず笑ってるよコイツ。
「メシ、食わせてやれよ」
僕はただそう言った。
※神姫は女の子です、やさしくしましょう。
&bold(){~・~・~・~・~・~・~}
さて、僕たちの番がやってきた。
…と。ヒカルの武装をメインボードにセットしていると、モニターに人が集まっていた。
彼らはしきりに『「まるかじり」が来た』と言ってい…てオイ。
「何だ!?、あんたが『まるかじり猫子』のマスターだって!?」
「そうだが、…言ってなかったっけ?」
「言ってない!」
マジかよ…、初戦の相手がセンター内トップ5の二つ名持ちなんて…。
ついてない!
しかもこちらは何の捻りもない装備だ。相手も同じとはいえ、いかんせん経験が違いすぎる。
「勝機がある」と思うやつは手を挙げろ、代わってやるから。
「いきなり否定するのはよくないよ、形人」
…まあ、そうだろうけども。
『試合開始10秒前、マオチャオ「マオ」VSエウクランテ「ヒカル」!』
ちょっと待て、マオって捻りのないネーミングだな。
『状況開始!』
とか何とか思っていたら、試合が開始された。
&bold(){~・~・~・~・~・~・~}
ステージはベーシックな廃墟。
でも、ここで感じるデジタルと現実の入り混じった独特の雰囲気は感じが悪かった。
「…どこにいるかなぁ」
と、突然あのマオチャオが飛び出してきた。
***「ツインふぁいなるドリドリあたーっく!!」
「ちょっとまてーっ!」
いきなり必殺技!?それ失敗フラグーっ!?
「ヒカル! 左だ!」
それを聞き、回避マニューバ・パターンC2―横にブーストを掛けつつ更に上昇する―を採る。
「もらった!」
光一も叫ぶ、後ろの壁を蹴って回避する方向に向かってマオチャオが飛ぶ。
フェイントだったの!?
「まるかじりすとらい~くっ!!」
口を大きく開け、牙をむき出しで飛んでくる。…なんだかカワイイ。
…おっといけない、オーグメンター発動。
一気に引き離し、マオチャオは自由落下に入った。
「着地の瞬間こそ最大の隙!ヒカル、やれ!」
「OK!」
ゼビュロスを両手で構えて、双方を連続発射!
放たれた矢の群れは着地寸前のマオチャオに吸い込まれるように飛んでゆく。
「かわすんだマオ!」
オーナーに言われて足がついたと同時に地面を蹴り、射線から逃れた。やっぱりうまくいかないか。
*ガン!
…って、あれ?
見ると避けたのはいいが、そのままビルに頭から激突していた。
これってわざと?…どっちにしろチャンスか。
「やっちまえ」
頭の中に形人の声が響く、でかいよ声…!
言われるまでもなく、急降下に入る。
頭が後ろにひっぱられる感覚がなんかイヤだ。
そして足を下にしてそのまま急加速!
「あう…いたたた「だりゃーっ!!」ぐぼっ!?」
斜め上ドロップキックがキマり、ゴムまりのように地面をバウンドしていくマオチャオ。
よくまぁあんなに飛ぶなあ…。
「負けるなマオ! スーパーねこキックだ!」
「にゃ~っ!!」
どこぞの巨大ロボのようなやり取りの後、すごい勢いで飛び出した。
元気だねぇ…あら?。
「マオ! パンチではない! キックだぞ!」
指示を無視してパンチ、サッと身を翻し(翼がぶつかりそうだったけど)て簡単に避ける。
「とどめだヒカル!」
「とりゃーっ!」
げしっ
わたしは力の限り思いきり蹴っ飛ばした、命中点は左わき腹だった。
「うに゛ゃ…」
その一撃で力尽き、そのまま試合終了のアナウンスが流れた。
『win エウクランテ「ヒカル」』
&bold(){~・~・~・~・~・~・~}
うそっ!?
僕はその結果に呆然とした。いや、勝機は見えたからノッてたけども。
「勝っちゃった」
……正直に言っちゃうと、
「ありえねぇ~~!!」
「ぼくもまさか、初心者に負けるとは予想外だった…」
こっちだって予想外だ。つーか初心者だってわかってたんかい!
「形人ぉ…そんなにわたしに負けてほしかったの…?」
ヒカルが泣きそうな眼差しでこっちを見る。こっちを見ないでくれ、反応に困る。
こうゆう時は……方法は一つ!
「帰るぞヒカル!」
「ああっ! 待って形人~っ!」
僕たちは恥ずかしくなって逃げるように帰宅した。
&bold(){~・~・~・~・~・~・~}
「ふーん、君が初心者にねぇ」
「正直驚きましたよ」
メンテナンスショップのカウンターにて、長瀬は光一の話を聞いていた。
ベテランが初心者に敗北する、などと言うことは本来ならあり得ない事だからである。
「そういえば、ちょうど隣町でも似たような事があったらしいよ」
「ぅえ?」
「何でもぉ、マスターへの忠誠度がどうとかで周囲を塩の柱にしたハウリンらしい」
「ほぉう、それは見てみたいもんですな」
「いや、そのセンターの浜野って人に業務連絡した際き聞いた話なんだけどね。何でも&bold(){『マスターが土下座して平謝りした』}くらい凄かったとか」
「ほほう、それは面白い犬子ですね。一度会ってみたいもんだ」
&bold(){<土下座ハウリン>}の名は、早くも隣り町まで伝わっていた。
だが、詳しくは神姫無頼と関係なくなるので割合する。
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六月の終わり頃の話である。
今日は氷男先輩に神姫バトルのお手合せを頼んだ。風間でもよかったのだが、親戚の葬式の関係でここのところ休んでいる。
グレースは留守番だというが、別に連れて行っても構わない気もする。
まぁ「人の死」を見せない配慮なんだろな、うん。
この町の神姫センターはここら辺のセンターとしては比較的規模が大きい。
時々公式戦で有名なオーナーと神姫も来る故に、それらを見ようと人が多い。
ネットコミュニティで知った話によると、このセンターの出身で有名な神姫は
『蒼穹の猟犬』こと零牙と、『まるかじり猫子』と呼ばれる奇妙なマオチャオらしい。
まるかじりとは一体……?
約束の時間の三分前に来たが、何故か氷男先輩はいなかった。バックヤード近くに人が集まっていたがそれが何なのかは知らない。
ところで、ふとこんなフレーズが頭をよぎった。
『知ってるか? 神姫による対戦は三つに分けられる
デジタル戦闘『バトルロンド』
実際に作りこまれたフィールドで戦う『リアルバトル』
違法改造を施した神姫でどちらかが壊れるまで戦う『アウトロー』
この三つだ。あいつは…(あいつって誰だ)』
ここで言う「違法改造」とは、アウトロー用に改造され、神姫はおろか人をも殺すことのできる『狂った』存在を指す。近年はそれらによる殺傷事件も発生しており、大きな社会問題になっていると言う。
まぁ、僕には関係ないがね。
「形人、どうしたの?」
ふと考えてると、ヒカルの呼びかけられハッとする。
「いや、なんでもない」
~・~・~・~・~・~・~
結局のところ、氷男先輩がバトルは無理だと謝りにきた。
先ほどトラブルに巻き込まれたらしく、零牙は修理に時間がかかると言う。
「ヒマ~」
ヒカルがバトルに対する情熱を持て余し始めた、お前には人を心配する感情がないのか。
既にメンバーカードは作成したしなぁ…どうするかねぇ?
と、ここで
「そこの君。今、対戦相手を探しているのかな?」
突然声をかけられ、そちらの方に振り向く。
オールバックで髪を後ろで縛っている長身のメガネ男がそこにいた。
「まあ、確かに探していますけども」
「ならちょうどいいではないか!、今我々も相手を探していた所だ」
「え!?」
問答無用で対戦申込みの機械まで引っ張られてゆく、なんだよこのおさげバカ。
……
「申し遅れた。ぼくの名は真 光一(じん こういち)、以後よろしく」
「あ。どうも、彩聞形人です」「わたしはヒカル」
名前を言いあった後、光一はおもむろに上着の裏に手を突っ込み
「そしてこれがウチのマオである!」
勢いよくそれを出した。
「ハラへったのニャ~」
ぐったりしているマオチャオがいた。
初登場が「ハラへってる」ってどうよ?
「「………」」
僕ら、呆然。
ふと見ると、光一のマオチャオはヒカルをジッと見ている。
「肉~…」
などと呟きながら。
「え…何…?」
危機を察知したのか、ヒカルが後ずさる。
その直後だったね、珍光景が見れたのは。
**「鳥~~!!」
*ガリッ
「きょえーっ!?」
噛みついたよ、こいつ。
「はっはっは。どうだウチの猫子は!」
訳もわからず笑ってるよコイツ。
「メシ、食わせてやれよ」
僕はただそう言った。
「わたしは鳥じゃな~い!!」
※神姫は女の子です、やさしくしましょう。
~・~・~・~・~・~・~
順番待ちのことである。
光一を見た奴らはしきりに『まるかじり』と言っていた。
ってマテコラ。
「何だ?、あんたが『まるかじり猫子』のマスターだって?」
「そうだが、……言ってなかったか?」
「言ってない言ってない」
マジかよ、初戦の相手がセンター内トップ5の二つ名持ちなんて……。
ついてないなオイ!
しかもこちらは何の捻りもない装備だ。事前情報によれば相手も同じとはいえ、いかんせん経験が違いすぎる。
「勝機がある」と思うやつは手を挙げろ、代わってやるから。
「いきなり否定するのはよくないよ、形人」
……まあ、そうだろうけども。
とか何とか思っていたら順番が回って来た。
もうどうにでもなれ。
~・~・~・~・~・~・~
ステージはベーシックな市街地。
でも、ここで感じるデジタルと現実の入り混じった独特の雰囲気は感じが悪かった。
「……どこにいるかなぁ」
気のせいかデフォルト武装の着け心地が悪い、この間身体自体をカスタムしたからだろうか?
地面から十センチ(主観)浮きながらゆっくりとビルの谷間を進んでゆく。
と、突然ドリルを二つ並べたアタッチメントを両手につけたマオが飛び出してきた。
「ツインふぁいなるドリドリあたーっく!!」
「ちょっとまてぇぇっ!」
いきなり必殺技!? それまぎれもない失敗フラグーっ!?
そこからの行動は早い。
地面を左足で蹴って後ずさる、できた空間を猛スピードでマオが通り過ぎてゆく。
そのまま向かい合わせだったビルに突込み姿を消す。
ドリルだからダメージはないハズ。
着地の際に鋭利なカカトが地面に擦れて火花を上げる。
『もらった!』
光一も叫ぶ、すぐ斜め後ろの壁を破ってマオがこちらに飛ぶ。
フェイント!?
「まるかじりすとらい~くっ!!」
口を大きく開け、牙をむき出しで飛んでくる。……なんだかカワイイ。
と考えると同時にエンジン全開、前方にダッシュしながら振り返りエウロスを振りかざす。
次の瞬間、ガチリという音と共にエウロスが噛みつかれ、亀裂が入ったと思った瞬間にまっぷたつに粉砕された。
冗談じゃないよ!? こんなのに噛まれたら一発で終わっちゃうって!
どうするどうする?
「形人!何か策はないの!?」
『無い。諦めろ』
「ふざけるなぁぁぁぁぁ!!」
頭にきて思わずもう一つのエウロスを投げつけた。
とここで、信じられないほどの偶然が訪れた。
次の「まるかじりストライク」の構えを取ったマオの口に、エウロスが切先から飛び込んだのだ。
デカイ口、だがそれが仇となったわけ。
もちろん、頭へのダメージは致死級であって……
&bold(){[Win. 輝]}
そのジャッジが下された時、思わず呆れかえっちゃうよね。普通。
~・~・~・~・~・~・~
うそ!?
僕はその結果に呆然とした。いや、当たり前だろ普通。
「勝っちゃった」
呆れながら筐体から出てくるヒカル。今の感想を正直に言っちゃうと
「ありえねぇ……!」
ふと向側を見ると、光一は真っ白な灰と化していた。
そりゃそうだ、こんな事予想外でしかないからな。
「……帰ろう」
「そうだね……」
帰る事にした。
正直このままここにいるのは居た堪れない。
~・~・~・~・~・~・~
「ほう、君が初心者に?」
「正直驚きました」
メンテナンスショップのカウンターにて、長瀬は光一の話を聞いていた。
ベテランが初心者に敗北する、と言うことはまれであるからだ。
「そういえば光一君、君は知ってるかい?」
「何をですか」
「聖憐君もこのようなパターンだったって事」
「そうなんですか」
以下、読者側にとっては間の持たない会話が繰り広げられるので、今回はここで終わりとする。
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