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「妄想神姫:第四十二章(前編)」(2007/09/06 (木) 10:58:36) の最新版変更点
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**翠の月を越え、天翔る者(前編)
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ロッテとアルマ、二人のお姉ちゃんは苦戦しながらもセカンドへの切符を
見事に掴んだ……後はボクだけ。ボクさえ勝機をもぎ取れば、上がれる。
そんな重責を背負った戦いを控えて、つい緊張してきちゃうんだよ……。
あ、ボクの名前はクララ。“マイスター(職人)”達・最後の妹なんだよ。
「さぁクララよ。後はお前一人だ……だがな、気負う事はないのだぞ?」
「マイスター?……そうだね、今日だけがチャンスじゃないもん。でも」
今日掴めたのに、ボクの所為でお預け。これはちょっと頂けないもん。
だからこそ、信じる人の喜びを失いたくないからこそ……ボクは戦う。
そして、抱き合うんだよ。お姉ちゃん達と……マイスターと一緒にね?
「……頑張ってくるんだよ、皆。必ず、この喜びを完全にするもん!」
「クララちゃん、頑張って下さいですの♪大丈夫、きっと行けます!」
「フィールドは“宮廷”だそうです、遮蔽物に気を付けてくださいね」
三人に見送られてヴァーチャルフィールドへのゲートを降下し、意識を
虚数空間に飛ばす……うん、順調だよ。掌を見つめて、緊張……つまり
超AIのノイズを除去し、準備はOK。“宮廷”に相応しい優美な衣と
好みの帽子に全身を包んだボクは、開いたゲートを歩いていくんだよ。
『クララvsリュミエール、本日のサードリーグ第20戦闘、開始します!』
「リュミエール……フランス語で“光”。貴女の話はそこそこ有名だよ」
「その通り。光の様に疾く、敵を倒す騎士たる神姫……それが私です」
ボクが“宮廷”を思わせる室内の中央まで来た時、柱の影からその神姫は
出てきたんだよ。サイフォスタイプだけど、その鎧は軽装・重装の折衷。
そのペイントも白黒が入り交じっていて、更にその背には……大きな翼。
何処かの鰻を思い浮かべるその異形と共に目を引くのは、漆黒の両手剣。
それがここ暫く、サードリーグの首座にいる“光と闇の騎士”なんだよ。
「……貴女の話も聞いています。不可思議な異能を扱うとか?」
「ううん、理論と超然に基づいて行われるメソッドだよ……さぁ」
「ええ。語り合うのは、決した後でも出来ましょう……行きます!」
素体も白黒……より厳密には、白銀の髪と漆黒の瞳……に彩られた彼女は
異名に違わず、脚部装甲に仕込んだブースターで急接近してきたんだよ!
それだけなら普通だった……けど、ボクは見逃さなかったよ。彼女の剣が
陽炎の様に揺らめいて、周囲の光を吸収していく光景を。これは……!?
慌ててボクは腰のロッドを抜き光の刃を形成、その一撃を受けるんだよ。
「く……コライセルッ!う、うぅ……!外見の容積より、重いんだよ」
「……理論に基づいた推測で早速見抜きましたか。この“剣”を?」
「“光”は、機動性……“闇”は、重力操作にも似たエネルギー制御」
「御明察。ですが、普通の犬型より非力な貴女……どう出ますか?」
即ち、莫大なエネルギーを凝集・解放させる事でその鋭さを増す機械の
魔剣……その能力が彼女のスピードと統合される事で、凄まじい威力を
発揮しているんだよ。対するボクは本当の魔剣だけど、彼女の言う通り
異能による非力な存在。このまま鍔迫り合いをするのは不利なんだよ!
「生憎だけど、ボクは“魔女”だよ……“ヴァニッシュ・アクティブ”」
「──────ッ!?く、ぁぁ!……目が、目がッ!?」
「だから斬り結ぶのは専門じゃないんだよ……アルサス、出ておいで」
『Ja(了解しました)』
『“W.I.N.G.S.”……Execution!』
「……ッ、距離を取られたみたいですね……」
だから、ボクは目眩ましの閃光魔術を使用して彼女を怯ませて、その間に
“レーラズ”の装備、“アルファル”の招喚等を行ったんだよ。そして、
“コライセル”を伸ばし構えて……先端にレーザー光を編み出すんだよ!
それは反撃の狼煙にして、出方を伺う為の技だもん。でも、威力は上々。
「貴女の実力、見せてほしいんだよ。“スターライト・ブレイカー”!」
「……いいでしょう。小手調べの為とは言え、私にレーザーですか?」
「避けない?……剣が、また揺らめいてエネルギーを……まさか!」
「そのまさかです。この程度なら、避けるまでも……無いッ!!」
だけど真正面から撃ったそれは、リュミエールさんには十分対応できた。
つまり『重力制御にも似た』エネルギー集積によって、レーザーの圧力を
無理矢理ねじ曲げて、剣で閃光を弾き飛ばすという荒技だったんだよ!!
……でもボクだって手を抜いて撃った訳じゃないし、他にも手はあるよ。
「……流石だよ。でも貴女に“大振りをさせた”もん……アルサス!」
『Ja(突貫します)』
「ッ!?しま、った!ぷちの騎士が……く、ぁぁぅっ!?」
元々先程の砲撃は小手調べ。本当は、既に迂回して接近した人型形態の
アルサスを突撃させるのが、狙いだったんだよ。その狙いは当たって、
逆手に構えた双振りのレーザー・ダガー“フォトン・レイヤード”が、
十字に彼女の鎧を切り裂く。ここが、攻め込むチャンスなんだもんっ!
「アルサス、そのまま連撃を叩き込んで。ボクが達するまでに」
『Ja(問題有りません)』
「ぐあうっ!は、白熱した角!?……ですが、翼を持つ私に……」
『Nein(逃がしません)』
「な──────う、あぁあああっ!?」
ボクの意を受けたアルサスは、頭部の角“メタル・ストライド”で彼女を
浮かせ、そのまま両肩のシャッターを開いたんだよ。ここには対ビーム用
防御装置があるんだけど……その出力を反転させれば、強力なスパークで
敵を砕く積極防御装置にも出来るんだよ!その電撃を以て、騎士は完全に
足止めされた……ボク自身が一撃を撃ち込むとしたら、ここなんだよッ!
コライセルから再度光刃を産み出したボクは、跳躍してそれを叩き込む。
「非力なボクが斬るチャンスは、そう多くないもんね……せぁっ!」
「きゃううっ!!?」
「──手応え、有りっ」
──────でもこれは序の口。勝つには、まだ遠いんだよ。
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