「Gene21 特撮屋」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「Gene21 特撮屋」(2007/09/03 (月) 21:47:15) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
―それは、ある一枚の手紙から始まった―
「親方ー! お手紙です」
「ああ、シビル悪いな。なになに・・・」
*―Produced by Rabbit NA human―
「“商店街振興 自主制作映画出演のお願い”・・・? 何だよコレ?」
「ええと・・・、うちの商店街を宣伝する為に映画を作るみたいですね」
「・・・で、それに誰が出るんだよ? 俺か?」
「私・・・みたいですね」
*―Radical shinki omnibus Gene Less―
「お前が? またこの前のシールド工事みたいなのじゃないだろうな? そんなのだったら幾らなんでも・・・」
「大丈夫です♪ 場所は町内ですし、単に映画の撮影に出ればいいだけですから」
「・・・出たい訳な、お前は」
「はいっ♪」
「・・こういう時だけ素直なんだからよ・・・」
*―Gene 21 special effects maker―
―PM:2:00 町内某所スタジオ―
今は静寂を尊む街。誰も居ない交差点で呆然と立ち尽くす、一人の少女。彼女の名はシビル。この街にただ一人残された人間。
『・・・あれ? ここ・・は? みんな、は?』
巨大な沈黙。広大な孤立。突然身に降り注いだ不可思議な事態は、か弱き少女の肩には余りに重く、戸惑いを隠せない・・・。
『みんなは何処~~!?』
穿孔、粉砕爆砕、瓦解、礫。
「ってカぁ~~ット!!! 違うっぺや!! そこはただ街を歩くだけのシーンだってんになしてビルさ粉砕するだよ!!」
監督席から立ち上がった少女、ゾンビ型MMSのミツは正に化物の形相を貼り付けてシビルを見据える。だが、灰燼から姿を表した彼女は、正反対に無垢な笑顔。無垢なドリル。
「でも、ビルの一つや二つ崩れ落ちた方が緊張感が出ませんか?」
「怖がる本人が壊して緊張感もクソも無いっぺや~!!」
「え~」
「え~もあ~も無いっペ! マスター、あんたも自分の作ったジオラマ壊されてるんだっけ何とか言ったらどうだべ?」
「別にいいんじゃないかな~、これはこれで~」
カメラ越しに2人を見つめる巨人は、巨体に似合わぬ穏やかな微笑。
「・・・もういいっぺ!次っ! テイク2、少女が襲われるシーン、アクション!!」
少女は歩く、少女は叫ぶ。誰かを探して。しかし・・・道は続くだけ、声は木霊するだけ。孤独だけを彼女に知らしめる。
『・・・これだけ探しても誰も居ない・・・。いつもと変わらない街なのに、本当に、私はここにひとりぼっちなの? ・・・!?』
這、這、這、群衆。
『あ゛ー』
『血を゛-』
『いけにえ゛-』
『うわっ・・・気持ち悪い・・・ゾンビ!?』
刺激臭に振り返る。其処には腐った死体―腐臭を漂わせるゾンビの軍勢。あっという間に取り囲まれる。
何故・・・何故?これは夢?これは現実・・・? 彼女は考える・・・。答えなんて出る筈も無い。では、どうすればいい!?思考が坩堝に落ちる。足が、動かない―
『うあっ・・・』
『あ゛-!!』
『来ないでー!!!!』
振、打突粉砕、破砕爆砕裂砕。
「カぁ~~っと!! カットカットだべ! 何処の世界に迫り来るゾンビを道ごとパイルバンカーでふっ飛ばすか弱い少女がいるべや!!」
怒鳴るミツの方へ返り血・・・否、機械油を浴びながら振り返るシビル。悪魔の如き・・微笑で。
「ここに」
「いないっぺや普通!! 全く、いくら100均で揃えたとは言えオラのゾンビー軍団を躊躇いも無くバラすんじゃないっぺや!!」
「でもこの方がインパクトが・・・」
「ありすぎだべ!!」
轟射突、殴。
「はうっ!?」
悪魔のみぞおちに向けて、鈍色の弾丸・・・ミツの両腕が打ち込まれる。昏倒した彼女はそのまま、ジオラマ都市の外へ「ずるずる」引きずられていく。
「ううぅ・・・」
「・・・大体、この撮影が何の為にあるのか判ってるっペや?」
「確か・・・商店街のプロモーション用ですよね?」
「それだけじゃないべ! いいべか、これは『武装神姫2036』を始めとする神姫出演ドラマの更に先を行く、世界初の “神姫サイズによる映画撮影”なんだっぺ!!!」
蹲りながら見上げるシビルへ、誇らしげに言い放つ、その監督。
「1/12サイズジオラマを舞台にすれば大掛かりな舞台演出も簡単、撮影に場所も取らず撮影費も大幅節約! 更にだべ!俳優も全てMMSなれば大迫力の人間離れしたアクションもノースタントで可能! ついでに顔も保証済み!! これほど画期的な撮影手法は類を見ないべ!!!」
「へぇー」
「へぇー・・・じゃないべ! だからこそ!この撮影は失敗出来ないんだべや!! その為にマスターも泣く泣く自分のジオラマ作品を提供してくれたんだべ! それを・・・」
「いやー僕は別にいいんですけどねー面白いならー」
「話の腰折るんじゃないべ!」
苛立ちからミツは自分の主すら怒鳴りつける。しかし巨人の表情は曇りもしない。
「ともかく! 台本に無い行動は止めてけろ! 特にジオラマ破壊!!」
「え~」
「だからえ~、じゃないべ!」
「でもその方が楽しくなると思ったんですよ?」
「オラは楽しくないべ!!! この作品にはオラの全てをかけてるんべさ・・・。そう、この映画を成功させて有名になって、オラを不良品だとか企画倒れだとか顔キモカワだとか、ついでにオラのしゃべりが田舎臭いってせせら笑った奴ら全部見返してやるんだべ!!」
「見返す? それより楽しく撮影した方がいい作品になると思いますよ?」
「あんたはあの屈辱を知らないから、そんな事言えるんだべ・・・。蔑む人間どものあの眼を・・・自分たちで創っておきながら平気で見捨てる、あの眼を・・・」
「? そんなのどうでもいいですから、早く撮影続けませんか? もっとビル解体したいです!」
「あ゛ー!! なしてそげに壊したがるべさ!!」
「そこに、ビルがあるから♪」
「ー!!!! そげな理由が許されたらスパイダーマンもどきも逮捕されないっぺ!!!」
「でも、楽しいですよ?」
「楽しいだけで世の中進めば誰も苦労しないっぺや~!!!!!!!!」
「? そうなんですか?」
「・・・ああ、そうだべか。最初から、ミスキャストだったんだべな。どうせぬるま湯で生きてきたあんたと地獄を見てきたオラ、何処まで行っても交わらない道みたいだねや。いいべさ、なら、ここではっきり白黒つけようじゃあんめえか!!!」
出、現。這、這、群像。
刹那の間に、その場は蠢くリビングデッド共に埋め尽くされていた。絶対、絶命。しかし、しかし、それでもシビルは破願していた。満面に。
「わぁ♪ 壊し甲斐がありそうで楽しそうです♪ やっぱり楽しい方がいいですよね♪」
「そうだべか・・・なら、今の内にゆっくり後悔するがいいべ! オラを怒らせた事、体の1部品すみずみまで後悔させてやるべ!!!」
「ブレイク~♪」
粉砕、破砕、爆砕。破壊破壊破壊。
「スクリ~っム♪」
襲撃、挟撃、惨劇。破壊破壊破壊。
「ジェノサ~っイ♪」
粉塵、灰燼、微塵。破壊破壊破壊。
「ハンニバ~っル♪」
腐臭、急襲、群集。破壊破壊破壊。
「ア~ルマゲド~っン♪・・・」
「チャッキ~♪・・・」
破壊破壊破壊、破壊破壊破壊破壊破壊、崩、壊。
―こうして、町内全てを灰燼と化した二人の活躍は“火の3時間”として後世まで恐れられたのだった―
* ~Fin~
----
「・・・意外と凄い内容の映画だったわね・・・。にーはどうだった?」
「お・・・おもしろかったですにー♪」
「・・え?」
・・・てな感じの自主製作映画『ゾンビ対破壊王 町内大決戦!!』は意外と好評なセールスでしたとさ♪
ちゃんちゃん。
[[目次へ>Gene Less]]
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: