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流れ星シィル - (2007/02/22 (木) 00:46:41) のソース
時に、西暦2036年……害虫達は全ての駆除剤を克ふk_ 「違うでしょっ!」 訂正 時に、西暦2036年(以下略) 「マスター、マスター」(ゆさゆさ) 「ん……後5年……」 「冗談こいてる場合じゃないってば、遅刻しちゃうよ?マスター」(ゆさゆさ) 目を覚ますと、目の前には女の子の……じゃなくて神姫の顔 「ふぁ……おはよう、シィル」 「おはようじゃないよ~、時間!ほらコレ見てコレ!」 犬尻尾をぱたぱたと不満げに振りながら、ハウリンのシリウス……愛称シィルは時計を指し示す。 現在時刻、午前8時25分也 「Nooooooooooooooo!!!」 朝っぱらから、JoJoちっくな悲鳴が響いた。 彼の名は水無月大志、極在り来たりな神姫マスターで現在高校2年生。 いや、別に神姫マスターで有る事を隠していないという辺りでオタクと呼ばれる嗜好を持つ身としてはある種開き直っている珍しいタイプかも知れない。 曰く「趣味に他人から口出される謂われはない」 「で、周囲をドン引きさせて話しかけられなくなるからオタ扱いされても気にならなくなる、と有る意味強いよな、お前」 大志に話しかけているのはサッカー部のエースで女子によるクラスの人気投票1位の鈴木、彼も神姫マスターではあるのだが、それを秘密にしているタイプだ。 「嘘も間違った事も言ってないだろ」 「そりゃそうなんだが……こうも一刀両断にされるとなぁ……」 苦笑しつつ、頬を指先で掻く鈴木から目をそらして…… 「それに、アイツは最後に残った家族だから」 「あ……わり」 地雷を踏みかけた事を察して表情が曇る鈴木の肩を、気にするな、とばかりに大志は2度叩いた。 16時45分……大志の自宅ではシィルが悪戦苦闘していた。 「あ~、もう!まちなさぁぁぁい!」 愛用のリュウノアギトを構えて追い掛けるのは、お台所に生息する黒い悪魔。 直線の速度では劣っていても切り返しの反応はシィルの方が勝っている、後1歩、それで完全にチェックメイト………そのハズだった。 「えぇぇぇぇぇぇぇぇいっ!」 乾坤一擲、振り下ろされた剣は床にぶつかるだけに終わる。 「-っ!?しまっ……!」 ぶうぅぅぅぅぅーーーーーーーん………ぴとっ♪ 「にえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」 試合終了、勝者G(決まり手:フライング・顔面引っ付きあたっく) ・・・ 「で、特攻喰らって撃沈された、と」 「笑い事じゃないよ~、本気で気持ち悪かったんだからぁ……」 で、その後……無闇やたらと徹底的に顔を洗っているシィルから事情を聞いた大志が笑いをかみ殺しながら発した第一声がこれだった。 1時間以上洗い続けて漸く綺麗になったと納得した頬を軽く膨らませて、シィルは大志に抗議する。 「でもやっぱりデフォルトの装甲を付けてるとアギトはちょっと使いづらいみたい、横に凪ぐ分には良いんだけど……」 「振り下ろす時にちょっと不便……か」 G退治は別にシィルの暇つぶしだけを目的に行っているわけではない、戦闘での装備による干渉や有効距離の確認の意味も込められている。 最も、撃退率は43%とあまり芳しくはないのだけれど、主目的はそれで無いのだから上々と思っている、本気でGを叩きつぶしたいならバルサン焚けばいいし。 土曜は神姫ショップに顔を見せに行くのが、シィルと大志の数少ない予定の1つだ。 「よし!お前ら好きなもの買ってやる!服でもなんでも持って来い!」 なんて豪儀な人物を尻目に、二人はメインカウンターで何か弄っている店長に話しかける。 「こんにちは」 「ん?おぉ、いらっしゃい……どうした?バトルでもしに来たのか?」 一見すると「あなたはどこの仮面ライダーに出てきたおやっさんですか」という感じのする店長が気軽に声を返してくる、因みに40代独身。 「そう言う事、この前チップ埋めたアギトの最終調整も終わったし」 ほー、そうかそうか、と店長は少しわくわくした様子でシィルに使い心地なんかを聞いている。 「と言うわけでフリーバトルに登録して置いたから、呼んだら来てくれよ」 店長の声に手を振る事で答えながら、大志は商品棚へと注意を移していく。 「……誰だよ、FMのイーグレットRRにチップ埋め込んでるやつぁ……」 観戦用の大画面に映ったヴァッフェバニー……彼女が手にしているランチャーポッドを見て、大志はこっそり呟いた。 重火器系の装備に見入る事10分経過 『登録ナンバー12の、お客様、ヴァーチャルバトル機まで、お越しください』 大志は放送に呼ばれて、シィルと共にバトル用筐体までやってくる。 「お?大志」 「相手はお前か、鈴木」 あちゃ~とばかりに後頭部をがりがり掻きむしる対戦相手に、大志は苦笑する。 「大丈夫だよ、あるじ様、ボク達も強くなったんだから」 鈴木のポケットから励ましの声をかけるのは、彼の神姫、マオチャオタイプの「狐鈴」 「とは言ってもなぁ……懐に潜り込まれると恐いんだよあのわん娘」 と言いつつ準備に余念が無い辺り、彼も十分やる気のようだ 「ワタシ、インファイトに入ったらそんなに恐い?」 「……ま、ノーコメントとしておこう、装備はアギト+2番でいくぞ」 「了解!」 シィルが所定の位置にセッティングされると、バトルステージ上にデータがロードされる。 片や、両腕にガトリングガンを抱え込んだ狐鈴、片や、身の丈ほどもある骨製の大剣を担いだシィル。 『バトルモード:0-1-0-0、バトルフィールド、セットアップ』 ジャッジマシンが手にした旗をクロスさせ…… シィルがいつでも飛び出せるように身を屈め…… 狐鈴の背負ったバーニアパックのアフターバーナーに火が入る。 『レディ……Go!』 開幕のベル代わりは、狐鈴が放つガトリングの洗礼だった。 弾着の煙が瞬時にしてシィルを覆う。 「被弾ゼロ、問題ないよ、マスター」 「斬り返すぞ、ゲットセット」 煙が薄れ、狐鈴のシルエットがうっすらと浮かび始める 「レディ……GO!」 声と共に、アギトを構えたシィルは煙の壁を突き破るかのように突撃した。 真っ直ぐ、愚直なまでに突っ込んでいくシィル。 しかしそれに対して狐鈴がはっと気付いたように向けた銃口の先は……「上」 左手の指がトリガーを引く……よりも早く、右腕に持ったガトリングを大きく振るう。 ガンッ! 重い物同士が激突する音が響いて、ガトリングの銃身がへし折れ……いや、押し切られた。 砂煙が晴れた画面に浮かび上がる姿は、リュウノアギトで狐鈴のガトリングを1門、完全に粉砕したシィル。 「シィル、閃!」 「だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 気合い一閃、シィルは殆どガトリングに埋もれているリュウノアギトをそのまま振り抜いた。 「しまっ!?」 0距離から大質量の一撃が腹に決まり、ハデに吹っ飛ばされる狐鈴 「やったか?」 モニタリングルームからでは状況の確認すらままならない、この短時間での戦闘ながら、シィルの肩、肘関節には大きな負担がかかりつつあった。 「まだっ!受け身を取ってる!」 受け身……どうやら直撃の瞬間、自ら後ろに跳んである程度ダメージを減らしたらしい、マオチャオらしい回避術だ。 それを裏付けるかのように、新たに湧き起こった煙の中で何かが光った。 「6時、7時、630時からグレネード4発!乱数回避!」 「わわわわわっ!?」 振り返りながら放たれた榴弾をかわすと、目の前にはさらに8発の榴弾が迫っていた。 6発までは体術でかわし、1発は誘爆させる。 そして最後の1発が、シィルの面前で炸裂した。 「あっぶなぁ……」 さしもに衝撃に耐えきれず、真っ二つに折れたリュウノアギトの陰から、シィルが飛び出す。 それに呼吸を合わせるかのように、狐鈴も手にダガーを持って飛び出してきた。 こうなってしまえば決着は単純だ、先に得物を相手に突き刺した方が勝ち。 そしてまだ補助武器に手をかけただけのシィルと、既に装備を済ませている狐鈴では結果は見えたも同義。 その単純すぎる論理は、あっさりと覆された。タイミングを合わせて、シィルが狐鈴のダガーを蹴り飛ばす、という方法で。 しまった、そう狐鈴が思う間もなく、シィルの補助装備、封龍剣が狐鈴の胸部を薙ぎ払った。 「びくとりー♪」 セット位置から出てきたシィルは得意げにVサイン。 「よくやったな」 大志も満足げにシィルの頭を撫でてやる。 そんな処に、鈴木と狐鈴が連れだってやってくる。 「はぅ~~……やっぱり完敗だよ~」 「そう落ち込むな、お疲れさん、大志、シィルちゃん」 しばし、マスター同士、神姫同士で雑談に花が咲く。 そして、帰り道………。 「……なぁ、シィル」 「ほぇ……なに?マスター」 夕日に照らされて、二人、朱に染まった世界を歩く。 長く延びた影法師の大きさは、あんがい変わらなくて…… 「何処まで、行きたい?」 「マスターが望むところ……かな」 少女の影が、少年の影に重なった。