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ライドオン204X:4-2 - (2013/03/14 (木) 01:49:17) のソース
&bold(){―side・kino} (これは…いける!) 城野原大地はおぼろげながらも勝機を掴んだことを確信した 先程のジルリバーズ型との戦いを見ていて感じたレベルの差 今の自分ではおそらく勝てない、場数が違う それがバトルスタート前に彼の導き出した結論だった だが、今の相手の反応にその結論は揺らぎ、消える (もしかしなくてもブラスターが苦手と見た!) 人それぞれ何かしら苦手な武器、苦手な戦法、苦手な相手がいるだろう ビットが苦手、接近戦が不得意、フブキ型の相手は嫌、etc.… ブラスターを放った途端に一目散に逃げに走った相手を見れば、苦手なものなど一目瞭然 かく言う自分もどこから襲ってくるか分からないこの武器は相手にしたくない武器ナンバー1だった だが容赦なく目の前を飛んで逃げるフィーアに狙いを定める バイクの操縦を一旦エルメスに預け、両手で構えたランチャーブラスターのトリガーを引いた 先程は一斉射だったが、今度は時間差発生した光の柱が四方八方からフィーアに襲い掛かる 相手は辛くもそれを避けていくが、最後に伸びてきた5本目のブラスターがリアパーツを捉えた! (よし!このまま機動力が落ちた相手を追い詰めれば…!) ある程度連射の利くEVFアサルトライフルBに持ち換え、逃げる背中を狙い撃っていく だがリアへの被弾で機動力が目に見えて落ちてるはずのフィーアは、それでもこちらの攻撃をギリギリで避けながらなおも逃げ続けていた (マスター、油断しちゃいけないっしょ!罠の可能性だってあるし) (あ!そうだった…) 先程見事なまでに罠にかかったジルリバーズ型の姿が脳裏によぎる この展開は先程とよく似ているのだ (まさか…一目散に逃げたのも、今リアパーツに被弾したのもわざと…?) ライフルの射程圏内、300s程前を飛ぶ奏一たちの飛行速度は明らかに先程より落ちている このままではこちらが追いつくことすら可能だろう だが、相手は迎え撃つでもなくひたすらに背を向けて逃げるのみ (…怪しい。もしかして僕らをどこかに誘い出す気なのか…?) そう逡巡し、図らずも攻撃の手を休めてしまった途端だった (―――あっ!) フィーアは突如これまでのスピードをはるかに上回る速度で並び立つビル群の隙間へと入っていった (ロックが切られた…レールアクションだ) 一瞬の隙 そこをしっかりと突いた選択、行動 やはり『試合』に関しては向こうが一日の長がある これだけ建物の多い市街地でロックを切られては再度レーダーで補足することも難しい (だけどこっちの耳もアーンヴァル型には及ばすとも―――え!?) 再度レーダーで捉えようとした相手は、既に補足可能範囲から消えてしまっていた もう一度レーダーを確認するが、『このステージ特有の仕掛け』も発動していない ということはやはりこちらのレーダーの範囲外まで逃げられてしまったことになる (まさか…全力で逃げた?) 城野原大地は一旦バイクを止め、状況整理に努める RA(レールアクション)中はレーダーでの捕捉が出来ない、高速移動ゆえに視覚で捉えることも難しい だが欠点のひとつとして一試合における使用回数の制限がある 一定回数使えば、それで打ち止め再装填(リロード)なし そしてこの短時間でのロックオン範囲からの離脱を可能にするには、おそらく可能な限りのRAを使い切ったはずだ (逃げた狙いはなんだろう、市街地のどこかに罠でも張るんだろうか。それとも狙撃とか?) 例えば手榴弾などを使って簡単なトラップを作ったうえで姿を現し、そこにおびき寄せる 例えばビル群のどこかからこうして足を止めてるところを狙い打つ… (それはないっしょ。相手の武装にそこまで長距離狙撃の出来る武装はないしね) (だよな。というか持ってたら今頃僕ら撃たれてるよね) となればやはり罠。城野原大地はそう結論付けた そうなれば、わざわざ危険を冒して動く必要もない 何しろ向こうは間違いなく被弾し(そうでなければ逃げる必要もないのだから)確実にHPが減っている 対してこちらはフルチャージのライフルをくらったとはいえ、バリアで直撃を防いだためHPの減少は微々たるもの はっきり言って、このまま制限時間いっぱいまで場が硬直すれば勝つのはこちらなのである なら無理に動かず、相手がどう出てきても動けるような位置取り、体勢を整えておかねばならない (そうと決まれば) 城野原大地とエルメスはもと来た道を引き返し、中央広場へと向かった ---- &bold(){―side・souiti} (まずいまずいまずいまずい!) 情報が少なすぎる 謎のバリア、性能が未だ不明瞭なランチャーブラスター 俺は一目散に逃げの一手を打った 兎にも角にも仕切り直しを図りたい、その一心である (第二射――来ます!) (くっ―!) 視界に表示されるエネルギー反応を示すアラート 慌てて右にロールして軌道をずらして回避する…が (なっ!) 今度のブラスターは時間差をつけて襲ってきた 2本目、慌てて上昇 3本目、左にロール 4本目、ロールを止め降下…と相手には見えたかもしれないが、焦るあまりフィーアのコントロールするバーニアと動きが合わなかった故の失速 5本目、無理な動きと焦りから崩れた体勢を整える間に――直撃 (きゃあっ!――っマスター!リアパーツに被害甚大!飛行速度20%以上低下!) (洒落に…ならないっ!) このままでは撃ち落される 脳裏に浮かぶ敗北のヴィジョン。振り払うようにさらに飛び続ける いつの間にか相手は武器をライフルに持ち替え、さらに追い撃ちをかけてきた (マスター、落ち着いてください。こういう場合の練習も、しましたよね?) (あ、あぁ。大丈夫、散々やったもんな) 迫りくるライフル弾を紙一重で避けながらも思い出すのは、欠かさず行ってきた修行の数々、その一部 飛行速度が落ちた状態で相手に追いかけられた時を想定した回避訓練と、どうしようもない場合の緊急手段 (相手の攻撃の間隙を突いて) (RAの連続使用による離脱、ですよね) だが、待つだけでは隙は作れない どこかで反撃に移らなければ、そう思った矢先だった (―――!緩んだ!) (行きますよ!) RAが起動し、体が硬直する RAは文字通り敷かれたレールをなぞるプログラム 発動中は基本的に自分の意思で体を動かせないのだ 一時的に硬直した体はひとりでに動き出し、それと同時に視界は一気に狭まった 立ち並ぶビル群の隙間にRAで飛び込んだのだ フィーアの計算から導き出した最速のルートを、RAを休みなく使用していくことで強引に飛び抜けていく ほどなくして、相手のロックオン距離から完全に離れた路地裏に降り立った俺は、壁に背をつけ座り込んだ 背中のリアパーツがガチャリと嫌な音をたて、金属が壁を擦る嫌な音が続く だがそんなことに気をやる余裕もなかった (…フィーア) (なんですか、マスター?) (疲れた) (疲れましたか) (あぁ) 意味のない会話 だがそんな他愛ない言の葉が心を落ち着けていく (落ち着きましたか?) (…あぁ) 考えたいこと、考えねばならぬことを頭の中で反芻していく 謎のバリア、そして今後の展開 まずはあのバリアなんだが… (マスター、あのバリアに関してですが) (お、早速か。それで?) 数瞬の間、そこに含まれるのは呆れと自責とetc. (低ランクプレイヤー用のバリアです…説明書に書いてありました) (………) (ランク2までは使えるみたいですね) (………進歩ないな、俺) (忘れてた私のミスでもあります…私たち最初からランク3でしたから使う機会がありませんでしたし) 今度こそ、今度こそ説明書は端から端まで読もう それこそTVゲームの攻略本のように頭から最後まで自然と暗記できるぐらいに (兎に角、もうあのバリアは使い物になりません。アルヴォを数発耐える程度にまでは強度が回復するみたいですが雀の涙ですね) (それじゃ、後はこの後だな) こちらの状況を再確認 リアパーツに被弾。飛行速度は明らかに落ち、回避性能はそれに直結しているため当然低下 遠~中距離での射撃戦はどうあっても不利 ただでさえあちらにはランチャーブラスターという武器があるのである 慣れてない俺たちには相当不利に働く代物だ (と、なれば取れる手は一つ) (接近戦ですね) 互いの意見は一致する。だがいかにしてエルメスの足を止めるかが問題だ 向こうからわざわざ一騎打ちに応じてくれるわけでもなし どうにかして懐に飛び込む算段をしなければならなかった (フィーア、とりあえずエルメスの位置は探れるか?) (うーんどうでしょう、かなり離れちゃいましたし………あ、見つかりました。移動はしてないみたいです) (何?こっちは捕捉されてないよな?) (大丈夫です、ギリギリこちらのレーダーの範囲内に入ってる形です。場所は中央広場の一角です) (あそこか…) 下手に動かずこちらの出方を待つ形にしたか… あそこなら視界の確保も出来るうえに身を隠す障害物も豊富にある、大通りも近い おそらく陣取るにはベターな場所だ (どこからむかってもレーダーに捕まりますね) (せめて相手のレーダーが故障してくれてたりすればな…) 希望的観測というのも馬鹿らしい呟き だが… (…マスター、それいけます) (何?) 逆転への布石、その第一打への足がかりとなったのである ---- &bold(){―side・kino} (マスター、そろそろアレがくるっしょ) (あぁ。ここからは聴覚が頼りだな) 城野原大地とエルメスが中央広場に陣取って数分、突如レーダー系が一切利かなくなった このステージ特有のギミック『電波障害』だ ある程度の周期でレーダーが利かなくなり、自動追尾ミサイルなどもその性能を発揮できなくなる 彼らにとってこれは、なにも初めての経験ではない レーダーが利かないなら5感に頼ればいい話なのだ (動いてくるなら今のはずだ。気を抜くなよ) (それはこっちの台詞っしょ) さぁどこからくる? 正面のビル群からの遠距離射撃か、背後から接近しての奇襲か だが、彼の予想はどれも結果的に外れることになったのである (…!?マスター前みるっしょ!) (な、なんだあれ!?) 彼らのちょうど真正面、背の高い15階建てのビル その3階あたりからLC3レーザーライフルのものと見られる光が、あらぬ方向に向かって放たれた いや、そこまではいい 問題はその光条が放たれたまま回転しているという点である (おい、まさかアレ…切ってるのか?ビルを) (…そのまさかっしょ) 唖然としてる二人を尻目に光条はビルの外壁を斜めに角度をつけて一周し終わった ゆっくりと、しかしそのまま勢いよく、輪切りにされたビルは彼らの方に向かって滑り落ち、倒れていく ((じょ、冗談じゃない!)っしょ!) 慌てて武装をバイクへと変形 左を向き、ビルの倒れてくる方角と直角になるように逃げようとする、が (ぬぁっ!) その正面に着弾するシュラムRGランチャー 立て続けに回りに着弾するバズーカ弾 (横への逃げ道を完全に塞ぎにきている…!) それならばとさらにバイクをさらに直角の方角へと向ける それは広場の中央に向かうコース 普通に走ったなら押しつぶされるだろうが、エストリル型の性能であれば逃げ切れると踏んだのである それに、これなら倒れてくる建物がバズーカやライフルの射線を遮ってくれる エルメスと城野原大地は必死にアクセルを吹かし、広場を駆け抜けていく (エルメス!) (大丈夫!間に合うっしょ!) 背後に衝撃、ビルが完全に倒れこんだのである その衝撃はバイクを大きく浮き上がらせたものの、着地を綺麗にきめた彼らにダメージはなかった (セーフ!) (ふぅ…あぶなかった…) 間一髪、倒れてくるビルの直撃を回避したことで、思わず安堵の息がでる だがしかし… (…マスター!) (!!) エルメスの一声 それと同時にバイクから城野原大地は投げ出された またがっていたバイクが無理やり倒れこむことで騎手を放り出したのだ そしてその騎手がいた位置を何条もの光線が通り過ぎていく―――! (っておいおい!まさか倒れたビル越しに!?) 実にその通りだったのである ビルを倒すなどという奇天烈な戦法をとったフィーアと奏一は、さらに倒れたビルの向こうから射撃を繰り返しているのだ 当然、『電波障害』は未だ継続中のため向こうも狙いを定められないのだろう。兎に角やたらめった撃っている 倒れた衝撃に加え、問答無用のLC3レーザーライフルの乱射 ビルは建物の意味を成さないコンクリート片と化していき、あたりにはもうもうと砂埃がたっていく (なんて無茶苦茶な!?) こんな乱暴な戦い方、いままで相手をした経験などただの一度もなかった まぁバトル歴も浅く、当然といえば当然ではあるのだが (とかくまずはアーマーを!) 倒れこんだバイクの元に駆け寄り、そのまま変形を解除 アーマーを身にまとい、姿勢を低くしてビルの正面――相手の射線から離れていく と、その刹那 (――攻撃が止んだ?) そう思えたのもつかの間 もうもうと立ち込める砂埃を突っ切って飛来する影が1つ レーダーも利かず視界も最悪な状況であろうと迷うことなく突撃してきたフィーアと奏一である その手には光り輝くレーザーソードとディコ・シールド (う、うわぁあ!?) 慌てて展開した大振りのナイフを構える だが1合、2合と切り結ぶうちにあっという間にその体制は崩れていき、 『カァン!』 乾いた音と共にナイフが地面に落ちたのと、胸元に剣が突きつけられたのはほぼ同時だった 「勝負あったかな」 目の前のフィーアがそう口にする 声はアーンヴァルのそれだが、その感じはやはりライドしているマスターの色が濃く出ているように感じれた 「………参りました」 そう口にする自分の声も、向こうにはエストリル型の声として聞こえているのだろう こちらとしては肉声でしゃべっているように聞こえているのだが (エルメス) (もうこればっかりは無理っしょ!うん!) エルメスがジャッジシステムにサレンダー(投降)の意思を伝えた 『Winner:フィーア&奏一』 その数秒後、ジャッジシステムが勝者の名前を読み上げた [[第四話の3へ>]] [[トップページへ戻る>ライドオン204X]]