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無頼23「前夜の再会」 - (2008/07/21 (月) 23:37:16) のソース
"自分"はあの時隣に居たMMSから、去り際にこんな事を言われた。 「顔がなくても、お前の表情は読めるよ」 …"自分"には顔が無い。 ……そろそろ、限界が見えてきたような気がした。 ---- **無頼23「前夜の再会」 ---- …時間の流れは早い。 気付いたら、あれからもう一年経つのか。 ジュラはそう思った。 今日は12月24日、「ジュラーヴリク」の誕生日であり「ファウンド」の命日でもある。 最近は"フランケンシュタインの怪物"もなりを潜めている、どういう事であろうか…? 「まあ、平和だからいいんだけどね…」 ふと、今朝の事を思い出す…。 ……… …… … ---- 「お早うジュラーヴリク、そしておめでとう」 「んーっ…、何が?」 「今日は24日だ」 「……あっ!?」 そう、一年前の今日に彼女は「ジュラーヴリク」として生まれ変わった。 いわば今日は彼女の誕生日だ。 「プレゼントだ。…まあ、預かってた物を返すだけなんだがな」 長瀬が渡した小さな、ちいさな箱。 「…これって!?」 入っていたのは、薄汚れたチョーカー。 ファウンドとして最期まで着用していたただ一つのアクセサリー。 「ホームシックにかかって支障がでたら困るから今まで隠してたんだが…、もう大丈夫だろう?」 「…うん。……ありがとう、祁音」 ---- … …… ……… 「ジュラさん? そのチョーカーってお気にですか?」 「あ。ええ、アンティークな品よ」 他の職員との会話もそこそこに、カウンターに佇んでいると早速客が来た。 「あの、バトルロンドでドジっちゃいまして…」 "平凡"を体現したような姿、藤子・F・藤雄作品に出てきそうな少年だった。 「いらっしゃい、早速だけど見せてくれないかい?」 応対する長瀬を横目に、ジュラは唖然としていた。 「……!?」 彼女は…知っていた。 「マ…ス…ター…!?」 聞こえないほど小声で呟いた。 &bold(){~・~・~・~・~・~・~~・~・~・~・~・~・~} 「…あの子がお前のオーナーか?」 休憩室。 動揺した顔を浮かべるジュラに聞く。 「……間違いないよ」 クレイドルに乗せられ、過去ログを調べられている。 「…と、むー…確かにあの子だな。少し肉つきがよくなっているみたいだが」 モニタに映る不鮮明な映像。 映っているのは、あの少年。 「……で、どうする気だい?」 「…なにが?」 「あの子の事だよ。お前が「ジュラーヴリク」である事を止めあの子に事情を説明し、また一緒に住むのかいって事。 …まあそれを希望するのなら、今からでもオーナー情報を元に戻すが?」 …… ジュラは少しの間を置き。 「……一瞬そうも考えたけど、やっぱり無理。だって元のオーナーが見つかったからって世話になった人をほって行けないし、そうする気なんて微塵もない。…それに」 「それに?」 「人殺しの私が居たって気まずいし、そんな私をマスターに知ってほしくない」 ジュラの目尻には、涙。 「…それに、今の生活だって楽しいのよ勿論! スリル満点だしね!!」 ……しばし、静寂が辺りを包む。 「本当に、いいんだな?」 ゆっくりと、長瀬は問うた。 「………………うん」 &bold(){~・~・~・~・~・~・~~・~・~・~・~・~・~} 「ちょっと待って!」 ジュラは少年の神姫―皮肉にもBlue X'mas Ver.のツガル―を呼び止めた。 「なんですか?」 「これを着けていきなさい。ちょっと汚れてるけど、オーナーには何か判る筈よ」 そう言って、ツガルにチョーカーを着けさせた。 無論、これは「ファウンド」としての大事なものなのだが…。 「あなた、名前は?」 「ファリナです」 「そう…、私はジュラーヴリク。機会があったらまた会いましょう」 …… 「お大事に~」 ジュラーヴリクさんが手を振っている。 「…? どうしたんだい? そのチョーカー」 「ジュラーヴリクさんに貰った、あのツガルに」 「へえ……ッ!!!?」 急にマスターが動揺した。 「どうしたの?」 「そのチョーカー…前に居た、…ファウンドのものだよ!?」 「えっ!?」 チョーカーには"Faund"と縫い付けられていた。 「……ジュラーヴリクさん…もしかして…?」 …… 「アレを渡して良かったのか?」 長瀬は、そばに佇んでいるジュラに聞いた。 「いいのよ。私が持ってても仕方がないし、……もうファウンドはこの世に居ない。他人が持ってるよりは、あの子に託した方がいい」 …静寂 「…という事で、これからも宜しくね! &bold(){"マスター"}」 にこやかな顔で言うジュラ。 「…ああ、よろしくな」 長瀬の携帯が着信で震えた。 発信元は…南雲。 「長瀬だ」 『緊急事態だ!! "怪物"からのメッセージが届いたぞ!!』 ---- 「あれ? 今日は長瀬さんの日じゃなかったっけ?」 一通りグレースと対戦し、とりあえずショップに来たんだが…長瀬さんがいない。 「長瀬なら早退したぞ、なんでも知り合いからの急な用事だとか…」 「メィーカーは?」 「いるよ、今はオペ中だ」 …最近の長瀬さん、どうにもおかしいな…? 何があるってんだい。 ---- [[流れ流れて神姫無頼]]に戻る [[トップページ]]