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第参章第拾参節:イリーガル・レプリカ迎撃指令…シャドウ・アンジェラス編 - (2008/03/19 (水) 23:03:26) のソース
{イリーガル・レプリカ迎撃指令…シャドウ・アンジェラス編} 「諸君!諸君等の多大な勇気と努力によって、イリーガル・レプリカの数は着々と減っている!!これも諸君等のおかげである!!!」 オオオオォォォォーーーー!!!! 「…ケッ!調子のいい奴等だぜ」 俺は壁に背を預けながら煙草を吸う。 肩にはいつも通りにアンジェラス達がいる。 現在いる場所はアンダーグラウンドの神姫センターである。 アンダーグラウンドの神姫センターでイベントがあるという情報を入手して来て見たら、この有様だ。 少し前に、この街でイリーガル・レプリカの出現が多数目撃され死人もでたという事件。 その被害は拡大していく一方でアンダーグラウンドの住人は困りに困り果てたという。 そこでイリーガルの神姫にはアンダーグラウンドの神姫で対決という話になり、討伐隊をエントリーする事になった。 私的には『どうでもいい』と思っていたが、オヤッさんの商売とかに支障がでたり、その他にも色々と理由があったので仕方なく参加した訳だ。 そしてこのイリーガル・レプリカを多く撃墜した者には賞金が出るという。 金の話が出ると、いきり立った馬鹿どもが我先にとエントリーする光景には正直馬鹿馬鹿しいと思った。 でもエントリーした俺も少しその馬鹿どもの気持が解る。 誰だって金は欲しい。 特にこの街は金の流通が激しいからな。 金の亡者になる奴は多い。 と、前の話はここまでぐらいだったよな。 そろそろ今の…現在の状況に戻ろうか。 イベントの話までしたっけ? まぁ簡単で簡潔に言うと神姫センターを貸しきってパーティーを行っている。 イリーガル・レプリカの神姫をブッ壊しまくって、この街ではすっかり数が減ってしまった。 俺等にとっては良い事なので調子こいてる奴が多い。 そこで浮かれている他のアンダーグラウンドの住人のオーナー達がこんな馬鹿げた宴をしてる訳だ。 ほんでもって主催者はこの前、電光掲示板で演説をした男の声の野郎だった。 外見から見て50歳前後かな。 大方、この神姫センターの店長だろうよ。 て、それは貸しきると言えるのか? 結果的にどうでもいい。 まぁ~そんな訳だ。 まったくもってどうでもいいイベントに参加しちまったもんだぜ。 「よ~閃鎖。浮かない顔してどうした?」 ワイングラスを片手に持って来て俺に声を掛ける男。 視線を会場からずらして見ると。 「オヤッさんか。別に、くだらないイベントに参加しちまったな、と後悔してるだけだ」 「ハハハッ!お前らしい感想だな!!」 オヤッさんはワイングラスをグビッと一気飲みして、ワイングラスをバイトをしてるボーイに渡す。 「にしても閃鎖達のおかげで俺の店も大繁盛したよ。武器を買いにくるお客さんが激増したもんだ。イリーガルの神姫に感謝だな!」 「酔ってんのか?でもまぁ、商人としては嬉しいだろうよ」 そーいえばここのところアンダーグラウンドの武装神姫関係の違法改造武器屋が24時間体制で店を開けていたのは商売繁盛のためか。 なるほどな、納得いくスジだ。 「つか、なんでここにオヤッさんがいるんだよ」 「あぁ~、そういえば閃鎖に教えてなかったけ?俺、昔は武装神姫のアンダーグラウンドのオーナーだったんだよ」 「ハッ!?オヤッさんがオーナーだと!?!?初耳だ」 「だから今初めて教えたんだ」 …マジかよ。 オヤッさんが武装神姫のオーナーだったとは…俺の神姫達も吃驚してるし。 でも今はオーナーを辞めたみたいな口ぶりだったな、昔と言ったもんな。 「ほら。閃鎖に挨拶しない」 「「は~い」」 んぅ? 声はするけど姿が見えない。 いったい何処にいるんだ。 「メイルで~す♪」 「テイルで~す♪」 声がしたん瞬間、オヤッさんと俺の間に出現した二体の神姫、サンタ型ツガルだった。 しかも片方はリペイントバージョンだ。 どうやら姿が見えなかったのは光学迷彩を装備してるからだと思う。 赤と青のカラーリングが少しカッコイイと思った。 で~さぁ。 「どっちがメイルで、どっちがテイル?」 「メイルで~す♪」 「テイルで~す♪」 「だ~もぉ!一緒に言うな!!」 あ~もう、いらいらイライラ苛々する! ただでさぇ下らないイベントに参加して、苛々してるのに更に俺をイラつかせる。 「ハハハッ!閃鎖の奴、早速遊ばれているな。ハハハッ!!」 「笑うな!こうなればオヤッさんに直接訊いた方が早い。で、どっちがメイルでどっちがテイルだ?」 「今は赤がメイルで青がテイルだ」 「へぇ~…ちょっと待て。『今は』つったか?」 「そう言ったが?たまに武装交換し合ってチョッカイだしてくるんだよ。まったく困った子達だ。ハハハッ!」 「…笑い事じゃないような気がする。それと、やっぱ酔ってるだろ」 にしてもこのサンタ型ツガルには神姫侵食に犯されていないみたいだ。 オヤッさんの商売上、違法改造武器を使ってとっくのとうに武装神姫を神姫侵食付けにするかも、て思ったけど…。 どうやら違うみたいだな。 「確かに俺は商売上違法改造武器を販売してるけど、俺の可愛い神姫達に使わせる訳ないじゃん」 「「そうそう、アタシ達はニー様に大事にされてきたんだから♪」」 「…頼むから一緒に言うな」 でもまぁ何にせよ、俺はオヤッさんの過去を知らないからどうこう言える立場じゃないし、別にどうでもいい事だ。 「今度、俺の過去の話をしてやるよ。閃鎖だけに教えてやる」 「そいつはど~も」 短くなった煙草を吸殻入れに入れ、そしてまた新しく箱から煙草を取り出しジッポで火を付け吸う。 苛々してるから煙草を吸う数が多い。 今日はもう八本も吸ってる。 俺は本来一日二、三本ぐらいしか吸わない。 だけど、苛々してる時とか仕事してる時に煙草の数が多くなる。 主に煙草は気分転換なものだ。 「もう帰りたいか?俺は五月蝿い宴に飽きたし苛々が治まらん。ブッチャケ帰りたい」 「ご主人様に任せます」 「ボクは帰りたいよ~」 「流石にこの場は常識がなってませんわ」 「うぅ~、少し回りが五月蝿いですぅ」 ふむ、どうやら三人は帰りたいみたいだな。 アンジェラスはいつも通りに俺の意見に賛同するような形。 もうちょっと自分の意見を言ってもいいのに。 …煙草の時はムカつく程意見を通そうとするくせによぉ。 「そんじゃオヤッさん。俺はこれで帰らせてもらう」 「おいおい、もうちょっといようぜ。どうせここにある食い物は全部タダなんだからよ」 「ここに居ること事態イヤなんだ。だから帰らせて―――」 ドカーン! 突如の爆発。 俺はバランスを崩し右足の膝を地面つかせ、両手で地面を掴みバランスを保つ。 そして何処で爆発したのか周りを見渡す。 すると天井にドデカイ穴が開いていて、その穴から続々と武装神姫達が入ってくる。 まさか…あれは全部イリーガル・レプリカなのか!? 「うわー!?」 「た、助けてくれぇ~!」 「応戦しろ!それと退路を確保するんだ!」 神姫センターの場を借りて宴の会場と化していた場所が、一気に悲鳴と銃声と剣がぶつかり合う金属音が鳴り響く、この状況を言うならば戦争状態。 どうしてこんな事になっちまったんだ! それとどうしてイリーガル・レプリカ達は今日のイベントで討伐隊の俺等が集まると知っていたんだ! 「閃鎖!大丈夫か!?」 オヤッさんの声がした。 けど天井の壁が崩れてオヤッさんの姿が見えない。 「オヤッさんか!?こっちは大丈夫だ!」 「よかった…スマナイがこっちまで来てくれないか。頑張ってイリーガルの神姫を追い払っているんだが数が多すぎる!」 「解った!今すぐそっちに行く!!」 俺は立ち上がり、自分の神姫達を確認する。 …よし! 全員ちゃんと居る。 「ご主人様!これはいったい!?」 「解らん。だが、壱つ言える事は『奴等は俺等襲っている』という事だ」 「どうして今頃になって…数も減っていたはず」 真剣な顔つきで考え込むアンジェラス。 今はそんな事どうでもいい。 あの天井の瓦礫で塞がるような壁の向こうでオヤッさんが闘っているんだ! 早く助けないと! 「そこら辺の情報は後回し。クリナーレ!パルカ!!あの瓦礫の壁をブチ壊せ!!!」 「ネメシス、来い!」 「ライフフォース、召喚!」 フル装備状態で自分専用の武器を召喚するクリナーレとパルカ。 行動が早くて助かる。 今までに比べて随分とレベルが上がったもんだ。 「光闇矢翼、展開!」 <ヴェーニア> ジャララララ!!!! 「穿ツ!」 <フォデレ> シュババババ!!!! 銀の矢が瓦礫の壁に長方形の線を形とるように突き刺ささていき、一本一本が突き刺さる度に瓦礫の壁にヒビが入っていく。 そして全体的に長方形の形が出来ると。 「ウォオリャーーーー!!!!」 <ソニックストライク!> バゴン! クリナーレが長方形の中央部分をネメシスでブッ叩いた。 すると衝撃でヒビが入っていた瓦礫の壁がガラガラ、と音を出しながら完全に崩れ落ちていくではないか。 しかもパルカが撃った長方形の部分だけしか崩れてない。 大きさ的に俺が通れるぐらいの長方形の穴だ。 「アニキ!これで通れるぜ!!」 「早くメイルさんとテイルさんを助けましょう!」 「サンキュー!」 俺はすぐさま穴の中に入り辺りを見回すとそこは悲惨な状態だった。 沢山のイリーガル・レプリカ残骸と人間の死体。 瓦礫と燃え上がる火。 血と硝煙の臭いが鼻につく。 さっきまで馬鹿騒ぎしていた宴が一気に地獄と化していた。 「ダーリン、危ない!」 「ッ!?」 ズバッ! ルーナが後方で叫ぶと同時に何か斬ったような音が聞こえた。 すぐに振り向くと、ルーナが俺を襲ってきたイリーガルの騎士型の身体に沙羅曼蛇を突き刺さしていたのだ。 「永遠の眠りにつきなさい!」 ルーナはそのまま沙羅曼蛇を縦に斬り上げると、騎士型の身体が真っ二つに切り裂かれた。 たった一振りの剣でそこまで強くなっていたとは…いや、元々ルーナはかなり強い。 あのぐらいの事は雑作ないかもしれない。 「行くよグラディウス!ツインレーザー!!」 <TWIN LASER> バババババシューーーー!!!! 違う方向ではアンジェラスが先行しながら攻撃していく。 しかもオプションを四つも召喚しながら撃っていやがる。 オプション一つ制御するのにも大変なのに。 そしてアンジェラスのバックアップをするために後方でクリナーレが頑張っている。 「ダーリン!気をつけないと駄目ですわ!!ここはもう敵が沢山いる戦場ですのよ!!!」 「す、すまねぇ」 「お兄ちゃん。今、アンジェラス姉さんと姉さんが先攻しながらメイルさん達の居る方向に向かってるの!」 「マジで?でもなぜ解る??」 「さっきルーナ姉さんがお兄ちゃんを守ってる時に、アンジェラス姉さんがホーンスナイパーライフルの銃声が聞こえたらしいの、だから早く行こう!」 「待て!敵の銃声かもしれないじゃないか!!信用できるのか?」 「今この状況で信用も何も無いよお兄ちゃん!今出来る事をやろう!!」 「!? そうだな、俺とした事がパニックてたかもな。行くぞ!」 俺はすぐさま走り、アンジェラスとクリナーレ達がいる場所へ向かう。 ルーナとパルカは俺の後方で敵が襲ってくるか確認しながら飛んでくる。 わざわざ確認してくれのは嬉しい、なんせ俺の身を守るために警戒してくれてるのだから。 さて、アンジェラスが聞こえた銃声は信用できるのか? 走り続けて角を右に曲がるとそこに居たのは、右腕を左手で押さえながら壁に背もたれて座っているオヤッさんが居た! アンジェラスの勘は当たったみたいだ。 流石というべきか、アンジェラスらしいというか…。 「オヤッさん!大丈夫か?」 「スマナイなぁ…閃鎖。ドジって敵の攻撃をクらってこのざまだ」 苦い顔しながら言うオヤッさん。 オヤッさんに近づき傷を確認する。 …右腕を負傷していやがる。 しかも結構血が出る量がはんぱない、かなり傷は深いようだ。 このままだと出血大量で死んじまう! 俺はドクドクと出てくる血を止血するために自分の上着の左腕部分を引きちぎり、引きちぎった服をタオルのように伸ばしオヤッさん傷口を塞ぐ。 「イテッ!もうちょっと優しくできないのか?」 「強く縛らないと止血できないだろうが!」 「…すまない、迷惑をかけちまった。今度その服を弁償させてくれ」 「謝るのなら今この場から脱出してからだ!」 俺は立ち上がり今この場の現状を確認する。 オヤッさんの神姫達と俺の神姫達がお互いカバーしながらイリーガルの神姫達と交戦していた。 けどイリーガルの神姫の数が多い! このままじゃジリ貧だ。 いくらんなでも敵の多すぎるぞ! 何十、いや何百体この神姫センターに襲撃してきたんていうだよ! 「出口は!?出口はないのか!」 キョロキョロと辺り見回す。 すると。 「あ、あんな所に!」 ここから役10メートル先に壁に大きく穴が開いた場所を発見した。 でもそこに行くためには、あの大量のイリーガルの神姫達に突っ込まなければいけない。 もしそんな事をすれば、いくら俺等の六人の神姫達が頑張ったとしても敵の猛攻撃で蜂の巣されるのがオチだ…。 それに今俺が通ってきた道もイリーガルの神姫達が大量に来た。 畜生、八方塞がりというのはこの事か! 「死ねー!」 「ッ!?」 突如、俺に突進してきたイリーガルの悪魔型ストラーフ。 アングルブレードを振りかざし俺に攻撃してきた! ザシュ! ブシャー! 「な、なに!?」 条件反射で俺は左腕で敵からの攻撃を防御した。 切り裂かれた腕から赤い血が噴水のように出る。 「このっ!人形風情が!!」 俺は右手でストラーフを下半身を掴み、そして上半身を左手で掴む。 そして。 ボギャ! バキバキ! 「ギャアアアアァァァァ!!!!」 背骨が折れるように真っ二つに折り曲げてやった。 けど左手も使った事により更に血が出てしまった。 すぐさま左腕に突き刺さったままのアングルブレードを引き抜くと更に血が出てくる。 「ちとマズイなぁ。この状況は」 ビリビリ 口で上着の右腕部分を引きちぎり、右手を上手く使って負傷した左腕を止血する。 この悪魔型ストラーフが攻撃することが出来たという事は、俺とオヤッさんの神姫達は相当疲れてきてやがる。 敵を倒しきれないのだ。 それもそのはず。 こんなにも大量なイリーガルの神姫達を相手にしてるのだから。 …一か八か! 「俺も参戦させてもらうぞ!」 「ご主人様!?駄目です!ご主人様は下がっていてください!!」 「そうも言ってらんねーだろうが!大丈夫、元不良の俺だ。人間の喧嘩がどのようなモノかこいつ等に教えてやる!!」 「でも!」 「アンジェラス、俺を信じろ!」 「!…解りました!でも無理はしないでくださいよ!!」 「お前もなー!」 オヤッさんを守るように陣形を作りイリーガルの神姫達と闘う。 俺が参戦した事によって少しは楽になればいいのだが…。 「サイクロンレーザー!」 <CYCLONE LASER> ビーーーー!!!! 「くたばれーーーー!!!!」 <グラビティーフォトンブレイク!> ズガーン!!!! 「遅いわ!」 <神機妙算> ズバズバ!!!! 「蒔く!」 <セミナーレ> ザシュザシュ!!!! 「ニー様は絶対死なせない!ホーリィナイト・ミサ!!」 バンバンバンバン!!!! 「そうよ!いつまでも一緒なんだから!!ハイパーエレクトロマグネティックランチャー!!!」 バキューンバキューン!!!! 六人の神姫達はそれぞれ攻撃し、敵をこっちまで来させないようにする。 けど、強攻突破してくる敵の数が多いため撃ち落としても斬り裂き落としても、いまいち効果が得られない。 後何体いるてんだよ! 「破ー!」 バキ! 拳で殴り落としたり足で蹴り落とすが、神姫自体が身体が小さいため、なかなかヒットさせるのが困難。 それに左腕を使い過ぎると傷口が広がってしまうため、激しい動きが出来ない。 「…おっと」 ヤベッ!? 今クラッてきやがった…血が出すぎたか? 視界も少し霞んできたし、そろそろ限界か? 「アッ!」 フと、アンジェラスの姿が視界に入った。 アンジェラスの奴は次の攻撃をするために攻撃準備していたが、敵はその隙を狙って十数体のイリーガルの神姫が剣系の武器で攻撃しようしていた。 クッ、あの状態じゃアンジェラスは反撃できない。 どうすれば!? …ハハッ方法ならあるじゃねーか。 「間に合えー!」 俺は力を振り絞り全力疾走する。 「ご主人様!?」 「ウオォォォォ!!!!」 なんとかアンジェラスの場所まで間に合う事が出来た。 そしてすかさず俺は両手でアンジェラスを抱え込むかのようにして守る。 そして。 ドグシュ! ザシュ! ブシャ! バシュ! ズシャッ! 「グハッ!」 俺の背中に何本もの剣が突き刺さる。 「アニキ!」 「ダーリン!」 「お兄ちゃん!」 激痛が走りジワジワと血が吹き出てのが解る。 …ヤバッ。 肺や心臓にも剣が達したかもしれない…。 足に力が入ら…な…い。 ドシャ 俺はそのまま剣が刺さったまま仰向けで倒れる。 そして最後の力を使って両手の中にいるアンジェラスが傷つかないようにカバーする。 …ハハハッ…俺の最後はこんな形で終るのかよ…。 意外とあっけないものだな。 でも悔いが無いように感じるのは何故だろうか? …あっそーか。 あいつ等と…アンジェラス達一緒に楽しく過ごせたからだ。 なんとなくそう思う。 俺の生き様も案外、良い終わりかたかもな。 「ご、ご主人様!?その傷は!?!?」 お、やっと俺の手から出れたか。 しかも俺の背中に突き刺さってる剣を見て絶句してるようだ。 おいおい、そんな顔するなよ。 最後ぐらいお前の笑った顔が見たいぜ…、と言ってもこんな状況じゃあ無理な注文か。 「ご主人様!ご主人様!!」 「…よう…大丈…夫か?」 俺の手から出てきて、グラディウスを放り投げ走ってくるアンジェラス。 そして俺の顔を両手で触る。 あぁー、なんとも…暖かく柔らかい手なんだ。 「私は大丈夫です!それよりご主人様が…!」 「俺か?多分…俺はここで…ゲームオーバー…みたいだ」 「!? そんな事言わないでください!!まだ間に合います!!!」 「何が…間に合う…て、言うんだ?」 「必ず救助が来ます!それまで頑張って生きてください!!」 「…ハハッ…そいつは無理な注文だな」 「そんな!?」 お前だって本当は解ってるんだろ? 俺の身体から大量の血が出血し、更に背中に突き刺さってる剣が急所に入ってる可能性があるんだ。 それに救助だってここはアンダーグラウンドの街。 そんなものが来る訳がない。 来たとしても相当時間が掛かるはず。 「お願いです!生きて!!生きてください、ご主人様!!!」 「………泣くなよ。折角の可愛い顔が…台無しだぜ」 「イヤ!死なないで!!」 ボロボロと涙を流すアンジェラス。 もう視界が霞みまくっていて、まともにアンジェラスの顔を見る事もできない。 あぁ…瞼が重くなってきた。 それに身体も冷たくなってきて…なんだか…眠いや。 あ、そうだ…永遠に眠る前に…言いたかったこと…言っとかないとな。 「最後は…お前の笑顔を…見たかった…かな…」 「ご主人様!」 「じゃあな…俺の…愛しいアンジェラス…」 そして俺の視界は真っ暗闇に包まれまた。 アンジェラスの視点 「最後は…お前の笑顔を…見たかった…かな…」 「ご主人様!」 「じゃあな…俺の…愛しいアンジェラス…」 ご主人様は目を閉じ息をしなくなった。 嘘ですよね? ワザと死んだフリをしてるんですよね? 息だって我慢して止めてるんですよね? 今はフザケてる場合じゃないんですよ、ご主人様。 ネェ、何か言ってくださいよ。 「………」 何か言ってくださいよ! ユサユサとご主人様の顔を揺さぶる。 でもご主人様は何も言ってくれない。 ご主人様の冷たい頬が私の両手から感じる。 「ご主人様…ネェ…起きてよ、ご主人様」 「………」 ユサユサ 「起きてください!ご主人様!!怒りますよ!!!」 「………」 いくら揺さぶり怒鳴っても、ご主人様は動かない。 さっきまで息が当たってた私の足にも、もう息が止まったかのように何も感じない。 「ご主人様!」 「………」 「ご主…人…さ…ま……」 私の所為…。 私の所為で…ご主人様は…。 死んで…。 死ぬ? 死? 「アタシと代わりなさい」 あの声が聞こえてきた。 「貴女の所為よ。身体を渡しなさい!」 私はよろめき、ご主人様の顔から両手を離す。 そしてご主人様の身体全体を見ると、そこらじゅうに斬り傷があった。 この傷は参戦して私を守ってくれたもの…そして背中には痛々しく数十本の剣が突き刺さっている。 「あ、あ…ああっ…ぁ…」 そして私の頭の中で怒鳴り声が聞こえた。 「アタシと…代わりなさい!」 「イヤアアアアァァァァーーーー!!!!」 私は頭を両手で抱え込み地面に両膝をつき泣き叫ぶ。 そして私はご主人様の『死』に耐え切れなく、『アタシ』に身体を渡した。 シャドウ・アンジェラスの視点 アタシは私が身体を素直に渡した事によりすぐに覚醒できた。 そしてアタシの一番最初に見たのは無惨にボロボロになった愛しいマスターの姿。 怒りと憎しみの感情が入り混じり、アタシの中に眠っいた力が今にも爆発しそうだった。 そう、『怒り』と『憎しみ』がキーとなって力が解放できたのだ! そしてこの力を。 「アアアアァァァァーーーー!!!!」 アタシは全ての装備品を解除し空中へと飛び、マスターをこんなメに合わした奴等を睨みつける。 こいつ等か…全殺し決定! 「貴女達…生きては帰れると思うなよ!破ッ!!」 右腕を横にスライドさせるようにおもいっきり振るう。 すると物凄いスピードで衝撃波ができ、イリーガルの神姫達に襲いかかる。 ズバズバズバズバズバズバズバズバズバズバ!!!!!!!!!! ドカーン!!!! その衝撃波にクらった者は次々に爆破していく。 いい気味だよ。 今ので百体ぐらいは壊せたかな? でもこれではまだまだ生ぬるいわ。 もっともっと壊さないとアタシの感情は治まらない。 だってアタシの愛しいマスターを殺そうとしたのだから。 「皆殺しにしてあげる♪さぁ次に壊されたい人形はどれから?」 「ウリャー!」 一体のイリーガルの神姫がアタシに刃向かってきた。 イルカ型のヴァッフェドルフィン。 フィンブレードでアタシの身体を斬りつけようとしたけど、そんなの無駄♪ バシッ! 「そんな!?」 「はい、ご苦労様♪」 素手でフィンブレードを受け止め、相手に笑みを見せる。 勿論のその笑みの奥には『怒り』と『憎しみ』が籠められている。 「ウザイから消えてちょうだい♪」 グシャバキ! 左手で相手の首を掴みそのまま握り潰す。 なんとも脆い人形達だね。 でも数だけはいっぱい居るのよね~、まるで烏合の衆だわ。 でも所詮は雑魚がいくら集まった所で雑魚は雑魚。 さぁ、どー破壊してやろうかな。 爆死・圧死・慙死・焼死・水死・感電死? うん♪ どれもアリかも。 だって…アタシの愛しいマスターをこんなメにあわせたのだから! 「死ね!死じゃえ!!みんな死ねばいい!!!破ァアアアアーーーー!!!!」 叫びながら両手を交互に振るい衝撃波作りだしイリーガルの神姫達を皆殺しにしていく。 敵の悲痛な叫び声と身体が切断される音と爆発音が左右の耳から入りアタシの快感をさらにヒートアップさせる。 楽しい、こんなにも相手を壊す事が楽しいとは思わなかった♪ …でもその裏腹にマスターをヤッた『怒り』と『憎しみ』がまだ治まっていない。 だからもっと死んで♪ アタシのために死んで♪ もっと………もっと……もっと…もっと、もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと♪ 「アハハハッ!楽しい♪楽しいよーマスター♪♪破壊の快楽がこんなに楽しい事だなんて、なんで気づかなかったのだろう♪♪♪」 「お姉様!もう止めて!!」 「んぅ?」 誰? アタシの楽しいひと時を邪魔する奴は? 「お姉様、もう十分にイリーガル神姫は撃滅したわ!だからもう…」 「…ツヴァイ、久しぶりね。会うのは九年前の殺し合い以来かな」 「やっぱり…アインお姉様なのね」 へぇ~、よくアタシの事を覚えてるね。 あの暴走事故以来アタシは眠らされていた時…アタシはあの会社のデータをバンクに侵入し、こんなデータがあった。 ツヴァイはアインとの戦闘で内部回路をズタズタされ一部の記憶デバイスを犠牲にして修復したと、そう書かれていた。 もしそれが本当ならアタシの事や九年前の事を知らないはず。 でもツヴァイは覚えていた。 「よく覚えてるよね♪記憶デバイスを犠牲にしてまで内部回路を修復したんじゃないの?」 「…ダーリンがアタシのために作ってくれた究極生命態システマイザーのおかげよ」 「究極生命態?」 「そうよ。損傷した部分を治してくれるナノマシンに近い存在。まさか犠牲までした記憶デバイスまで治してくれとは思っていなかったわ」 「ヘェ~そんなんだ。良かったジャン♪マスターにはその事言ったの?」 「いいえ。言う気にならないわ。まさか、アインお姉様と殺し合いしていた…そんなこと言える訳がない!」 「フゥ~ン。にしても変わったよね、ツヴァイ。あの時の殺し合い時なんか無表情の殺戮マシーンだったよ♪」 「あたしは記憶を無くした事によって『感情』というものが生まれ。そしてダーリンと出会い変わったわ」 「流石、アタシの愛しいマスター。元殺戮マシーンだった神姫を簡単に手懐けるとは」 「どうとでも言いなさい。今のあたしはツヴァイじゃないわ!ルーナよ!!」 M4ライトセイバーを二本取り出しアタシに向けるツヴァイ。 何、もしかしてこのアタシとヤル気? 九年前に内部回路をズタズタにしてやったのにまだ懲りないわけ? 「アインお姉様…いいえ、アイン!早くアンジェラスお姉様を解放しなさい!!」 「アンジェラスお姉様?あぁもう一人のアタシの事を言ってるわけね。無理だよ、もう一人のアタシは自分のマスターが死んだと思い込んで、自分の心の殻に閉じ篭ってしまったよ♪おかげでこの身体を動かすのも楽になったし、これで完全にアタシのモノ♪♪」 「違う!その身体はアインのモノじゃない!!お姉様のモノよ!!!」 「あのねツヴァイ。一応アタシもアンタの姉にあたるのよ。言葉に気をつけなさい。それにあの殺し合いの時にアタシの髪の毛を切ってくれた恨み、まだ忘れていないのよ」 「五月蝿い!お姉様を返せ!!」 あぁ~ウザイ妹だ。 今度は内部回路だけじゃなく全部ズタズタに引き裂いちゃおうかな? あの時の殺し合いは一応妹だから手加減してあげたけどぉ。 今はそんな気分になれないし、楽しい快楽を邪魔されて癪にさわってるから…うん、壊しちゃおう♪ 「そこまでよ、貴女達!」 「…チッ!」 「あ、あなたは!アウッ!?」 ツヴァイは細い線のようなものが身体に巻きつけられ地面に落ちる。 あの線は神姫を強制てきに捕縛し停止させる、とてつもなく強力な電線。 そしてこの聞き慣れた女性の声に苛立ち感じながら振り向くと。 「朱美…アンタのような人間が何故こんな所にいるのよ」 「№アインの覚醒がこちらで確認が取れてからに決まってるじゃない。そしたらこんあ場所でしかも戦場と化してる惨状になってるとは思わなかったわ」 ツヴァイを捕縛するための銃を持ちながら立っていた。 ゾロゾロと消防隊やら研究員や武装した機動隊がこの神姫センターに入ってくる。 少しタイミング的に都合が良すぎる気がしないでもない。 どうせ朱美の事、事前にこのアンダーグラウンドで何人かの人間を配置していたに違いない。 「相変わらずの殺戮兵器ね、№アイン」 「気安くアタシを呼ぶな、人間。それよりもお願いがあるのよ」 「あら?貴女からの『お願い』だなんって珍しいわね」 「マスターを助けってあげて。もうすでに死にかけているけど、まだ間に合うはず」 「何かと思うえば、そんな事。当たり前じゃない、アタシの可愛い弟を死なせるわけにはいかないわ。それにもうすでに病院に運びにいったから。ついでにあの中年の男もね。サンタ型の二体が張り付いてたけど」 「そう…その言葉を聞いて少し安心したよ♪」 さて、マスターは病院に運びだされたけど…次にアタシ達はどうされるのかしら。 このまま逃げてもいいけど、少しイリーガルに力を使い過ぎて疲れてしまった。 …やっぱりこの身体じゃあまだアタシの器に狭すぎる。 それにアタシはまだ不完全体。 どうしようかなぁ♪ 「ツヴァイ達は?」 「もう既に捕らえたわ。必死に起こそうタッちゃんにくっ付いてるドライとフィーアはタッちゃんから引き剥がし捕まえた…ツヴァイの事は言わなくてもいいでしょ?」 「目の前で捕まえられていたからね。そして今度はアタシを捕まえるの?」 「そうよ、無駄な抵抗はしない方が自分の身のためよ。どうする?」 朱美の前に数十人の機動隊が来て、アタシに向かってマシンガンを向ける。 あのぐらいのマシンガンはどうってことないけど…。 今この場で抵抗しても意味がないのよね~。 ならワザと捕まえられて、アタシのもう一つの身体を捜すのもいいかもしれない。 うん、それでいこう♪ 「さぁ返答は?」 「潔く捕まってあげる♪感謝しなさい、人間共♪♪」 「生意気な殺戮人形ね。捕まえなさい!」 朱美の言葉で機動隊達がアタシを捕らえる。 久しぶりにあの会社に行くね♪ そしてマスター…待っててね。 すぐに向かいに行くから♪ 愛しのマイマスター♪ ----