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妄想神姫:第四十九章(後半) - (2007/11/05 (月) 00:21:10) のソース
**騎士姫と、覚醒せし鋼竜(後半) ---- USBを経由し、三機の“竜”に0と1で出来た魂が刻み込まれていく。 既に充電を済ませてあるそれは、超AIのデータ焼き込みさえ完了すれば 私のキータッチ一つで起動するのだ……皆が動向を、固唾を呑み見守る。 「80……90……よし、完了だ。これから起動する、気を付けろよ?」 「え、え?気を付けるって……ちょっと不安です。でも、分かりました」 「どんな性格になるかは私も分からぬ。襲いかかる事はないだろうがな」 アルマが少々怯えているので、私は彼女の頭を撫でつつ……キーを押す。 それと同時に、乱雑に分解されていたフレームにエネルギーが満ち渡り、 程なく“己の形”を取り戻すべく変形を開始したッ!紅い塊は、爬虫類を 想像させる四肢を持った、二足歩行の獣……恐竜の様な形態へと変じる。 「まずは一体。これがアルマの“竜”だ……と、こら落ち着けッ!?」 『グルル……ギャオオンッ!!』 「きゃああっ!?痛、この娘……お、落ちついてくださいっ、ねッ?」 「……甘えてる、という事でいいのかな?これは。かなり乱暴だけど」 「アルマお姉ちゃんの“竜”は、結構腕白な性格になりましたの……」 傍目には、角を持ったT-REXに襲われる少女……としか見えぬな。 だがマスター登録された神姫には襲いかからぬ様、細工は施してある。 未だ完璧と言えぬ私の情報処理技能だが、そこは入念にチェックした! なので、アルマの“竜”は……少々手荒だがあれでも一応問題はない、 続いて私はサーバのキーを操作し、他の機体も次々と変形させていく。 「次はロッテの“竜”だ、起動完了……って、出てこんな。どうした?」 『キュイィィ……』 「あうう~……あれ、ちゃんと翼竜の格好にはなってますよ、その娘?」 「ああ、そう言う事ですの……おいで、皆怖くはないですの……ほら♪」 ロッテが躊躇無く自分用の箱に手を差し込む。するとだ、にゅるりと首が 這い出てきた。やがて、小さな前肢と大きな下肢……更に大きな羽を持つ 蒼き翼竜の姿が露わとなる……だが“竜”は、周囲を伺っているばかりで 全く活発な挙動を見せん。少々予想外な事だが、これは間違いなく……。 「……この娘は小心者、という事になるのかな?マイスター、想定外?」 「有無。ベースプログラムは同一だからな……獰猛な性質を秘める筈だ」 「躯が違えば、魂の形だって変わってきますの♪変な言葉ですけど、ね」 怯える“竜”を可愛がるロッテは、そう確信していた。確かに言葉通り、 彼女ら“竜”……分類名“プルマージュ”と言う装備の超AIは、ぷちの それでありCSCではない……だがこうして神姫の様な“個性”がある。 データ上の仕様やバグとするのは容易いが、ロッテの解釈も然りだった。 無論ショップブランドの商品とするならば、原因は掴まねばならんがな? 「残るはボクの“竜”だね、マイスター。そろそろお願い、なんだよ?」 「有無。データの焼き付けは完了した……起動するぞ、っとうおっ!?」 『クルルゥッ♪』 「う、うわぁ……くすぐったいんだよっ。これは甘えん坊、なのかな?」 最後の“竜”は、変形した途端その姿を現した。即ち、東洋の“龍”。 そう、あの胴がやたらと長い方のアレだ。翠と白に彩られたその竜は、 アルマの紅き竜より素早くクララに飛びつき、その頬を擦り合わせる。 それ以上の力強い事をするでもないのだが、甘え方だけは随一だった。 「……しかし、見事に三者三様となったな。これは正直予想しなかった」 「“アルファル”とは違って、これは……わわ、手懐けるのが大変です」 『グァァ、グルルッ!』 「でも、その方が色々楽しそうなんだよアルマお姉ちゃん……よしよし」 『……クルルン♪』 「あ、そう言えば。この娘達の名前、付けてあげなくて大丈夫ですの?」 『キュィィ……』 「有無、称号を与えてはいるが名前も必要だな。考えてやってくれんか」 てんでバラバラの形で“竜”達を手懐けようと必死の三姉妹だが、そんな 状況でも良き名前を与えてやろうと、スキンシップを図りつつ頭を捻る。 そして程なく、皆は良い名前を思い浮かべた様だ。たかが“ぷち”の名と 侮るなよ?重量級ランクでは、彼女らこそが“妹”達の生命線なのだッ! ……ちなみに先程からの呼称で分かる通り、“竜”の超AIは女性格だ。 「じゃあですね、貴女は“ファフナー”!神話に名を聞く竜の名ですよ」 『グルォオオンッ!!』 「わたしは、“ウィブリオ”と呼びますの。ワイバーンの捩りですの♪」 『キュィ……キュウン』 「ん~……なら君は“リンドルム”でどうかな?一応毒竜の名なんだよ」 『クル?クルルッ!』 三匹の“竜”……“プルマージュ”は、己の名を了承したらしい。有無。 ここからは、戦闘に出られる程の絆を深めていく事が当座の課題となる。 曲者揃い故に多少時間は掛かるだろうが、是非やらねばならぬ事なのだ! 「今日から暫く、“アルファル”も駆使して彼女らを手懐けていくぞ」 「はいですの♪頑張って、この娘に“勇気”を与えてきますの。ね?」 「あたしはファフナーに“慈愛”を、力を扱う理を教えていきますっ」 「ボクは“自制”を。己を強く持てる意識を……皆、頑張っていこう」 『はいっ!!』 『グルォォォォンッ!!!』 ──────暫しの共同生活、どうなっていくのかな? ---- [[次に進む>妄想神姫:第五十章(前半)]]/[[メインメニューへ戻る>妄想神姫]]