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「予約」 - (2008/01/05 (土) 01:22:45) のソース
*第10話 「予約」 「うぬヌぅ……不覚ッ!またしても不覚ウぅぅぅぅッ!」 結局あの後、『どちらの言い分が正しいか、正々堂々と勝負して決めようではないかッ!』とエキサイトした大佐和とバトルしたのだが……結果は火を見るより明らかだったりして。 「だから言ったろうが。 今のお前のやり方じゃダメだって」 「……うむ。悔しいが、今回の戦いでよォく判った」 一転して神妙な顔で頷いている。 やれやれ、ようやく学習したか。 「ワガハイとB3に足りぬもの…それは火力ッ! 相手の反撃を許さぬ圧倒的な勢いでの攻撃力が足りなかったのだ! 考えてみれば簡単な事! 相手を倒しきる力なくして勝利なし! いやはやまったく、今まで敗北し続けてきたのもむべなるかなッ!」 ……まだそーいう口が聞けるかコイツは。 「中華料理における基本にして究極のコツと同じく、武装神姫に必要不可欠なものもまた火力であったとは……今回のバトル、それが判っただけで値千金ッ! 言葉ではなく実戦の中でそれを教えてくれた事に感謝するぞォ我が永遠の好敵手ッ!」 叫びながらものすごい勢いでバンバン俺の背中を叩く。 ……いくら俺がロビンマスク級の紳士だとしても我慢できる事とできない事があるぞ。 「コレやっぱ殴らなきゃダメか?」 半ば本音交じりにルーシーに話を振ったら、意外にも低い声での答えが帰ってきた。 「そうですね。 世の中には多少痛い目を見ないと物事を理解できない種類の人間もいます。 ここはひとつ、大佐和さんではなくB3のためと思ってこう……ゴリッと」 うわーなんかルーシーさんも怒ってらっしゃるー? 普段はコイツが俺のストッパーになる事がほとんどなんだが、今も『遼平さんがやらないなら私がやります』とでも言いたげにグレネードランチャーを……って、おい。 *ゴッ。 「ぶるゥあぁァぁッ!?」 後頭部直撃。 「あら失礼、どうやら暴発してしまったようです。 ところで大佐和さん、ご存知ですか? 戦場での死因は『流れ弾』というのが意外なほどに多いそうですよ」 痛みに悶絶して転げ回る大佐和の眉間にぴったりと照準を合わせ続け、にっこり微笑むルーシー。 ……武装神姫にはロボット三原則とか適用されないんだろうか。 「そッ……そういえば藤丘! 貴様が顔を見せぬ間になかなか将来有望な若者が現れたのだがなッ!?」 自分の急所にポイントされたグレネードを何とか下ろしてもらうため、大佐和は話題を切り替えようと必死だ。 ……仕方ない、乗ってやるか。 コイツが多少痛い目を見ようと知った事じゃないが、自分のマスターとルーシーの間で困っているB3のためだ。 「お前に比べりゃ大概の人間は将来有望だよ。なぁルーシー」 軽口を返しつつルーシーの頭を撫でてやると、彼女は「そうですね」とあっさりとグレネードをしまった。 元々一発だけで許してやるつもりだったんだろうが……ときどき意地悪だからな、うちの悪魔は。 それにホッとしたのか、大佐和の態度が元に戻る。 ホントにヘコまないヤツだ。 「いやいやいやいや、この神姫割拠の時代においてまさに綺羅星の如き大活躍! 今やかなりのファンもついておるから侮れんぞォ!」 コイツの言う事がいちいちオーバーなのは分かっている。 聞くにしても話半分がちょうどいい。 「ワガハイも何度か対戦して知り合いになったのだが、生憎まだ学生の身で平日は来る事が出来んらしい」 「大佐和さんも一応学生だったんじゃありませんか?」 「一応とはナニゴトッ!? 良いかねルーシー嬢、自らに許された自由な時間をいかに有意義に使うかもまた勉強のひとつであるッ! こと行軍中ともなれば、わずか数分ほどの休憩時間でどれだけ気力体力の回復に勤しめるかが軍人たる素養の良し悪しを決めると言っても過言ではな」 「お前は何処の紛争地帯で生まれ育った傭兵だ」 長くなりそうな大佐和の言葉を切り捨ててやると、不満げではあるものの再び本筋に戻る。 「……ともあれ、平日はムリだが休日はほとんどの場合ここへ来る。 どうだ、一度試合をしてみては?」 なにやらコイツが妙に楽しそうなのが引っ掛かるが、まぁ色々なタイプと戦ってみるのはいい経験だろう……とルーシーに視線を送ると、大佐和はソレを勝手にOKと見たらしい。 「ンよォし決まりである! 相手にはワガハイが話を通してセッティングしておくゆえ、今週の日曜日午後にここへ来るがいい!」 否定しなけりゃ肯定と見なす……前向きってよりはDEADorALIVEって感じか。 「分かった分かった。 2時くらいでいいか?」 「了解したッ! それでは健闘を祈っておるぞォ! んなーっはっはっはっはァ!」 いつもの高笑いをしながら立ち去っていく後姿を見てると、なんだかとてつもない疲労感を感じた。 「……んじゃ俺らも帰って、日曜日に備えるとしますかね」 「そうしましょうか」 苦笑するルーシーを肩に乗せ、俺はセンターを後にした。 前話[[「友人」]]へ [[『不良品』トップページ]]へ 次話[[「一歩」]]へ