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Informal Hunt ◆WWhm8QVzK6




                  ◆◆◆


渚を連れて外に出たときちくは、果たして若干の呆れ顔となった。

「いたのか……」

家の外壁にもたれかかる様に、雪歩が立っていたのだ。
どこか心配そうな表情が見受けられる。

「ああ、こいつな。とりあえずは協力してくれることになった」

「……ときちくさん、ちょっといいですか」

「あ?」

5メートルほど下がって雪歩は言い放った。
どうやらときちくとだけ話がしたい様子だ。

「ああ、お前は下がっておけ」

渚を言葉で固定させておいて、彼は静かに雪歩のところへ寄った。

「何だ」

ひそひそと蚊のような声で会話する。

「……いいんですか?最初の目的からずれてません?」

「最初の目的…?ああ」

最初の目的。
二人で出会った人間を殺していき、最後に残った方が願いをかなえてもらうという話。
眼鏡の男のこともあったので、雪歩は少し違和感を覚えていた。

「方針は変えてない。ただな、目的を遂行するにはやり方ってものがあるだろ?
 あいつはそのための布石だ。何れはあいつに死んでもらうことになるさ。
 最後に残るのは、俺とお前のどちらかだ。それは変わらない」

「そう…ですか」

そう言ったものの、表情はまだ昏い。

「まだ何かあるのか?」

「いえ…あの人、なんだか怖いんです……気をつけた方がいいかと」

「言われなくとも分かってるよ」

お前にも十分気をつけるけどな、と心の中で彼は呟いた。

「よかったな、お前。こいつにも了承してもらえたし、早速戻るか。
 ああ、それより自己紹介しとけよ。それなりのつきあいになるだろうし」

「萩原雪歩です…」

「…野々原渚です」






粛々と事は進められ、それぞれの思惑を胸に目的地へと向かうことになった。
スタンスは違う。一時的の協力は、それに拍車をかけさらなる不和を生む。
それを承知での協力であり、だからこそこうして共に行動することになったのだ。
利点は、あるだろう。だがそれは時として、人によっては全くの不利にしか見えないものである。

だから彼女は、その例外に漏れず、思う。

(何よ……あんたたちの考えてることなんかすぐ分かるんだから。
 どうせ私が邪魔になったらすぐに殺すつもりなんでしょ?そういうことで
 その女も了承したんでしょ?見え見えなのよそんなの……!!)

そういう不信を抱くのはある意味当然とも云えるのだが、彼女のは度を超えていた。
彼女本来の性格によるものもあるが、前まで共に行動していたブロントという男の軽挙。
その所為でこうやって傷付くことになり、みすみす惨めに逃げなければならなかったのだ、と。
そういった時間経過と状況によるストレスの蓄積により、かなりの人間不信に陥っていた。
こうやって行動すれば、再び同じような目に遭うのではないか。
そういった疑念が彼女の心の中で渦巻いていたのだ。

(ふざけるな……誰がお前らなんかについていくもんか。
 さっきは脅されてただけ……従うとでも思ってるの?あんたたちと行動したってもう何の意味もないのよ!)

行動していくうちにいずれはあの女とも顔を合わせるかもしれない。
いや、すでに情報は知られているのだ。その情報は知れ渡って彼女の知らない
人間までが彼女を危険視することになるだろう。これから誰と出会うことになっても、
野々原渚は自身の身が危うい状況に貶められるのだ。

そんな状態で、彼女が平静を取り繕えるはずもない。
起こそうとするのは現状打破。
自分を守りたい、自分の危険を排除したい。
ただ、その一心で


            ――あんたなんか、死んじゃえ――



                 ◆◆◆


彼は幸運だった。
いや、この場合どちらも幸運だったと言えるだろう。
結果的に物事はうまく作用し、プラスマイナスゼロといった形になった。

ただし、痛み分けという意味で。


「がっ……――――――!!!!」


背中に奔る激痛。
刺すような痛み。
衝撃と同時に一瞬にして沸き起こる。
錯覚ではない。刺されたのだ。何故?
――ではなく、誰に?
彼横にいる女、雪歩は何が起きているのかわからないといった顔をしている。
おまけに距離は1メートル以上は離れている。その状態で彼の背中左部分を刺せるかといえば、無理だ。
では残りは後ろにいる女、野々原渚、か。そうとしか考えられない。
だが、バッグを奪っている以上武器は持っていないのだ。その後も彼は観察していたので分かる。
行きつく結論は、容易い。

(武器を――隠していたのか――!)

どこに隠していたかを彼は知る由もないが、敢えて言っておくと
彼女は靴下に、家から調達したアイスピックを忍ばせておいたのだ。
丈の長いチャイナドレスのお陰で、ときちくの注意を逸らすことに成功した。
偶然とはいえ、こうして要因の一つは完成したのである。

得物が引き抜かれる感触。
二撃目を繰り出すつもりか。
そう判断したときちくは、すぐさま前面に転がり出た。
寸のところで頭上を何かが掠める。

「きゃああああああっ!!?」

彼は転がったその拍子で、バッグを2つとも取り落としてしまった。
それに走り寄る渚。
手を伸ばそうとするも、彼の体勢では遅れる。
かろうじて一つのバッグを蹴り飛ばし、もう一つは奪われるという結末で済んだ。
だが、まだ終わってはいない。

渚は自分の服の胸の隙間に手を突っ込み、中からカプセルのようなものを取り出した。
それが容器であるならカプセルと言って差し支えはないだろう。
ただし、中に何が入っているかといえば、

パリン、と。
ガラスが割れる音がすると同時に中からヒトガタが現れた。
ヒトガタと形容したのには理由がある。
全身を青と赤を基調としたスーツ……とも言い難い。
体に直接色が付着しているようで、おまけにその肉体も無機質な雰囲気を漂わせている。

何より、そいつの頭部は、まるで機械だった。

「そいつらを殺っちゃって!!」

そう言うや否や、渚は逃走を開始した。

「待て!!」

待つはずもなく、少女は闇へと駆けていく。
そしてその姿を遮るかのように、カプセルから出てきたヒトガタが立ちはだかった。

「誰だお前は……?」

そいつは答えない。
その代り、ときちくを強い既視感が襲った。
いや、フラッシュバックというべきか。

(確か……こいつは……)

かろうじて思い出せない。
サイボーグ忍者。ディープ・スロート。グレイフォックス。
決定的な理解に記憶は追い付かない。
だが、それに気を張っている暇はなかった。

「邪魔をする気か…」

「――俺はただ、お前と戦うだけだ……」

そういうと男は、手に持った刀を構える。
交渉も期待できそうにない、とときちくは判断すると、一歩後ろに飛んでバッグからモンスターボールを放り投げた。

「行け!ネイティオ!――」

支給品には支給品。
とにかく今は体勢を立て直すことが重要だった。

投げたモンスターボールが開き、赤い光が流れ出ると同時にポケモンが姿を現し―――

びちびち。

びちびち。


「――てええええええええええええええ!!!!??」


モンスターボールの中身は直接は見えない。
トレーナともなればベルトに付けて位置を把握しているのは当然だが、生憎彼はそうではない。
自分のバッグが、こけた拍子に野々原渚のと入れ替わっていることに気付かなかったのだ。

そして、目の前にいるコイキングを見た時の彼の驚きようは尋常ではない。
態勢を落ちつけようと思ったら逆に自分で壊していた。何を言って(ry
…無理からぬ話ではあるが。

哀れにはね続けるコイキングにサイボーグ忍者は目をやると、綺麗に刀を突き刺した。
それでもまだびちびちと暴れるコイキング。

「…お前はなぜこのネイティオとやらを出したのだ?」

(いや、それネイティオじゃありませんってば)

なんて口に出せるわけもなく、頬に冷や汗を伝わせながらゆっくりとブレードを構えた。
もはや、戦うしか選択肢はない。

「雪歩、下がってろ!」

「は、はい……」

風もないのに冷たい空気が漂っている。
距離はおおよそ4メートル。
お互いが踏み出せば一足で間合いを詰められるくらいだ。
有り得ない、感じたこともない久しぶりの緊張感を彼はまざまざと味わっていた。

瞬。

剣戟と火花が飛び交った。
一般人ではおおよそ目で追えそうにない速度。
わずか一秒の間に数撃の刃がときちくを襲う。
それを彼は、ギリギリのところで弾いていた。
知識が、経験が、暗殺者としての神経が彼の肉体を動かす。
実際まだ余裕はあるものの、先程の動揺が拭い切れていなかった。

(やっぱり殺すべきだったか……)

反抗されることはあるだろうと思っていた。
だがそれが、協力関係を結んでからたった数分で破られるとは思いもしなかったのだ。
背中の刺し傷が疼く。
奇跡的に内臓や主要な血管を傷付けてはいなかったが、それでも血が流れ続けていた。
このまま動き続ければ拙いことになりかねない。
人間としての彼の考えが、脳裏にあった。

「!!」

突如、男の姿が消えた。
闇に紛れたとかそういうレベルではない。
何か、ベールにでも包まれたかのように掻き消えたのだ。

「馬鹿な……」

『どこを見ている』

ステルスか――。
声の出どころがわからない。
耳をそばだてようにも自身の心臓の音が五月蠅い。
正面か、後ろか、左右か。それとも、

ザッ、という音。

「上か!!」

予想は当たった。
切り結ぶ刀と刃。
次第に相手のステルスが解けて姿が現われてくる。
おそらく、意図的に解いたものであろうが。
必殺と決め込んでいたようで、その刀には全体重が掛けられていた。
それをときちくは、なんとか右へと往なす。

「ほぉ…今のを止めるとは中々だな」

そう言いながら、そいつはまた闇へと消えた。

「どうも……」

誉めてはもらったもののあまり喜べる状況ではない。
方向がわかってもどの位置から攻撃してくるかはさっぱりわからなかったので
先程のはほぼ勘で対処したと云っていい。
つまり、次はないということに他ならないのだ。

ステルス状態の敵を視認することはときちくには無理だ。
相手の動きを探ろうにも、そのまま忍び足で来られたならば対処のしようがない。
ならば、どうすべきか。

何を思ったのか、ときちくはすぐさま後方へと駆け出した。

『…逃げる気か?』

追いかけてくる音。
タイムラグのお陰で一応距離は開けられた。
今の彼ならば、それで充分。
ブレードを腰に戻し、そのまま彼は両手を構えた。

「そうだ、それでいい……。戦いの基本は格闘だ」

男も刀をしまい、丸腰になる。
乗ってくれてありがたい。
思惑としては素手での戦闘に持ち込むことで致命傷を避けるのが目的だったのだが、
相手が乗ってくれるかどうかが心配だった。だから一旦距離を開け、様子を見たのだ。
若干危険ではあったが、ステルス状態の敵をそのままで相手するよりはマシと考えたのだろう。
それに、目の前の男がこういうことに乗ってくれるとどこか確信があったのかも知れない。
どこから来るものかは、当人にもわからなかったが。

「武器や装備に頼ってはいけない」

(ステルス使うお前が言うなよ、と)

軽口を叩く暇はない。
一刻も早く此処はケリをつける。

すかさず相手の懐に潜り込む。
そしてそこから相手の拳をくぐりぬけ、顔面にフックを二発お見舞いした。

「ガァッ……!」

効いたようではあるが、ときちくはそのまま攻め込めず、再び奮われた相手のストレートを避け、
後方に下がるだけに終わった。

「硬っ……」

わかってはいたことだが、やはり相手の肉体は特別のようだ。
拳を入れるだけでもこちらにダメージが入る。
あぐねている最中に、再びそいつはステルス状態になった。

「言ってることとやってることがちぐはぐだな、オイ……」

愚痴をこぼすも、届きはしない。
近くにいるのか、まだ遠いのか。
そして後ろからの衝撃。

「っ……!!!」

脇腹に蹴りを入れられた。
かなり痛い。鉄棒で殴られたようなダメージだ。
二撃目の攻撃は僅かに顔を掠め、それを頼りに相手の腕を掴む。
痛みに耐えながら、そのまま足を思い切り絡め取った。

ドン、と相手の体から地面へ叩きつけられた振動が伝わる。
自身の体重も含めアスファルトの上に思い切り傾れこんだのだ。
これでダメージがなくては困る。
しかし、相手はまだ健在のようだ。

体が、宙を舞った。
正確には、ただ無様に身体が吹っ飛んだにすぎない。
痛みに声を上げることも忘れ、そのまま5メートル程ゴロゴロと転がる。
しかしそれを堪え、なおもときちくは立ち上がった。
痛みはある。だがそれだけだ。実際にダメージはそれほど受けてはいない。

だが、現状は何も変わらない。
またしても振り出しに戻っただけだ。
そして、さらに数度の拳や脚の応酬が続く。
どちらも退くことはない。事態は、何も変わっていない。
と、その時。

「どうした?もうお終―――」

男の身体が突如光に包まれ、セリフを最後まで言い終わらない内にその場から姿を消した。
代わりに残っていたのは、男を模したと思われるフィギュアが入ったカプセルだけだ。

「……???」

唖然としていた。
何が何だかわからない。
軽くポルナレフ状態に陥ったときちくであった。
彼が知っているわけもないのだが、発動から5分が経過すると、このフィギュアは元に戻る仕組みになっていた。
そしてその後はしばらくしないと使用できない。

十秒も呆然としていると流石に我を取り戻し、そのカプセルを拾った。
叩いても振っても何も起こらない。

「何か発動条件でもあったのか?まあいいけど……」

ときちくはそれをデイパックに収め、そのまま渚を追おうと歩きだした、が。

「あれ?あいつ……どこ行った?」


雪歩が、いない。
この場から、影も形もなくなっていた。
そして、離れた場所から響く銃声。
それで彼は全てを理解した。

「あの馬鹿……!!」


                   ◆◆◆


「ふぅん、一人で追ってきたんだ。あいつを待たなくてもいいの?」

「関係ありません。私が、あなたを殺します」

現場から100m離れた家の庭で、少女が二人立っていた。
一人は野々原渚。
そしてもう一人は、萩原雪歩。
雪歩の緊迫した様子とは裏腹に、渚は余裕を見せている。

「へえ……私を殺せるの?猫も殺せなさそうな顔してるけど」

「とっくに……一人殺してます」

ハ、と。
渚は嗤った。

「……何がおかしいんです?」

「いいや別に。まあ、それじゃあいい気になるかもね……。
 だけどそれは、あんたの意志だったの?」

嘲笑い、舐めるように渚は言う。

「何を」

「あんたが自分の考えで人を殺したの?って聞いてるのよ。
 どうなの?あいつに命令されたんじゃないの?」

「違――」

わない。確かに雪歩は、ときちくに命令されて一人、ルイージを、殺した。
だけど、それがどうした。そう、雪歩は問う。

「あんたさ、いいようにあいつに操られてるだけじゃないの?
 いいように使われて、いいように殺しをさせられて。あんたはそれでいいわけ?」

そんなことはない。
言い返したかった。でもそれは、

「所詮人形なのよ、あんたは。あんたと組んでもいいかな、って思ったけど逆に足手纏いになりそうだし。
 此処で殺してあげるわよ。ありがたく思いなさい」

違う。
私は――

「だからおとなしく……何、その目。ああ、そう。そんなに殺してほしいの?
 いいわよ、来なさいよ!人形の分際で!!」




「――――――人形じゃ、ない!!!」



乾いた銃声。
リボルバー式の拳銃は、持ち主の意思どおりに弾を発射した。
しかし、それまでだった。

当たらないものは、当たらない。

何を言っても彼女は一般人でしかないのだ。
そんな者が銃を扱えるかといえば、疑問符を五つ並べたところでは足りない。
そもそもルイージを殺せたのだって零距離から撃ったからであり、実質のところ命中精度は杜撰にも程があるのだ。
だから、当たらない。掠りもせず、見当違いな方向へ命中した銃弾を尻目に、渚は一気に距離を詰める。

「ああっ!!」

殴られた。
その拍子に一時的に顔面が変形する。
渚はアイスピックを持った左手で、思い切り殴り抜けたのだ。
敢えて武器を使わず、素手で攻撃した。
そのまま雪歩は地面に倒れ、仰向けになる。

起き上がろうとする――暇もなく、簡単にマウントポジションを取られた。
完全に固められてはいないが、のしかかられた衝撃で動きを止めるに至る。

「気に入らないのよ、あんたみたいなのは」

そう言うや否や、渚は再び雪歩を殴った。

「強い奴の横にいれば自分も強くなったと勘違いしてるんでしょ?」

「がっ……!!」

殴った。

「強い奴の言う事を聞いてれば死なないと思ってるんでしょ?」

「ぅあっ……!!」

殴った。

「力もないくせに調子に乗ってんじゃないわよ。この蟲が!」

また、殴った。

素手で殴り続けたせいで、渚の左手はかなり傷んでいた。
尤も、雪歩が受けたダメージほどではないが。
胸、首、顔と立て続けに殴られ、痛みが疼く。

「…………」

殴られたショックや痛みで抵抗する気力もなく、雪歩は沈黙してしまった。

「……もう言い返す気力もないのね。まあ、いいわ。これですっきりしたし」

そういうと渚はアイスピックをそばに放り、代わりに落ちている拳銃を手にする。

「じゃあね、バイバイ」
何も考えられない。
此処で死ぬのだ、という実感も湧いてこない。
ただ、ぼんやりと今までの事を考えた。
今までの自分の人生。今までの自分の生き方。
人形みたいだと言われれば、そうでないとも云えるし、そうであったとも云える。
常に自分は意志を持てていたんだろうか?
自分は本当に必要とされているんだろうか?
道を踏み外すのが怖くて、逆に合わないレールに乗っている。そんな気がした。
何も考えられない。
何も考えられない。
何も考えられない。
何も考えられない。
何も考えられない。
黒いモノがこっちを向いてる。誰かが嗤ってる。
何も考えられない。
何も考えられない。
何も考えられない。
何も考えられない。


















そんな状態とは裏腹に。

腕が、動いた。





「―――――っつ、あ――――――!?」



刺さった。いとも容易く。
実際のところ、相手が油断していたのだから反撃は容易だったのだ。
要は、心の持ちようで。そして運も重なって。
ぽとり、と拳銃を取り落とす。
女が苦痛に呻いている。惨めに蹲っている。
自分もさっきこんな感じだったのかと思うと、呆れる。
だがその前に。やらなければならないことがある。

かちり。

「……!」

銃口を額に押し付ける。
人の骨の感触が伝わってくる。
これなら絶対に外れない。一歩進んでダメだったのなら、前と同じ方法でやればいい。
女が目を見開いている。何か言おうとしてる。

そんなの、関係ない。

「五月蠅い」

「やめ―――――!!!」


ぱん、と。今度こそ。
銃弾は、渚の頭蓋を貫いた。




(あ―――おにい、ちゃん―――)

走馬灯というべきか。
かつて過ごした平穏な日々。
ペルソナをかぶり続けることで過ごせた日々が、そこにあった。
だが、肝心の兄の顔は、浮かぶことはなく。

彼女の意識は、完全に闇に堕ちた。








【野々原渚@ヤンデレの妹に愛されて夜も眠れないCDシリーズ   死亡】

                  ◆◆◆

経過二発。
音の出どころに辿り着くのは容易だった。
傷はあまり問題ない。
消毒やら何やら必要だが、思ったより自分は丈夫なようだ。
そんな事を考えながらその場に辿り着く。

「ああ、ときちくさん」

「―――お前」

血に濡れた少女の姿。
だが、それは彼女自身の血ではなく、その下に横たわっている女の返り血だった。

「がんばりましたよ、私。一人でも出来ました」

窘めるべきではない。それはわかっている。
だけど、褒めていいのか?よくやったと言うべきなのか?
言ってはいけない。うっすらとそんな予感がした。

「……そうか、殺したんだ、な」

そんな言葉しか言えない。
それ以上に無難な言葉が思いつかない。

だけど、そう言うと、雪歩は薄く笑った。
その眼は、夜の暗がりより、とてもとても、暗かった。






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