2v2アラインメント理論
以前の議論では、敵チームのアラインメントを考慮せず、ただ自チームの攻撃力のみを重視していた。これは単に「めんどくさい」という理由もあったが、一般的な議論としては十分な意味があると考えたからでもある。しかし当然のことながら、具体性の点では不十分であり、あれをそのまま実践で活用しようとするには相当な経験が必要であった。
そこで今度は、自軍敵軍全てのアラインメントを考慮した、2v2アラインメント理論のいわば完全版を提出したく思う。2v2は非常に奥の深いゲームだが、ことアラインメントに限って言えば、その組み合わせのパターンには絶対的な限定が存在する。かつまた、アラインメントは、Wesnothというゲームにおいて最重要であるから、この理論はあらゆる2v2戦略の根底となるであろう。
まず、2v2におけるアラインメントの組み合わせは、全部で16種類存在する。これは以前作成した「2v2アラインメント全組み合わせ強弱表」を参照されたし。本項を読む際には、この表を別のウインドウで開いておくと便益であろう。ただし、この表には「中立陣営」は加味されていない。しかしこのことはとりわけ問題にはならないだろう。中立陣営は相手陣営のアラインメントによってその立場を相対的に変えざるを得ない陣営だからである。かくして、アラインメントを混沌(C)と秩序(L)に限定した場合の組み合わせは全部で16種類であり、これは揺るがない。
さらにこのパターンは大別すれば、たった3種類に収斂させられる。すなわち、「4-0型」「3-1型」「2-2型」である。では順に見ていこう。
- 「4-0型」CCCC LLLL
「4-0型」は敵味方全てが同一のアラインメントからなる組み合わせである。つまり、全員混沌か、全員秩序かの2種となる。
- 「3-1型」CCCL CCLC CLCC LCCC CLLL LCLL LLCL LLLC
「3-1型」は、敵味方合わせて一つの陣営のみが異なるアラインメントのパターンである。大きく分ければ、混沌3に秩序1、秩序3に混沌1の2種類しかないことになる。しかし、2v2では、1p2p3p4pの別が重要になるので、何pが違うアラインメントなのかを看過すべきではない。従ってこの型に属する組み合わせは、上記8種ということになる。
- 「2-2型」CCLL CLCL CLLC LCCL LCLC LLCC
「2-2型」は秩序2と混沌2から構成される組み合わせである。これも行動順を加味すれば、上記6種となる。
次に、アラインメントと特に関係の深い行動順、1v1であれば「先攻」「後攻」の概念にあたるものについて検討しよう。基本的に2v2は、1p-4p、2p-3pがそれぞれチームを組むことになる。従って、単純に1p側が先攻、ということにはならない。ここで前提にすべきは、時刻変化の直後に行動できるのは1p、時刻変化の直前に行動しなければならないのは4pという点である。そうすると、2v2における「先攻」「後攻」は以下のようになる。
1p先攻―2p3p後攻/2p3p先攻―4p後攻
チーム1(1p4p)では、敵チームに対し1pが常に先攻であり、4pは常に後攻である。しかし、チーム2(2p3p)は1pに対しては後攻であり、4pに対しては先攻でもある。この事情が2v2というゲームを複雑にする最大要因であろう。ただでさえ先攻と後攻の別は、アラインメントと時刻を考慮する際、ゲームに大きな影響を及ぼすものだからである。なお先攻と後攻の基本的な概念については、「総攻撃タイミング理論」や「1v1理論」を参照されたし。従って、2v2をする際には、まず自分が何pなのかを確認し、ゲーム中にいかなる立場におかれるのかを認識しておかねばならない。
以上2点、すなわち「アラインメント組み合わせの型」及び「チームごとの先攻後攻」という点を踏まえて、2v2アラインメント理論を具体的に展開してきたい。
1. 「4-0型」
例)「全混沌型」
1p先攻混沌―2p3p後攻混沌/2p3p先攻混沌―4p後攻混沌
同アラインメントでの基本的な考え方からすれば、この場合、先攻は後攻に対して比較的有利である。なぜなら、時刻の変わり目は常に先攻の時点で訪れ、夜1での強攻撃を先に仕掛けることが可能になるからだ。しかし2v2では話が変わってくる。
確かに1pは2p3pに対して常に先攻である。従って、1pが先に強攻撃を仕掛けられるという事実は変わらないが、この時問題となるのは、2p3pの反撃も強攻撃だということだ。これは同アラインメントならではである。ここに、2p3pが容易に連携可能なほどマップが狭い、という条件を加えてみよ(代表的な中規模2v2マップのほとんどでこれは可能となる)。1pは2p3pから壮絶な反撃を被ることになる。そして夜間の戦闘が長引けば長引くほど、逆に先攻は不利になる。なぜなら、夜明けや朝が先に訪れるのも先攻だからだ。「4-0型」では、1pの先攻としての有利さなど、ほんの些細なつまづきによって消し飛んでしまう。
そしてこれを補うのが当然4pの仕事となる。しかしここでも1v1にはない問題がある。もし1pのアシストをしようと前に出すぎれば、今度は2p3pの目は4pに向くだろう。そうすると、先攻有利後攻不利の原則を倍加した利益を2p3pに与えることになる。夕方あたりにふらふら出てきた後攻混沌を、先攻混沌の二人がかりで攻めることが可能になるからだ。結果は壊滅である。
また連続攻撃に関しては、チーム1の場合、時刻をまたいだ4p-1pの順で可能となる。従って、チーム1が強攻撃×2を繰り出せるのは、夜1から夜2にかけての一回だけである。後は、夕方から夜1、夜2から夜明けにおける中強・強中攻撃が残されるのみである。ところがだ。チーム2(2p3p)は、夜1と夜2の二回強攻撃×2を繰り出すことができる。また夕方と夜明けにも中攻撃×2が可能である。従って、もし両チームの連続攻撃が完璧であり、真正面からぶつかったとすれば、どう見積もっても夜間の戦闘は、チーム2が有利となる。
以上を考慮すれば、「全混沌型」チーム1の戦略は次のようになる。まず、夜1の2p3pの連続攻撃はかわす必要がある。そして本格的な戦闘は夜1の4pから開始するのだ。こうすると、4p強1p強―2p強3p強―4p強1p中―2p中3p中という展開になり、名実共に、「先に強攻撃を仕掛ける」ことが可能になる。つまり、1pは、あえてその「先攻権」を放棄し、後攻として動くことになる。
ここで一つ注意しておくならば、これは「多くの2v2マップでは連携が可能」ということを前提としているということである。もしそのような連携が不可能な広いマップであれば、ほとんど1v1マップと同じような考え方でプレイすることが肝要であろう。その場合、1pが本項で述べたような戦い方をすれば間違いなく崩壊する。
また「全秩序型」チーム1についても同様に、本格的な戦闘は朝の4pから開始すればよい。
従ってまた、「4-0型」チーム2の戦略も自ずと定まる。こちらは、もし連携が可能なのであれば、完全なる先攻として動けばよい。つまり、夜1の2pないし朝1の2pから戦闘を開始できるようにすればよいのだ。
以上が「4-0型」の根本原則である。あとは様々な要素を加味して応用していくことになる。例えば、「具体的にいかなるマップでは2v2アラインメント理論を踏まえなければならないか、あるいは踏まえてはならないか」、「陣営中の勇敢ユニットの多寡による不得意時刻の戦闘の是非」などである。さらにより具体的な戦略として、「いかにして2v2アラインメント理論の状況に持ち込むか」といった議論もあろう。漠然とした例を挙げておくと、1pが夜1にうっすらと前に出て、2p3pの突出を狙うようにし、かつその隙に2p3pを夜1に先制強攻撃できるように4pは前もって適切な布陣を敷いておく、などである。
2. 「3-1型」
この型については、「4-0型」以上に複雑なのではないかと思われる向きもあるかもしれないが、そうではない。というのは、時刻によるチームごとの強弱が「4-0型」以上に鮮明に出るからである。これもまた連携を前提とする議論であるが、例えば「混沌3-秩序1型」であれば、秩序1を含むチームは、日中にやや強く、夜間はやや弱い。これは組み合わせ表を眺めるまでもない、明々白々たる事実である。この強弱はあまりに鮮明に出るため、その秩序1が何pであるかはそこまで大きな影響は持たないだろう。
もちろん細かいことを議論することも可能ではある。例えば1pC/2pC/3pC/4pLであれば、4pLから1pCの連続攻撃を考慮し、朝2から夜へかけての連続攻撃が有効だということになろう。しかし、結局夜になると4pLは撤退することになり、1pCも後退せざるをえなくなる。1pL/2pC/3pC/4pCであれば、夜2から朝へかけての連続攻撃が有効になろう。この場合、朝はやはりチーム1にとって有利なので、そのまま攻め続けられよう。逆に、チーム2に秩序が混ざるケース、例えば、1pC/2pL/3pC/4pCだと、チーム2にとって、いかなる時刻においても強力な連続攻撃は存在しない。むしろ漫然と日中に戦う方が効果的であろう。
というわけで、「3-1型」では「1を含むチームは、その1の有利時刻に戦闘することが有利である」という根本原則を打ち立てられよう。これ以上の議論はやはり応用編ということになる。先と同様に「いかなるマップでは連携が可能か」という議論に加え、例えば、「日中の戦闘が有利なチームの混沌陣営は勇敢ユニットを多用する」方がよいのか「チーム内でのユニットの交換」の方が有用であるのか。これはおそらく連携しやすさの程度に依存しよう。そしてやはり、こちらの得意時刻に戦うための戦略的工夫に関する議論が必要となる。
3. 「2-2型」
このタイプは全部で6種だが、「混沌vs秩序型」「混合型」の2種類に大別して検討することが適切であろう。
「混沌vs秩序型」
例)1pC/2pL/3pL/4pC
これは判断が容易であろう。どう考えてもチーム1は夜間に戦い、チーム2は日中に戦うのが最善である。ただし一つだけ注意点がある。チーム2日中の連続攻撃は二回の強攻撃×2となり、圧倒的である。が、他方チーム1夜間の連続攻撃では、強攻撃×2となるのは夜1から夜2にかけての一回のみである。これには例の先攻後攻が関わっている。つまり、連携を前提とすれば、チーム1は全体として後攻であり、チーム2は全体として先攻である。従って、チーム1は夜1に逃げ遅れれば、即壊滅となる。が、チーム2は、朝の1p強攻撃を多少受けたとしても、それから逃げれば4pの強攻撃はかわせるし、そこからの連続攻撃も未然に防げよう。
つまり、この組み合わせは、1v1で言うところの逆アラインメント、先攻秩序(2p3p)―後攻混沌(4p1p)であって、チーム1は後攻として、チーム2よりも機敏なプレイを要求されることになる。例えば、4pは、昼にいち早く迎撃の構えを採らねばならないし、なるべくなら敵を捕縛する必要がある。そして夕方に1pは、もう一つの敵を牽制しつつ、その捕縛された敵へと接近し、夜間に大打撃を与えるなど、細やかな配慮が要求される。また、撤退の判断もより早めなければならない。
「混合型」
おそらく最も厄介なのがこれ。とりあえず4種全て挙げてみよう。
1pC/2pC/3pL/4pL
1p先攻混沌―2p後攻混沌・3p後攻秩序/2p先攻混沌・3p先攻秩序―4p後攻秩序
1pC/2pL/3pC/4pL
1p先攻混沌―2p後攻秩序・3p後攻混沌/2p先攻秩序・3p先攻混沌―4p後攻秩序
1pL/2pC/3pL/4pC
1p先攻秩序―2p後攻混沌・3p後攻秩序/2p先攻混沌・3p先攻秩序―4p後攻混沌
1pL/2pL/3pC/4pC
1p先攻秩序―2p後攻秩序・3p後攻混沌/2p先攻秩序・3p先攻混沌―4p後攻混沌
敢えて言おう。これを眺めても統一的な原則など見出せない、と。パターンが多すぎるし、どちらかが圧倒的に有利な時刻も存在しないからだ。そこで、前に書いた2v2アラインメント理論初歩を踏まえて、より一般的な話をするに留める。
逆アラインメントチームの基本として次のようなものがある。「チーム1は1pが有利になる時刻にかけて総攻撃をせよ」、「チーム2には明確な総攻撃時期が存在しない」の二つである。
例えば、1p混沌/2p秩序/3p混沌/4p秩序とする。これならば、チーム1は、朝2の4pから総攻撃を開始すると、4p強1p中―2p中3p中―4p中1p強―2p弱3p強という展開になる。もしチーム2が両方とも混沌だったりすると問題(4p強1p中―2p中3p中―4p中1p強―2p強3p強)だが、向こうも混成軍なので、こちらが有利なのである。
そして、チーム2の混成軍は、同時刻に攻撃しなければならないというチーム性質上、こうした時刻の変わり目を生かせない。従って、連続攻撃と呼べるものなど存在しないのである。ゆえに戦い方としては、チーム1が有利となる時刻の変わり目を避けるのがベターだということになる。
もちろんこれもまた、連携が可能だということを前提にしている。もし連携もヘチマもないような広いマップなら、普通の1v1を2個やるという状態になるので、ここでの議論を考慮してはならない。
まとめ
以上で、2v2アラインメント理論は完成したと自負している。もちろん、これは2v2における最も基本的な根底であるに過ぎない。しかし少なくとも、これを元にして、「いつ攻めるか」「いつ退却するか」というチーム内での意志を統一することはできよう。実戦においては、この意思統一が最も大切である。たとえ自分一人がこの理論に従ったところで、仲間とそれを共有できていなければ意味が無く、ひどい場合には害悪にさえなりうる。2v2をやることになったら、まず、自分がチーム1なのか2なのか、アラインメントの組み合わせは「4-0型」「3-1型」「2-2型」のいずれなのかをまず確認しよう。そして攻撃・撤退時期をチーム内で決定しておくのだ。これだけで、2v2の勝率は大きく向上しよう(もちろん仲間が聞き入れなかったり、外人で伝えられないケースはありうるがね)。
そしてこれ以上の2v2に関する議論は、アラインメントを踏まえた応用編ということになる。2v2マップの研究、陣営ごとのユニット分析(ドレークにおけるトカゲや中立陣営の研究もここに含まれる)、さらにこの理論を実戦で生かすためのより具体的な戦略。これらについては、さらなる研究が期待される。