コウモリの運用法
1. はじめに
アンデッド陣営のコウモリ(ヴァンパイアバット)は極めて特殊なユニットである。唯一レベル0の斥候であり、またほとんどの地形に左右されない機動力(キノコのみコスト2)、回避率(平地村以外60%)を有する。かかる事情から、コウモリは中規模以上のマップではまず間違いなく最初のターンに呼ばれる(基本的には1匹か2匹。大規模マップならそれ以上)。しかし、その斥候としての有用性の裏には、単体の極端な脆さが隠れている。油断していると、瞬く間に全てのコウモリを打ち落とされ、視野狭窄に陥ってしまう。これでは、13gというコストさえ高く感じられるだろう。主力ユニットが比較的鈍足で、かつ脆弱なアンデッドにとって、視界の確保は何よりも重要である。さらにまた、コウモリにはその機動力を利用した、より攻撃的な使用法も存在する。それは、勝敗を左右するほどの影響力を持っている。従ってコウモリの運用には極めて慎重になるべきであって、とりあえず最初の索敵と村の確保できれば死んでもいいやという代物では決してない。こうした点を本項では明らかにしていきたい。
2. 基本
特性に注目せよ
まずコウモリを雇用した際には、必ずその特性に注目すること。強力なのか、頑強なのか、俊敏なのかといった各コウモリの個性は、その後の展開のさせ方に大きな影響をもたらす。例えば、俊敏持ちの数によって、最も効率のよい村の取り方は大きく変化する。そして俊敏の数が多いほど、視界の点で有利になる。逆に言えば、俊敏がゼロの場合、いつも以上に慎重な運用が要求されるということを自覚せねばならない。また、頑強持ちであれば(例えばHPが20以上)、他のコウモリよりも大胆な配置が可能になるだろう。当然、より脆弱なコウモリはなるべく敵斥候との衝突を避けねばならないからである。さらに、強力持ちの場合、主力が仕留め損なった敵を搦め手から襲って止めを刺すケースが増えてくる。もちろんこんなことは、他の陣営やユニットにおいても同じだと思われようが、先にも述べたとおり、コウモリの運用には注意を払いすぎることはないのである。
コウモリの基本任務:占拠、索敵、後方攪乱
コウモリを使う利点は、斥候ユニットとしてはかなり安く、また地形の影響を一切受けないため、圧倒的な序盤の展開力を得られることである。この展開速度を利用して、最も効率のよい村の占拠を遂行し、その上で、さらに相手の領土まで侵入していち早い索敵や、村の奪取を伺う。これがコウモリを使役する際の基本になる。
迂闊なプレイヤーが相手だと、ほとんどこの展開力だけで勝ててしまう場合がある(例:コウモリスパム)。つまり、相手が村取りにもたついているうちに、敵前線の村を掠め取り、それに気付いて敵がやってきたら、ごめんあそばせとばかり、その村を明け渡して、今度は別の村を奪い取る。序盤は戦力がお互いなかなか揃わず、また村取りのために四方へ分散しているケースが多いため、これが可能になる。そうこうしているうちに、自軍の本隊が到着すれば、村数はこちらが優勢なまま、そのまま乱戦になり、当然のごとく勝利は近付く(戦い慣れたプレイヤーにはほとんど通用しないので注意。コウモリを生かすには本隊との連携が不可欠となる)。
また乱戦の最中にあっても、コウモリには常に敵後方の村を奪う素振りをさせておこう。そうすることで、相手は無駄な防衛戦力を割かざるを得なくなり、前線の強度がもろくなる。横着なプレイヤーはそうしたコウモリを無視するのだが、それならそれで村を奪えるだけ奪ってしまえばよい。相手が金欠に気付いたときには時既に遅しだ。これが後方攪乱である。
敵斥候を素早く見極め対応せよ
ただし、いつもいつもコウモリがかような制空権を得られるわけではない。コウモリがまず最初に目にする敵ユニットは基本的に斥候であろう。そして中にはコウモリの天敵とも言える斥候ユニットが存在するのである。
結論から言うと、人間陣営の騎兵、ナルガン陣営のグリフォン、ドレーク陣営の滑空ドレークがコウモリの天敵である。騎兵は日中夜間問わず一撃で致命的なダメージを与えてくるし、グリフォンはコウモリ並みの機動力を持ちながら破壊力も抜群である。また滑空ドレークは同じく高機動力で、なおかつ他2匹に比べ安い。もし広いマップで滑空ドレークが複数匹出てくるようであれば、コウモリによる制空権の支配はほとんど不可能になると言ってよい。また日中は跳び蹴り二発でほとんどのコウモリ(HP18以下)は墜ちてしまう。コウモリを運用する上での鬱陶しさは滑空がダントツ、次点グリフォン、そして騎兵の順ということになる。騎兵は地形に大きく左右される斥候なので、少し注意を払えばコウモリであしらうことも難しくはない。
このような斥候を有する陣営を相手にする際には、いつも以上にコウモリの運用に気をつけなければならない。特に移動力8のコウモリは要注意。敵が移動力9の場合、思わぬところから急襲を受け、あっさり死ぬことになりかねない。だからこそ先に述べたように、俊敏持ちのコウモリが重要になるのだ。そして、運良く相手がこうした天敵ユニットを雇用している気配が無いのであれば、普段通りの任務を粛々と遂行するまでである。また、グリフォンや騎兵はそのコストの高さから、一体しか呼ばれないケースもごく普通にある。そうした場合は、コウモリ一体でそいつを惹きつけつつ、他のコウモリには後方を伺わせると言った臨機応変な対応が求められるだろう。
その他のエルフの斥候やウルフライダーは、ほとんど恐るるに足りない。平地以外の村にコウモリを置いておけば、地上部隊が来るまで十分持ちこたえられるだろうし、何より敵後方の村を奪うのも容易になる。逆に言えば、対エルフや対オークでは、是が非でも制空権を奪いたいところである。
3. 応用
コウモリのレベルアップを狙ってみる
コウモリはレベル0ユニットの中でも特にレベルの上がりやすい方である。デフォルトの必要経験値は、15であり、これは2匹倒せば即レベルが上がることを意味する。レベル1の吸血コウモリは、基本移動力も9に上がり、耐久力、攻撃力も十分になるので、より優秀な斥候として生まれ変わる。
とは言っても、どうせレベルを上げるなら、他のユニットがいい、というむきもあるだろう。しかし、よく考えていただきたい。アンデッドでそんなにレベルが上がりますか?と。主任も指摘しているように、地上戦ではまずゾンビ無双ありきだし、それでなくても、アンデッドユニットは単体がもろく、さらに知的も付かないので他の陣営に比べてレベル上げが非常に困難である。具体的に言うと、主力の骨斧・骨弓は必要経験値25で固定であり、これは敵を三体殺した上で、その上一回の戦闘をこなさなければならないことを意味する。鈍足な彼らが、耐久力を維持しながらこれを達成できるだろうか?そんな困難を背負うぐらいなら、ゾンビを増やしておいたほうがよほど有益である。
こういう状況の中で、コウモリの1匹倒せば、すぐにレベルアップ王手になるという点は大きいと見る。確かにコウモリは攻撃力も低く、攻撃回数も少ないので、普通はその攻撃などほとんど当てにならない。しかし、主力が仕留め損なった(ゾンビ化に失敗した)瀕死ユニットを殺すことに専念すれば、そこまでの困難はない。また、その機動力の高さから、背後に控えていても一気に前線まで到達可能であるし、また多少無理な配置をしても撤退は容易である。コウモリは基本的に繊細に扱うべきではあるが、時にはこのような大胆な攻めをしてみると戦略の幅はさらに広がるだろう。
ここで強力持ちのコウモリが重要になってくる。ポイントポイントでの止め役にコウモリを使う場合、強力による攻撃力の微増は重大である。コウモリで止めを狙うなら、2回攻撃のうち、1回で仕留められることがほとんど前提だからだ。個人的に成功率が高いのは、対ドレークにおけるトカゲの排除である。デフォルトのコウモリなら、夜間5-2のダメージだが、強力コウモリであれば、7-2に跳ね上がる。どういうわけか、トカゲはHP7で生き残っているケースが多くて非常に重宝している。いずれにしても、強力持ちのコウモリがいるなら、多少積極的に止め役を狙わせてみよう。そのためには、戦場までいつでも飛んでいける位置で、かつ安全な配置を前もって考えておかねばならない。
ちなみに、ほとんどの場合やってはならないのは、コウモリで敵のHPを削ることである。よほど安全が確保されているのであればともかく、こういう無茶をさせていると、なんのメリットもないままコウモリを死なせることにつながる。レベルアップを狙えるぐらいのリターンが無い限り、コウモリで敵を襲うというハイリスクを背負うべきではない。
コウモリで勝機を作り出せ
(この項目はコウモリを複数匹呼ぶことが前提であり、かつ初心者殺しであることが判明している。戦い慣れたプレイヤーはコウモリから守るべきポイントを絞れるため、コウモリが何匹いようと、ここで書かれているほどの影響力を与えることはできない。むしろコウモリを効率的に排除されてしまう。ただ、コウモリをいやらしく運用するにはどうするかを考えた一例として残しておく。要研鑽。)
先に、コウモリで後方攪乱をすると、敵は村保持戦力を割かねばならず、前線がもろくなるという話をしたが、これをより積極的に戦略と絡める議論をする。これには「総攻撃」に関する理論を踏まえなければならないので、「アラインメントによる総攻撃開始タイミング理論」を併せて御覧いただきたい。
主力同士の戦いは、慣れたプレイヤーにとって、無意識に開始されるものではない。必ず、十分な戦力の確保と敵軍の分析、そして、時刻等を合わせたその局地戦における勝利への確信に基づいて開始される。もし不利だと感じれば、無駄な攻撃も行軍もせず待機したり、あるいは後退することさえある。いわばお互いに勝機を探っているのであり、その後にようやく戦いが始まるのだ。一度戦いが始まってしまえば、明確に勝者と敗者が生まれる。つまり、多少は運にも左右されようが、ほとんどの場合、勝機の見極めが勝敗に大きな影響をもたらすのである。
勝機を作り出すには様々な方法がある。例えば、相手陣営に対して有効なユニットを前もって多数雇用しておいたり、あるいは時刻と先攻後攻を考慮して行軍を事前に調整しておき決戦に備える、など。私はここにコウモリの運用を加えたい。一体どのようにコウモリを使って勝機を操ればよいのだろうか?
まず、時刻等の条件が整っており、また自軍の戦力が十分である場合。問題は敵軍の配置と構成のみである。たとえこちらが万全の体制で戦地に向かったとしても、敵もまた万全の対アンデッド布陣を敷いているなら、まだ勝負はどう転ぶか分からない。そこで、総攻撃を控えたような状況であれば、コウモリをいつも以上に積極的に前に出し、敵後方を伺わせておくのである。だからといって、こちらの主力を前にして敵が前線を弱体化させてまで村を守りに行くようなことはないだろう。しかしそれでも、「前線が間延びする」ということは起こりうる。うまいプレイヤーであればあるほど、zocを有効活用してコウモリの侵入を防ごうとするだろう。しかし、これがトラップなのである。そうやって密度が薄くなった部分に、こちらの主力を一極集中で突貫させるのだ。すると、敵は慌てて全軍をこちらの主力へと向けてくるだろう。そこですかさず、コウモリをさらに前へと進ませるわけである。守らせてよし、また看過させてもよしである。
次に、こちらの戦力・状況が不十分である場合。今度は、こちらが敵の総攻撃を恐れる番である。しかしそこでもやはりコウモリは役に立つ。今回は、さらに積極的にコウモリを使うことになる。当然のことながら、前もってコウモリを前に出して、少しでも敵の進軍を遅らせておくのは言うまでもない。しかし、状況が極まってきたのであればそんな悠長なことも言っていられない。早晩、敵の主力はこちらの主力を壊滅せんとして襲いかかってくるだろう。そんな時には、敵の主力の一部がちょうど到達できるような搦め手に、素知らぬ顔でコウモリを飛ばしておくのである。敵がそれを無謀無策と見て、主力を割いてコウモリを殺しに来るようであれば、策は成功といえる。できれば、一匹のコウモリは残して複数の方向へコウモリを飛ばしておこう。これにより、敵の主力が少しでも弱体化すれば、敵は勝機を逸したことになる。あとは、戦力の増強と有利な時刻を待ち、今度はこちらが勝機をつかむ番である。
4. おわりに
以上でコウモリがアンデッドにとっていかに有益なユニットであるか、ある程度は理解していただけたかと思う。これに止まらず、さらに有用な運用法、また細かな運用法についても、今後研究していく次第である。
最後に、大きなお世話かも知れないが一言だけ付言させていただく。コウモリを使役する際には、心底「嫌な奴」になりきり、相手が嫌がることをその都度模索することが肝要である。コウモリを駆使して、敵には村を一つ二つしか与えないような状況を作り出すことに、心からの愉悦を感じるようになれば、あなたはもう立派なコウモリ使いである。