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OP29  ◆xHiHmARgxY


ニコニコ動画(BR)

―――大変申し訳ありませんが、このロワイアルは運命が打開されたことにより終了致しました。
またのごアクセスを、お待ちしております。


 自室、机の上に置かれたパソコンの画面に表示されたその文を見ながら、彼はある匿名巨大掲示板の片隅で起こった、自らも見守り盛り上げた“祭”の顛末を思い起こした。

 そのスレッドで紡がれた物語の最終局面。ラスボスとの最後の決戦に、彼を含むスレの住人は大いに興奮し、抑えきれぬ思いを支援に乗せて注ぎ込んだ。
 対主催達の熱き戦い。次々と傷付き倒れる中での決死の攻防とそれを支える強い絆。何度倒そうと不死鳥の如く復活して絶望を振りまくラスボスの驚異的な力。
 それら全てが合わさってできた例えようもない熱気に、気づけばスレは>>1000近くになり、次スレへ移っても尚その盛り上がりは収まる気配を見せなかった。
 そんな中、彼がほんの気まぐれで打ち込んだ文字。言ってしまえばノリに任せて打ち込んだだけの文章は、1000取り合戦に勝利し、思いもよらない結果を引き起こした。

 まさかアレで本当に>>1000を取ってしまうとは…… 勢いでついやっちゃったけど、どうせならもっと他の事を書いとけばよかったな~。
 ま、アレはアレで皆からさんざネタにされたし、ひょっとしたらあの形が一番良かったのかもしれないな。

 彼はそんなことを考えながらマウスを操り、もう一度自分のレスを確認しようと過去ログをあさりはじめた。
 暫くして目当てのものを見付け、彼の頭の中を占めているその書き込みを再確認しようとページをスクロールさせていく。
 途中さまざまな支援にニヤニヤしたり当時の流れを見返して感傷に浸ったりつつ、着実にスレの最後へ迫っていき、ついに画面に次スレの話題が映し出されるようになった。

あぁ、皆こんな事書いてたのか。>>1000ギリギリまで本文と支援の嵐で、>>1000を狙うのは楽とは言えなかったんだっけ。
 しかし、>>1000取っといてこんな事言うのも悪いけど、アレは正直>>1000狙ってなかったというか、取らなくても良かったんだよな。
 皆があのネタに喰いついてくれたのは嬉しかったけど、真面目な願いで>>1000取ろうとした人にはなんか申し訳ないというか……
 第一、もし書いたことが叶うとして、俺が幻想入りするとかニコニコの世界に入るとか、そういう願いを書いてたら歓迎するけど、あの願いは叶ってもちっとも嬉しくない。何せ俺が書いたのは、>>1000だったら――


 スクロールが終わり、>>1000が画面に映し出された。かつてそのレスを書き込んだパソコンに、再び同じ文章が浮かぶ。
 しかし、かつてその文章をパソコンに打ち込んだ人間は、ここにはいない。
 彼は自分が行った行為の結果を見ることなく、何の前触れも無しに消え去ってしまった。あとに残るは主を失った椅子と机、パソコンのみ。
 その画面に映る、彼が見ることの叶わなかった一文。それが図らずも、彼の身に降りかかった災厄を予言する形になったのは、果たして何の因果か――



1000 :Classical名無しさん : 08/10/12 00:41 ID:Kh0KI0FM
 >>1000だったら次のニコロワに俺参戦


 ――って、え!?

 唐突に、彼の周りにあった椅子や机が消え去り、目の前の光景が瞬き一つする間も無くがらりと変化した。
 訳の分からない事態に驚愕し、しかしそれを深く考える時間も与えられないうちに、強い衝撃が彼の頭を襲った。
 混乱の内に顎・臀部・後頭部と彼の体に立て続けに痛みが走り、頭の中を飛び交う流星群と上下から押し寄せる鈍痛に彼は暫くの間身悶えた。
 だが、自分の身に起きた異変のほうが気にかかり、何とかうっすらと目を開いた彼は、目にした光景の突飛さに更なる混乱のさなかへと落ち込んで行った。
 周りには顔もあわせた事のない人々が取り囲み、皆一様に彼を見つめている。彼らの奇妙な出で立ちは、彼が非現実的な世界――服装はまだしも、青や緑の髪を見付けたらそう言っても差し支えないだろう――に迷い込んだことを明確に表していた。
 急な出来事にうろたえながらも、体に走る痛みの原因は、椅子が消えたため突如として空気イスの姿勢を取ることとなり、身構えていなかったためあえなくそのまま尻餅をつき、
 膝で顎を打ったショックでのけぞったまま後ろに倒れ後頭部を強打――という流れで起こったらしいと推測できた。
 だが、最大の疑問、なぜ辺り一面がガラリと変わってしまったかまでは、すぐには分からなかった。
 どうすることも出来ないまま固まっていた彼だが、目にした光景を思い返すうちに、頭の中では一つの疑惑が急速に身をもたげてきた。

 顔もあわせた事ない……いや、本当にそうだったか?
 さっき見た顔、服装……
 俺は下手したらほぼ毎日あの連中と顔をあわせているんじゃ……?
 そして、そんなメンバーが一堂に会するこの状況、これに当てはまる単語を、俺は知っている。
 これはまさか……

 その仮説は、そこから先へはなかなか進めなかった。
 まさか。そんなこと起こるわけない。非現実的だ。
 そういった気持ちが沸き起こり、その考えを真っ向から否定してしまうのだ。
 だが、いまだ疼く頭と尻の痛みがこれを夢だと考えることを拒否し、コスプレにしてはあまりにも違和感のない彼らの格好が、何かのドッキリだという希望的観測を打ち消してゆく。

「もしかして、これは――

「そう、バトル・ロワイアルだ」

私の発した言葉に、彼のみならずこの場の全員がこちらを向いた。
 彼らの注目を集めるのに一番効果的と思われるタイミングでの一撃。
 狙いはたがわず、彼らは皆口を噤み、私の話を聞く体勢を取った。
 もっとも、今の彼らに私の話を無視する度胸があるとは思えないが。
 何せついさっき、一人の女が見せしめとして命を落としたばかりなのだから。
 それにしても、彼はあれだけで状況を理解できたのだろうか。あの単語を口にするだけで構わないとは聞いているのだが。


 自らの呟きに辺答があるとは思っていなかった為、彼は驚き声のした方へ顔を向けた。周囲の者も同じ方向へ注意を払ったのが、彼の視界の隅に映った。
 そこにいた男――壇上から彼らを見下ろすフードとサングラスで顔を隠した怪しい人物は、一通り辺りへ視線を巡らした後、彼のほうを見やった。

 壇上の男が抱いた懸念を余所に、彼は一発で状況を把握していた。何せここに放り出される寸前までその事を考えていたのだから、当然といえば当然である。
 だが男は、この場の司会役としての務めを果たすため、彼に念押しの質問を投げかけた。

「何故ここに集められたか、分かるか?」

 それに対する返答は、彼には自明の理だった。
 先ほどまでの思考の末の仮説。男の最初の発言。材料はそろった。この質問の解は、一つしかありえない。

「ここにいるやつらと殺し合えって言いたいのか?」
「Exactly(その通り).分かっている様だな」

 彼の出した答えは、男によってあっさり肯定される。
 冗談としか思えない話を大真面目に語る男に、彼は我慢がならないとばかりに矢継ぎ早に言葉を繰り出す。

「じゃあ何か!? 俺はこれからバッグを渡され、どこかへ飛ばされると! そしてその先で武器を手に最後の一人になるまで闘うと! そう言いたいんだな!
 プーさん蹴るなぁぁぁっ! そんな話に乗れるか! 冗談じゃない!」

 この状況への拒否感も相まって盛大に気炎を上げる彼だったが、壇上の男が放つ、サングラスの奥からでもはっきり感じられる冷たい威圧感に思わず気圧される。
 何故か途中で一瞬疑念に取って代わった、男の冷たい視線を受け、少し頭を冷やされた彼は言い知れぬ不安に襲われた。
 何かに追い立てられるかのようにその不安の本を探った彼は、ある重大な事実を見落としていた事に気付き、背筋が凍りついた。

 何故気付かなかった! あの男が本当にバトルロワイアルを実行に移すというのなら、当然あのアイテムも存在しているはずだ。
 大概のロワにおいて最初に血を吸う――いや、血を撒き散らす装置。
 爆弾内蔵の首輪。
 そして、それが作動するのは、主催者の目に付くような行動を起こした者を見せしめにする時。
 つまり、狙われるのは――

 恐る恐る自分の首を確認する彼。そこにある首輪の感触を確認した瞬間、彼の顔から血の気が失せた。
 最悪の展開を想像し、ものを言う気力も失せた彼に、男は冷たく語りかける。

「そう、これは冗談などではない」

 もはやつま先一つも動かせないほどの極限状態に追い込まれた彼は、ただひたすら男の言葉に耳を傾ける。

「この現実を正視しないのなら、また粛清の扉を開かねばならない。
 この状況を言い当てたのであれば、それくらいの判断は出来ると思うのだが?」

 その言葉に一も二もなく首を縦に振る。生殺与奪権を握られた彼に出来るのは、それだけだった。
 それを認めた男は視線を彼から外し、告げた。

「では、ルール説明の続きに移ろう」

 とりあえずの危機を脱した彼は、やっと活動を始めた頭の片隅で、幾つかの引っ掛かりを見つけ出した。

 彼がここに召喚されてからずっと、不自然なほどに動きを見せない他の参加者。
 数多の参加者の中で彼だけが注目されるこの現状。
 何より男の発言の中に混じる僅かな誤謬。

『この現実を正視しないのなら、“また”粛清の扉を開かねば――』
『では、ルール説明の“続き”に――』

 また?
 誰かが見せしめにされるような場面を、彼は目にしていない。
 続き?
 今まで彼が聞いた内容は、ルール説明と呼べるような物では決してなかった。
 だとしたら、いつ見せしめが行われたというのだろうか。いつルール説明が行われたというのだろうか。
 彼が必死に状況をまとめようとしている間も男の説明は続く。

「禁止エリアの存在と、そこに入った者の末路は先ほど示したとおりだ。
 このルールについての詳しい説明と、新しく加わった参加者の関係について、これから説明する」

 やはり、彼の存外で何らかの出来事が起こったのは間違い無いようだ。
 壇上の男を始めとする幾人もの視線が彼に向けられたことから察するに、“新しく加わった参加者”が誰なのかは明白だ。
 だとすると、これまでの違和感の原因も自ずと明らかだ。
 ――その先は、男の説明により明かされた。

「禁止エリアに入った者の他に、首輪を外そうとしたり、主催者側の意に反する行動を行った者、会場の外に出た者は、先ほどの~本という女の二の舞になる。
 嘘だと思うなら試してみてもいいが、推奨は出来ない。なぜならその行為は自らのみならず他者をも巻き込むことになるからだ。
 この闘いの中で、事故、自殺、禁止エリアへの誤進入その他、参加者間での直接・間接的殺害を除く全ての死因はこれを認めない。
 もしそのような事態が発生した場合、死亡した人数分新たに参加者を補充し、定時放送でその旨を伝える」

 エア本さんの頭がパーンしたなんて、タチの悪い冗談にしか聞こえない――そんな場違いな感想を持て余しながら説明を聞いていた彼だが、予想外のルールを聞かされて思わず耳を疑った。
 そんなルールは知らない。こんなの間違っている――驚きのせいか、またもピントのずれた感想を抱いたが、彼の冷静な部分はようやく全ての事に合点がいったと得心した。
 ルール説明の最中に見せしめという容認されない死に方をした人間が出たため、彼が参加者として補充された。だから彼の見聞きしていない出来事があった。
 これが真相である。

「――ルールの説明は以上だ。支給品の中にルールを明記した紙があるので、聞き逃した点があったらそれを参照するように。
 これよりこの支給品の入ったデイパックとともに会場へ転送する。着いた瞬間から72時間の間、盛大に殺し合え」

 その言葉に釣られて男の背後にあるデイパックの塊に目をやった彼は、この場で最後となる驚きを味わった。
 なぜならそこには、普通サイズのデイパックに混じって、人一人余裕で入れそうな、明らかに実用的ではないバッグが鎮座していたのだから――


 転送が終わり、壇上に男一人だけが残る空間に、突如声が響く。

「よー、プーチン。おつかれ」

 その言葉と共に、奇妙な物体が空中に忽然と現れた。
 それに向かって、プーチンと呼ばれた男がサングラスとフードを取り答える。

「コエムシか。転送は無事に終わったんだろうな」
「おいおい、睨むんじゃねーよ。当然に決まってんだろ?」

 コエムシと呼ばれた物体が即座に返す。プーチンには睨んでいるという自覚はなかったのだが、その顔は他人が見れば誰しもが睨んでいると判断するだろう。

「モニタールームに繋ぐ」
「てめー喧嘩売ってんのか?」
「違う。首輪が正常に稼動しているかどうかの確認だ」
「ち」

 突っかかるコエムシを受け流し、壇の奥にある扉を開け中に入るプーチン。
 そこに設置された大型ディスプレイを点け、画面の向こうの反応を待つ。
 モニターにはすぐに制服を着た兵士が現れ、プーチンに向かい敬礼を行った。
 それに向かって軽く頷くと、プーチンは早速質問を行った。

「異常は認められたか」
「いいえ、首輪の全システムとも異常ありません!」
「そうか。発見し次第是正せよ」
「はっ!」

 画面がブラックアウトし、再び敬礼を行う兵士の姿をかき消した。
 相変わらずの冷たい口調で手短に通信を終えると、コエムシに向き直り告げる。

「今のところ順調だ。もっとも開始早々トラブルが起こるようではたまったものではないが」
「まーな。何も問題ねーんならオレは戻るぜ?」

 コエムシの発言に、プーチンは否定の言葉を返す。

「いや、まだだ」
「ああ? まだ何かあったか?」

 これで当分の用事は済んだものと思っていたコエムシは不機嫌そうに聞き返した。
 だがプーチンは眉一つピクリとも動かさずに答えを告げる。

「まだデイパックは一つ残っている」
「――ああ、そういやそうだったな」

 言われて初めて気が付いたといった様子でプーチンを見やり、コエムシは続ける。

「てめーを会場まで転送しなきゃな。
 準備はいーんだな?」
「構わない。やってくれ」

 ――この場に残る最後の参加者、プーチンは、何の感情も見せない声でそう語った。

「転送する前に一つ言っておく。このゲーム、身に着けているもの以外の持ち込みは出来ねー」
「……知っている」
「だから当然カラシニコフなんかを持ち込むことは出来ねーし、ブラックジャックなんて以ての外だ。
 身に着けている武器だったら構わねーんだがな」
「……あれがあったら一瞬で片が付くのだがな」
「つまり――てめーがいつも護身用に携行しているその銃は、持ち込んでも構わねーって事だ。
 お。オレ様が気付いてねーとでも思ったか。甘いな。とっくにお見通しだ。
 だが安心しな。そいつは“身に着けている”と判断された。服の中に着けてるんだからギリギリセーフだな」

 その言葉に、無言のままコエムシを見つめるプーチン。

「そもそも参加者の中には生身で弾幕を張れるヤツもいるんだから、大して問題ねー気もするがな」
「だが、それには制限がかかっている。そうだったな?」
「ああ。てめーは説明の時に言ってなかったが、そいつらの力は会場を覆う透明な壁を維持するのに使われて、本来の力からだいぶ落ちてる。
 要は、バリアの動力は、そいつらの命って事だ。
 そういえば、他にも説明してないことがあったな」
「これのことか」

 そう言って、プーチンは自らの首を示す。そこにある、他の参加者が付けている物となんら変わりの無い首輪を見て、コエムシは頷く。

「そうだ。さんざ脅していたが、この首輪はゲームの進行にはなんら関係ねー。
 ただ状況を外部に伝えるだけの物だ。それを邪魔されたくねーからあんな事言ったんだろーが――」
「それで思い出した。見せしめで死んだ女の死体を片付けてくれ」

 その時の状況を思い出し、遺体の片付けを忘れていたことに気付いたプーチンは、コエムシにそう頼んだ。
 それを受けて、説明を行った部屋の床に倒れていた、傷一つ無い遺体が消え去った。

「この闘いの中では、あのように斃れるのが一番いい死に方かもしれん。まるで老衰のように――」
「おいおい、もう弱気か?」
「そんなことはない。この闘いを勝ち抜いて、強いロシアを存続させる為には死ぬわけには行かない。
 他の参加者は便所に追い詰めて肥溜めにぶち込んでやる」
「――まあ、いくら参加者間の殺害でないとノーカウントだからって、わざわざ参加者になるくらいだから、それくらいは言ってもらわないとな」
「それに、私が死んでもメドヴェージェフがいる。ロシアが負けることはない」
「分かった。じゃ、おくるぜ」

 その言葉と共に彼らは消え去った。
 こうして、最後の参加者、トラを倒し長距離戦略爆撃機Tu-160 ブラックジャックを操縦するなどの伝説に事欠かない人物、元KGB長官にしてロシアのドン、ウラジミール・プーチンはこの闘いに参戦した。
 あとに残るのは、無人の空間だけだった。






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