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 八幕。再度上幕。



 新しくなった琥珀色に染まるコーヒーから立ち上る薄く白い湯気。そのカップに視線を向けることも無く、未だ信じられぬといった感じでアキは相槌を打った。
「そっか。だから『姉妹』て事・・・」
 よもや・・・それこそ在り得ない確立と言えるかもしれない。
 あの『ゼリスさん』のボディを受け継いだ他の神姫に会えるとは思っていなかった。

 会う可能性さえ想定していなかったアキは、高校一年生であるという・・・彼女にしてみれば4つほど年下になるのか。その年齢不相応に落ち着いた感のある先の少年、マコトの説明を受けてようやく理解した。
 当のルクスと、先ほどまで見事な舞を見せていたアーンヴァル「フェスタ」は何やら親しげに話している。
(あ、いいなぁ)
 姉妹かぁ。と、心中続けて、アキは正に運命的に巡り合った自身のパートナーの『姉』にもう一度目を向けた。

 いわゆるアーンヴァルタイプのノーマルスーツカラーであるが、確かに腿のスペーサージョイントから先の色が違う。鮮やかな翠色のリングラインが一本だけ入り、その先・・・爪先までのパール部分にはうっすらと草色が混ざっている。
「あ。そういやぁ。ルクスは、いつ気付いたん?」
 ふと疑問に思い訊ねた声にルクスは顔を上げる。
「初見で、違和感のような物がありました。どこかで聞いた事がある『音』だと」
「音? で気付いたの?」
「はい、足音です」
 フェスタの問いに小さく頷きながら。
「私は、母様は勿論。姉様の足音も、今まで一度も聞いた事がありませんが。しかし」
 目を閉じ、思い出すように続ける。
「確かに解りました。この足音を知っている。いえ、正確には音ではなく、何と言えばいいのか解りませんが」

 困ったようなルクスの声を聞き、今まで話を聞いていたマコトがカップティーを下ろしながら小さく言った。
「きっと、オレ達には解らなくても。解るものなんだと思います」
 確信を持った、しっかりとした言葉。
「・・・。うん? そうやね」
 その一言に納得したらしいアキをルクスは嬉しげに見上げていた。

「ルクスが、お母さんから貰ったのは。『瞳』なんだよね」
「はい?」
 声に振り返れば、フェスタがぐっと身を乗り出して来ていた。

 驚いたルクスが身を引く暇も無く、すっと両の頬に手、そして細い指を回されて。そのままフェスタは顔を寄せてくる。
 じっと真正面から眼を覗き込まれ、目が近いことにはっと気付けば鼻が触れ合う程の距離にある・・・端整な姉の顔と瞳。
「あ・・・」
 抵抗する事も出来ず、そのまま美しい姉と見詰め合う。
 ・・・しばらくの沈黙の後。フェスタが口を開いた。
「綺麗な銀色」
「あ、はい。ありがとうございます」
「うん。お母さんの色・・・」
 心なしか、どことなく。うっとりと言うフェスタ。アーンヴァルタイプ特有の、深みのある青い・・・僅かに潤んだ瞳。山吹色の美麗な髪が揺れ、神姫用のコンディショナーの淡い香りが鼻をつく。
 屈託無い柔らかな笑みを口元に浮かべてはいるが、そこには天使というモチーフがそうさせるのか、不思議と艶やかな印象さえ見え隠れしていた。
「あ・・・のっ、姉様」
 困ったようにそう言って顔を逸らそうとする。が、その瞳はそれを許してくれない。
「うん? 解ってるよ。今は・・・『ルクスの眼』、だよね?」
 体躯は同じであり、既に半分押し倒される形になりながら。しかし、そう言って相も変わらず嬉しげに微笑む姉。

(いえ。それは解ってないのです。ですから。そうではなくて)
 そう言えば良いのだろうか。他の神姫との関わりが少ないルクスはどうすれば良いのか迷っていた。

 もっと良く見たいのか、更に近づけられる顔。 整った目鼻が、ルクスの視界を覆う。
「・・・ぁっ」
 思わず声が漏れてしまった。普通のアーンヴァルよりも僅かに血色が良い肌、仄かに薄桃色が差した唇は、今や触れるか否かの所にある。そのまま届くほどの吐息。
「・・・っ」
 流石に息が詰まる。無論、ここまで他の神姫と近く接した事は無い。
 フェスタ自身は恐らく無意識なのだろうか? 恐らくは他の神姫ともスキンシップ的にこういう行為は取っているのかもしれないが、しかし・・・。
 何かを言いたげに、しかし下手に口を開く事も出来ない距離の顔と唇。
 それでも視線だけでも何とか逸らしつつ、顔を赤くしているルクスを見かねたのか。マコトが頭を抱えてフェスタを指で引き離した。
「そこまで」
「・・・あれ? なんで?」
 少し離された場所に置かれて、今尚解っていない様子のまま。きょとんとしてフェスタはマコトを見上げる。
 長く。失礼かもしれないが安堵に近い息を吐くと。ルクスはゆっくりと体勢を直した。
「抵抗しても良いからね? 困っているようだったし」
 苦笑して言うマコトに、力なく笑い返す。
「いえ・・・」
 そういう行為、こういう関係は。彼女は知らない世界なのだ。仕方ない。

 ・・・。
『知らない』。
 その単語が胸に突き刺さった。

「ん、そのままにしといても面白いのに」
 笑っている主に思わず非難の目を向けながら。



 マスター二人が飲み物と、軽食を取りに行くのを見送ると、フェスタはくるっとルクスに向き直った。先のこともあって、思わず身を引く妹に、彼女は気にせず問いかける。
「ねぇねぇ。ルクスは、バトルが好きなの?」
「・・・え」
 突如として、意を介せぬ質問をぶつけられ。
 姿勢を直しながら、しかし彼女は、ふっと宙に視線を漂わせた。
「あの」
 心が、きゅっと締め付けられるような。感覚。
「うん?」
「・・・そう、です」
「?」
 その。多少煮えきらぬ声調と、どちらとも取れぬ回答に首を傾げるフェスタ。
「いえ。あの、姉様のように。そのような・・・その」

 神姫バトル。それは、確かに・・・嫌いではない。だが。
 ルクスは自分の膝を抱き寄せた。そこに顔を埋めるようにして、姉から顔を背けた。
「・・・すいません」
 いきなり身の置き場所が無いような想いに捉われ、小さく呟く。
「え、どうして?」
 ルクス以上に、困ったような顔でフェスタはルクスを覗き込んだ。
「・・・」

 姉は。周囲に笑顔を咲かせていた。

 神姫バトル。
 自分を磨き、アキの愛に答える為に戦う・・・手段ではない。戦う事が、不器用な自分が出来る・・・たった一つの行為。
 自分が自分である事の確かな表現の場。アキのへの愛を形にする行為のステージ。

 ・・・それに、迷いは無い・・・はずだった。

 黙りこんだ妹に、フェスタもまた少しの間、口を噤んでいたが。その沈黙に耐えかねたのか。
「えっと、確か・・・強いんだよね? ルクスって。以前神姫ジャーナルで見たよ?」
「はい・・・あの。一応は」

 高みに行きたい。しかし、その名誉を欲してはいない。

「・・・ルクス? どうしたの? さっきから変だよ」
 はっと気付けば。四つん這いの形を取るようにして、姉が身体を近づけて来ていた。髪が柔らかく孕んだ山吹色の光が目の中に舞う。
「あ・・・いえ。バトルが強くても・・・余り自慢にはなりませんし」
 しどろもどろに言うルクスに。フェスタは首を傾げた。
「そんな事、ないよ?」
 そう言ってくれる姉の声が辛い。
 彼女は思わず姉の姿を見ないように目を閉じた。

「ですが・・・私の瞳は、母様の瞳は。ターゲットスコープを覗く為に使われています」

 姉は母より受け継いだ脚で、笑顔の花を満開に咲かせているのに。
 自分は。
「姉様と違って、私は『母様の瞳』で・・・何をしているのでしょう」
 自分は、そんな事しか出来ない。それしか出来ないんだ。
 それしか知らない・・・何て不器用なんだろう。

 膝に顔を埋めて下を向くルクスを、しばし疑問符を浮かべながら見つめていたフェスタは。
 やがて妹の思う所を介したのか。はっとした表情を浮かべて。そして、思わず吹き出した。
「っ・・・あははっ」
 きょとんとして、顔を上げる妹に。肩を竦めて笑いかける。
「ねぇ、ルクス?」
 ぴっ、と。人差し指でおでこを押さえられ、くっと下を向いていた顔を僅かに上げられた。そのままフェスタは先と同じく、瞳の奥を覗くように顔を近づけてくる。今度もまた、逃げる事もかなわないまま、しかしフェスタも少し先よりは離れた場所で止まった。
「『ルクスの瞳』・・・でしょ?」
「?」
 指を外し、そのまま彼女はルクスの真前に身体を起こすようにして、座り直した。
「バトルだからいけないの? ダンスだったらいいの?」
「え、いえ。しかし」
「何でダメなの? バトルの一番を目指す事。それの何が悪いのか、私は解らないよ」

 自分が行っている行為は。他の誰の為にもならない。
 自分の為だけ。自分とマスターの勝利以外、何も、誰の為にも・・・紡がないじゃないか。
 そんな事を考えていると。フェスタは小さく笑った。

「ルクスは強くて。そんなルクスにようになりたい、って思う『武装神姫』が、きっといると思う。それは、決して嫌な事じゃないよ」
「・・・?」
 思わぬ言葉に、ふっと。顔を上げる。フェスタは妹の、その美しい銀色の瞳を真っ直ぐに見つめてきた。
「前ね、『武装神姫である前に。神姫である事を自覚しなさい』って私、言われた事があるの」
「・・・神姫である事、ですか」
 そうだ。
 私達は神姫。武装をまとう以前にヒトのパートナーであるべき存在。
「だけどね? ルクス」
 黙りこんだままの彼女に対し、姉は首を左右に振る。

「神姫であると同時に。武装神姫である事を忘れちゃ駄目だよ?」

 目を見開いて、ルクスは姉を見つめた。
「私もバトルが好きだよ? それは嘘じゃない。強くないけど、きっとマコトのお陰で勝ててる」
「・・・」
 バトルが好き。
「これが武装神姫だから、だとか。そうじゃないの。マコトと一緒に戦ってる。それが好きなの、きっと」
「『好き』、ですか」
 その言葉に嬉しげに頷く。
「『マスターの気持ちに答えたい』。『マスターと一緒に戦って、勝ちたい』」
 両手を広げて、胸の前に静かに重ね、フェスタは自分にも言い聞かすように言った。

「だから、戦う技術を高めたい。強くなりたい・・・あの人の笑顔の為に。『武装神姫』なら、きっと一度は考えると思う」

 『武装神姫』。
 オーナーの意志に従い。武装し、戦場に赴く神姫達。
 主の誇りを背に背負い。自分の想いを旗として掲げ。

 負けたくないと思う瞬間。武装神姫が武装神姫である証。
 誰もが求める、その先の世界。

「そう考える神姫達が「あんな風になりたいな」って。ふっと想う時・・・」
 想いが生まれ出るその時に。ふと、顔を上げる場所。
 その上の高み。
「その視線の先にルクスが立っていたら、それはとても『ステキな事』だと思うな」
「・・・」

 それは嘘じゃない。
 バトルが好きだから。
 そこが。ずっと、マスターと駆け抜けてきた場所。どんな時も。あの人の愛が燦々と。降り注いでいた場所。
 その場所で。誰かが続く場所で、想いを受け止める。
 未来に繋げる、次の誰かの視線の先で。

 あの人の愛を。
 ・・・笑顔に換える事が出来る場所だから。

「姉様・・・」
 ぽつっと呼ぶ。
「うん?」
 美しい髪を揺らせて首を傾げる姉の顔を見て、ふと気恥ずかしくなり、ルクスは顔を赤くして下を向いた。
「あ、すいません。その」
「ふふ」

(・・・そうか)
 そうだ、うん。好きだったんだ。
 武装神姫として、マスターと共に戦ってきた。その事が、何よりも好きだった。
 だからこそ。誰よりも。高みに行こうとしていた。それしか出来ないのではなく。

 それが自分自身を、一番輝かせる場所だった。

 フェスタは優しく笑いかけた。
「頑張ろうよ。一緒に」
「・・・姉様と?」
 彼女は強い意志を秘めた視線で、強く頷いた。
「私も、好きなダンスで一番を取るつもりだから。・・・好き、誰にも負けたくない。その想いを叶えたい」
 きっと姉もまた自分と同じ。
 ただ、自分とは歩む道が違うだけで。その、誰もを幸せにする舞踏で。
「きっと、きっとマコト様と、姉様なら。一番になれます」
 嬉しくなり、笑顔でそう言うルクス。フェスタも笑い返す。
「ルクスもね」
「姉様・・・」
 もう、一度。今度は言えるはずだ。
「うん」


「・・・ありがとうございます」


 ・・・。
 すっくと立ち上がると、フェスタはマコトが置いて行ったケータイを開けて、何やら操作しはじめた。
 そのまま何事かと見ているルクスに背越しに声をかける。
「ねぇねぇ? 踊ろうよ、ルクス」
「は・・・?」
 微笑みを浮かべて振り返る姉。手を後に回し、山吹色の髪を整えながら。
「いいよね?」
「いえ、しかし。私は・・・そんな、その。あの」
 脈絡も無く言われて、彼女は慌てて手をぱたぱたと振る。
 ダンスなど、全くやった事も無く。余り見たことさえ無い。
「大丈夫だって。リードしてあげるからっ」
 そんな事を気にする様子も無く、フェスタはとっとっ、と脚で拍子を整えながら真っ直ぐに近づいてくる。
「いえ、ですから・・・」
 引き攣った表情を浮かべていると、ケータイのミュージックプレイヤーから伴奏が流れ出した。

 あぁっ。あんなに大きな音量で。

「うん? 気にしないで? 次の機会にルクスからバトルを教えてもらうから、それでお相子。遠慮しないで」
 そう、こちらの意を全く介さぬ事を言って。フェスタはこちらに手を伸ばす。思わずルクスが手を出してしまうと。
 すっと指を絡めて、ほとんど力がこもっていないのに、そのまま指だけで、立ち上げられた。
(!?)
 唖然とするヒマさえ与えてくれない。
 任せて? と小さく呟きながら。フェスタは妹を軽く引き寄せて、その腕を自分の腰に回させるようにして抱かせた。
 已む無く、そのしなやかな胴に手を回し、姉を抱く形になってしまうルクス。普段、銃を持ち慣れている彼女にしていれば、そこは余りにも華奢で、おっかなびっくり触ってしまう。
 それがくすぐったかったのか。フェスタは少し身を捩った。
「あの・・・姉様。私はダンスなど、出来は・・・」
 一応の姿勢は取らされたが。そのまま困ったような顔を浮かべる彼女に。
 姉は妹の腕の中でくすくすと肩で笑い、その臙脂色に近い髪に優しく指を通す。
「大丈夫。きっとルクスなら『見える』はずだよ?」
 そう言って一度、眼を瞑り。
 こつん、と、おでこ同士を付けて。
「私も。姉さんの『声』を、この『脚』が知っていたから・・・」
 何気なく口にしたその言葉に。ルクスは瞳を丸くした。
(・・・え?)

 音楽の主旋律が始まった。フェスタがくるっと回りながら腕から抜け出て、そのままルクスの手を取ると。ドレスの裾を持ち上げる仕草をしながら一礼をする。

 ことん。

 姉が爪先でテーブルを叩く音と共に、視界に音が舞った。
(・・・)
 自分は足運びも知らない、手の動作も知らないはずだ。
 しかし・・・明確なリズムが体に伝わり。そのまま音が引き込む流麗な流れに身を任せる。自然と、手が姉を導くように、そして脚が姉を追う様に動いていく。
 テンポの良い音楽が耳を通り抜け・・・そして、何よりもその『眼』に届く。
 身体がフェスタに誘われるように、風の流れるままに運ばれていく。姉は嬉しそうに、ルクスの腕で遊ぶかのように身を舞わせた。

 と、たん。た・・・たたん

 二人がテーブルというステージの上・・・刻んでいく二つのステップの音。
 その水無き水面に描かれた小さな波紋がやがて一つになるように。フェスタが自分の中に重なっていき、意識が広がっていく。
(・・・姉様が刻むリズムが、見える)
 銀色の瞳がはっきりと。自分の腕の中で舞うフェスタを捉えている。

 妖精か、いや。天使か・・・軽やかに、優雅に反らされた腕、そして『脚』。そう。その脚は、元々はこの眼と同じ持ち主の元で・・・。
(・・・母様・・・)
 しなやかに、ゆったりとした音の流れに身を抱かれて楽しげに踊るフェスタ。その美麗なる肢体を舞わせる可憐なる姉の脚から・・・溢れるほどのリズムが流れ出し、瞳を通してルクスに届く。

 それに従い、身を波にただ託して。
 彼女達は、互いに互いが誘われるように舞った。

 やがて、音楽が静かにフェードアウトし。妹をリードしながら踊っていたためか、随分と疲れたような・・・だが、優しい表情を浮かべたフェスタは上体を、とさりとルクスの胸に任せた。
「・・・大丈夫ですか? 姉様」
 いつしか。肩の力が知らず抜けていた。
「うん・・・」
 その、明るい暖かな銀色を湛える、透き通る瞳を下から覗き込むようにしながら、フェスタは嬉しげに微笑む。
 ・・・と、何かに気付き。ルクスの背中に回した手の指で、つんつんと叩いた。
「ルクス。笑顔笑顔っ」
「?」
 ふっと顔を上げれば、気付かぬうちに出来ていた人だかりから、拍手の雨が彼女達に降り注いだ。フェスタは慣れた様に、妹に抱かれながらにこやかに手を振っているが。

 当のルクスはどうして良い物かと困惑するだけであった。


「いやぁ、ビックリした。可愛かったよ?」
「・・・」
 無言で、顔を首まで真っ赤にして。
「うん、ダンスの達人ってのは、ダンスの相手も達人にしてまうってのは聞いてたんやけど」
「・・・物の見事に、男性用のダンスじゃないか」
 アキの賞賛を受けながら、縮こまるルクスを見ながらも。
 苦笑しながらマコトはそう言って、フェスタのおでこを突付く。
「あは、ごめんごめん」
 頭を掻きながら、しかし悪びれる様子は無くフェスタは笑った。

「・・・アキさん、今から予定は?」
 ふっと、マコトがアキに顔を向けた。 
「ん? いや別に。ホテル泊まって、明日アキバ寄って・・・帰るつもり。何? ナンパ?」
「いや。そうじゃなくて」
 苦笑を一度浮かべたが、すっと真顔に戻って腕時計に目を落とす。
「今から行けば。閉店までに間に合うかな、って」
「間に合う?」
「あのね・・・」
 フェスタが言おうとした言葉を。ルクスが引き継いだ。
「もう一人・・・姉様がいるのですね?」
 あれ? 言ったっけ。と言いたげに、不思議そうな顔を向ける姉。
「それって・・・そういうこと?」
「はい。少し遠いのですが。よかったら」
「行きます」
 はっきりと。
「・・・会いたいんです。マスター」
 アキは常では無い程に。自身の意志を明確にするパートナーに少し驚いたような顔を浮かべていたが。やがて笑って答えた。
「ん、ウチもえぇよ。案内してくれる?」


 ・・・。
 『神姫』として、そして『武装神姫』として。其処を目指そうとする神姫がいる。
 その道を真っ直ぐに、瞳は見つめ、脚で歩き続けて。
 ・・・いつしか其処に達しようと迷い無く。


「角子さん? ニックネーム?」
「はい。そう呼ばれてます」
 向かい合う座席に座り、マコトとアキが話をしているのを聞きながら。窓の縁に立ち電車の中から後方に飛んでいく風景を見やる。
「その神姫の名前は、何て言うの?」
 アキの問いに。マコトはしばらく腕を組んで何かを考えていたが。
「いえ。それは・・・。本人から、本人の声で聞いてください」
「?」
 ルクスは冬故に早くも夕暮れ迫る地平を眺め、ふっと気付き目をやると、隣にいつしかフェスタが立っていた。


 彼女らが進む道に吹く『風』は。時に厳しく打ちつけようとも、想いを紡ぐ力に変える。
 強い意志を持って高みへと。誓いを運び決意と共に。


 銀色の瞳に宿る強い意志。彼女はそのまま暮れゆく空を見上げた。
(母様の眼を受け継いだ、私である事)
 私自身が『武装神姫』である事を恥じたりはしない。臆したりもしない。
 この道を歩み続けて、まだ見ぬ神姫達が上を見上げたとき。そこに自分の姿がある時。それを誰かが追いかけるとき。
 そして・・・。誰かの『瞳』に私が映るとき。
 それは、きっと。紡がれていく強い想いとなるだろう。

 姉が小さく声を上げた。つられて見やれば、鯨を思わせる大型飛空船が遠く・・・雲かかる夕焼け空にその身を煌かせ、のんびりと上天を泳いでいく。
「・・・」
 水晶を思わせる銀眼が、金色の光を包み込んだ赤い空を照り返していた。
 フェスタが、ふっと思い出したように顔を前にすると、ルクスに近寄り一言だけ『ある言葉』を耳打ちした。
 その言葉に驚いたような表情を浮かべ、やがて小さく、しかし強く頷く。それを見て、フェスタも嬉しげに頷いた。


 姉妹はまだ見ぬ場所へと、その風に乗せ、己の姿と想いを馳せていく。
 確かに背を押す、その小さな胸に抱える風がある。

 吹き渡る空の名は未来・・・その風の名は。
 夢。



 第八幕。下幕。






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