第五話
「ふぅ、どうにか侵入成功っと」
電脳空間の通路の一つにアカツキはレーザートーチで穴を空けるとそこから侵入した。
彼女の侵入した第一サーバーの保安隊は現在大量発生したワームプログラム-実は優一が陽動のために仕掛けた物だった-に対応すべく、最低限の戦力を残してほぼ全てが他のサーバーの応援に出向いていた。
「マスターの陽動も限界が有るから早いこと済ませないと」
今回、アカツキはフル装備状態で出撃していた。推進器系とライトセーバーはいつも通りだが、両手にはビームライフルを持ち、腰部後方にはサブマシンガンとハンドグレネードを装備している。シールドも念には念をと言うことで伸縮式を持ってきた。
通路の突き当たりに一体のアイゼン・ケンプがいる。どうやらそこにデータバンクがあるようだ。アカツキはビームライフルにサイレンサーを取り付けると狙いを定め、引き金を引いた。
パシュン。
周囲に聞こえるか否かの銃声が通路に響き渡る。粒子ビームはコアユニットを正確に貫き、アイゼン・ケンプは沈黙した。
その直後、優一から通信が入る
《もしもしアカツキ、俺だ。その扉は暗証番号を入れるタイプだな》
「開けるのにどれぐらいかかりますか?」
《3桁数字が十種類だから総当たりで一千通りで・・・、早くて45秒だな》
「最短でそれって、もっと掛かるかもしれないってことですか?」
《できる限り急ぐ。それまで持ちこたえてくれ》
「いたぞ、侵入者だ!!」
ワームの撃退を大体終わらせたらしく、戻ってきたアイゼン・ケンプの集団がアカツキに発砲してきた。彼女は寸前で身を翻して物陰に隠れるとその横を銃弾が通過し、扉に着弾した。
《しめたぞアカツキ、この方法なら10秒で開く。やり方は・・・ゴニョゴニョ・・・》
「危険すぎる気も・・・。わかりました」
そう言いながら左手のビームライフルでアカツキは反撃する。
ヘリオンも負けじとSTR-6ミニガンやリニアライフルを撃ち返してくる。
《アカツキ今だ!!》
「了解です!!」
ハンドグレネードだけでなく、プロペラントを扉の前に置き、相手の発砲に合わせてアカツキもビームライフルを撃つ。
するとグレネードによってプロペラントが誘爆し、通路に爆風が広がる。
それによってヘリオン隊は消滅し、扉も破壊される。
《成功だ、この騒ぎを聞きつけて他の連中もこっちに殺到すると思うから早くデータをこっちに》
「わかりました、すぐに作業に入ります」
アカツキはデータの転送作業に入り、その間に優一は広範囲での索敵に取り掛かる。
「マスター、作業を始めた時から気になっていましたが、何も来ませんね」
《確かに妙だな。防衛プログラムの一体や二体、来てもおかしくは無いんだが・・・、まあいいや。アカツキ、こっちの外付けハードに詰めるだけ詰め込んでくれ。うん?アカツキ、後ろだ!!》
「え?きゃあぁ!!」
不意に足下で爆発が起こる。何者かからの攻撃と悟ったアカツキは入り口の方に目をやるとそこに、一体の神姫が立っていた。
素体はツガルの物を使っているが、付けている武装は違った。
脚はツガルのデフォルト装備とは違い、ほっそりとしたシルエットを描いている。背中の2枚の翼はおそらくはフライトユニットだろうか、右手には銃身が流線型のライフルが握られている。
目はどことなく虚ろで口元には薄笑いが浮かんでいるようにアカツキの目には見えた。
《どうして、最新鋭のシュベールトタイプをカタロンが・・・?気を抜くなよアカツキ》
「了解です、マスターはバックアップを」
《神姫は良くてもマスターはダメダメみたいだなぁ、ソフィア後は適当にやっとけ》
「わかったよ、ご主人様」
ソフィアと呼ばれたその神姫はライフルの先から銃剣を繰り出すと、腕に対して垂直に持ち替えて突進してきた。
アカツキもライトセーバーを抜刀すると真正面から受け止め、鍔迫り合いとなる。
その状態でソフィアがアカツキに話しかけてきた。
「ハァイ、貴女が今回の獲物ね?しかもCSCなんてオモチャを載っけてるお嬢ちゃんなんて、無謀極まりないわね。CACを使っている私とどっちが強いかしら?」
「「ハードの強さが全てじゃない、戦術やコンディションで結果はいかようにもなる」ってマスターは言ってました!!」
「そんなの、勝てないヤツの言い訳にすぎないわよ。前置きはさておき、貴女もバラバラにしてあげるわ!!」
「くっ、なめるなぁ!!」
アカツキはライトセーバーで押し返すとソフィア目がけてビームライフルを撃つ。
しかし見切られていたらしく、身をひねってかわされ、逆にライフルで反撃される。磁力で加速した弾丸がシールドに着弾し、表面で爆発する。
「こいつめぇ!!」
今度は左手にサブマシンガンを持ち、ほんの僅かだけ時間差を開けて発砲する。
だが、これも左腕のディフェンスロッドでガードされる。
「どれくらいの腕か試させてもらったけど、興ざめね。壊れなさい」
ソフィアがいきなり急上昇すると、上空で回転して自らの全体重を銃剣に乗せてアカツキ目がけて急降下した。
アカツキは咄嗟にシールドを掲げて防ごうとするも、その勢いは止めきれなかった。
まずシールドの表面に亀裂が走ったと思うとメキメキと音を立てて割れ始め、それを貫いて銃剣の刃が左腕に到達し、さらに切っ先が胸部に大きな傷を付けていく。
「うぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「あ~ゾクゾクするぅ、この瞬間が一ッ番カ・イ・カ・ンなのよねぇ。さぁ、もっともっと私に声を聞かせてちょうだい」
倒れたアカツキにソフィアは容赦なくライフルを撃ってくる。
肩に、脇腹に、脚に、銃弾は全て命中しているが、どれも致命傷を避けられている。まるで昆虫の体のパーツを一つずつ胴から引きちぎって殺していくかの様に。
「ぐぅう、ぎゃぁぁぁ!!」
「はっはっはっはっは、何がMMSだ、何が武装神姫だ。所詮は人形じゃないか。欲望の受け皿になって、オーナーの都合ですぐに捨てられる、愛玩動物の方がよっぽど幸せだよ!!」
《こいつ、腐ってやがる・・・。離脱しろアカツキ、スモークを焚いてその隙に俺が空間に穴を開けるからそこから脱出するんだ!!》
「わかりました!」
そう言ってアカツキはバイザーの横に付けたスモークディスチャージャ
ーから煙幕弾を発射する。
部屋全体に白い煙が広がり、それが晴れるころにはアカツキの姿は無かった。
《逃がしてしまうとは、使えない奴め。帰ったらお仕置きだ》
「ごめんねご主人様、役立たずで」
電脳空間の通路の一つにアカツキはレーザートーチで穴を空けるとそこから侵入した。
彼女の侵入した第一サーバーの保安隊は現在大量発生したワームプログラム-実は優一が陽動のために仕掛けた物だった-に対応すべく、最低限の戦力を残してほぼ全てが他のサーバーの応援に出向いていた。
「マスターの陽動も限界が有るから早いこと済ませないと」
今回、アカツキはフル装備状態で出撃していた。推進器系とライトセーバーはいつも通りだが、両手にはビームライフルを持ち、腰部後方にはサブマシンガンとハンドグレネードを装備している。シールドも念には念をと言うことで伸縮式を持ってきた。
通路の突き当たりに一体のアイゼン・ケンプがいる。どうやらそこにデータバンクがあるようだ。アカツキはビームライフルにサイレンサーを取り付けると狙いを定め、引き金を引いた。
パシュン。
周囲に聞こえるか否かの銃声が通路に響き渡る。粒子ビームはコアユニットを正確に貫き、アイゼン・ケンプは沈黙した。
その直後、優一から通信が入る
《もしもしアカツキ、俺だ。その扉は暗証番号を入れるタイプだな》
「開けるのにどれぐらいかかりますか?」
《3桁数字が十種類だから総当たりで一千通りで・・・、早くて45秒だな》
「最短でそれって、もっと掛かるかもしれないってことですか?」
《できる限り急ぐ。それまで持ちこたえてくれ》
「いたぞ、侵入者だ!!」
ワームの撃退を大体終わらせたらしく、戻ってきたアイゼン・ケンプの集団がアカツキに発砲してきた。彼女は寸前で身を翻して物陰に隠れるとその横を銃弾が通過し、扉に着弾した。
《しめたぞアカツキ、この方法なら10秒で開く。やり方は・・・ゴニョゴニョ・・・》
「危険すぎる気も・・・。わかりました」
そう言いながら左手のビームライフルでアカツキは反撃する。
ヘリオンも負けじとSTR-6ミニガンやリニアライフルを撃ち返してくる。
《アカツキ今だ!!》
「了解です!!」
ハンドグレネードだけでなく、プロペラントを扉の前に置き、相手の発砲に合わせてアカツキもビームライフルを撃つ。
するとグレネードによってプロペラントが誘爆し、通路に爆風が広がる。
それによってヘリオン隊は消滅し、扉も破壊される。
《成功だ、この騒ぎを聞きつけて他の連中もこっちに殺到すると思うから早くデータをこっちに》
「わかりました、すぐに作業に入ります」
アカツキはデータの転送作業に入り、その間に優一は広範囲での索敵に取り掛かる。
「マスター、作業を始めた時から気になっていましたが、何も来ませんね」
《確かに妙だな。防衛プログラムの一体や二体、来てもおかしくは無いんだが・・・、まあいいや。アカツキ、こっちの外付けハードに詰めるだけ詰め込んでくれ。うん?アカツキ、後ろだ!!》
「え?きゃあぁ!!」
不意に足下で爆発が起こる。何者かからの攻撃と悟ったアカツキは入り口の方に目をやるとそこに、一体の神姫が立っていた。
素体はツガルの物を使っているが、付けている武装は違った。
脚はツガルのデフォルト装備とは違い、ほっそりとしたシルエットを描いている。背中の2枚の翼はおそらくはフライトユニットだろうか、右手には銃身が流線型のライフルが握られている。
目はどことなく虚ろで口元には薄笑いが浮かんでいるようにアカツキの目には見えた。
《どうして、最新鋭のシュベールトタイプをカタロンが・・・?気を抜くなよアカツキ》
「了解です、マスターはバックアップを」
《神姫は良くてもマスターはダメダメみたいだなぁ、ソフィア後は適当にやっとけ》
「わかったよ、ご主人様」
ソフィアと呼ばれたその神姫はライフルの先から銃剣を繰り出すと、腕に対して垂直に持ち替えて突進してきた。
アカツキもライトセーバーを抜刀すると真正面から受け止め、鍔迫り合いとなる。
その状態でソフィアがアカツキに話しかけてきた。
「ハァイ、貴女が今回の獲物ね?しかもCSCなんてオモチャを載っけてるお嬢ちゃんなんて、無謀極まりないわね。CACを使っている私とどっちが強いかしら?」
「「ハードの強さが全てじゃない、戦術やコンディションで結果はいかようにもなる」ってマスターは言ってました!!」
「そんなの、勝てないヤツの言い訳にすぎないわよ。前置きはさておき、貴女もバラバラにしてあげるわ!!」
「くっ、なめるなぁ!!」
アカツキはライトセーバーで押し返すとソフィア目がけてビームライフルを撃つ。
しかし見切られていたらしく、身をひねってかわされ、逆にライフルで反撃される。磁力で加速した弾丸がシールドに着弾し、表面で爆発する。
「こいつめぇ!!」
今度は左手にサブマシンガンを持ち、ほんの僅かだけ時間差を開けて発砲する。
だが、これも左腕のディフェンスロッドでガードされる。
「どれくらいの腕か試させてもらったけど、興ざめね。壊れなさい」
ソフィアがいきなり急上昇すると、上空で回転して自らの全体重を銃剣に乗せてアカツキ目がけて急降下した。
アカツキは咄嗟にシールドを掲げて防ごうとするも、その勢いは止めきれなかった。
まずシールドの表面に亀裂が走ったと思うとメキメキと音を立てて割れ始め、それを貫いて銃剣の刃が左腕に到達し、さらに切っ先が胸部に大きな傷を付けていく。
「うぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「あ~ゾクゾクするぅ、この瞬間が一ッ番カ・イ・カ・ンなのよねぇ。さぁ、もっともっと私に声を聞かせてちょうだい」
倒れたアカツキにソフィアは容赦なくライフルを撃ってくる。
肩に、脇腹に、脚に、銃弾は全て命中しているが、どれも致命傷を避けられている。まるで昆虫の体のパーツを一つずつ胴から引きちぎって殺していくかの様に。
「ぐぅう、ぎゃぁぁぁ!!」
「はっはっはっはっは、何がMMSだ、何が武装神姫だ。所詮は人形じゃないか。欲望の受け皿になって、オーナーの都合ですぐに捨てられる、愛玩動物の方がよっぽど幸せだよ!!」
《こいつ、腐ってやがる・・・。離脱しろアカツキ、スモークを焚いてその隙に俺が空間に穴を開けるからそこから脱出するんだ!!》
「わかりました!」
そう言ってアカツキはバイザーの横に付けたスモークディスチャージャ
ーから煙幕弾を発射する。
部屋全体に白い煙が広がり、それが晴れるころにはアカツキの姿は無かった。
《逃がしてしまうとは、使えない奴め。帰ったらお仕置きだ》
「ごめんねご主人様、役立たずで」
「大丈夫か!?しっかりしろアカツキ!!」
アカツキの回収を確認すると優一はすぐさま彼女をメンテナンス用のクレードルに移す。
「あ・・・、マスター・・・私・・・」
多少なりとも回復したのか、アカツキは目を開けた。かなり憔悴しているらしく、その目には陰りがあった。
「安心しろ、任務は成功だ。それとアネゴにはしばらく依頼を持ってこないよう言っておく。リベンジをしたい気持ちもわかるが、相手は軍用神姫だ。今はゆっくり休め」
「はい、ありがとうございます」
アカツキの回収を確認すると優一はすぐさま彼女をメンテナンス用のクレードルに移す。
「あ・・・、マスター・・・私・・・」
多少なりとも回復したのか、アカツキは目を開けた。かなり憔悴しているらしく、その目には陰りがあった。
「安心しろ、任務は成功だ。それとアネゴにはしばらく依頼を持ってこないよう言っておく。リベンジをしたい気持ちもわかるが、相手は軍用神姫だ。今はゆっくり休め」
「はい、ありがとうございます」
その日の夜中、クレードルの上でアカツキは静かに泣いていた。
「うぅ、勝てなかった・・・。マスターの・・・力になれ・・・なかった」
シュベールトの装備を身に纏ったツガルタイプの神姫・ソフィア、CACを搭載していたとは言え、ツガルそのものは比較的古いタイプだ。それなのに最新鋭のアーンヴァル・トランシェ2の自分が負けた、それが悔しかったのだ。
アカツキの目に再び涙が溢れてくる。彼女が泣き疲れて眠りに就いた時には丑三つ時をすでにまわっていた。
「うぅ、勝てなかった・・・。マスターの・・・力になれ・・・なかった」
シュベールトの装備を身に纏ったツガルタイプの神姫・ソフィア、CACを搭載していたとは言え、ツガルそのものは比較的古いタイプだ。それなのに最新鋭のアーンヴァル・トランシェ2の自分が負けた、それが悔しかったのだ。
アカツキの目に再び涙が溢れてくる。彼女が泣き疲れて眠りに就いた時には丑三つ時をすでにまわっていた。