OP1 ◆BDYHtT3Bi.
どことも知れない暗闇の中。そこに彼らはいた。
明かりひとつない空間ではなにも見えはしない。けれど、音と声。そして人の気配は分かった。
十――いやその何倍もの数の人々が闇の中でざわめいている。
ここはどこか。
彼らが共通して考えていることはそれだった。
各々が先まで見ていた景色と照らし合わせても、誰もがこの闇に立っていた覚えはなかった。
明かりひとつない空間ではなにも見えはしない。けれど、音と声。そして人の気配は分かった。
十――いやその何倍もの数の人々が闇の中でざわめいている。
ここはどこか。
彼らが共通して考えていることはそれだった。
各々が先まで見ていた景色と照らし合わせても、誰もがこの闇に立っていた覚えはなかった。
暗闇に眩しい光が飛び込んできた。
明かりが灯されると、この場が一体どういったところなのか、少しはわかるようになった。
まず、前方に見えたのは舞台だった。楽団の演奏、またはオペラを公演するには十分な広さを持った、
大規模なものである。
そして彼らが居た場所は客席にあたる場所だった。
もっとも、腰を下ろす椅子さえないのは、設計ミスの一言で済まされるものではないが。
劇場。
少しは自分達がどういった場所にいたか分かり、人々は少し安堵を覚えたようだった。
だが、幾何人かはいまだ表情を崩さずにいた――ここに、なぜいるのか。そして、
誰か来させたかも、まだなにもわかってはいない。
しかし、それもすぐにわかりそうなものだった。舞台の中心にふたつの影が見えたからだ。
まず、前方に見えたのは舞台だった。楽団の演奏、またはオペラを公演するには十分な広さを持った、
大規模なものである。
そして彼らが居た場所は客席にあたる場所だった。
もっとも、腰を下ろす椅子さえないのは、設計ミスの一言で済まされるものではないが。
劇場。
少しは自分達がどういった場所にいたか分かり、人々は少し安堵を覚えたようだった。
だが、幾何人かはいまだ表情を崩さずにいた――ここに、なぜいるのか。そして、
誰か来させたかも、まだなにもわかってはいない。
しかし、それもすぐにわかりそうなものだった。舞台の中心にふたつの影が見えたからだ。
ひとりは白粉を顔に塗ったピエロのような男。
髪は真っ赤なアフロヘアーで、黄色を基調とした服を着た目立つ容姿は忘れられそうにもない。
もうひとつの影はそもそも人間ですらない――少なくとも外観は。
灰色の包帯と言えばいいだろうか。それを全身に巻きつけた体。顔には赤い眼がひとつだけ輝いている。
被りものかとも思ったが、動きを見る限りは、そういったものではないように見えた。
片方のピエロの様な男が前へと出る。舞台の端あたりまで来て、そこでピタリと足を止めた。
髪は真っ赤なアフロヘアーで、黄色を基調とした服を着た目立つ容姿は忘れられそうにもない。
もうひとつの影はそもそも人間ですらない――少なくとも外観は。
灰色の包帯と言えばいいだろうか。それを全身に巻きつけた体。顔には赤い眼がひとつだけ輝いている。
被りものかとも思ったが、動きを見る限りは、そういったものではないように見えた。
片方のピエロの様な男が前へと出る。舞台の端あたりまで来て、そこでピタリと足を止めた。
「こんにちは、ドナルドです」
にこやかな笑顔を作り、片手をヒラヒラと振りながら、ピエロはまず自分の名を名乗った。
そして次に――ドナルドと名乗った男はこう続けた。
そして次に――ドナルドと名乗った男はこう続けた。
「ここに集まってもらった皆には、これからバトルロワイアル。つまり、殺し合いをしてもらうんだ」
突拍子もない言葉に、劇場が一斉に波紋が広がった。
ただ、思わず叫んだだけの者達。突然のことが理解できない者達。
そして、騒然とした空気に包まれるなか、冷静にピエロの語ることを呑み込む者達。
動揺が広がる群衆――それをドナルドの後ろから見ていた一つ目が、前へと出た。
ただ、思わず叫んだだけの者達。突然のことが理解できない者達。
そして、騒然とした空気に包まれるなか、冷静にピエロの語ることを呑み込む者達。
動揺が広がる群衆――それをドナルドの後ろから見ていた一つ目が、前へと出た。
「お前らにはこれから必要最低限の道具と、
各自への特別支給品が入ったデイバッグを持って、会場に出てもらう。
最後の一人になった時点で殺し合いは終了。
残った奴だけが生きて、元々いた場所へと帰ることが出来る」
各自への特別支給品が入ったデイバッグを持って、会場に出てもらう。
最後の一人になった時点で殺し合いは終了。
残った奴だけが生きて、元々いた場所へと帰ることが出来る」
いったん言葉を切り、こちらを見回してくる。
そして、少しは落ち着いたと見たのだろう。言葉を続ける。
そして、少しは落ち着いたと見たのだろう。言葉を続ける。
「それから、お前たちには――」
「ふざけるんじゃない!」
「ふざけるんじゃない!」
言葉の続きは叫びに止められた――群衆の一部を突き飛ばし、
ホッケーマスクのような物をかぶった巨漢が前に出る。
ホッケーマスクのような物をかぶった巨漢が前に出る。
「この俺をわけの分からぬところに連れ出しといて殺し合いをしろ? 死ぬことになる?
ふざけたことを言っているんじゃないぞ、この北斗神拳伝承者ジャギ様に!」
ふざけたことを言っているんじゃないぞ、この北斗神拳伝承者ジャギ様に!」
ジャギと名乗った男が舞台へと距離を詰めてゆく。
「それにどうやって俺達の生き死にを管理するつもりだ? どこに連れていくつもりか知れんが、
その気になれば今この場でお前達まとめて」
「……ルー」
その気になれば今この場でお前達まとめて」
「……ルー」
一つ目が喋り出してから、黙っていたドナルドが声をあげる。
どこか残念そうな顔でドナルドが男へと顔を向けた。
どこか残念そうな顔でドナルドが男へと顔を向けた。
「君はジャギ君だったよね? 君のようにそういったことを言う人もいることは、
もちろん考えたさぁ。
だけど、本当にそう言われると、ドナルドは悲しくなっちゃうんだぁ」
もちろん考えたさぁ。
だけど、本当にそう言われると、ドナルドは悲しくなっちゃうんだぁ」
そう告げるとピエロは一つ目の方へと顔を向けた。
「タケモトくん、続きを話してくれないかな」
一つ目――タケモトという名前らしいが、ドナルドに促され再び言葉を続ける。
「……それからお前たちには、こいつのようなことを考えないように、これをつけてもらう」
「ドナルド☆マジック♪」
「ドナルド☆マジック♪」
ドナルドが軽く動かした指先から、光が放たれる。
光は空中で拡散しジャギ、そして客席に居る者達全員の首へと降り注いていった。
やがて、光が消えて。
舞台上の二人以外の者全員に、黒光りする首輪がつけられていた。
タケモトの声が響く。
光は空中で拡散しジャギ、そして客席に居る者達全員の首へと降り注いていった。
やがて、光が消えて。
舞台上の二人以外の者全員に、黒光りする首輪がつけられていた。
タケモトの声が響く。
「今、お前らにつけられたのは強力な爆弾の仕込まれた特製の首輪だ。
爆発する条件はみっつ。
ひとつは無理やり外そうとした場合。
ふたつ目は、殺し合いの最中に死者の発表と、一定のエリアを禁止区域に指定する放送を行う。
区分けされたエリアはデイバッグの中にある、地図に書いておいた。その中に入ったらアウト。
みっつ目は24時間以内にひとりも死者が出なかった場合……
つまるところ、お前らが殺し合いを放棄したと判断し場合に爆発する」
爆発する条件はみっつ。
ひとつは無理やり外そうとした場合。
ふたつ目は、殺し合いの最中に死者の発表と、一定のエリアを禁止区域に指定する放送を行う。
区分けされたエリアはデイバッグの中にある、地図に書いておいた。その中に入ったらアウト。
みっつ目は24時間以内にひとりも死者が出なかった場合……
つまるところ、お前らが殺し合いを放棄したと判断し場合に爆発する」
そして、どこか同情するような目でジャギの方を見つめる。
「もっとも言葉だけじゃ実感が沸かない奴もいるだろうからな……一度、爆発するところを見てもらおう」
すっ、と。
ドナルドが舞台を降りて、ジャギの目前へと身を寄せる。静かに笑顔を浮かべながら。
状況を理解して、ジャギは青ざめた表情で声を出した。
ドナルドが舞台を降りて、ジャギの目前へと身を寄せる。静かに笑顔を浮かべながら。
状況を理解して、ジャギは青ざめた表情で声を出した。
「ま、待ってくれ――」
「ドナルドは悲しくなると」
「ドナルドは悲しくなると」
ドナルドがジャギの首輪を指さす。そして。
「つい、やっちゃうんだ☆」
閃光と爆音が辺り一帯を蝕んだ。
「んー、ここまでで、なにか質問はあるかな?」
返答はない。
首から上を失った男を、ジャギを見やりながら誰もが静まり返っている。
ここにいる者達、全員がこの場で彼に口を出すの恐れている――いや。
何人かは違った。道化師に対して怒りを見せる者。挑戦的な態度を見せる者。
あらわとなった明確な闘志が、沈黙の中で確かに感じられた。
それらを一身に受けながら、道化師は悪魔で無邪気に笑っている。
首から上を失った男を、ジャギを見やりながら誰もが静まり返っている。
ここにいる者達、全員がこの場で彼に口を出すの恐れている――いや。
何人かは違った。道化師に対して怒りを見せる者。挑戦的な態度を見せる者。
あらわとなった明確な闘志が、沈黙の中で確かに感じられた。
それらを一身に受けながら、道化師は悪魔で無邪気に笑っている。
「ルー、そんな怖い顔をしないでさぁ。
ドナルドだってなんのご褒美も用意してないわかじゃないんだ。皆がだぁい好きなんだから。
最後に残ることのできた人の願いはどんなことでも、ドナルドマジックで叶えてあげるさぁ☆」
ドナルドだってなんのご褒美も用意してないわかじゃないんだ。皆がだぁい好きなんだから。
最後に残ることのできた人の願いはどんなことでも、ドナルドマジックで叶えてあげるさぁ☆」
そして、群衆をぐるりと見回して。
「もう一度。質問はあるかい?」
返事はない。
それにドナルドは満足げにうなずいた。
それにドナルドは満足げにうなずいた。
「大丈夫なら、始めるよ? さあ――」
ドナルドが一歩、後ろに下がる。
そして指先を静かにこちらへと向けた。
そして指先を静かにこちらへと向けた。
「ドナルド☆マジック♪」
光が全てを包み込む。
目を覆うような輝き――それも消えて。
劇場には誰もがいなくなり、ただ静寂だけに支配された。
目を覆うような輝き――それも消えて。
劇場には誰もがいなくなり、ただ静寂だけに支配された。
殺し合いが始まり。
そして、誰もいなくなるのか。
それとも――