「第六回放送」(2010/12/19 (日) 10:20:20) の最新版変更点
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*第六回放送 ◆F.EmGSxYug
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#aa(){左上は数少ない豪奢に飾られた扉に立ち、コンソールに指を押した。
ここは運営長が止宿する部屋であり、その地位に相応しい装飾が成されている。
他にこういった装飾を行っているのは、右上だけだ(左上も可能ではあるが、性格上行わない)。
「あらかじめ連絡した通りです。左上、入ります」
照合が終わると共に、扉が開く。
部屋の中では運営長が端末を手に取り、何かを打ち込みながら話し込んでいた。
左上が直立姿勢のまま無言で待つこと約2分、運営長は通信を終え左上と向き直る。
彼女との会議を送らせてまで会話する相手。それは最低でも、彼女と同じ立場である。
「右上との連絡ですか?」
「うむ、介入者の居場所と正体がわかったのでな。
故に奴に策を与え、向かわせた。恐らく約半日は干渉はないであろうな」
「逆に言えば半日以内に殺し合いを終えさせ、撤収し会場を放棄、
証拠隠滅すべき……ということですね?」
「……そうだとも」
その答えは左上の予測通りであることは見え透いている。
であるからして運営長は渋い顔になり、左上は意気揚々と口調を加速させた。
「運営長、現状において既存の監視が効果を発揮しているとは思えません。
デパートに直接張り付いての監視を提案いたします」
「ブロリーの時と同じ発想をしておるのォ……」
「そのために塚モールに格納庫を設置したのでしょう。
あそこに配備してあるものを使えば、
私はここにいながら同時に参加者の討伐に向かうことができる。
設営の際にそう説明したのは運営長本人ではないですか」
「言っておくが、討伐に向かうつもりなら許可はせんぞ?」
「もちろん、監視です。もちろん。
この残り人数ならば私が既存の監視行わなくとも、通常の人員で代替すれば十分。
残り半日で終わらせるつもりならば、予備の人員も全て投入できます」
無表情な顔なのに鼻息を荒くしていそうに見える左上に、運営長は心中で溜め息をついた。
忠実な左上のこと、こうして言っている限りの内容……例えば討伐はしないだろう。
が、「ついうっかり」参加者に目撃されて行動を誘導したり、
「ついうっかり」建築物を崩壊させて道筋に障害を作ったりするくらいは独断でやりかねない。
……とはいえ、そこまでしないとならぬ事態になってきているのも、事実だ。
「よかろう、許可する。
放送内容をあらかじめ録音してから装備の換装に向かえ。
それと……どうせ脱出を目論む連中は既に外部との連絡を取っておろう。
放送にある内容を付加しろ。
こちらはお前達に気付いたぞと脅しつけ、内部分裂を狙うためにな」
「……ある内容、ですか」
■
運営長の連絡から、約ニ時間後――MUGEN界。
あれ以降ずっと穴を見張っていた白レン達だったが、
目に見えるほどの変化についに口を開いた。
「穴が広くなってきたわね……」
「これくらいなら大丈夫だ。みんな、準備はいいか?」
十代の問いに、突入隊となった面子は頷く。
残る面子に必要なことを告げてから、五人は穴へと飛び込んだ。
「ぐっ……」
途端、自分の意志での移動は、定められた軌道を動かされる移動へ変わった。
まるで服が濡れないウォータースライダーを滑っているような感覚。
どこにぶつかり、曲がるような感覚の後、五人は外へと放り出された。
周りに広がるのは……灰色一色。
林立するコンクリート建築物の合間を走る、アスファルトで舗装された道。
だが動物の気配こそすれ、人の気配はない……一言で言うなら、廃基地。
周囲を見渡したケンシロウは、訝しげに十代へと問いかける。
「ここでいいのか?」
「全部の地形を把握しているわけじゃないんだからなんとも言えない。
だけど、こんな場所は……」
十代がそう言った瞬間だった。何かに驚かされた鳥たちが一気に飛び立ったのは。
間髪置かず銃声が響いたときには……しかし、既に承太郎が反応していた。
「『スタープラチナ・ザ・ワールド』」
時は止まる。
そのままスタープラチナは襲撃者を視認し、飛来した銃弾を全て叩き落とした。
だが、近距離パワー型のスタンドが攻撃するには襲撃者の位置は遠い。
他の四人を遮蔽物の影へと移動させることに承太郎は専念する……
幸い、遮蔽物には事欠かない。
「あの影からすると、あれは――チッ、『そして時は動き出した』」
同時に、他の四人と襲撃者も動き出す。
混乱する四人に承太郎が説明しようとした瞬間……
襲撃者がいるはずの方向で爆発が起こった。
『油断するな十代。ここは敵地だ』
精霊・ネオス。
それが突如襲撃してきたものを殴り飛ばし、破壊したのだ。
「お前のスタンド、中距離型か? そいつにしてはパワーがあるな」
「いや、スタンドじゃないって。それよりあれ……」
「機械ですね。
重火器と可動肢、装甲……殺戮が主目的の」
「その通りだぜエルトナムのお嬢さん。
『ガンダム』の名を冠する二足歩行機械が開発された世界において開発された、
対人用自律行動型無人兵器――総称オートマトン」
「声!?」
「上だな……」
ケンシロウの声に反応し、他の四人もまた上を見る。
そこに誰が存在するかなど、語るまでもない。
異世界を渡る男――右上が上空、自分の存在を誇示するように浮かんでいる。
そちらに注意が向く中、はっとなったように白レンが振り返った。
「穴が……閉じてる!」
「おいおい、そりゃあそうだろう?
誘き出して罠に掛けたのに、退路を塞がなきゃあ意味が無い」
「貴方、七夜を攫った連中のひとりね……下りてきなさい!」
「アホかツンデレネコ。
この人数相手に一人で勝ち目のない真っ向勝負を挑む馬鹿がどこにいる?
だいたい俺の仕事は俺の開けた穴に誘い出され、
違う場所へとわざわざ突っ込んできたバカどもに……
かわいいオートマトンどもをけしかけることでねぇ!」
右腕をぐるぐると回しながら、右上は左手の指を鳴らした。
それに答えるようにあちこちの建物の影で鳴り始める、独特な起動音。
ケンシロウの五感は、コンテナに足が付いたような異形の存在を確認した。
その数、目視できるだけで、軽く十体――遮蔽物の悪さを考えればそれより数が多いことなど疑いようがない!
「貴様……」
「せいぜい頑張れよ覇王様。ここでは精霊は実体化できる。
北斗神拳も夢魔の力もエーテライトも機械には通じやしねえ。
通じるのはお前の精霊とジョジョのスタープラチナだけだぜ?」
「ネオス!」
十代の指示と共に、ネオスが飛びかかる。
舌打ちをしながら右上は飛び退くと、回していた腕を何かに突っ込むように動かした。
「ケッ、相変わらず好戦的なウルトラマンもどきなこって!」
空間に穴が開き、その中に飛び込む右上。
それをどうこうする余裕は、五人にはない。
最悪の立地条件で、殺戮兵器に対応するのが限界だ。
(運営長の策通り、全く違う異世界におびき出せた。当分は時間を稼げるぜ)
右上がやったことは単純だ。
穴を閉じられないなら、逆に開けてしまえばいい……別の軌道から。
開いた細い穴に横から大きな穴を開け、途中で大きな穴と合流させる。
「ト」という文字のような形を想像すればわかりやすいだろう。
これで既存の穴が大きくなるのは、途中まで。
合流する前までの部分は大きくならない……だから、そちらは通れない。
すなわち、新たに合流した穴のほうを通るしかない。
(ここから戻るのに時間が掛かるのはもちろん……
また新たに穴が開いたとしても、こいつらは警戒してすぐ入ることはできない。
なんせ――俺の仕業だと疑うことを強いられるからな)
空間と空間の狭間で、右上はにやりとほくそ笑んだ。
■
一方、運営長の連絡から一時間後……すなわち右上が十代達を罠に嵌める一時間前。
塚モールの地下、格納庫と呼ばれる場所で、ある機械がアイ・カメラを点灯させた。
『同調完了……起動』
二足歩行のそれは、そう電子音を発し立ち上がる。
二本の腕と二本の足で動くというくらいには、人型を保っているが……
所々にコードを生やし、明らかに金属製だとわかる体を持つくらいには機械だった。
顔となる部分も円柱のような形をしており、
X字の窪みの中には目の役割を果たす線状のアイカメラが四つ、赤く光っている。
『反応誤差……1/1000秒。ホボ問題ハアリマセン』
それが発する電子音は機械的なものになっているとは言えど、あの左上の声だ。
答えを出せば単純なことで……この機械は、左上が遠隔操作している。
それでもリモコンを持って操作する、などという程度のものではない。
「監視用」だった先程までの体を換装し、これを操作する装備へと変更。
左上はまるで自分の体を動かすのと同じように、この義体を動かすことが出来る。
その代わり、見聞きできる範囲は義体が確認できる範囲まで狭まるが……
義体はしばらく可動を確認するように体を動かすと、エレベーターへの扉へと向けて歩み寄る。
金属製の指先がパネルに指を向けると共にロックが解除され、
本来なら来ないはずの階数まで下りるエレベーター。
そのまま義体は地上へと移動した。
キュィィ――ンと音を立てながら、首にあたる部分を回す。
首輪による位置把握は、この義体を操作してもわかる……
というよりは、左上と変わった監視員達が整理したデータがこの義体にも転送されている。
(サテ、確カドナルドガコノ周辺……図書館ニイタハズ。
彼ノ能力カラスレバ、恐ラクコレに気付ク可能性ハ高イデショウ)
もしこの義体に「表情を動かす」という機能があれば、笑顔を作っていただろう。
左上からすれば気付いてくれたほうがいい……むしろ、気付かせるのが狙いだ。
この義体がこれから向かうのは西。狙い通りに行けばドナルドも追ってくる。
ドナルドにワープについて気付かせ、デパートにいる連中にぶつけ戦闘を起こす……
それが左上の狙いである。
討伐が許されないなら、こちらからけしかければいい、と言う訳だ。
ブロリー絡みで散々厭味を言った右上への意匠返しにもなる。
アイカメラで周辺を探った後、義体は駆け出した。
一応、名目上は隠密活動を行わなくてはならない。
故に、デパートへの道は既に禁止エリアとなったA-4からF-4を目指す。
義体がA-4に到達した頃……自分があらかじめ録音した放送が流れるのを、義体は知覚した。
幸いなのか不幸なのか死者はこれ以上増えなかったため、録音したものがそのまま使えたようだ。
「第六回放送の時間です。
禁止エリアは十四時からA-5、十六時からD-4。
脱落者は以下の一名。
呂布。
以上です」
足を止め、放送にミスはないか確認する。
ここまでは、いつもと同じ。ここまでは。
ここからが、運営長の告げるように命じた内容だ。
「人数の減りが少なくなくなったこと、また人数そのものが減ったことから、
以前述べたルールを厳罰化します。
24時間の間誰も死ななければ、全員の首輪が爆破する……と述べましたが、
12時間以内に参加者が残り一人にならなかった場合――時間切れとします」
敢えて『首輪を爆破する』とは言わない。
なぜなら首輪をどうにかできたと思う相手に、首輪を爆破する以外にも手はあるぞ、
と脅しつける意味があるからだ。
もっとも、どんな方法かは具体的には伝えない。伝える義理がない。
この会場の成り立ちを保持するありとあらゆる機器を停止・自爆させ、
会場の消滅による証拠隠滅と参加者の抹殺を同時に行うということは。
「最後の放送は六時間後となります」
音声は消える。録音だが、それを気付かれるのは有り得ない……と左上は結論づけた。
もともと機械的で平坦な声の左上だ、録音を使ったところで特に変化はない。
これが右上だったら確実で気付かれただろうが。
そう結論付け、義体は再度動き出した。
【オートマトン@機動戦士ガンダム00】
対人用自律行動型無人兵器の総称。今回登場したものは2ndシーズンでアロウズが使ったもの。
サイズは人間より一回り大きく2m前後、待機状態では箱状で、起動すると変形し4本の脚を展開。
見ようによってはかわいい。
先端のローラーによって移動する。センサーは胴体の前後と頭頂部に存在し、胴体下部のドラムフレームに装備された2門の機銃によって攻撃を行なう。
作中においては対人兵器として凶悪な性能を発揮しており、
拳銃程度の武装では遮蔽物と合わせても足止めすることが限界である。
破壊には最低でもマシンガンか爆発物程度の火力が必要とされるが、
あくまで対人兵器なのでガンダム相手だとただの的でしかない。
参考資料として実物を見たい場合は、ガンダムプラモデルの
「HG 1/144 GNX-704T アヘッド」にミニサイズのオートマトンが付属している。
なお、このSSに登場するオートマトンは違う世界から持ってきたものではなく、
運営側が人員の消耗を抑えるためデータを元に自ら生産したものである。
そのため原作とは違う動力で動いている可能性もある。}
|sm241:[[それを人殺しの道具と言うにはあまりにも大きすぎた(※A-10RCLのことです)]]|[[時系列順>第六回放送までの本編SS]]|sm243:[[風雪、士と共に幻想を風靡す(Ⅰ)]]|
|sm241:[[それを人殺しの道具と言うにはあまりにも大きすぎた(※A-10RCLのことです)]]|[[投下順>201~250]]|sm243:[[風雪、士と共に幻想を風靡す(Ⅰ)]]|
|sm239:[[no return point]]|右上|sm247:[All Fiction]]|
|sm232:[[第五回放送]]|左上|sm245:[[Fake]]|
|sm213:[[そして時は動き出す]]|運営長|sm247:[[All Fiction]]|
|sm231:[[Interlude Ⅰ]]|遊城十代|sm:[[]]|
|sm231:[[Interlude Ⅰ]]|白レン|sm:[[]]|
|sm231:[[Interlude Ⅰ]]|シオン・エルトナム・アトラシア|sm:[]]|
|sm231:[[Interlude Ⅰ]]|空条承太郎|sm:[[]]|
|sm231:[[Interlude Ⅰ]]|ケンシロウ|sm:[]]|
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*第六回放送 ◆F.EmGSxYug
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#aa(){左上は数少ない豪奢に飾られた扉に立ち、コンソールに指を押した。
ここは運営長が止宿する部屋であり、その地位に相応しい装飾が成されている。
他にこういった装飾を行っているのは、右上だけだ(左上も可能ではあるが、性格上行わない)。
「あらかじめ連絡した通りです。左上、入ります」
照合が終わると共に、扉が開く。
部屋の中では運営長が端末を手に取り、何かを打ち込みながら話し込んでいた。
左上が直立姿勢のまま無言で待つこと約2分、運営長は通信を終え左上と向き直る。
彼女との会議を送らせてまで会話する相手。それは最低でも、彼女と同じ立場である。
「右上との連絡ですか?」
「うむ、介入者の居場所と正体がわかったのでな。
故に奴に策を与え、向かわせた。恐らく約半日は干渉はないであろうな」
「逆に言えば半日以内に殺し合いを終えさせ、撤収し会場を放棄、
証拠隠滅すべき……ということですね?」
「……そうだとも」
その答えは左上の予測通りであることは見え透いている。
であるからして運営長は渋い顔になり、左上は意気揚々と口調を加速させた。
「運営長、現状において既存の監視が効果を発揮しているとは思えません。
デパートに直接張り付いての監視を提案いたします」
「ブロリーの時と同じ発想をしておるのォ……」
「そのために塚モールに格納庫を設置したのでしょう。
あそこに配備してあるものを使えば、
私はここにいながら同時に参加者の討伐に向かうことができる。
設営の際にそう説明したのは運営長本人ではないですか」
「言っておくが、討伐に向かうつもりなら許可はせんぞ?」
「もちろん、監視です。もちろん。
この残り人数ならば私が既存の監視行わなくとも、通常の人員で代替すれば十分。
残り半日で終わらせるつもりならば、予備の人員も全て投入できます」
無表情な顔なのに鼻息を荒くしていそうに見える左上に、運営長は心中で溜め息をついた。
忠実な左上のこと、こうして言っている限りの内容……例えば討伐はしないだろう。
が、「ついうっかり」参加者に目撃されて行動を誘導したり、
「ついうっかり」建築物を崩壊させて道筋に障害を作ったりするくらいは独断でやりかねない。
……とはいえ、そこまでしないとならぬ事態になってきているのも、事実だ。
「よかろう、許可する。
放送内容をあらかじめ録音してから装備の換装に向かえ。
それと……どうせ脱出を目論む連中は既に外部との連絡を取っておろう。
放送にある内容を付加しろ。
こちらはお前達に気付いたぞと脅しつけ、内部分裂を狙うためにな」
「……ある内容、ですか」
■
運営長の連絡から、約ニ時間後――MUGEN界。
あれ以降ずっと穴を見張っていた白レン達だったが、
目に見えるほどの変化についに口を開いた。
「穴が広くなってきたわね……」
「これくらいなら大丈夫だ。みんな、準備はいいか?」
十代の問いに、突入隊となった面子は頷く。
残る面子に必要なことを告げてから、五人は穴へと飛び込んだ。
「ぐっ……」
途端、自分の意志での移動は、定められた軌道を動かされる移動へ変わった。
まるで服が濡れないウォータースライダーを滑っているような感覚。
どこにぶつかり、曲がるような感覚の後、五人は外へと放り出された。
周りに広がるのは……灰色一色。
林立するコンクリート建築物の合間を走る、アスファルトで舗装された道。
だが動物の気配こそすれ、人の気配はない……一言で言うなら、廃基地。
周囲を見渡したケンシロウは、訝しげに十代へと問いかける。
「ここでいいのか?」
「全部の地形を把握しているわけじゃないんだからなんとも言えない。
だけど、こんな場所は……」
十代がそう言った瞬間だった。何かに驚かされた鳥たちが一気に飛び立ったのは。
間髪置かず銃声が響いたときには……しかし、既に承太郎が反応していた。
「『スタープラチナ・ザ・ワールド』」
時は止まる。
そのままスタープラチナは襲撃者を視認し、飛来した銃弾を全て叩き落とした。
だが、近距離パワー型のスタンドが攻撃するには襲撃者の位置は遠い。
他の四人を遮蔽物の影へと移動させることに承太郎は専念する……
幸い、遮蔽物には事欠かない。
「あの影からすると、あれは――チッ、『そして時は動き出した』」
同時に、他の四人と襲撃者も動き出す。
混乱する四人に承太郎が説明しようとした瞬間……
襲撃者がいるはずの方向で爆発が起こった。
『油断するな十代。ここは敵地だ』
精霊・ネオス。
それが突如襲撃してきたものを殴り飛ばし、破壊したのだ。
「お前のスタンド、中距離型か? そいつにしてはパワーがあるな」
「いや、スタンドじゃないって。それよりあれ……」
「機械ですね。
重火器と可動肢、装甲……殺戮が主目的の」
「その通りだぜエルトナムのお嬢さん。
『ガンダム』の名を冠する二足歩行機械が開発された世界において開発された、
対人用自律行動型無人兵器――総称オートマトン」
「声!?」
「上だな……」
ケンシロウの声に反応し、他の四人もまた上を見る。
そこに誰が存在するかなど、語るまでもない。
異世界を渡る男――右上が上空、自分の存在を誇示するように浮かんでいる。
そちらに注意が向く中、はっとなったように白レンが振り返った。
「穴が……閉じてる!」
「おいおい、そりゃあそうだろう?
誘き出して罠に掛けたのに、退路を塞がなきゃあ意味が無い」
「貴方、七夜を攫った連中のひとりね……下りてきなさい!」
「アホかツンデレネコ。
この人数相手に一人で勝ち目のない真っ向勝負を挑む馬鹿がどこにいる?
だいたい俺の仕事は俺の開けた穴に誘い出され、
違う場所へとわざわざ突っ込んできたバカどもに……
かわいいオートマトンどもをけしかけることでねぇ!」
右腕をぐるぐると回しながら、右上は左手の指を鳴らした。
それに答えるようにあちこちの建物の影で鳴り始める、独特な起動音。
ケンシロウの五感は、コンテナに足が付いたような異形の存在を確認した。
その数、目視できるだけで、軽く十体――遮蔽物の悪さを考えればそれより数が多いことなど疑いようがない!
「貴様……」
「せいぜい頑張れよ覇王様。ここでは精霊は実体化できる。
北斗神拳も夢魔の力もエーテライトも機械には通じやしねえ。
通じるのはお前の精霊とジョジョのスタープラチナだけだぜ?」
「ネオス!」
十代の指示と共に、ネオスが飛びかかる。
舌打ちをしながら右上は飛び退くと、回していた腕を何かに突っ込むように動かした。
「ケッ、相変わらず好戦的なウルトラマンもどきなこって!」
空間に穴が開き、その中に飛び込む右上。
それをどうこうする余裕は、五人にはない。
最悪の立地条件で、殺戮兵器に対応するのが限界だ。
(運営長の策通り、全く違う異世界におびき出せた。当分は時間を稼げるぜ)
右上がやったことは単純だ。
穴を閉じられないなら、逆に開けてしまえばいい……別の軌道から。
開いた細い穴に横から大きな穴を開け、途中で大きな穴と合流させる。
「ト」という文字のような形を想像すればわかりやすいだろう。
これで既存の穴が大きくなるのは、途中まで。
合流する前までの部分は大きくならない……だから、そちらは通れない。
すなわち、新たに合流した穴のほうを通るしかない。
(ここから戻るのに時間が掛かるのはもちろん……
また新たに穴が開いたとしても、こいつらは警戒してすぐ入ることはできない。
なんせ――俺の仕業だと疑うことを強いられるからな)
空間と空間の狭間で、右上はにやりとほくそ笑んだ。
■
一方、運営長の連絡から一時間後……すなわち右上が十代達を罠に嵌める一時間前。
塚モールの地下、格納庫と呼ばれる場所で、ある機械がアイ・カメラを点灯させた。
『同調完了……起動』
二足歩行のそれは、そう電子音を発し立ち上がる。
二本の腕と二本の足で動くというくらいには、人型を保っているが……
所々にコードを生やし、明らかに金属製だとわかる体を持つくらいには機械だった。
顔となる部分も円柱のような形をしており、
X字の窪みの中には目の役割を果たす線状のアイカメラが四つ、赤く光っている。
『反応誤差……1/1000秒。ホボ問題ハアリマセン』
それが発する電子音は機械的なものになっているとは言えど、あの左上の声だ。
答えを出せば単純なことで……この機械は、左上が遠隔操作している。
それでもリモコンを持って操作する、などという程度のものではない。
「監視用」だった先程までの体を換装し、これを操作する装備へと変更。
左上はまるで自分の体を動かすのと同じように、この義体を動かすことが出来る。
その代わり、見聞きできる範囲は義体が確認できる範囲まで狭まるが……
義体はしばらく可動を確認するように体を動かすと、エレベーターへの扉へと向けて歩み寄る。
金属製の指先がパネルに指を向けると共にロックが解除され、
本来なら来ないはずの階数まで下りるエレベーター。
そのまま義体は地上へと移動した。
キュィィ――ンと音を立てながら、首にあたる部分を回す。
首輪による位置把握は、この義体を操作してもわかる……
というよりは、左上と変わった監視員達が整理したデータがこの義体にも転送されている。
(サテ、確カドナルドガコノ周辺……図書館ニイタハズ。
彼ノ能力カラスレバ、恐ラクコレに気付ク可能性ハ高イデショウ)
もしこの義体に「表情を動かす」という機能があれば、笑顔を作っていただろう。
左上からすれば気付いてくれたほうがいい……むしろ、気付かせるのが狙いだ。
この義体がこれから向かうのは西。狙い通りに行けばドナルドも追ってくる。
ドナルドにワープについて気付かせ、デパートにいる連中にぶつけ戦闘を起こす……
それが左上の狙いである。
討伐が許されないなら、こちらからけしかければいい、と言う訳だ。
ブロリー絡みで散々厭味を言った右上への意匠返しにもなる。
アイカメラで周辺を探った後、義体は駆け出した。
一応、名目上は隠密活動を行わなくてはならない。
故に、デパートへの道は既に禁止エリアとなったA-4からF-4を目指す。
義体がA-4に到達した頃……自分があらかじめ録音した放送が流れるのを、義体は知覚した。
幸いなのか不幸なのか死者はこれ以上増えなかったため、録音したものがそのまま使えたようだ。
「第六回放送の時間です。
禁止エリアは十四時からA-5、十六時からD-4。
脱落者は以下の一名。
呂布。
以上です」
足を止め、放送にミスはないか確認する。
ここまでは、いつもと同じ。ここまでは。
ここからが、運営長の告げるように命じた内容だ。
「人数の減りが少なくなくなったこと、また人数そのものが減ったことから、
以前述べたルールを厳罰化します。
24時間の間誰も死ななければ、全員の首輪が爆破する……と述べましたが、
12時間以内に参加者が残り一人にならなかった場合――時間切れとします」
敢えて『首輪を爆破する』とは言わない。
なぜなら首輪をどうにかできたと思う相手に、首輪を爆破する以外にも手はあるぞ、
と脅しつける意味があるからだ。
もっとも、どんな方法かは具体的には伝えない。伝える義理がない。
この会場の成り立ちを保持するありとあらゆる機器を停止・自爆させ、
会場の消滅による証拠隠滅と参加者の抹殺を同時に行うということは。
「最後の放送は六時間後となります」
音声は消える。録音だが、それを気付かれるのは有り得ない……と左上は結論づけた。
もともと機械的で平坦な声の左上だ、録音を使ったところで特に変化はない。
これが右上だったら確実で気付かれただろうが。
そう結論付け、義体は再度動き出した。
【オートマトン@機動戦士ガンダム00】
対人用自律行動型無人兵器の総称。今回登場したものは2ndシーズンでアロウズが使ったもの。
サイズは人間より一回り大きく2m前後、待機状態では箱状で、起動すると変形し4本の脚を展開。
見ようによってはかわいい。
先端のローラーによって移動する。センサーは胴体の前後と頭頂部に存在し、胴体下部のドラムフレームに装備された2門の機銃によって攻撃を行なう。
作中においては対人兵器として凶悪な性能を発揮しており、
拳銃程度の武装では遮蔽物と合わせても足止めすることが限界である。
破壊には最低でもマシンガンか爆発物程度の火力が必要とされるが、
あくまで対人兵器なのでガンダム相手だとただの的でしかない。
参考資料として実物を見たい場合は、ガンダムプラモデルの
「HG 1/144 GNX-704T アヘッド」にミニサイズのオートマトンが付属している。
なお、このSSに登場するオートマトンは違う世界から持ってきたものではなく、
運営側が人員の消耗を抑えるためデータを元に自ら生産したものである。
そのため原作とは違う動力で動いている可能性もある。}
|sm241:[[それを人殺しの道具と言うにはあまりにも大きすぎた(※A-10RCLのことです)]]|[[時系列順>第六回放送までの本編SS]]|sm243:[[風雪、士と共に幻想を風靡す(Ⅰ)]]|
|sm241:[[それを人殺しの道具と言うにはあまりにも大きすぎた(※A-10RCLのことです)]]|[[投下順>201~250]]|sm243:[[風雪、士と共に幻想を風靡す(Ⅰ)]]|
|sm239:[[no return point]]|右上|sm247:[[All Fiction]]|
|sm232:[[第五回放送]]|左上|sm245:[[Fake]]|
|sm213:[[そして時は動き出す]]|運営長|sm247:[[All Fiction]]|
|sm231:[[Interlude Ⅰ]]|遊城十代|sm:[[]]|
|sm231:[[Interlude Ⅰ]]|白レン|sm:[[]]|
|sm231:[[Interlude Ⅰ]]|シオン・エルトナム・アトラシア|sm:[]]|
|sm231:[[Interlude Ⅰ]]|空条承太郎|sm:[[]]|
|sm231:[[Interlude Ⅰ]]|ケンシロウ|sm:[]]|
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