リオレウス利里の災難
唐突であるが、俺は追われていた。
しかも状況はかなり危ない状況だ、足止めたら最期な所まできている。
しかも状況はかなり危ない状況だ、足止めたら最期な所まできている。
道行く生徒たちが、必死に走る俺の形相を見て、一様にギョッとした表情を浮かべてその場から飛び退く。
その方が返って助かる。ここで他の生徒を俺の逃亡の巻き添えにしたらまたザッキーに叱られかねないぞ。
ザッキーはああ見えて意外と説教が長いのだ。前みたいに足が痺れて立てなくなるまでの説教は勘弁したい。
その方が返って助かる。ここで他の生徒を俺の逃亡の巻き添えにしたらまたザッキーに叱られかねないぞ。
ザッキーはああ見えて意外と説教が長いのだ。前みたいに足が痺れて立てなくなるまでの説教は勘弁したい。
「待つんだニャっ!」
気が付くと、奴の声と足音が俺の直ぐ後まで迫ってきていた。
どうやら、余計な事を考えている内に追いつかれてしまった様だ。これはかなり拙いぞ。
俺はそいつから逃れる為、駆ける足を更に速める。
壁にしつこい位に貼られている『廊下を走るな』の標語の張り紙なんて、今は知った物か。
そりゃ、標語を守りたいのも山々だけど、今は守っていられる状況じゃない。ゴメンよ、ザッキー。
どうやら、余計な事を考えている内に追いつかれてしまった様だ。これはかなり拙いぞ。
俺はそいつから逃れる為、駆ける足を更に速める。
壁にしつこい位に貼られている『廊下を走るな』の標語の張り紙なんて、今は知った物か。
そりゃ、標語を守りたいのも山々だけど、今は守っていられる状況じゃない。ゴメンよ、ザッキー。
「うわ、しまった、行き止まりだー!」
曲がり角を曲がった所でどん詰まりの壁に阻まれた俺は、驚きつつ足の爪をブレーキにして何とか足を止める。
危ない危ない、止まりきれずに壁と正面衝突する所だった。 意外と痛いんだよな、壁とのキス。
危ない危ない、止まりきれずに壁と正面衝突する所だった。 意外と痛いんだよな、壁とのキス。
「その隙、いただきだニャっ!」
足を止めると同時に、背後から掛かる声。
背中に冷たい物を感じた俺は、咄嗟に横に飛び退いた。
背中に冷たい物を感じた俺は、咄嗟に横に飛び退いた。
ず こ ん !
――その瞬間、俺の直ぐ横を何かが凄い勢いで振り下ろされ、俺がいた辺りの廊下の床を割り砕く。
それは剣だった。しかし、それは剣と言うにはあまりにも大きすぎた。
大きくぶ厚く重く、そして大雑把すぎた。
それはまさに鉄塊だった。
大きくぶ厚く重く、そして大雑把すぎた。
それはまさに鉄塊だった。
とか、何か何処かで聞いたような言い回しが思わず浮かぶ位の代物が、俺の直ぐ横に振り下ろされていたのだ。
もし、あの時、咄嗟に横へ避けなかったら、多分、保健室送りは確実だっただろう。 危ない危ない。
もし、あの時、咄嗟に横へ避けなかったら、多分、保健室送りは確実だっただろう。 危ない危ない。
「こ、こら、避けたら駄目ニャ! この剣、ゲームと違って一度振り下ろしたら重くて簡単に持ちあがらないんだニャ!
今直ぐ剣を引き抜くから、其処を動かないで待ってるんだニャ!」
今直ぐ剣を引き抜くから、其処を動かないで待ってるんだニャ!」
声の方へ振り向く。
其処に居たのは,身長は俺の半分ほど、蒼と黒を配したごてごてとした鎧姿の中等部と思わしきキジトラのネコの少女。
おまけにその鎧は俺にとってかなり見慣れた物。そう、今俺がハマっているゲームに出てくる装備品その物だった。
彼女は廊下のコンクリートの床に食いこんだ大剣を、尻尾をくねらせながら必死に引き抜こうともがいている所だった。
そう、この少女こそ、さっきから俺をしつこく追い掛け回す奴だった。
そして、俺を追い掛け回すその理由は……
其処に居たのは,身長は俺の半分ほど、蒼と黒を配したごてごてとした鎧姿の中等部と思わしきキジトラのネコの少女。
おまけにその鎧は俺にとってかなり見慣れた物。そう、今俺がハマっているゲームに出てくる装備品その物だった。
彼女は廊下のコンクリートの床に食いこんだ大剣を、尻尾をくねらせながら必死に引き抜こうともがいている所だった。
そう、この少女こそ、さっきから俺をしつこく追い掛け回す奴だった。
そして、俺を追い掛け回すその理由は……
「ボクがこの剣を引き抜いたら、直ぐにお前を討伐してやるニャ! リオレウス」
如何言う訳か、俺をゲームに出てくる某飛竜と勘違い?して狩猟しようとしているのだ。
そりゃ、その飛竜に似ていると卓から良く言われていたけど、まさかこういう事になるとは思ってもいなかった。
そりゃ、その飛竜に似ていると卓から良く言われていたけど、まさかこういう事になるとは思ってもいなかった。
……俺がこう言う状況に陥ったのは、昼休みになって直ぐの事。
俺は何時もの屋上のベンチで、サン先生に用事を頼まれた事で来るのが遅れている親友の卓を待ちつつ、
携帯ゲームで古龍の大宝玉Get大作戦inナヅチマラソン第四回を行っている所だった。
俺は何時もの屋上のベンチで、サン先生に用事を頼まれた事で来るのが遅れている親友の卓を待ちつつ、
携帯ゲームで古龍の大宝玉Get大作戦inナヅチマラソン第四回を行っている所だった。
「ようやく見つけたニャ!」
声に振り向いて見ると、其処に居たのは鎧姿に大剣を背負った中等部と思しきネコの少女の姿。
そんな妙な客人を前に、俺の頭の上に「?」が浮かぶのは当然だっただろう。
しかし、俺の不思議な物を見る様な視線を気にする事無く、少女は更に続ける。
しかし、俺の不思議な物を見る様な視線を気にする事無く、少女は更に続ける。
「この時間、お前はここに居るという事を、高等部のヒト達から聞き出すのに結構苦労したニャ!
おまけに、違う棟の屋上と行き間違えてえらく遠回りさせられたニャ! 全く腹が立つニャ!」
「……??」
おまけに、違う棟の屋上と行き間違えてえらく遠回りさせられたニャ! 全く腹が立つニャ!」
「……??」
一人勝手に憤慨する少女を前に、俺が更に困惑するのは当然だった。
そして、少女はやおら背負った大剣を両手に持つと、
剣の先でびっ、と俺を指すつもりだったのか、大剣をよたよたふらふらと揺らしながら言った。
そして、少女はやおら背負った大剣を両手に持つと、
剣の先でびっ、と俺を指すつもりだったのか、大剣をよたよたふらふらと揺らしながら言った。
「数週間前に友達の琉璃(るり)ちゃんを食おうとしたお前を、このボク、美弥家 加奈(みやけ かな)が討伐するニャ!
だから覚悟するニャ! リオレウス!」
だから覚悟するニャ! リオレウス!」
最初、俺は少女の言っている意味が分からなかった。
そりゃ泊瀬谷先生や佐藤先生から、利里君は語解力が足りないとか良く言われるけど、
流石に彼女の言っている事を直ぐに理解しろと言われると、あのヒカル君でも無理だろうと思うぞ?
だから、取りあえずゲームを一時中断させた俺は如何言う事か少女に聞く事にしたんだ。
そりゃ泊瀬谷先生や佐藤先生から、利里君は語解力が足りないとか良く言われるけど、
流石に彼女の言っている事を直ぐに理解しろと言われると、あのヒカル君でも無理だろうと思うぞ?
だから、取りあえずゲームを一時中断させた俺は如何言う事か少女に聞く事にしたんだ。
「えっと、俺、リオレウスじゃないぞ? それに、俺はこう言う顔だけど他のヒトを食うなんて恐ろしい事はしないぞー?
それで、君の言う琉璃ちゃんは何を如何言う風に勘違いして、俺に食われると思ったんだー?」
「嘘を言うニャ! リオレウス! ついさっき、琉璃ちゃんから聞いたニャ!
2ヶ月ほど前、通学中の琉璃ちゃんをお前が後から大きな口を開けてガオーと襲おうとしたって」
それで、君の言う琉璃ちゃんは何を如何言う風に勘違いして、俺に食われると思ったんだー?」
「嘘を言うニャ! リオレウス! ついさっき、琉璃ちゃんから聞いたニャ!
2ヶ月ほど前、通学中の琉璃ちゃんをお前が後から大きな口を開けてガオーと襲おうとしたって」
……2ヶ月ほど前?……エーと、その時何があったんだっけ?
ああ、そうだ、その時、確か俺はザッキーに滅茶苦茶怒られた事はあったな?
それで、俺が意外に怖がられてる事を初めて知ったんだっけ? あれはショックだったよなー。
……って、それ以前に何かあったような……?
ああ、そうだ、その時、確か俺はザッキーに滅茶苦茶怒られた事はあったな?
それで、俺が意外に怖がられてる事を初めて知ったんだっけ? あれはショックだったよなー。
……って、それ以前に何かあったような……?
「お前はハンカチを拾った様に見せかけて、琉璃ちゃんを油断させようとしたみたいだけど、
そうは上手く行かないニャ! そうはブタ屋が降ろさないって奴ニャ!」←(ブタ屋じゃなくて問屋です)
そうは上手く行かないニャ! そうはブタ屋が降ろさないって奴ニャ!」←(ブタ屋じゃなくて問屋です)
ああーっ! そうだったそうだった!
確か、ネコの子がハンカチを落としたのに気付いた俺が、親切心でそれを拾ってネコの子に渡そうとしたんだっけ。
そしたら、ネコの子は俺の顔を見るなり「食われちゃうニャー!」とか言って逃げ出して……、
うう、何だか思い出したら凄く悲しくなってきたぞ……。
確か、ネコの子がハンカチを落としたのに気付いた俺が、親切心でそれを拾ってネコの子に渡そうとしたんだっけ。
そしたら、ネコの子は俺の顔を見るなり「食われちゃうニャー!」とか言って逃げ出して……、
うう、何だか思い出したら凄く悲しくなってきたぞ……。
「だから、お前が次も同じ事を繰り返す前に、ここでボクが討伐してやるニャ!」
その言葉に、俺が「へ?」と思う間も無く。
「ちぇぇすとぉぉぉぉぉっ! だニャ」
少女が叫び声を上げながら大剣を振り上げる!
べ き こ ん !
咄嗟に俺が飛び退いたその横に剣が振り下ろされ、先ほどまで俺が座っていたベンチを真っ二つに破壊した。
この時、俺はようやく、少女の持つ大剣が玩具ではなく、紛れも無い本物だと言う事を理解した。
そして、同時に少女に対する説得は不可能に近い事も理解した。
この時、俺はようやく、少女の持つ大剣が玩具ではなく、紛れも無い本物だと言う事を理解した。
そして、同時に少女に対する説得は不可能に近い事も理解した。
「あ、避けるニャ! 大人しく討伐されるニャ!」
「何だか良く分からないけど、討伐されるのはゴメンだぞ!」
「何だか良く分からないけど、討伐されるのはゴメンだぞ!」
当然、俺は半ば状況が理解できぬまま、その場から逃げ出さざるえなかったのだった。