牡丹雪
雪だ。
彼女が呟いた。読んでいた本から顔を上げると、窓際にいた彼女と目が合った。
その後ろで、街灯の明かりを帯びて、淡くおぼろに光りながら牡丹雪が舞っていた。
もう一度雪だよ、と今度は私に言う。
こっちに来てと笑いながら、手招きをする。
その様が、猫である彼女に映えていた。
彼女が呟いた。読んでいた本から顔を上げると、窓際にいた彼女と目が合った。
その後ろで、街灯の明かりを帯びて、淡くおぼろに光りながら牡丹雪が舞っていた。
もう一度雪だよ、と今度は私に言う。
こっちに来てと笑いながら、手招きをする。
その様が、猫である彼女に映えていた。
「初雪だな。今年は暖冬だったからか、ずいぶんと遅い初雪になってしまったな」
「ねぇ、積もったら明日雪合戦しよう」
「ぬう、牡丹雪だからつもりはせんだろう。それにせっかくの休暇を徒労に終わらせたくはない」
「なによ、けちんぼ。妻のお願いを聞いてあげるのが夫の役目でしょ」
「お前は猫なのだから、炬燵で丸くなっていれば万事解決だのに」
「ねぇ、積もったら明日雪合戦しよう」
「ぬう、牡丹雪だからつもりはせんだろう。それにせっかくの休暇を徒労に終わらせたくはない」
「なによ、けちんぼ。妻のお願いを聞いてあげるのが夫の役目でしょ」
「お前は猫なのだから、炬燵で丸くなっていれば万事解決だのに」
雪がすべての音を吸い取ってしまったのだろうか。
殆ど何の音もしない。ただ、時計の音だけが部屋の中に染み込んでいく。
ふと、もう寝ただろうかと思い横を見やると、こちらを見つめる彼女と目が合った。
殆ど何の音もしない。ただ、時計の音だけが部屋の中に染み込んでいく。
ふと、もう寝ただろうかと思い横を見やると、こちらを見つめる彼女と目が合った。
「ねぇ、そっち行っていい?」
「ん」
「ん」
もぞもぞと芋虫のように動きながら、腕の中に納まる。
「へへ、あったかい。」
そう言いながら喉をゴロゴロと鳴らし、両手を揉むように動かす。
そしてそのまま眠りに落ちてしまった。ろくに体を動かすこともできない。
幸せそうな彼女の寝顔を見つめながら、私はふうとため息をついた。
今夜も眠れない、長い夜になりそうだ。
そしてそのまま眠りに落ちてしまった。ろくに体を動かすこともできない。
幸せそうな彼女の寝顔を見つめながら、私はふうとため息をついた。
今夜も眠れない、長い夜になりそうだ。