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教室の扉から入ってきた樫村は俺たちのいる机に真っ直ぐに向かってこう言った。

「私はその資料に載っている孤児院出身で、実験の手助けをしています。関村君も私と同じですよ。」

こいつ・・・関村の仲間だったのか。こんな外見をしているが、こいつも人殺しの仲間・・・

「お前たちは何がしたい!?教師を殺し、高杉や俺たちを狙うのは何故だ!!」

「高杉君を狙うのは、憎いからですよ。あの人の子供なのに、普通に暮らしていた・・・・まあその資料を手に入れる
ついでですので本当はどうでもいいんですけど。高杉君、お父さんがしている悪行を知った感想はどうですか?」

「嘘だ・・・こんな事を父さんがするはずない!!」

そう言って、彼は資料を机の上に叩きつけた。いきなりこんな事信じることのほうが難しい。俺だってこの資料に
書かれている事を全て信じたわけではない。だが・・・

「もしお前たちが孤児院出身だと言うのなら、何故そんな実験の手助けをする!?俺の親父がそれに関わっている
というのか!?」

「・・・あなたに答える義理はありません。だけど、狼さんのお父さんがこの事に関わっているというのは、事実です。」

あの親父・・・!俺たち家族だけではなく、ただの高校生までこんな事に巻き込むなんて・・・・

「・・・さて、関村君にも言われたと思いますがその資料を渡してくれませんか?」
「断る。」
「まあ、普通そう言いますよね。」

そう言って、彼女は笑顔のまま鞄の中を探って中から銃を取り出した。・・・銃を見るのは二度目か。



「ああ、先に言っておきますが撃つ気はないですよ。ただ、この校舎から出られないようにするだけです。」
「どういうことだ?今は朝早いから生徒は俺たちしか居ないが、しばらくすれば誰か来る。なのに、そんな銃を取
り出して、この校舎から出られないようにするなんて何の意味があるんだ?」
「人なら来ませんよ。実は、先刻学校の校長先生に学校のあちこちに爆弾をしかけたと言っておきましたから。今
頃、警察が動いて生徒を学校に入れないようにしているはずです。でも、爆弾をしかけたというのは嘘ではないで
すよ。今、こうやって話している間にも関村君が学校の内にも外にも爆弾を取り付けているところですから。」

な・・・関村の奴の姿がないのはそんな事をしていたからなのか・・・でも・・・

「俺たちを校舎に閉じ込めて何がしたい?それに、まるで俺たちが早朝来るのを狙っていたようなタイミングじゃないか?」
「ああ、それなら簡単な事ですよ。高杉君は今日、早朝の掃除当番ですから。狼さんが来るのは予想外でしたけど。」
「・・・うん、確かに俺は掃除当番だけど・・・」

そうか、高杉が学校に来るのが早かったのは掃除当番だからか。・・・掃除当番はこの新校舎の隅々まで掃除しなけれ
ばならないんだっけ。あれ?掃除当番って確か二人一組でやるんじゃなかったっけ。もう一人は寝坊でもしたのかな。

「何でこんな事をするのか、不思議に思っていますよね。まあ、平たく言えばあなたたちを人質にするためです。」
「・・・人質、か。警察が動かないというのなら交渉する相手なんて居ないと思うのだが。」
「相手ならすぐ近くにいますよ。ここは新校舎。生徒たちの教室がある場所です。ですが、教師たちが集まる職員室は
ここから少し離れた旧校舎にあります。交渉の相手は、先生たちです。」

・・・教師たちと何を交渉するっていうんだ。確かに教師たちと交渉するなら生徒を人質にすれば効果的だろうが、リス
クが大きすぎる。警察は圧力をかけられているといっても、こういう事態になればどうなることか。




「・・・お前たちの目的はこの資料ではないのか?」
「その資料も手に入れたいとは思っていますが、それを手に入れたところで私たちの目的は達成されません。忘れまし
たか?その資料の在り処を示した暗号の紙は職員室にありました。関村君は昨日言いませんでしたか?ここの教師の一
人が私たちを裏切ったって。」

・・・確かに聞いたような気がする。じゃあ、俺たちを人質にするのはその教師をおびき寄せるためか?じゃあこの転校生
が昨日転校してきたのは下見をするためか。昨日の放課後、すぐに帰らずに生徒指導室辺りをうろついていたのもこの
ためかもしれないな。まさかこんな事になるとは・・・・

「言っておきますが、逃げようなんて思わないでくださいね。外には、関村君に頼んで地雷を仕掛けてもらいました。
量は少ないですが、踏まずに学校の外に行くのは難しいですよ。」
「・・・・何のためにこんな事を・・・お前もその資料に載った孤児院出身なら、酷いことをされたんじゃないのか?」

俺がそう言うと、彼女は少し視線を下にして呟くようにこう言った。

「・・・仕方ないんです。私たちが生きるためです。それと、守らなければいけない人も居ますから・・・」

・・・この反応だと、こいつも誰かに脅されてやっている感じがする。そして、その脅した相手は・・・

「・・・俺の親父は一体何をしている。高杉を脅し、俺たちをこんな事に巻き込んで何がしたいというんだ。」
「・・・それは私たちにも分かりませんよ。ただ、ひとつだけ分かっているのはあなたのお父さんがこの事件の首謀者である
ということです。それと、高杉君のお父さんも。」
「・・・・・・・・・・・」

・・・やっぱりあの親父は酷い奴だ。母さんを見殺しにしただけではなくて、今度は俺たちもこんな事に巻き込んだのだから。
関村が俺の命を奪おうとしていたということは、俺なんて死んでしまってもいいと思っているということだ。




「・・・さて、そろそろ時間かな。」

そう言って、彼女は携帯を取り出しどこかに繋いだ。電話の相手は・・・多分旧校舎の教師たちだろう。学校の内外に爆弾を仕
掛けられたと言われては、彼らも身動きできないだろう。

「・・・どうも。校長先生ですか?一度しか言わないのでよく聞いてください。学校の中と外に爆弾を仕掛けたというのはすで
にご存知ですよね。それらを撤去してほしいのなら私の言うことを聞いてください。新校舎に居た生徒数名を人質にしますの
で、私の言う事を聞かなければ生徒の命は無いと思ってください。」

・・・電話の相手は校長か。

「・・・そのお願いとは、時任先生を理科室につれてくる事です。そちらに迎えの者を送りますのでその人の指示に従ってくだ
さい。もし迎えの者に危害を加えたら生徒の命はありませんよ。」

そこまで言って彼女は電話を切った。何故時任先生を理科室に・・・?その直後、教室の扉付近でガタッという音がした。まさ
か・・・誰か居るのか!?

「動かないでください!!」
「う・・うわぁっ!俺っちが何をしたって言うんだよぉ・・・」

物音がした方に樫村は銃を向けると、そこから同じクラスの生徒である青くキラキラとした鱗を持った竜人の男子学生が出て
来た。何でこんな朝早くに学校に・・・

「・・・何でこんな所に居るんですか?」
「そ・・・そんな事言われても俺っちとぐれぽんは今日掃除当番だから・・・」
「ぐれぽん・・・?ああ、高杉君の事ですか。」
「そうそう!・・・・・ってギャー!」



次の瞬間、樫村は竜人の足元に向かって発砲した。人体には当たらなかったが、彼が怯んだその隙に腹を蹴り、無理やり教室
に押し込んだ。・・・こいつ、物凄く戦い慣れていないか?

「げほっ・・・!うぅ・・・俺っち何もしてないのにー!」
「・・・ここに居る以上、あなたも人質になってもらいます。申し訳ないですけど。・・・狼さん、彼に詳しい事情を説明してやっ
てください。私は今から理科室に行かないといけないので・・・」

彼女は、銃を懐にしまい教室を出た。腹を押さえて蹲る竜人の男の元に高杉は駆け寄り介抱してやった。掃除当番は二人一組
だから、こいつは爆弾が仕掛けられる前に学校に来ていたのか。何という不運な奴・・・

「だ・・・大丈夫・・・?」
「う・・・うん。俺っちは大丈夫だけどこれ、一体どういう事?転校生の女の子に銃を突きつけられたり蹴られたりするなんて
これは何かのドッキリ?どこかにカメラでもあるのかな・・・?」

彼が混乱するのも無理はないだろう。とりあえず、学校の外には地雷が埋められているため外には出られないという事と、樫
村がある目的のために俺たちを人質にしたという事を簡単に説明した。

「えっと・・・・俺っちどうすればいいのかな?」
「・・・・俺たちも聞きたいぐらいだ。とりあえず、今は下手に動かない方がいいだろう。」

外には行けないし、電話も無いので助けを呼ぶことはできない。彼女の言うとおりなら警察も頼れないし、下手に動けば樫村
は銃を持っているので撃たれるかもしれない。

「・・・・どうするかな。」

俺たちは結構、余裕の無い状況に追い込まれているみたいだ。だが、それは樫村たちも同じだろう。こんな強硬手段に出たと
いうことは、何かあったのかもしれないな。



その頃、外では警察が学校の周りを包囲していた。爆破予告のあった学校の中に生徒を入れないためである。

「どういうことだ!!中には俺の友達もいるんだぞ!何で助けにいかないんだよ!?お前ら、警察なんだろ!?」
「・・・上からの命令で、何があっても動いてはいけないと言われているんだ。それに、下手に動けば人質の命も危ないぞ。」

学校に登校してきた流虎と花音はこの騒ぎに眠兎たちが巻き込まれている事を聞き、近くに居た警官に詰め寄ったが、首を振る
ばかりで何もしようとはしない。その数秒後、乾いた音が学校内から聞こえてきた。

「・・・これ、銃声ですよね!?これでもあなたたちは動かないんですか!?」

花音の問いかけに、警官は答えず黙って首を振った。

「・・・こうなったら俺だけでも・・・」
「よせ。運動場のあちこちに地雷が仕掛けられているという情報が入った。危ないから中に入れるわけにはいかない。」
「・・・お前たちが動かないなら、誰が動くんだよ!?危険だろうが何だろうが行かないと・・・」

無理やり校内に入ろうとする流虎を警官と花音が食い止める。

「何で止めるんだよ花音!」
「・・・流虎君が今行って何ができるというの?もし爆弾が仕掛けられているという情報が本当なら正面から行くのは自殺しに行く
ようなものだよ。少し落ち着いて。・・・私に考えがあるから」
「考え・・・・?」

花音は、警官に話を聞かれないように小さな声で流虎に話した。その話を聞いた流虎は、すぐに学校の正門から離れて、花音と
一緒にある場所に向かった。






・・・外が騒がしくなってきたな。警察は突入する気はなさそうだ。警察は登校してきた生徒を近づけさせないようにするために
しか動いていないようだ。ふう・・・状況は良くないな。

「そういえば・・・お前、名前何だっけ?」
「うわ・・・!同じクラスなのに覚えてないのかよ!そりゃないぜみんみん!」

みんみん・・・もしかしなくてもそれは俺の事を指しているようだ。セミの鳴き声みたいで嫌だ・・・

「まあ、いいや。俺っちの名前は石和 健吾さ!ちゃんと覚えておけよ!」

石和か・・・不運なことに全く関係ない奴が巻き込まれてしまったな。だが、今はその事を嘆く暇は無い。幸い、彼は話好きで明る
い性格をしていたのでこんな状況でも辛気臭い事にはならなかった。とにかく、これからどうするかを考えなければ・・・
樫村が出て行って、すでに一時間近く経っていた。時任先生を理化室に呼んだが、一体何のために・・・先生・・・無事だといいが。