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我が﨟たし悪ノ華 ◆cg3sIEBpCI





 VOCALOID。
 歌うために生み出された、その存在。
 人の姿をしてはいるが、決して人ではない―――音声ソフトの名前。

 その歌声はニコニコ動画を通じて広まり、今や音楽ランキングを時に総ナメさえする存在である。
 その曲はチャートに並ぶJ-POPのカバーからクオリティの高いオリジナル曲、ネタ曲、更には会話とさまざまである。
 VOCALOIDの曲に感銘を受け、PVや歌ってみた、演奏してみたなどのタグもにぎわい、まさしくそれらはニコニコ動画の現在の顔と言ってさしつかえないだろう。

 その中の1つ―――否、ここはここに彼女に親愛と敬意を込めて1人と呼ぼう―――が、鏡音リン。
 VOCALOID2の1体目として生み出された初音ミクに続いてこの世に生を受けた、少女の外見をした立派な歌い手。
 そっくり同じ顔と声をした、鏡音レンという少年の存在。
 金髪、白いリボン、緑の瞳。オレンジ色のリボンが付いた、活動的な印象を与える服装。
 幼いながらも張りのある、見事な歌声。

 そのどれもがリンを構成する一要素であり、一つとして欠かせないものである。
 彼女はニコニコ動画に、男女共に愛されるアイドルとして、確かに存在していたのだ。

 もっとも。
 ―――そのことと今回のことはあまり関係なかったのだが。


「……レン、レン、どこにいるの!?」
 森の中を歩くのは、齢14の少女。
 まだ幼さの残る顔立ちながら、その表情はどこかぞっとするほど美しい。
 少女の身にまとった『ドレス』が、かすかに揺れる。
 ヒールの高い靴は、森の中を歩くにはあまりにもふさわしくない。
 その派手な身なりから、そこらの平民でないことは容易に予想がつく。
「どこかにいるのでしょう、レン。まさか貴方が私を独りにするなんてこと……」
 少女は、爪を噛み自らの半身の名前を呼ぶことしかしようとしない。
 苛立つ。

 イライラが治まらない。
 突然、目の前で男の首輪が爆発した。
 それだけなら全く構わない。彼女にはどうでもいいことだった。
 ただ、『愚民』が一人死んだ、それだけ。
 どうせ、放っておいても死ぬしか道のなかった、哀れなゴミ。
 その死を悼むどころか、馬鹿な人間めと嘲笑いたいくらいだった。

 しかし、これはどういうことだ。
 殺し合い?
 どうして自分が、殺し合いなどに参加しなければならないのか?

 そこらに落ちていそうな薄汚い鞄を持たされて。
 何の整備もされていない道に放り出されて。
 変質者でも出そうな森を歩くなんて。
 これは、彼女にとって真の侮辱行為だ。
 自分を、一体何だと思っているのだ。
「……許さない……許さないわ……」
 少女の名は、鏡音リン。
 鏡音レンという双子の弟を持つ―――

『国の頂点に君臨する若き女王』だった。

 ありえない。
 今の状況は、リンにとって何もかもありえない。
 女王たる自分が、荷物を自分で持たなければいけないこと。
 ジョセフィーヌもおらず、自分の足で歩かなければいけないこと。
 そしてその中に入っているのが、美味しいブリオッシュなどではなく庶民が口にするであろう堅いパンと、錆びついた薄汚い刃物であるということ―――他にも何か入っていたが、リンにはそれが何かよく分からなかったのだ―――。
 あの場にいた誰も、自分を見て傅かなかったこと。
 自分を守るためなら悪にさえなってくれるであろう召使の姿が見えないこと。
 想いを寄せるあの『青い人』を誑かす売女があの場にいたこと。
 そして何より―――
 今まで何度も虐殺を見下ろし、民衆を搾取する側だった自分が、殺し合いなどしなければいけないということに。

「……粛清してやりましょう」
 だから、女王は誓う。
 絶対に、あの場にいた愚民共を利用しつくして殺してやる。
 そして、この殺し合いとやらを企画したあの男と女2人は―――国に連れ帰って斬首してやる。いや、それだけでは足りない。長ったらしい拷問も必要だ。目玉をくり抜き、四肢を切り落とし、全身の皮膚を剥ぎ落される様を見て嘲笑わなければ気がすまない。
 自分を崇めなかったことを、命をかけて後悔させてやろう。
 だからと言って、彼女自身が手を染めるなどするはずがない。そんな下劣で野蛮なことは、家来にでもさせておけば十分だ。
 レン―――自らの血を分けた弟にでも。

 しかしこの場にはレン以外にも多くの人間がいる。彼とすぐに出会えるという保証はない。
 それならばどうするか?答えは決まっている。
 汚らわしい人間を部下にするなど本当は吐き気がするほど嫌なのだが、生き残るためには仕方ない。
 家来を作る。女王たる自分にふさわしい部下を。
 自分のために皆殺しをしてくれる豚共を探さなければいけない。
 自分の見た目は可憐な少女だ。きっと協力してくれるに違いない。
 もしかしたら相手がまた先ほどのように無礼な振る舞いをするかもしれないが、一度だけなら許してやろう。
 ここにいるのは女王の顔も知らないあまりに憐れで無知な家畜かもしれない、そんな屑に礼儀を求めるのはあまりに可哀相だ。
 自分は『心の広い』女王なのだから。
「……さあ、跪きなさい!」
 リンはイメージする。
 目の前には、自らの部下が何万もいる。
 全てがリンの言葉に素直に頷き、何もかもしてくれる。
 その中でも、特に自分と同じ顔をした召使いは、ただただ黙って確実に全てを実行してくれる。
 ―――天国。
 誰もかもが自分を讃え、褒めてくれるあの城に戻りたい。
 王女たる彼女には―――このような下品な殺し合いなど似合わない。
 ただ彼女は、餓えに苦しみ喘ぐ農民を見ているだけ、それだけでよかったのだ。

「私、なんて心が広いのでしょうか」
 自らが不快な思いをしているにも関わらず愚民にも少しの優しさを見せてやろうとする自分にリンは酔いしれながら、まっすぐに歩き始めた。
「ああ、お菓子が食べたいわ」
 あまりに場違いな言葉を呟いて。

 そんな少女を、人はそう呼ぶ。
 鏡音リンという本名ではなく―――『悪ノ娘』と。


【F-6 森/一日目・深夜】
【鏡音リン@VOCALOID2(悪ノ娘仕様)】
[状態]:苛立ち
[装備]:レナの鉈@ひぐらしのなく頃に
[道具]:基本支給品、不明支給品(0~2)
[思考・状況]
0.家来を見つけて愚民共を皆殺しにしてもらう。
1.歩きたくない。荷物を持ちたくない。
2.レンに会いたい



sm12:すすまない!ドリラー 時系列順 sm14:賀斉が邪神にもっこもこ
sm12:すすまない!ドリラー 投下順 sm14:賀斉が邪神にもっこもこ
鏡音リン sm34:熱き血潮に






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