運命 ◆F.EmGSxYug
「さて……これが『世界』だ、呂布!
もっとも『時間の止まっている』おまえには、
見えもせず感じもしないだろうがなァ?
おまえは自分が死んだことにさえ気づいていない……
何が起こったのかもわかるはずがない!」
『止まった世界』の中、DIOは勝利を確信し舞い上がっていた。
本来であれば、DIOの制限ではまだ時を止められることはできなかったはず。
しかし咲夜の血を吸ったことで止めるのに必要な時間間隔は大幅に低減されたのだ。
……その腕は、呂布の腹に深々と突き刺さっている。
「8秒経過! ンッン~~♪ 実に! スガスガしい気分だッ!
歌でもひとつ歌いたいようなイイ気分だ~~フフフフハハハハ!
ジョースターの娘の血のおかげだ、本当によくなじむッ!
最ッ高にハイって奴だァアアアアアアアアアアア!!!」
勝ち誇った笑みと共にDIOは腕を抜き取り、指を鳴らした。
だが、未だに呂布は動かない。
「9秒経過ッ! 9秒も止められたぞッ!
しかし時を止めていられるのは9秒が限界といったところか……
そして時は動き出す」
「ぐあああああああああッ!?」
「すばらしい相性だ……
『止まった時間』が延長したどころか『止められる間隔』まで短縮している……」
同時に、静止時間は『ゼロ』になり、呂布は動き出した――
ザ・ワールドに喰らったラッシュを全て受けるという形で。
呂布が吹き飛び、闇に飲まれて消えていった方向を見やる。
「さて、念には念を入れ……ヤツがしっかり死んだかどうか、確かめるとす」
「オラァ!!!」
「ムッ!?」
突如拳が後ろから襲ってきたのは、その時だった。
とっさにガードはしたが、逸れた拳が脇腹に直撃した。
吹き飛びながらも、体勢を立て直す。幸い吸血鬼なら行動に支障はない部分だ。
向き直れば、傷一つなくなった咲夜がスタンドを従えて睨み付けている。
――赤い、瞳で。
(そうか、ヤツに腕を切り落とされた時……或いは腕が飛んでいった時……
その時に私の血がかかったか。面倒なことになった……
私の血で吸血鬼になった以上、ワンツェンども同様に忠誠を誓うはずだが。
肉の芽のことを考えれば望みは薄いか? 一応確認しておくか……)
地面を蹴り宙へ飛ぶザ・ワールド。
同時に、その持ち主であるDIOもまた宙に浮き上がり、
道路脇にある街灯の上へと着地した。
位置取りはDIOが『上』であり咲夜が『下』となる。
「さて……一応おはようと言っておこうか、ジョースターの娘。
君は引力を信じるか?」
「…………」
「今日がお前の新たな誕生日だ。
それを例えるのなら……そう、たとえば………」
DIOは話しながら、手の持った花を指で回転させた。
飛び上がる寸前に、足元に咲いていたのを摘み上げたものだ。
「この美しい花だ……君は花でいえばちょうどこのぐらいの若さといえる。
よーく考えてみたまえジョースターのお嬢さん(マドモアゼル)。
この花はこのまま咲き盛ってしまえばあとは枯れ行くのみ……」
「何が言いたいわけ?」
「ふ……人間をやめたのだ、時間を急ぐなドラキュリーナ。
話は変わるが、パリのルーブル美術館の平均入場者数は1日で4万人だそうだ。
少しばかり間、マイケル・ジャクソンのライブをTVで観たが、
あれは毎日じゃあない。ルーブルは何十年にもわたって毎日だ……。
開館は1793年。毎日4万人もの人間がモナリザとミロのビーナスに引きつけられ、
この2つは必ず観て帰っていくというわけだ。スゴイと思わないか?」
「スゴイというのは数字の話かしら?」
「そうではない……
すぐれた画家や彫刻家は自分の『魂』を目に見える形にできるという所だな。
まるで時空を越えた『スタンド』だ……スタンド使いにも及ばぬ『永遠』。
君はそれと同じだ。スタンド使いであろうと人間である限り覆せぬ『運命』。
今のまま咲き誇ったままで永遠を楽しめるようになったのだ」
「それはあなたのおかげ、だから感謝しろとでも? 冗談じゃないわ。
あなたの血がこの体に流れていると思うだけで気が狂いそうになる!」
「…………!」
咲夜の言葉に一瞬、DIOの精神が沸騰しかけた。
安い挑発。
だがそれが、何か、かつての自分にとって大切な事に引っかかった気がしたのだ。
それでもDIOは自分の精神を押さえ込み、体裁を取り繕って話し続ける。
「フン、口の利き方には気をつけたほうがいいな、ジョースター……
貴様はもはや暗黒に生きるDIOが紡ぐ神話の一部に過ぎないのだ」
「例えあなたが吸血鬼としての『親』にあたるとしても、
そんなことは知ったことじゃないわ。
言ったはずよ? 私の仕える相手はレミリアお嬢様ただ一人。
あんたのようなクズが父親になるくらいなら、私の手で地獄に落としてあげる」
「なに……?」
押さえ込んだはずの何かが肥大化する。
父親。
地獄に落とす。
その言葉が――DIOの、いやディオ・ブランドーの脳裏に、
かつての忌まわしき経験をフラッシュバックさせた。
『酒こそ薬さ! こいつをたたき売って酒買ってこいィー! 今すぐだァー!!』
『うっ……! こ…これは母さんのドレスだッ!!』
『死んじまった女のものなんか用はねェぜッ!』
『地……地獄へ落としてやるッ!』
――母を死なせたどころか死後も貶め。
『おれの父親はゴミのような男だった!』
『母に苦労をかけ、そのために母は死んだ!』
『あいつの血がこの体に流れていると思うだけで気が狂いそうになる!』
『あいつは死に値する!』
――人間であった頃の自分に呪いとして残り。
『ディオ! 紳士として、君の実の父ブランドー氏の名誉にかけて誓ってくれ!
自分の潔白をッ! 自分の父親に誓えるなら、ぼくはこの薬を盆の上に戻し、
2度とこの話はしない! ディオ! さあ! 誓ってくれッ!』
『い……いや! おれの前であいつの話はするな……。あいつの名誉に誓うだと?
かんちがいするなッ! あんなクズに名誉などあるものかァ――!』
宿敵ジョナサンの父親とは違う、醜くズル賢く最低な父親を――
「……………………黙れ……」
「え?」
ぽつりと呟かれた言葉に、咲夜は思わず聞き返していた。
DIOの様子が、明らかにおかしい。
だが、それも当然だ。
それは何よりも根源に位置する、ディオ・ブランドーのトラウマ――
「この俺に命を与えられた売女が、何を偉そうにほざいている!!
たかだか一発入れた程度の事でこのオレに勝てると思っているのか!?
甘く見るなよ、イエローモンキー風情が! 貴様こそ地獄に落としてやるッ!!」
「ッ……!?」
絶叫と共に、DIOは街灯を蹴った。
怒りをむき出しにして襲い掛かるDIOに、逆に咲夜は混乱した。
今まで咲夜が見てきたDIOの纏っていた雰囲気は、理知的かつ深いもの。
今の彼が見せる直情的で理論のない怒りは今までのそれと正反対だ。
とっさに防御の姿勢をスタープラチナは見せたが、しかし、浅い。
「WRYAAAAAAAAA! ぶっ潰れよォオオオオオオオオオオオ!!!」
DIO、渾身の一撃がスタープラチナに炸裂する。
咲夜の体と共に吹き飛ぶスタープラチナ。その左腕に亀裂が入った。
「うぐぅっ!!」
吹き飛びながらも時を止める。反撃ではなく、追撃を防ぐための防御の一手。
しかしその『世界』の中を、DIOは悠々と動き追いついた。
「な――!?」
絶句した咲夜の腹に、ザ・ワールドの拳が炸裂する。
DIOが「止まった世界」で動ける時間もまた、現実時間にして約2秒。
それは今の咲夜が止められる時間と全く同じ。
つまり、咲夜の時止めはなんの意味もなさない――!
衝撃、激突。
気づけば咲夜は血まみれで地面に転がっていた。周囲にはガラスの破片。
塚モールにある店の裏まで吹き飛ばされたらしい。
傷は再生しつつあるようだが、咲夜はまだ未熟なドラキュリーナ。
DIOのそれに比べると、明らかにその速度は遅い。
「う…………」
なんとか体を起こして座り込む。デイパックがない。どこかに落としたらしい。
慌てて周囲を見渡す。幸いフジキが三本ほど間近に落ちていたので回収する。
ただ、正直、あまり幸先がいいとは言えない。
(この様子だと、ほとんどの荷物は毀れちゃってるわね……)
もっともフジキは単に呂布が目こぼししただけであり、
実際は他の武器らしいものは没収されているのであるが……咲夜には知る由もない。
他の荷物はどこにあるのか目で探して、気づいた。
威風堂々と歩いてくるDIOの脇に、何か、落ちている。
美鈴の、帽子。
無意識のうちに、咲夜の視線がそこへ注視される。
そして、自分の側で敵の視線が縫い止められたのを見逃すDIOではない。
「これに目線をやったな。仲間の遺品か? 武器か? 罠か?」
言葉と共にDIOの足が止まる。しまった、と咲夜は思った。
なんとかその感情を覆い隠して、血と共に吐き捨てる。
「言う義理は……ないわ……」
「ふん、なら安全に確かめるとしようか」
あざけり笑うDIOの瞳が、何かおかしいことに咲夜は気づいた。
それが帽子に向いた瞬間、瞳から何かが発射される。
自分の体液を利用したウォーターカッター、名付けて空烈眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)!!!
首を動かしながら放たれたそれは、美鈴の帽子を真っ二つにした。
「…………!」
「ほお、その反応……一番最初らしいなァ?」
言葉を失った咲夜を見て、DIOがにやりと笑った。
同時に、ザ・ワールドが真っ二つになった帽子を拾い上げ、そして。
――自分のトラウマに触れた意匠返しとばかりに、帽子を跡形もなく粉々にした。
プッツ――――z__ン
瞬間、沸騰。
作戦も、思考も、戦略も。
気づけば咲夜は全てを忘れ、真正面から突撃していた。
再び具現化され、猛りながら拳を振りかぶるはスタープラチナ――!
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!!」
「フン、ラッシュの速さ比べか……
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!!」
DIOのザ・ワールドもまた、拳を振り上げた。
殴りあうスタープラチナとザ・ワールド。
しかし、いかに咲夜と言えどスタープラチナを完全に使いこなすことは出来ない。
均衡は崩れ、スタープラチナの拳に亀裂が走る。
コンマ1秒の後、ザ・ワールドの拳がスタープラチナの腰に直撃。
弾き飛ばされた咲夜が、モールの壁に激突する!
「残念だったなぁサクヤ・ジョースター! おまえの怒りなどそんなもの!
やはり我が『ザ・ワールド』の方がパワー、精密さともに上だ!
間髪入れず最後の攻撃だッ! 100年前の因縁があるだけに、
ジョースターの血統の者だけは手かげんせずに一気に殺すと決めていた……
とどめを刺すのはやはり『ザ・ワールド』の真の能力ッ!
これより、静止時間9秒以内にカタをつけるッ!
『ザ・ワールド』! 時よ止まれッ!!!」
自信に満ち溢れたDIOとスタンドが、揃って両腕を左右に広げ、叫ぶ。
同時に世界の時は止まり、咲夜の視界からDIOは消え去っていた。
咲夜は考えるのをやめた――クソッタレな父親がどんな攻撃をしてこようと、
動ける2秒間の間に全力を尽くせばいいだけだ、と思ったからだ。
(私が思う確かなことはDIO!
その顔を次に見た瞬間、私はたぶん……プッツンするだろうということだけよ)
1秒。
2秒。
3秒。
4秒。
5秒。
6秒――
(影……上から!)
「 石 油 タ ン ク だ ッ !!!」
プッツ――――z__ン
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!!」
「もう遅い! 脱出不可能よッ!
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!!」
石油タンクへ向かって次々に叩き込まれるスタープラチナとDIOの拳。
爆発物越しのラッシュの速さ比べ。僅かな時間それは均衡して、
空中で静止し……スタープラチナのラッシュが、止まり始めた。
「8秒経過!」
駄目押しとばかりにDIOのラッシュが直撃する。
下へ向けて石油タンクが一気に加速し、咲夜の上に覆いかぶさる。
「9秒経過………!」
同時に、DIOは石油タンクを蹴って宙へと舞い上がった。
時の流れが舞い戻った石油タンクは爆発、炎上。
その中に、咲夜の姿は欠片もない。
「やった………………終わったのだ!
こんなところまでも犬のフンのごとく付きまとってきた『ジョースター』!
その『ジョースター』はいつ如何なる時であろうとこのオレにとって、
最終的に利用される運命でしかないことが実証されたのだッ!
不死身! 不老不死! スタンドパワー! だがこれが果てではない……
このDIOは我が友プッチと共に『究極の生命』をも越えた存在、
『天国の時』を迎えるッ! それを止めないのが『運命』ということッ!!」
炎上している地面の前に降り立ち、DIOは吼えた。
闇の中燃え盛る炎は、悪の帝王を照らし出すかのごとく輝く。
ひとしきり笑い終わったあと、帝王は悠々と炎の中を見やった。
「どれ、このままジョースターの娘の死体を確認して血を吸いとっておくか。
吸血鬼になったばかり、まだ人間としての分も濃いはずだからな……
吸いとる血が残っていたなら、の話だが」
そうして、DIOは歩き出す。
――いや、歩き出した、はずだった。
「な……なんだ? 体の動きが、に……鈍いぞ」
踏み出したはずの脚が、踏み出していない。
力を込めても、まるで痙攣しているように震えるだけだ。
「ち……ちがう、動きが鈍いのではない……
う……動けんッ! ば……ばかな ま……まったく……か……体が動かん!?
いや……燃え盛る炎さえも止まっている!! まさか!?」
「私が止めてから2秒経過よ。
あなたも『他人が止めた時間』で動ける時間はそこまでのようね――DIO!」
背後から掛けられた声にハッとなる。体ごと振り向こうとしたがそれさえ出来ない。
かろうじて、首と目だけ無理やり動かすことが出来た。
銀色の髪に隠された下、赤い瞳が――強い意思を秘めてDIOを睨んでいる。
「じょ……ジョースターの娘!」
「私の『星白金の世界』――
私と共に私のスタンドも時を止めた……結果、時間停止は延長した……!
運命を司るのはあなたじゃないわ、DIO――それは私のお嬢様ッ!
――これからッ! あなたをやるのには1秒もかからないッ!」
何を、と反論しようとして、気づいた。口が、動かない。
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・
止まった『世界』の中、咲夜が背後に星の白金を聳えさせDIOへと歩み寄る。
その中でDIOは確かに見た。
咲夜の首筋。首輪越しに透けて写るジョースター家の証、星型の痣を――!
「どんな気分? 動けないのに近づかれる気分ってのは例えると、そうね。
水の中に1分しか潜ってられない男が……
限界1分目にやっと水面で呼吸しようとした瞬間!
グイイッ……とさらに足をつかまえられて、
水中にひきずり込まれる気分に似てるっていうのは……どうかしら?
けれど……あなたの場合。全くかわいそうとは思えないわねッ!!!」
DIOの腹にスタープラチナの蹴りが決まる。悲鳴さえ上げることはできない。
そして。
「時は動き始めた」
宣言と共に、DIOが吹き飛んだ。
塚モールの中、店を一軒丸まる貫通し、別の店の前まで吹き飛ばされる。
DIOは、衝撃で腹だけではなく全身にまで広がった痛みに悶絶することしかできない。
「ぐ……ま、まだだ……奴から吸った血による回復力はある……!
この程度の傷、1分もあれば……!」
うつ伏せに倒れこみ、視界すら定まれない状況の中。
それでも全身に血を行き渡らせ、かろうじて脚以外の傷を治し……
腹もあと10秒あれば回復するという状況で、金属音が響いた。
顔を起こせば、数m離れたところでマンホールを踏み砕いた咲夜が腕を組んで立っている。
「あなたに対する慈悲の気持ちはまったくない……ましてやカワイソーとはね。
けれど……このまま……仮の概念で押し付けでクズとはいえ父親を、
ナブって始末するというやり方はお嬢様と美鈴の名誉に泥を塗るわ。
その腹が治癒するのに何秒かかる? 3秒? 4秒?
治ったと同時にスタープラチナをあなたに叩き込むッ!
西部劇のガンマン風に言うと……
『ぬきな! どっちが素早いか試してみようぜ』というやつよ………」
(こ……こ……こけにしやがって……
しかし……しかし! サクヤ・ジョースター……
この土壇場に来て吸血鬼として生きた年月の差が出たな……クククク……
ごく短い流れでしか生きられない人間の考え方がまだ染み付いている……
『名誉に泥を塗る』だとか『人生に悔いを残さない』だとか……
便所ネズミのクソにも匹敵する、そのくだらない物の考え方が命とりよ!
このDIOにそれはない……あるのはシンプルなたったひとつの思想だけだ……
たったひとつ! 『勝利して支配する』!
それだけよ……それだけが満足感よ!
過程や……! 方法なぞ………! どうでもよいのだァーーーーーーッ)
屈辱に顔を歪ませながらも、闇の中、DIOは自分の腹に手を入れた。
パワーではザ・ワールドの方が勝っている。
だが、それを更に磐石に。血の目潰しで、勝利を確実なものとする。
回復しきる前に不意を突いて体を起こし、自分の血に濡れた拳を振りかぶる――!
その瞬間。DIOの足が、潰された。
「ナーアアアアアアアアアアアアアアア!?」
「――看板、よ」
再び転倒するDIO。その脚には店の看板がずしりと落ち、切断していた。
その前へゆっくりと咲夜は近寄る――闇の中、冷たい目で見下ろしながら。
「喋ったのは時間が欲しかったからよ……看板が外れるのを待つ時間を。
あんたが吹っ飛んで悶絶し、私から目を放した時……
2秒間時を止めて、建物の看板を撃ち抜いておいたのよ、フジキでね……
私の挑発に乗ろうと乗るまいと、あなたを確実に葬り去るために……」
「き、貴様、名誉に泥を塗るという言葉はどうした!?」
「あなたのようなクズには名誉なんてない……
そうである以上、わざわざ待ってあげるだなんてオイシイ話、あると思うの?
だから泥を塗る心配は杞憂というものッ! さて、覚悟は出来たかしらッ!?」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・
「なんてひどいおん――」
「『スタープラチナ・ザ・ワールド』時よ止まれッ!!!
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」
動き出すスタープラチナ。
とっさにDIOが放った空烈眼刺驚を容易くはじき返し、
スタープラチナは時を止めてオラオラのラッシュを見まう――!
「ぐ、ぐああああああああああああああああ!
何世紀も未来へ! 永遠へ……天国へ生きるはずのこのディオが!!
このディオがァ――――――z________ッ!!!」
既にDIOの顔面は原型を留めていない。
だが、スタープラチナのラッシュはなおも続く……!!!
「わからないの? 貴方は『運命』に負けたのよ――そんなあなたに永遠はない!
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
ムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダ
ムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダ
ムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダ
ムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダ
ムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダ
ムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダ
ムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダ
ムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダ
ムダムダムダWRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
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オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラァッ!!!」
もはや数え切れぬほどのラッシュを停止時間目一杯に打ち込み……
それで満足したようにくるりと悪魔の犬は背を向け、宣言した。
「そして時は動き始める」
言葉の後、悲鳴すら残さずDIOはゴミ捨て場へと突っ込んでいき、轟音を上げる。
そこにある看板にはこう記されていた……
『燃えるゴミは月・水・金』
「あなたの敗因は……たったひとつよ……DIO……
たったひとつの単純(シンプル)な答え………
『あなたは美鈴を侮辱した』」
■
月下、塚モールから少しばかり離れた戦場後。
もう一人の役者が、立ち上がる。
「……俺は生きている。
戦えるのだ、まだ――!」
男は吼える。
その名は呂布奉先――DIOに敗北し、死の『運命』を辿るはずだった男。
しかし、その姿には微塵の乱れもない。
鎧こそ砕けているが、肉体には傷一つはない。
彼は吹き飛ばされた後も、生存の望みを捨てなかった。
そして、手を伸ばしたのだ――近くの遺体が持つデイパックという、蜘蛛の糸へ。
海原雄山の遺物である『至高のコッペパン』。
それを食することで、呂布は復活した――否、完全回復といっていい。
状態異常回復効果のおかげで、肉の芽も取り除かれたようだ。
DIOが死に、呂布は生き残った――それもまた、『運命』。
「紆余曲折はあったが、画戟も俺の手に戻ってきた……我が戦いを阻む者なし。
いかなる運命にせよ、いかに打ち砕かれても、俺はまだ生きている」
呂布は確かに敗北した。だが、彼の顔にそれを悔しがる色はない。
理由は単純、生きているから。
例え縄目の恥を受けても、呂布は最後まで命乞いを続けるだろう。
彼にとって、生き残っているうちは負けではない。負けとは、死ぬことを指すのだ。
「ならば最期まで足掻き、戦い続けるのみ――生き残ったものこそ覇を唱えられる!
生きているならば、負けではない!」
孤狼は、月は吼ゆる。
まだ見ぬ戦場と共に。
もっとも『時間の止まっている』おまえには、
見えもせず感じもしないだろうがなァ?
おまえは自分が死んだことにさえ気づいていない……
何が起こったのかもわかるはずがない!」
『止まった世界』の中、DIOは勝利を確信し舞い上がっていた。
本来であれば、DIOの制限ではまだ時を止められることはできなかったはず。
しかし咲夜の血を吸ったことで止めるのに必要な時間間隔は大幅に低減されたのだ。
……その腕は、呂布の腹に深々と突き刺さっている。
「8秒経過! ンッン~~♪ 実に! スガスガしい気分だッ!
歌でもひとつ歌いたいようなイイ気分だ~~フフフフハハハハ!
ジョースターの娘の血のおかげだ、本当によくなじむッ!
最ッ高にハイって奴だァアアアアアアアアアアア!!!」
勝ち誇った笑みと共にDIOは腕を抜き取り、指を鳴らした。
だが、未だに呂布は動かない。
「9秒経過ッ! 9秒も止められたぞッ!
しかし時を止めていられるのは9秒が限界といったところか……
そして時は動き出す」
「ぐあああああああああッ!?」
「すばらしい相性だ……
『止まった時間』が延長したどころか『止められる間隔』まで短縮している……」
同時に、静止時間は『ゼロ』になり、呂布は動き出した――
ザ・ワールドに喰らったラッシュを全て受けるという形で。
呂布が吹き飛び、闇に飲まれて消えていった方向を見やる。
「さて、念には念を入れ……ヤツがしっかり死んだかどうか、確かめるとす」
「オラァ!!!」
「ムッ!?」
突如拳が後ろから襲ってきたのは、その時だった。
とっさにガードはしたが、逸れた拳が脇腹に直撃した。
吹き飛びながらも、体勢を立て直す。幸い吸血鬼なら行動に支障はない部分だ。
向き直れば、傷一つなくなった咲夜がスタンドを従えて睨み付けている。
――赤い、瞳で。
(そうか、ヤツに腕を切り落とされた時……或いは腕が飛んでいった時……
その時に私の血がかかったか。面倒なことになった……
私の血で吸血鬼になった以上、ワンツェンども同様に忠誠を誓うはずだが。
肉の芽のことを考えれば望みは薄いか? 一応確認しておくか……)
地面を蹴り宙へ飛ぶザ・ワールド。
同時に、その持ち主であるDIOもまた宙に浮き上がり、
道路脇にある街灯の上へと着地した。
位置取りはDIOが『上』であり咲夜が『下』となる。
「さて……一応おはようと言っておこうか、ジョースターの娘。
君は引力を信じるか?」
「…………」
「今日がお前の新たな誕生日だ。
それを例えるのなら……そう、たとえば………」
DIOは話しながら、手の持った花を指で回転させた。
飛び上がる寸前に、足元に咲いていたのを摘み上げたものだ。
「この美しい花だ……君は花でいえばちょうどこのぐらいの若さといえる。
よーく考えてみたまえジョースターのお嬢さん(マドモアゼル)。
この花はこのまま咲き盛ってしまえばあとは枯れ行くのみ……」
「何が言いたいわけ?」
「ふ……人間をやめたのだ、時間を急ぐなドラキュリーナ。
話は変わるが、パリのルーブル美術館の平均入場者数は1日で4万人だそうだ。
少しばかり間、マイケル・ジャクソンのライブをTVで観たが、
あれは毎日じゃあない。ルーブルは何十年にもわたって毎日だ……。
開館は1793年。毎日4万人もの人間がモナリザとミロのビーナスに引きつけられ、
この2つは必ず観て帰っていくというわけだ。スゴイと思わないか?」
「スゴイというのは数字の話かしら?」
「そうではない……
すぐれた画家や彫刻家は自分の『魂』を目に見える形にできるという所だな。
まるで時空を越えた『スタンド』だ……スタンド使いにも及ばぬ『永遠』。
君はそれと同じだ。スタンド使いであろうと人間である限り覆せぬ『運命』。
今のまま咲き誇ったままで永遠を楽しめるようになったのだ」
「それはあなたのおかげ、だから感謝しろとでも? 冗談じゃないわ。
あなたの血がこの体に流れていると思うだけで気が狂いそうになる!」
「…………!」
咲夜の言葉に一瞬、DIOの精神が沸騰しかけた。
安い挑発。
だがそれが、何か、かつての自分にとって大切な事に引っかかった気がしたのだ。
それでもDIOは自分の精神を押さえ込み、体裁を取り繕って話し続ける。
「フン、口の利き方には気をつけたほうがいいな、ジョースター……
貴様はもはや暗黒に生きるDIOが紡ぐ神話の一部に過ぎないのだ」
「例えあなたが吸血鬼としての『親』にあたるとしても、
そんなことは知ったことじゃないわ。
言ったはずよ? 私の仕える相手はレミリアお嬢様ただ一人。
あんたのようなクズが父親になるくらいなら、私の手で地獄に落としてあげる」
「なに……?」
押さえ込んだはずの何かが肥大化する。
父親。
地獄に落とす。
その言葉が――DIOの、いやディオ・ブランドーの脳裏に、
かつての忌まわしき経験をフラッシュバックさせた。
『酒こそ薬さ! こいつをたたき売って酒買ってこいィー! 今すぐだァー!!』
『うっ……! こ…これは母さんのドレスだッ!!』
『死んじまった女のものなんか用はねェぜッ!』
『地……地獄へ落としてやるッ!』
――母を死なせたどころか死後も貶め。
『おれの父親はゴミのような男だった!』
『母に苦労をかけ、そのために母は死んだ!』
『あいつの血がこの体に流れていると思うだけで気が狂いそうになる!』
『あいつは死に値する!』
――人間であった頃の自分に呪いとして残り。
『ディオ! 紳士として、君の実の父ブランドー氏の名誉にかけて誓ってくれ!
自分の潔白をッ! 自分の父親に誓えるなら、ぼくはこの薬を盆の上に戻し、
2度とこの話はしない! ディオ! さあ! 誓ってくれッ!』
『い……いや! おれの前であいつの話はするな……。あいつの名誉に誓うだと?
かんちがいするなッ! あんなクズに名誉などあるものかァ――!』
宿敵ジョナサンの父親とは違う、醜くズル賢く最低な父親を――
「……………………黙れ……」
「え?」
ぽつりと呟かれた言葉に、咲夜は思わず聞き返していた。
DIOの様子が、明らかにおかしい。
だが、それも当然だ。
それは何よりも根源に位置する、ディオ・ブランドーのトラウマ――
「この俺に命を与えられた売女が、何を偉そうにほざいている!!
たかだか一発入れた程度の事でこのオレに勝てると思っているのか!?
甘く見るなよ、イエローモンキー風情が! 貴様こそ地獄に落としてやるッ!!」
「ッ……!?」
絶叫と共に、DIOは街灯を蹴った。
怒りをむき出しにして襲い掛かるDIOに、逆に咲夜は混乱した。
今まで咲夜が見てきたDIOの纏っていた雰囲気は、理知的かつ深いもの。
今の彼が見せる直情的で理論のない怒りは今までのそれと正反対だ。
とっさに防御の姿勢をスタープラチナは見せたが、しかし、浅い。
「WRYAAAAAAAAA! ぶっ潰れよォオオオオオオオオオオオ!!!」
DIO、渾身の一撃がスタープラチナに炸裂する。
咲夜の体と共に吹き飛ぶスタープラチナ。その左腕に亀裂が入った。
「うぐぅっ!!」
吹き飛びながらも時を止める。反撃ではなく、追撃を防ぐための防御の一手。
しかしその『世界』の中を、DIOは悠々と動き追いついた。
「な――!?」
絶句した咲夜の腹に、ザ・ワールドの拳が炸裂する。
DIOが「止まった世界」で動ける時間もまた、現実時間にして約2秒。
それは今の咲夜が止められる時間と全く同じ。
つまり、咲夜の時止めはなんの意味もなさない――!
衝撃、激突。
気づけば咲夜は血まみれで地面に転がっていた。周囲にはガラスの破片。
塚モールにある店の裏まで吹き飛ばされたらしい。
傷は再生しつつあるようだが、咲夜はまだ未熟なドラキュリーナ。
DIOのそれに比べると、明らかにその速度は遅い。
「う…………」
なんとか体を起こして座り込む。デイパックがない。どこかに落としたらしい。
慌てて周囲を見渡す。幸いフジキが三本ほど間近に落ちていたので回収する。
ただ、正直、あまり幸先がいいとは言えない。
(この様子だと、ほとんどの荷物は毀れちゃってるわね……)
もっともフジキは単に呂布が目こぼししただけであり、
実際は他の武器らしいものは没収されているのであるが……咲夜には知る由もない。
他の荷物はどこにあるのか目で探して、気づいた。
威風堂々と歩いてくるDIOの脇に、何か、落ちている。
美鈴の、帽子。
無意識のうちに、咲夜の視線がそこへ注視される。
そして、自分の側で敵の視線が縫い止められたのを見逃すDIOではない。
「これに目線をやったな。仲間の遺品か? 武器か? 罠か?」
言葉と共にDIOの足が止まる。しまった、と咲夜は思った。
なんとかその感情を覆い隠して、血と共に吐き捨てる。
「言う義理は……ないわ……」
「ふん、なら安全に確かめるとしようか」
あざけり笑うDIOの瞳が、何かおかしいことに咲夜は気づいた。
それが帽子に向いた瞬間、瞳から何かが発射される。
自分の体液を利用したウォーターカッター、名付けて空烈眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)!!!
首を動かしながら放たれたそれは、美鈴の帽子を真っ二つにした。
「…………!」
「ほお、その反応……一番最初らしいなァ?」
言葉を失った咲夜を見て、DIOがにやりと笑った。
同時に、ザ・ワールドが真っ二つになった帽子を拾い上げ、そして。
――自分のトラウマに触れた意匠返しとばかりに、帽子を跡形もなく粉々にした。
プッツ――――z__ン
瞬間、沸騰。
作戦も、思考も、戦略も。
気づけば咲夜は全てを忘れ、真正面から突撃していた。
再び具現化され、猛りながら拳を振りかぶるはスタープラチナ――!
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!!」
「フン、ラッシュの速さ比べか……
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!!」
DIOのザ・ワールドもまた、拳を振り上げた。
殴りあうスタープラチナとザ・ワールド。
しかし、いかに咲夜と言えどスタープラチナを完全に使いこなすことは出来ない。
均衡は崩れ、スタープラチナの拳に亀裂が走る。
コンマ1秒の後、ザ・ワールドの拳がスタープラチナの腰に直撃。
弾き飛ばされた咲夜が、モールの壁に激突する!
「残念だったなぁサクヤ・ジョースター! おまえの怒りなどそんなもの!
やはり我が『ザ・ワールド』の方がパワー、精密さともに上だ!
間髪入れず最後の攻撃だッ! 100年前の因縁があるだけに、
ジョースターの血統の者だけは手かげんせずに一気に殺すと決めていた……
とどめを刺すのはやはり『ザ・ワールド』の真の能力ッ!
これより、静止時間9秒以内にカタをつけるッ!
『ザ・ワールド』! 時よ止まれッ!!!」
自信に満ち溢れたDIOとスタンドが、揃って両腕を左右に広げ、叫ぶ。
同時に世界の時は止まり、咲夜の視界からDIOは消え去っていた。
咲夜は考えるのをやめた――クソッタレな父親がどんな攻撃をしてこようと、
動ける2秒間の間に全力を尽くせばいいだけだ、と思ったからだ。
(私が思う確かなことはDIO!
その顔を次に見た瞬間、私はたぶん……プッツンするだろうということだけよ)
1秒。
2秒。
3秒。
4秒。
5秒。
6秒――
(影……上から!)
「 石 油 タ ン ク だ ッ !!!」
プッツ――――z__ン
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!!」
「もう遅い! 脱出不可能よッ!
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!!」
石油タンクへ向かって次々に叩き込まれるスタープラチナとDIOの拳。
爆発物越しのラッシュの速さ比べ。僅かな時間それは均衡して、
空中で静止し……スタープラチナのラッシュが、止まり始めた。
「8秒経過!」
駄目押しとばかりにDIOのラッシュが直撃する。
下へ向けて石油タンクが一気に加速し、咲夜の上に覆いかぶさる。
「9秒経過………!」
同時に、DIOは石油タンクを蹴って宙へと舞い上がった。
時の流れが舞い戻った石油タンクは爆発、炎上。
その中に、咲夜の姿は欠片もない。
「やった………………終わったのだ!
こんなところまでも犬のフンのごとく付きまとってきた『ジョースター』!
その『ジョースター』はいつ如何なる時であろうとこのオレにとって、
最終的に利用される運命でしかないことが実証されたのだッ!
不死身! 不老不死! スタンドパワー! だがこれが果てではない……
このDIOは我が友プッチと共に『究極の生命』をも越えた存在、
『天国の時』を迎えるッ! それを止めないのが『運命』ということッ!!」
炎上している地面の前に降り立ち、DIOは吼えた。
闇の中燃え盛る炎は、悪の帝王を照らし出すかのごとく輝く。
ひとしきり笑い終わったあと、帝王は悠々と炎の中を見やった。
「どれ、このままジョースターの娘の死体を確認して血を吸いとっておくか。
吸血鬼になったばかり、まだ人間としての分も濃いはずだからな……
吸いとる血が残っていたなら、の話だが」
そうして、DIOは歩き出す。
――いや、歩き出した、はずだった。
「な……なんだ? 体の動きが、に……鈍いぞ」
踏み出したはずの脚が、踏み出していない。
力を込めても、まるで痙攣しているように震えるだけだ。
「ち……ちがう、動きが鈍いのではない……
う……動けんッ! ば……ばかな ま……まったく……か……体が動かん!?
いや……燃え盛る炎さえも止まっている!! まさか!?」
「私が止めてから2秒経過よ。
あなたも『他人が止めた時間』で動ける時間はそこまでのようね――DIO!」
背後から掛けられた声にハッとなる。体ごと振り向こうとしたがそれさえ出来ない。
かろうじて、首と目だけ無理やり動かすことが出来た。
銀色の髪に隠された下、赤い瞳が――強い意思を秘めてDIOを睨んでいる。
「じょ……ジョースターの娘!」
「私の『星白金の世界』――
私と共に私のスタンドも時を止めた……結果、時間停止は延長した……!
運命を司るのはあなたじゃないわ、DIO――それは私のお嬢様ッ!
――これからッ! あなたをやるのには1秒もかからないッ!」
何を、と反論しようとして、気づいた。口が、動かない。
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・
止まった『世界』の中、咲夜が背後に星の白金を聳えさせDIOへと歩み寄る。
その中でDIOは確かに見た。
咲夜の首筋。首輪越しに透けて写るジョースター家の証、星型の痣を――!
「どんな気分? 動けないのに近づかれる気分ってのは例えると、そうね。
水の中に1分しか潜ってられない男が……
限界1分目にやっと水面で呼吸しようとした瞬間!
グイイッ……とさらに足をつかまえられて、
水中にひきずり込まれる気分に似てるっていうのは……どうかしら?
けれど……あなたの場合。全くかわいそうとは思えないわねッ!!!」
DIOの腹にスタープラチナの蹴りが決まる。悲鳴さえ上げることはできない。
そして。
「時は動き始めた」
宣言と共に、DIOが吹き飛んだ。
塚モールの中、店を一軒丸まる貫通し、別の店の前まで吹き飛ばされる。
DIOは、衝撃で腹だけではなく全身にまで広がった痛みに悶絶することしかできない。
「ぐ……ま、まだだ……奴から吸った血による回復力はある……!
この程度の傷、1分もあれば……!」
うつ伏せに倒れこみ、視界すら定まれない状況の中。
それでも全身に血を行き渡らせ、かろうじて脚以外の傷を治し……
腹もあと10秒あれば回復するという状況で、金属音が響いた。
顔を起こせば、数m離れたところでマンホールを踏み砕いた咲夜が腕を組んで立っている。
「あなたに対する慈悲の気持ちはまったくない……ましてやカワイソーとはね。
けれど……このまま……仮の概念で押し付けでクズとはいえ父親を、
ナブって始末するというやり方はお嬢様と美鈴の名誉に泥を塗るわ。
その腹が治癒するのに何秒かかる? 3秒? 4秒?
治ったと同時にスタープラチナをあなたに叩き込むッ!
西部劇のガンマン風に言うと……
『ぬきな! どっちが素早いか試してみようぜ』というやつよ………」
(こ……こ……こけにしやがって……
しかし……しかし! サクヤ・ジョースター……
この土壇場に来て吸血鬼として生きた年月の差が出たな……クククク……
ごく短い流れでしか生きられない人間の考え方がまだ染み付いている……
『名誉に泥を塗る』だとか『人生に悔いを残さない』だとか……
便所ネズミのクソにも匹敵する、そのくだらない物の考え方が命とりよ!
このDIOにそれはない……あるのはシンプルなたったひとつの思想だけだ……
たったひとつ! 『勝利して支配する』!
それだけよ……それだけが満足感よ!
過程や……! 方法なぞ………! どうでもよいのだァーーーーーーッ)
屈辱に顔を歪ませながらも、闇の中、DIOは自分の腹に手を入れた。
パワーではザ・ワールドの方が勝っている。
だが、それを更に磐石に。血の目潰しで、勝利を確実なものとする。
回復しきる前に不意を突いて体を起こし、自分の血に濡れた拳を振りかぶる――!
その瞬間。DIOの足が、潰された。
「ナーアアアアアアアアアアアアアアア!?」
「――看板、よ」
再び転倒するDIO。その脚には店の看板がずしりと落ち、切断していた。
その前へゆっくりと咲夜は近寄る――闇の中、冷たい目で見下ろしながら。
「喋ったのは時間が欲しかったからよ……看板が外れるのを待つ時間を。
あんたが吹っ飛んで悶絶し、私から目を放した時……
2秒間時を止めて、建物の看板を撃ち抜いておいたのよ、フジキでね……
私の挑発に乗ろうと乗るまいと、あなたを確実に葬り去るために……」
「き、貴様、名誉に泥を塗るという言葉はどうした!?」
「あなたのようなクズには名誉なんてない……
そうである以上、わざわざ待ってあげるだなんてオイシイ話、あると思うの?
だから泥を塗る心配は杞憂というものッ! さて、覚悟は出来たかしらッ!?」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・
「なんてひどいおん――」
「『スタープラチナ・ザ・ワールド』時よ止まれッ!!!
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」
動き出すスタープラチナ。
とっさにDIOが放った空烈眼刺驚を容易くはじき返し、
スタープラチナは時を止めてオラオラのラッシュを見まう――!
「ぐ、ぐああああああああああああああああ!
何世紀も未来へ! 永遠へ……天国へ生きるはずのこのディオが!!
このディオがァ――――――z________ッ!!!」
既にDIOの顔面は原型を留めていない。
だが、スタープラチナのラッシュはなおも続く……!!!
「わからないの? 貴方は『運命』に負けたのよ――そんなあなたに永遠はない!
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
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ムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダ
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ムダムダムダWRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!
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オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラァッ!!!」
もはや数え切れぬほどのラッシュを停止時間目一杯に打ち込み……
それで満足したようにくるりと悪魔の犬は背を向け、宣言した。
「そして時は動き始める」
言葉の後、悲鳴すら残さずDIOはゴミ捨て場へと突っ込んでいき、轟音を上げる。
そこにある看板にはこう記されていた……
『燃えるゴミは月・水・金』
「あなたの敗因は……たったひとつよ……DIO……
たったひとつの単純(シンプル)な答え………
『あなたは美鈴を侮辱した』」
■
月下、塚モールから少しばかり離れた戦場後。
もう一人の役者が、立ち上がる。
「……俺は生きている。
戦えるのだ、まだ――!」
男は吼える。
その名は呂布奉先――DIOに敗北し、死の『運命』を辿るはずだった男。
しかし、その姿には微塵の乱れもない。
鎧こそ砕けているが、肉体には傷一つはない。
彼は吹き飛ばされた後も、生存の望みを捨てなかった。
そして、手を伸ばしたのだ――近くの遺体が持つデイパックという、蜘蛛の糸へ。
海原雄山の遺物である『至高のコッペパン』。
それを食することで、呂布は復活した――否、完全回復といっていい。
状態異常回復効果のおかげで、肉の芽も取り除かれたようだ。
DIOが死に、呂布は生き残った――それもまた、『運命』。
「紆余曲折はあったが、画戟も俺の手に戻ってきた……我が戦いを阻む者なし。
いかなる運命にせよ、いかに打ち砕かれても、俺はまだ生きている」
呂布は確かに敗北した。だが、彼の顔にそれを悔しがる色はない。
理由は単純、生きているから。
例え縄目の恥を受けても、呂布は最後まで命乞いを続けるだろう。
彼にとって、生き残っているうちは負けではない。負けとは、死ぬことを指すのだ。
「ならば最期まで足掻き、戦い続けるのみ――生き残ったものこそ覇を唱えられる!
生きているならば、負けではない!」
孤狼は、月は吼ゆる。
まだ見ぬ戦場と共に。
【D-4/2日目・深夜】
【呂布@iM@S演義】
[状態]健康
[装備]方天画戟@三国志Ⅸ、イージス@FF11
[道具]基本支給品×2(食料・水-2)三国志大戦カード(UC董白)@三国志大戦、 葉団扇@東方project 包丁@現実 射命丸文のカメラ@東方project
サバイバルナイフ@現実 拳銃(0/6予備弾24)@デスノート、時計型麻酔銃@名探偵コナン
スナック菓子×3 飴×3袋、時計型麻酔銃の予備針(残り2発)@名探偵コナン、果物ナイフ
[思考・状況] 基本思考:生き残り優勝する。
1:敵を探す。
2:チルノ、馬岱、メタナイト、ブロリー達とはまた会ったら決着を着ける。
3:いずれ主催者も殺す。
【呂布@iM@S演義】
[状態]健康
[装備]方天画戟@三国志Ⅸ、イージス@FF11
[道具]基本支給品×2(食料・水-2)三国志大戦カード(UC董白)@三国志大戦、 葉団扇@東方project 包丁@現実 射命丸文のカメラ@東方project
サバイバルナイフ@現実 拳銃(0/6予備弾24)@デスノート、時計型麻酔銃@名探偵コナン
スナック菓子×3 飴×3袋、時計型麻酔銃の予備針(残り2発)@名探偵コナン、果物ナイフ
[思考・状況] 基本思考:生き残り優勝する。
1:敵を探す。
2:チルノ、馬岱、メタナイト、ブロリー達とはまた会ったら決着を着ける。
3:いずれ主催者も殺す。
※イージスは意思を持っていますが、封印されているのか本来の持ち主でないためか言葉を発しません。
※塚モールで呂布がわずかに破壊活動を行いました。
※時計型麻酔銃(本体)など呂布には武器に見えなかったものは咲夜から没収していません。
※塚モールで呂布がわずかに破壊活動を行いました。
※時計型麻酔銃(本体)など呂布には武器に見えなかったものは咲夜から没収していません。
【方天画戟@三国志Ⅸ】
言わずと知れた呂布の愛用武器。武力が+8される。
言わずと知れた呂布の愛用武器。武力が+8される。
【C-4 塚モール/2日目・深夜】
【十六夜咲夜@東方project】
[状態]腰、腹、左腰に重い打撲(再生中)、全身に軽い打撲(再生中)、
疲労(小)、吸血鬼化
[装備]時計型麻酔銃@名探偵コナン
[道具]なし
[思考・状況]基本思考:優勝し、死亡者含め全ての参加者を元の所に戻すと主催に望む
1:???
【備考】
※ときちくは姿しか知りません。
※時間操作は4秒が限度です。停止した後に使用するには数秒のブランクが必要です。
※飛行が可能かどうかはわかりません。
※主催者側が参加者を施設を中心として割り振ったと推理しました。
※高い能力を持つ参加者は多くが妖怪と思い、あえて昼間挑む方が得策と判断しました。
※やる夫のデイパックは列車内に放置してあります。
※サムネホイホイ(出だしはパンツレスリングだが、その後別の映像は不明)は、A-5の平原に投げ捨てられました
※カミーユ・ビダンの死体を確認。首輪を解除しようとしてる人がいると推測しました
※一度幻想の法則から外れた者ももう一度幻想の法則の中にもどせば幻想の法則が適用されると推理しました。
※ヤバいDISCがINしました。スタープラチナの真の能力にも気づきました。
※吸血鬼化しましたが、本家吸血鬼と比べると回復やパワーアップが小さいです。
※基本支給品と計量匙、及びフジキがC-4からD-4にかけて散らばっています。
※DIOの荷物は塚モールのゴミ捨て場に埋もれています。
※塚モールで火事が発生しています。
【十六夜咲夜@東方project】
[状態]腰、腹、左腰に重い打撲(再生中)、全身に軽い打撲(再生中)、
疲労(小)、吸血鬼化
[装備]時計型麻酔銃@名探偵コナン
[道具]なし
[思考・状況]基本思考:優勝し、死亡者含め全ての参加者を元の所に戻すと主催に望む
1:???
【備考】
※ときちくは姿しか知りません。
※時間操作は4秒が限度です。停止した後に使用するには数秒のブランクが必要です。
※飛行が可能かどうかはわかりません。
※主催者側が参加者を施設を中心として割り振ったと推理しました。
※高い能力を持つ参加者は多くが妖怪と思い、あえて昼間挑む方が得策と判断しました。
※やる夫のデイパックは列車内に放置してあります。
※サムネホイホイ(出だしはパンツレスリングだが、その後別の映像は不明)は、A-5の平原に投げ捨てられました
※カミーユ・ビダンの死体を確認。首輪を解除しようとしてる人がいると推測しました
※一度幻想の法則から外れた者ももう一度幻想の法則の中にもどせば幻想の法則が適用されると推理しました。
※ヤバいDISCがINしました。スタープラチナの真の能力にも気づきました。
※吸血鬼化しましたが、本家吸血鬼と比べると回復やパワーアップが小さいです。
※基本支給品と計量匙、及びフジキがC-4からD-4にかけて散らばっています。
※DIOの荷物は塚モールのゴミ捨て場に埋もれています。
※塚モールで火事が発生しています。
賀斉公苗
ディオ・ブランドー 『世界』
ディオ・ブランドー 『世界』
完全敗北――死亡
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/ | To Be Continued 〉
. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/
/ | To Be Continued 〉
. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/
sm216:世界 | 時系列順 | sm217:Burst Behavior |
sm216:世界 | 投下順 | sm217:Burst Behavior |
sm216:世界 | 呂布 | sm225:Good lack |
sm216:世界 | 十六夜咲夜 | sm221:さくやヴァンプ |
sm216:世界 | 賀斉 | 死亡 |
sm216:世界 | DIO | 死亡 |