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「正解」と「理想」 -Killer Queen-(後編) ◆F.EmGSxYug




「なぁ、あれってさっき言ってた……」
「……この状況下で姿を現すとはな。
 仲間が殺されているというのにあの少女の味方をするとは思わなかったが」

みさおの言葉に、グラハムは肯定の意を示した。
その意識は、既に警戒レベルまで現状把握を引き上げている。
それに倣うかのように、他の全員も警戒態勢に移った。
現れたのは、ブロントと渚の二人。
言うまでもなく、危険人物として説明したばかりの相手である。
だが、それに驚くことも無くブロントはあっさり手を上げて攻撃の意志がないことを示した。
……ここで銃を持っている者が一人もいなかったことは、
間違いなくブロントにとって幸いだったと言える。
特にグラハムが持っていれば、手を上げる間さえなく脳漿を撃ち抜かれていただろう。

「おrたちは襲いに来たわけじゃにぃ」
「……ならばまず後ろを向いて壁に手を置け。当然荷物も全て捨てた上で、だ」
「はぁ?」
「分あkった」

グラハムの命令に渚が反感丸出しの声を上げたが、
ブロントが大人しく従うのであればそれに倣うしかない。
まるで犯罪者のような(実際に殺人犯だが)ポーズを取ったのを確認するとともに、
グラハムが油断なく歩み寄ろうとして……それを羽入が止めた。

「ちょっと待つのです。ここまで大人しく従うなんておかしいのです。
 さっき聞いた話と違うような……」
「ああ、おかしいと私も思う。だからしっかりと検査しておきたい。
 女性のボディーチェックはさすがに気まずい。
 できれば君がやってくれるとありがたいのだが」
「……その前に、僕から二人に少し聞いてみたいことがあるのです」

そう返して、羽入は壁に手をついた二人へと歩み寄る。
闇の中に、未だ放映中の映画の音が雑音として響いている。
そのまま、探るような目で呟くように口を開いた。

「名前は……えっと」
「……渚」
「渚が人を殺したのは本当なのですか?」
「それは……その……」
「おれはブロント。渚が人を殺したのは確定的に明らか」

言いよどむ渚に対し、ブロントの言葉には何の躊躇いも無い。
少し驚きながらも、なんとか羽入は言葉を続ける。

「……なぜ二人は僕たちの前に現れたのですか?」
「渚を襲い掛かった相手に謝らせることが必要になった。
 責任を持って渚を更正させるのがかんpえきなナイトの勤め」

色々とおかしな日本語に少し混乱したものの、
要するに人を殺した渚を反省させたいのだ、というのは羽入にも読み取れた。

(どうやら、グラハムが嘘を吐いたというわけではないようなのです……)

……羽入がブロントたちからも話を聞く、ということにしたのはこれが理由でもある。
グラハムが言ったことが真実かどうか確かめたかったのだ。
少なくともグラハムは信頼に足るということだろう、だが。

(なのです、けど……)

そして、再び彼女の頭は疑念に染まる。
この場で自分から人を殺した、などということを自白する意味がわからない。
確かにかつて罪を犯した者がそれを悔いて、新たな道へ走り出すということもあるだろう。
ある経過の中で殺人を行った人物が、繰り返しの中で違う道を取った例も羽入は知っている。
だが、普段は普通に暮らしている人物が暴走して後戻りできなくなる例も知っている。
人間が自分の真意を隠して嘘を吐く例も知っている。
そんな生き物だと皆分かっているから人は惑い、疑ってしまうのだから。

「言葉だけならばなんとでも言えるな」
「だから態度で示しれにきた」

グラハムの正論に、ブロントは迷わずに言い返す。
だが、グラハムも羽入も、そしてアポロもそれを信じるほどお人よしではない。
彼は先ほどから、油断無く弓矢を二人へ向けて構えていた。
元々アポロ達兄弟の行動原理には、母を殺されたことへの復讐という一面がある。
仮にDrモービスが同じ行動を取った時信用できるかといえば、はいとは言い切れない。
母を殺したけど謝るから許してください、と言われてもすぐに納得は出来ないだろう。

(そして渚という少女に殺された者の遺族も、私と同じことを考えるはず)

そう思うからこそ、アポロは羽入以上に渚を警戒している。
正当防衛や生きるための狩りとは違う。無闇に他者を殺しに掛かる者は、悪だ。
あからさまな敵意と疑惑の目を向けられる中で、渚は正直イライラしていた。

(何よ、どいつもこいつも……
 コスプレ男は全然役に立たないし。何言いなりになってるのよ!)

元々コミュニケーション能力に問題がある彼女には、
反省している態度の示し方というのがよく理解できていない。
言うまでもなく正しいリアクションはブロントの方であり、この事態は渚の責任である。
意地でも自分が悪いと思わないのは彼女が心底歪んでいるからだが、
それでも、そんな彼女にようやく援護射撃が来てくれた。

「な、なぁ、やりすぎじゃね~?
 なんか襲い掛かってくるふうには見えないってヴぁ」

ただならぬ事態に耐え切れず漏れた、みさおの声。
ただでさえ心底に自分の暗い感情を隠している渚にとって、
みさおの言葉はようやく見えてきた糸口だと言っていい。
振り向いてみさおに何か声を掛けようとした瞬間、

「後ろを向いていろと言った筈なのだがな。
 少なくとも、動くことは君達のためにならない」

冷静なグラハムの声が、それに冷や水を掛けた。
唇を噛む渚の脇で、静かにブロントが質問する。

「……おれと戦った女がいにぃ」
「射命丸のことか? 彼女はここにはいない。
 現在逢坂大河という少女と別行動している」
「わかっあt。あとであやまいrにいく。渚もはやくあやまっテ」

グラハムがまったく動じずに吐いた嘘を、ブロントは信じた。
……ブロントは、だ。先ほどからずっと思っていたことを、羽入はとうとう口にした。

「さっきから喋っているのはブロントばかりです。
 ――渚自身は本当に反省しているのですか?」
「と、当然じゃない。
 こんな所にいきなり呼び出されて、お兄ちゃんがいなくなって混乱してたけど、
 今はブロントさんのお陰で落ち着いて、反省してます」

そう返してきた渚に、羽入は冷ややかな目を向けた。
立ち直るならいい。圭一のように、罪を乗り越えていくならいい。
けれど、そうじゃないのなら、自分の不注意でまた人を死なせるわけにはいかない。
ルガールの時の様な失敗を、繰り返すわけには行かない。
だから、救えない悪でないかどうか、見極めないといけない。

そんな思いが、焦りとなりつつあった。

「渚、こっちを向いて欲しいのです」
「羽、羽入……?」

羽入の声にどこか只ならぬものを感じたみさおが、どこか怯えた声を漏らす。
壁から手を離して振り向いた渚に、羽入はわざわざ横に回りこんでから、
こちらへ来るようにと手招きした。
――ブロントから引き離して、彼女だけの反応を見るために。

「渚が殺した人は、どんなところを傷つけられて死んだのですか?」
「え……えっと……興奮してて覚えてないんだけど、
 手の骨を折られて、首を切られて……」

囲碁裏の死に様をできるだけマイルドに語る渚。
実際ははっきりと覚えていてもっと凄惨な死に様なのだが、
それをそのまま語ったらろくな事にならないと彼女は思っていた。
その返事に対し、羽入は静かに、威厳に満ちた声で返した。

「謝罪するからにはそれがどういう痛みか、分かっているな?
 罰として受け止める覚悟はあるな?」
「え……はい、私が悪かったと思います」

渚の言葉を聞くと共に、ゆっくりと羽入はその側へと歩み寄り。
その右手の人差し指の爪に手を掛け、剥いだ。

「きゃあああああああああああ!?」
「おmあえ、何してんの!?」

突然の痛みに渚は転倒し、悲鳴を上げながら転げまわる。
誰よりも先にブロントが慌てたが、羽入が静かに制止した。
彼女の考えは単純だ。自分が傷つけられてどんな反応をするのか、それを見る。
自分が恨まれるのは承知の上。それでも、渚がどう受け止めるのかを、見たかった。
――だから。床が突然光ったのは、予想外だった。

……結論から言うと、命令に大人しく従うほど渚は善人ではない。
保険に、武器を服に一つ隠し持っていたのだ。それも極めて小さいものを。
その武器の名をモーションセンサー爆弾。簡単に言えば、地雷である。
一応弁護しておけば、彼女はまだ使う気はなかった。
しつこく食い下がってくる羽入を鬱陶しく思っていたし、殺したいとも思ったが、
それでもなんとか理性でそれを抑えていた。
だが、羽入に指を指され、後ろに転んだときに、それを落としてしまっていたのだ。
とっさにチャイナドレスと肩の間に滑り込ませたのだから、不安定で当然だが。
しかし、グラハムも、ブロントも、アポロも、羽入も、それに気付いていなかった。
現在も映画が放映されているから、聴覚はある程度阻害される。
そして放映のためライトが落ちているから、依然として光源は懐中電灯だけ。
故に、地面に落ち、張り付いて機能を発揮し始めたそれに、気付けなかった。
落ちた場所はいうまでもなく、転んだ渚と転ばせた羽入の中間地点。
羽入が転んだ渚に歩み寄ろうとした瞬間――爆弾は、起動した。

「――え?」

閃光が走る。
目の前がいきなり爆発した渚自身も相当驚いたが、羽入はそれどころではない。
驚く余裕さえない。今までの怪我と地雷のダメージで、一瞬にして意識を飛ばされた。
時を止める余裕さえなかった、完全な奇襲。当然だ。
原因となった張本人さえ意図していなかったのだから、読みようが無い。
遠目で見ていた者達も、ほとんどが状況を理解できていない。
理解できていたのは、二人だけ。
そのうちの一人、ブロントが走り出した。渚へ向かって。

(渚自身が驚いていることからしても、これが予想外なのは確定的に明らか)

彼女が偶然行ってしまったことなのか、それとも第三者の行動か。
そこまでは彼にもわからないが、どちらにせよ渚の側に駆け寄り、
止めるか防ぐかする必要があると判断したのだ。
不安を封じ込めながら、彼は渚へと走りより、

「な……このバカ!」

風の音を、聞いた。

「がッ……!?」

ブロントの身体が、吹き飛ばされる。
その口と胸から、血が零れる。まるで、不意打ちを喰らったかのごとく。
理由は簡単だ。とうの昔に起きていた文が、風の弾丸を渚目掛けて撃ち込み。
図らずもブロントは走りよったことで、その軸線上に入っていた。それだけ。

「あーもう、余計な真似を……!」

隠れていた文が、慌てて姿を現して軸線をずらす。今度はしっかり渚に当てるために。
文はこの事態についてしっかり把握している。
ブロント達が壁に手を置いたときには目が覚め、キョン子から事情を聞いていた。
起きた後も隠れたままでいたのは、渚を信頼せず、注意深く観察していたから。
基本的に上辺でこそ相手に合わせて会話しているが、
実際はその裏で相手の何倍も考えを巡らせるのが射命丸文という存在だ。
落ちる際に僅かに光を反射したモーションセンサー爆弾も確認したがために、
武器を隠し持っていたことにも唯一気付いていた。
それでも、一応故意ではないとはわかっていた。その上で、渚を撃った。
理由は単純、どの道渚が武器を隠していたことには変わらないからだ。
やはり彼女には更正する気はない、そう見抜いてさっさと殺しておこうと思った。
そういう意味では彼女はこの場で誰よりも冷静で、正しい。
ただ、ブロントの行動だけが予測できなかっただけで。

(本っ当にうざいわね。あっさり騙されたり邪魔したり。かわいげもないし!)

心中でブロントの行動に毒吐きながらも、文は宙を飛んで構える。
グラハムとアポロも二人に遅れて混乱から回復し、動き出した。
だがそれは、文とブロントに比べれば一手の差で遅れている。
そしてグラハムたちと同じタイミングで回復した渚は、文がもたついた隙に刀を拾った。
自分の荷物を拾いなおすのは距離的に間に合わない。
だから吹き飛ばされた羽入が落としてしまった逆刃刀を拾い、飛びついて手を伸ばす。
ともかく今の自分が危機的な状況にあるのは彼女でも分かる。だから、

「う、動かないで!」

倒れ意識を失った羽入を引っ張り、逆刃刀を突きつけ盾にした。
しっかりと、逆刃ではないほうを首へと向けて。

「羽入さん!」

アポロが悲鳴を上げる。脇では舌打ちをしながら文が床に降り立った。
文にとっては見知らぬ相手の命なんてどうでもいいが、
人質ごと渚をぶった切れば反感を買うのは自分だろうと考えるだけの頭がある。
それでようやく、みさおとキョン子も状況を把握できた。
遅れて姿を現したキョン子に、振り向くアポロ。

「グラハムさん、その二人は……」
「すまないが、こういう事態に備えて隠れるように指示しておいた。
 ……結果から言えば正解だったようだな」
「あんまり正解だったとは言えませんけどね……」

グラハムの返事に、苦い顔で文は呟いた。現状を把握するのは極めて困難だ。
グラハムやアポロと違って、今まで隠れていた文はかなりの遠くにいる。
いくら文でも、この距離では近づくより人質が殺されるのが早い。
だからこそ割り込んできたブロントに誤射する羽目になったのだが……
アポロにせよグラハムにせよ、なんとかできる超常能力は持ち合わせていない。
キョン子とみさおは論外だ。むてきまるも、持っていたのは羽入。
そして、彼女の荷物があるのは渚の足元。
しかも更に運の悪いことに、映画は休憩時間に入り電灯が点いてしまっていた。
闇に紛れて渚を不意打ちするというのはこれで不可能。
事態が膠着する。だが、漫然と待っているわけにもいかない。
羽入は確認するまでもなく重体だった。意識はなく、顔色は悪い。
長引けば長引くほど羽入が助かる可能性は下がる。

「お、おい、お前、やめとけよこんなバカなこと……」
「うるさい! あんたらは黙って私を逃がしてくれればいいの!」

恐る恐る呟いたみさおの言葉を、渚は噛み付くような表情で斬り捨てた。
元々彼女は思い込みで暴走する性質である。もうこうなったら止まらない。
アポロがどうするか必死に頭を巡らせ、
文がもう諦めて人質ごと殺そうかと思い始めた瞬間。

「仏の顔を三度まで、という名ゼリフがあrう
 もう少し、待つべき」

残った鎧を血で紅く染めながら、ブロントが立ち上がった。
素早くグラハムとアポロが、彼に向けて構える。
この状況では、彼らにはブロントと渚が共謀していたようにしか見えない。

「動くな。なんのつもりだ」
「渚の……命も守っtえ、更に罪も、犯させにぃ、それが、ナいトの務め」

荒い呼吸で途切れ途切れに返して、素手でブロントは歩き出した。
その位置取りは、渚から文やアポロ、グラハムを庇うような位置取り。
文が冷ややかな視線で見つめたが、ブロントは意に介さず歩を進める。
渚を説得しようとするために。

「あまり調子に乗ってると、裏世界で、ひっそり幕を閉じることになrう。
 充実した生活が認可されるには、まわりへのメンバーへの気遣いが必要……」
「…………来ないで」

血を口から流しながら手を上げて接近してくるブロントに、逆に何か感じたのか。
これみよがしに逆刃刀をちらつかしながら渚は後退する。
それでも、ブロントは諦めない。

「バカな真似は、早くyあめて……みんなに謝るべき」

どこまでも本気で、どこまでも多くの人を守ろうと。
ブロントが心の底から、真剣に呟いた言葉に渚は。

(……バカはそっちじゃないの?)

内心で、そう呟いていた。
兄でもないウジ蟲が、こうまで自分に尽くそうとする理由は彼女には分からない。
彼女にとっては兄への愛が全てであって、仁だの義だのといったものは知ったことではない。
とはいえ、正直渚にとってはブロントの行動はありがたかった。
ブロントから逃げているように見せかけて、渚はある目的地へ向けて歩を進めていた。
そこまでいけばとりあえずこの場は凌げる。羽入の首を掻っ切って逃げればいい。
そう思った、矢先だった。

「……え?」

声が、漏れる。
血が吹き出て、逆刃刀を持っていた右手の指がぽろぽろと落ちる。
発生源は、ブロントの後ろから。
渚の目論見程度、見抜けない文ではない。
他に気を向けた隙を突き、ブロントの影に隠れてモーションを隠しながら、
風の刃で正確に渚の指だけを斬り落としたのだ。
間にいるブロントの身体でどれだけ威力が減衰するかまで、しっかり計算して。

「な……おm……」
「う、うそ、いた、いたい、よ!?」

悲鳴が上がる。
ブロントが崩れ落ち、支えをなくした逆刃刀もまた落ちる。
人質が解放されたと同時に、文は一気に飛んだ。
さっきまでは下手に撃つと羽入まで殺しかねないから渚の命は狙えなかったが、
もうその縛りは無い。今度こそ逃げる余裕も与えずにその命を断つ。
それでも渚がとっさに走ろうとした瞬間、アポロの放った矢が右肩に命中した。
痛みとショックで、渚は無様に転んで。
それでも、羽入の荷物の一つをとっさに左手で掴んで、投げた。

「っ、新手の妖怪……!?」

文が急停止する。
モンスターボールから解き放たれたむてきまるが、宙に浮かぶ。
ただし、今度は渚を庇うように。

「馬鹿な、先ほどは羽入さんを守っていたはず!?」

アポロが驚愕したのは当然だろう。
彼の支給品にDMカードやアシストフィギュアのような自立型の支給品は無かったため、
その仕組み……あくまで「使用者」に絶対服従ということも知らない。
その隙に渚は目的地――捨てさせられた自分の荷物が落ちた場所へと走る。しかし。

「……悪いけど、今は新種の妖怪を取材してる場合じゃないんですよ!」

文が風より速く切り返した剣に、むてきまるは右腕を両断されていた。
トレーナーの命令が無くては、ポケモンは攻撃できはしない。
それでも腕を断たれた苦痛か、それとも不利を悟ったか、後退するむてきまる。
だがアポロがとっさに放った弓矢がその眼球に突き刺さり、動きが止まる。
その隙に再度接近した文が、むてきまるの四肢と羽根を剣で切り裂いた。
更に返す刀で首を跳ねる。これでもう、障害は無い。
だが、その時にはもう渚が目的を達成していた。

「許さない……私にこんなことして、絶対許さないんだから……!」

憎憎しげに文を睨みつけながら、取り出したキメラの翼を左手で掲げ……
同時に、彼女の姿は消え……残ったのは倒れている羽入と、ブロントの死体だけだった。

「また逃げられたか。武器の所持を見逃すとは、我ながらなんという醜態だ……!」
「……あなたの責任ではないでしょう。それより早く羽入さんの治療を」

歯をかみ締めるグラハムに、アポロは声を掛けた。
言う通り、彼に責任は無い。ボディーチェックをしようとした彼を止めたのは羽入本人だ。
そして、渚のボディーチェックを怠ったのも彼女である。
それでも、部隊長を務めていた人間としてグラハムは責任を感じずにはいられない。
……だが、その意識の中にブロントを悼む気持ちは無かった。
当然だ。彼にとって、ブロントは実質敵だったのだから。
アポロも同行していた羽入を傷つけられたことから、
ブロントと渚ははじめから共謀していたのだと誤認していた。
だから、迷わずに矢を放っていた。
下手人である文にいたっては、ブロントへの興味すら既に無い。
それでも、そんな空気をおかしいと思っていた人物が一人だけいた。

『ひどいと言いたそうだね?』
「え……あ……」

カーテンの側で呆然としていたキョン子に、ユベルが声を掛ける。
その言葉に、思わず本音を漏らそうと思って。

『あんなのは愛じゃないよ。
 あの男の都合を押し付けているだけ。そんな偽りの愛が届くはずも無い』

理解してくれそうだと思った相手すら、あっさり否定してきた。

「でも……」
『少しばかり、危機感が足りないんじゃないのかい?
 この殺し合いの場を痛みもなく切り抜けるなんて無理なのさ。
 だとしたらせめて、痛みを一緒に分かち合うしかないじゃないか』

ユベルの言葉は本音でもあり、誘導でもある。
ユベルとしては、キョン子が心の闇に囚われてくれたほうが都合がいいし……
それにそもそも、ブロントの行動はユベルにとって下らないにも程があることだった。
反論できずにキョン子が言いよどんでいた、瞬間。

「……危ない!」

いきなり、文の声が響いていた。


「よくも、よくも、よくも、あの鴉女……!
 これじゃ、ちゃんとおにいちゃんに料理作ってあげられなくなるじゃないっ!」

B-2、かつて渚がシャワーを浴びた家の中。
キメラの翼でそこへ飛んだ渚は、傷を水ですすぎながらも涙も流さず吐き捨てていた。
怒りが痛みを凌駕しているのか、うずくまることもなく動けているが。
そこにブロントへの気遣いやその死を悼む気持ちなど、欠片も有りはしない。

「殺してやる、絶対に殺してやる!」

言うまでもなく、この言葉にブロントの敵討ちなどという考えは欠片も無い。
イライラしながら動いているから、自分の荷物をぶちまけてしまった。
――先ほどの戦いで、彼女はしっかりとモンスターボールを扱うことが出来た。
理由は単純。それは、彼女の手元にもモンスターボールがあるからだ。
もっとも、その有用性は段違いだが。

「こいつも、あの蜂くらい役に立てばいいのに……この役立たず」

そう呟きながら、自分が持つモンスターボールを見やる。
その中にいるのは、ただのコイキング。そう、ただはねるだけのポケモン。
やつあたりするように睨みつけながらも、再び渚はモンスタボールを仕舞う。

「ふん、こうなったらもう、最後に仕掛けたのでいっぱい死ねばいいのに。
 あの鴉女はもちろん、薄汚いチーター頭も一緒に死んでくれるといいんだけど」

暗い感情を瞳に乗せて、渚は遠くを睨みつけた。


みさおは呆然としていた。目の前で繰り広げられた惨劇に。
見せしめの首が吹き飛んで以来、彼女は危険に出会わず安穏と過ごしていた。
新堂の遺体とも結局出会わなかったし、彼女は元々ただの女子学生。
熱で黒焦げ、血が撒き散らされるような惨状に彼女の意識はついていけなかった。
だから、彼女が自失状態にあったのは責められることではないだろう。
それをなんとか現実に引き戻したのは、一つの声だった。

「……う……僕は……」

ぼろぼろになった体で、羽入が意識を取り戻す。
声も呼吸も弱弱しいけれど、それでもその声はなんとかその場にいた人間に届く。
その声を聞いて、ようやくみさおは現状を意識の上で理解した。

「は、羽入、大丈夫かぁ!?」

走る。ただ、傷ついている羽入を助けないと思って走る。
彼女はまだパニックから回復しきっていない。ただ反射的に走り出しただけだ。
そこに理性的な考えはないし、そんな余裕もない。
だから。

「……危ない!」

羽入に近づいた彼女に、文が警告した理由にも気付かない。

「え?」

それでも、みさおはかろうじて速度を緩める。
だが、それは既に遅く。
その瞬間、再び……いや、先ほどより大きな爆発が、起こった。

「な……!?」

アポロが突然の事態に呆然とする。その脇で、グラハムが歯を噛み締めた。
原因は単純で、明らかだ。最初に羽入が吹き飛ばされたのと同じ。
支給されたモーションセンサー爆弾は一つではなく、三つ。
だから残り二つを、むてきまるにもたついていた隙に羽入のすぐそばに設置していた。
言ってしまえば単純なトラップは、だが、羽入を焼き、みさおを吹き飛ばし、
ブロントの遺体をバラバラにした。

「ひ……!?」

目に入ったものと異臭に、キョン子が声を漏らす。いや、漏らすしかなかった。
爆発に巻き込まれた者に、生存者はいない。
ただ、焼き焦げた遺体が残っているのみ。
平和だった映画館は、一瞬にして凄惨な焼死体置き場と化し、音は消え。

「……あの人間」

残ったのはただ、文が漏らした言葉だけだった。


綺麗に理想を求め、少女を導こうとした想いは通じず。
ただ、犠牲者を増やしただけですれ違う。
怜悧な頭脳が導き出した「正解」は「理想」に遮られ。
惨禍を生み出す歪みは――今もなお、正されずに残っている。



【B-2 屋内/1日目 日中】
【野々原渚@ヤンデレの妹に愛されて夜も眠れないCDシリーズ】
[状態]:ヤンデレ、全身に軽い切り傷、腹部にダメージ(小)、 軽い精神的ダメージ、
 親指以外の右手の指喪失、右肩に矢傷
[装備]:チャイナ服@現実 ピョン太君@私立東方学園 アシストフィギュア(サイボーグ忍者)@大乱闘スマッシュブラザーズX
[道具]:支給品一式×3(一食分消費)、タバコ一箱@メタルギアシリーズ、タミフル@現実、北条鉄平の首、北条鉄平の首輪、不明支給品0~1 、モンスターボール(コイキング)
@コイキングを守れ!ディフェンスに定評の(ryトーナメント
[思考・状況]
1:記憶がめちゃくちゃなのは全員なのかなど確認したい。記憶が不安定で精神的につらい
2:???

【D-2 映画館中/一日目・日中】
【キョン子@涼宮ハルヒコの憂鬱】
[状態]:健康
[装備]:DMカード【ユベル】@遊戯王デュエルモンスターズ (使用可能まで2時間)、
    言葉のノコギリ(レザーソー)@school days
[道具]:支給品一式、長門有希のギター、Ipod(少佐の演説の音声入り)@HELLSING
[思考・状況]
0:ひ、ひどい……
1:殺し合いには乗らない
2:とりあえず文さんたちと一緒にいる
3:町へ行きたいけど贅沢は言わない。
4:異世界という確信を得るため情報を得る。
5:生きて帰りたい
6:ユベルはなんで放送のこと知ってるの?
※グラハム、大河と情報交換しました。
【ユベルの思考・状況】
1:大好きだよ、十代……
2:十代に会うためこの世界を『愛』(苦しみと悲しみ)で満たす。
3:そのために女(キョン子)を利用し、痛みと苦しみを味あわせる。
4:彼女も誰かを愛しているのかな……?フフフ……
[備考]
※ 制限によりユベルは参加者の体を乗っ取ることができません。
※ 参加者との会話はできますが、自分からの実体化はできません。
※ バトルロワイアルの会場を異世界の一つだと思っています。
※ 自身の効果以外で破壊された時、第2形態、第3形態に進化できるかは不明

【アポロ@チーターマン2】
[状態]:健康、悲しみ
[装備]:養由基の弓@三国志Ⅸ(矢残り6本)
[道具]:カレーセット@るろうに剣心、共通支給品、不明支給品0~1
[思考・状況]
基本思考:ゲームの転覆
1:そんな……
2:首輪の解除についても考えるべきですね…人材を探しましょう
※羽入と蜂はDr.モービスの生物兵器だと思っています。
※新堂の死体を発見しました。みさおには伝えていません。
※羽入と軽く情報交換をしました。

【グラハム・エーカー@機動戦士ガンダム00】
[状態]:ほっぺたにビンタ痕
[装備]:ガリィ@FF11 FFⅣ
[道具]:支給品一式(一食分食糧と水消費)、ホイールオブフォーチュン@遊戯王5D's
[思考・状況]
1.フラッグ(文)に惚れた
2.フラッグを守る
※参戦時期は一期終了後(刹那のエクシアと相討ちになった後)。
※キョン子、大河、羽入、アポロ、みさおと情報交換しました。


【射命丸文@東方project】
[状態]:疲労(小)、脇腹に中程度のダメージ、服がボロボロ
[装備]:七星宝剣@三国志Ⅸ
[道具]:支給品一式(一食分食糧と水消費)、究極のコッペパン@ニコニコRPG
[思考・状況]基本:一番大事なのは自分の命、次がチルノさん。後はどうでもいい。
1.情報収集。自己保身を優先する。特に究極のコッペパンは絶対に自分で食べる。
2.主催者の方が強そうだったら優勝狙い、脱出できそうなら脱出狙い。それまでは1に徹する。
  少なくとも人数が半分以下になるまでは立場を確定させない。
3.優勝狙いが確定しない限りグラハムと一緒にいてやる(ただし優勝狙いに決めたら速攻で殺す)。
4.ブロリーと出会ったら何を犠牲にしても全力で逃げる。
5.呂布を警戒。

【古手羽入@ひぐらしのなく頃に 死亡】
【日下部みさお@らき☆すた 死亡】
【ブロントさん@ネ実 死亡】

※羽入とブロント・みさおの支給品が映画館に放置されています。
 ただしむてきまるは死亡しています。

【モーションセンサー爆弾×3@大乱闘スマッシュブラザーズ】
動きを感知して爆発する地雷のような爆弾。小さいのでわかりづらい上無差別。
ちなみに出展元であるゴールデンアイではかなりの威力であり、
スマブラシリーズでも踏むと一気に吹っ飛ばされてトドメとなるケースが多い。

【キメラの翼@ドラゴンクエストシリーズ】
今まで行った町に飛べるアイテム。

【コイキング@コイキングを守れ!ディフェンスに定評の(ryトーナメント】
ご存知コイキング。攻撃手段は無い。はねるだけ。更に一撃で死ぬ。
ギャラドスに進化したりもしない。



sm151:「正解」と「理想」 -Killer Queen-(前編) 時系列順 sm152:とてつもない日本の修造
sm151:「正解」と「理想」 -Killer Queen-(前編) 投下順 sm152:とてつもない日本の修造
sm151:「正解」と「理想」 -Killer Queen-(前編) 野々原渚 sm160:俺より強い奴に遭いに行く!
sm151:「正解」と「理想」 -Killer Queen-(前編) キョン子 sm166:もっと熱くなれよ
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sm151:「正解」と「理想」 -Killer Queen-(前編) グラハム・エーカー sm166:もっと熱くなれよ
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