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惨劇起きてすぐ覚醒~狂気の最終鬼畜オヤシロ様(前編) ◆CMd1jz6iP2




「HAAAA……デパートに着いたよぉぉぉ」
「ここも随分ひでぇことになってんなぁ……」
森乃進と城之内の見つめる先に、デパートが建っていた。
そのデパートの一部に見える激しい損傷。
間違いなく戦いがあったことは二人の目にも明らかだった。
「と、とにかく中に入ろうよぉ」
「爺さん、気をつけろよ。ルガールさんもいねぇんだから、危ねぇ奴がいたら大変だぜ?」
ちょっと忠告したつもりだった城之内だったが、森乃進はビビリ、入り口でウロウロし始めた。
「(困ったもんだぜ……ルガールさんたち、まだ来ねぇな。何か成果があるといいんだけどよ)」

「治らないなぁ……これくらい、いつもならすぐなのに」
フランは橋の下で、体を休め再生に専念していた。
だが、失われた左手の再生はうまく進まなかった。
目の前の死体を見るたびに、無くなった左手を見るたびにイライラが募っていく。
殺した新堂から手に入れたクリムゾンの銃口を、死体に向ける。
一発、二発、三発。
反動で跳ねる死体を見て、フランは少し気がまぎれた。
とはいえ、ここには何もフランを喜ばせるものはない。
何やら小さい壊れた人形が落ちているが、動きもしない。

とりあえず弾切れになった銃に、慣れない手つきでマガジンを装填する
「あれ、なにこれ?」
クリムゾンを握っていると、何やら光点が二つ見えた。
それが、ドンドンとフランのいる場所に近づいてくる。
「……誰か来るの?」
どうやらこの銃の特殊能力らしい。
自身も人の気配を感じて、まだ休みたいフランは静かにすることにした。

「痛っ」
ズキリと、失った左手が痛む。
「……隠れたって、見つかっちゃうかもしれないよねぇ」
さっきの銃声も聞かれたかもしれない。



死体といっしょにいるところなんて見たら、どうせまた酷いことをしてくるに違いない。
「……痛いのは、もう嫌」
だったら、ヤレラル前に殺ラナイト。

ルガールと羽入は、城之内たちと行動を別にし、橋の近くまで探索をしていた。
危険人物がいないか、誰か協力者はいないかを探すためである。
「誰もいないようなのです」
「そのようだな……橋を越えた先に誰もいないようなら、城之内たちと合流するとしよう」
あちらも長く離れていては危険である。
慎重に行動するように言ってはあるが、森乃進の挙動を知る以上心配ではあった。
「(それにしても……どうして私と鉄平だったのか……)」
羽入は、呼ばれた人選の異様さに頭を悩ませていた。
圭一や梨花はおらず、知り合い(一方的な)は前回の世界で逮捕された鉄平のみ。

「(完全なランダム……? そう考えれば、森乃進の知り合いがいないのも納得できるのですが……)」
深い思考を続けるが、そもそも情報も少ない現状では無駄な思考であった。
「羽入、どこまで行くのだ?」
「はう? って、ああ!?」
ルガールを見ると、彼は橋の中央に立っていた。
ならば、羽入はどこにいるのか?
羽入は周囲を見渡し、とっくに橋を超えていたことにようやく気がついた。
「ボンヤリするのは関心せんな。気付けにデパートまで運送しようか?」
「し、死んでしまうのですよ~!」
慌てて戻る羽入に、ルガールはため息をつく。
「(もう少し周囲に気を配らねば、危険に対応できんぞ?)」
そう考えるルガールだったが、彼もまた気がつかなかった。

足元……橋の下から発せられる、激しい狂気を感じるまでは。
「(!? 橋の下に、何かが……イカン!)」
羽入の無防備さを心配していたルガールもまた五感に僅かな鈍りがあった。
硝煙の匂い、そしてそれを掻き消すほどの、血の匂い。
何も知らぬ羽入は走ってくる。



何者かの気配の直下まで、無防備に。

「(ギガンテックプレッシャー……いや、このタイミングでは遅い!)」
運送による回避を思考し、即座に却下。
このタイミングでは、運ぶ体勢になった瞬間二人まとめて攻撃される。
ならば、ルガールが取るべき最良の手は。
「レップウケン!!」
「は?」
羽入の足を止めることだった。
ルガールの攻撃を慌てて回避する羽入。
銃声と共に橋から飛び出した銃弾は、空を切る。
ルガールの判断に間違いはなかった。
ルガール本人の身の安全を、度外視すればだが。

続けて銃声が響く。
「ぐ……ぬぅ!」
「ル、ルガール!?」
技の硬直で動けなかったルガールのわき腹を、銃弾が貫く。
よろめくルガールに、さらに銃弾が発射された。
だが、それがルガールを捕らえることはなかった。
大きな水しぶきを上げ、ルガールは川へと落ちた。

「ルガール!!」
悲鳴にも似た羽入の叫び。
それを掻き消すように橋から黒い影が飛び出す。
「何者ッ!?」
黒い影は、そのとおり黒い衣装に身を包んだ人物だった。
その衣装はびしょ濡れで、左腕部分がダランとしていた。
その異様な姿に、羽入は息を呑む。

羽入は逆刃刀を構え、相手を見据える。
相手も羽入を見据えると、銃口を羽入に向け、無造作に引き金を引こうと力を込める。



「うっ!?」
仮面ごしに照らされた太陽光に怯む。
そのスキに、羽入は踏み込もうと足に力を込め。
「うぅ、まぁいいや」

黒衣の人物は、それを上回る速度で走り去っていった。

「待つのです! くぅ……ルガール!」
逃げた相手を追わず、羽入は川に流されたルガールの名を呼んだ。
川の流れは中々に速く、人影すらも見えなかった。
無事であれば良いが、と羽入はルガールの救出のために走る。
「城之内たちと合流するのが遅れてしまいますが、まずはルガールを助け……」
そこまで考えて、足を止めた。
城之内たちに連絡すべきかと考えて、見落としに気がついたのだ。
「……しまった!」
あの黒衣が逃げた方角には――デパートがあった。


「HAAAA……漏らしそうだよぉぉぉ」
森乃進はビビリすぎたのが原因か、トイレに走っていた。
ん、今まではトイレどうしてたのか?
もちろん行ってるさ、全員総カットだけどな。

「(でも良く考えたら、このデパート怖いよぉぉぉ。
床とか崩れてるとこもあるし、ゲームならシステムの問題で落ちないけど、わし落ちるよぉぉ)」
「爺さん……トイレぐらい落ちついていこうぜ」
後ろについて歩く城之内も、流石にビビリすぎの森乃進にため息をつく。
「あっ、ここここ! この先にトイレがあるよぉ!」
捜し求めたトイレに、森乃進は喜び駆け出す。
そして。
「HAAAAAA!!!! 吉田あぁぁぁぁぁぁああ!!!!!!」
これまでにない、恐怖に満ちた声と共にUターンしてきた。



「なっ、どうしたんだよ爺さん!」
「ニゲロニゲロ!! 吉田ァァァァ!!」
城之内の呼び止める声にも止まらず、森乃進は走り去った。
「はぁ? いったい何だってんだ……よぉ!?」
トイレのある曲がり角。
ちょうど森乃進がUターンしてきた場所から、
「あ は は は は は は
  は は は は は は !」
黒い仮面の人物が現れた。
片腕だけのそれは、ゆっくりと銃に弾を込めている。
「お、おい!」
城之内の声にも耳を貸さず、仮面の人物は銃口を城之内に向ける。
「じょ、冗談じゃねぇぞ!」
城之内もまた逃げる。
一発の銃弾が響き、逃亡劇は始まった。


スゥ~(´-。-`)ハァアアアアアァ( ゚д゚ )
「ゲホッ! ゲハッ! ガッハァ! (な、何あれええええ! 吉田の新種ぅぅ!?)」
森乃進は、違うトイレの個室に逃げ込んでいた。
城之内を置いて逃げた罪悪感もあったが、何より恐怖心が彼の心の大半を占めていた。
「(ごめんよぉぉぉぉ……でもあいつに追いつかれたらゲームオーバーだよぉ! コンティニューなんてできないのにぃ)」
できる限り声を押し殺し、森乃進はガタガタと震えた。
その彼の耳に、信じられない音が聞こえてくる。

「爺さん! 爺さぁぁぁん! どこだ、無事なのか!」
「(HAAAAAA!? 城之内君、なにやってんのぉぉぉぉ!?)」
吉田がいるのに! 城之内は自分より森乃進の保護を優先した。
「(だ、駄目だよぉ! 吉田に殺されちゃうよぉぉ!)」
だが、どれほど心で思っても城之内の声は止まらない。


「(勇気……あるんだなぁ)」
思えば、出会ってから迷惑のかけっぱなしだった。
このままでは、彼は吉田に殺されてしまう。
彼を、危険に晒すわけには行かない。
森乃進に、僅かに勇気の炎が灯る。
「(わし、頑張るよ!)」
トイレの錠を外し、外へと飛び出した。


ドンッ


「HA……あああ?」
体に走る衝撃に、森乃進の体は崩れ落ちる。
真っ赤に染まる、トイレの床。
「もう終わり? つまんないなあ」
クリムゾンで打ち抜かれた、森乃進の血だった。
森乃進の視界には、仮面を外したフランの姿があった。
「(ああ……吉田なんかより、全然カワイイお)」
表情は狂気に囚われた悪魔そのものだった。
それでも、吉田などから比べれば遥かに愛らしい姿に、不思議と恐怖は少なかった。
「か、かわいいねぇ、お嬢ちゃん」
「……?」
意識の朦朧となった森乃進は、カメラを手に取る。
何の意味もない行動。それでも、何かできるとしたら、彼にはそれしかなかった。

「(こ、これでスキを作って逃げるよぉ。それで、城之内君に逃げるように言って、それで)」
思考すらまとまらず、しかし森乃進は行動する。
「HA……はいちーず」
カシャっと音と同時に、目をくらます光がフランを襲う。
「きゃっ!? 何これ、ちょっと熱い……」
騒霊、亡霊、半人半霊。幻想郷には射影機が通用する存在が多く存在する。



しかし人外ではあるが、吸血鬼にはほとんど効果は無かった。
その結果を確かめることもなく。
秋山森乃進は、既に心臓を止めていた。

「城之内!」
「おお、羽入ちゃん! あれ、ルガールさんは?」
城之内を見つけた羽入は、事情を説明する。
「マジかよ! くそ、あいつだ……羽入ちゃん、いっしょに爺さんを探してくれ!」
「森乃進がどうかしたのですか!?」
おそらく同じ奴に襲われたことを聞くと、羽生の顔色が変わる。
「そのときに爺さんとはぐれちまって……今、むてきまると手分けして……」
城之内の言葉が言い切られるよりも前に、銃声がデパートに響いた。
けして遠くはなかった。
「……ま、さか!?」
駆け出す城之内を、同じ不安を抱いた羽入が追いかける。
どうか、間違いであって欲しい。

その願いは、トイレに転がる森乃進の死体を前に、脆くも崩れ去った。
「嘘だろ……爺さん!」
そこにあったのは、森乃進の死体のみ。
ディパックもカメラもないところを見ると、持ち去られたのだろう。
さらに言えば、死体も妙だった。
老人である森乃進の肌はもちろんハリがない。
それでも、明らかに異常なほどに干乾びていた。
「これは……吸血鬼の仕業だとでもいうのですか?」
「爺さん、すまねぇ……俺がもう少し早く……!」
城之内は、森乃進の死にただただ涙する。
「(無理も無いのです……仲間の死は、本当に辛いことなのだから)」
だが、羽入の考えとは裏腹に城之内は涙を拭う。

「城之内?」
「……いくら泣いたって、爺さんは帰ってこねえんだよな。
だったら、こんなとこで泣いてたって爺さんに笑われちまうだけだ。HA、ってな」



「城之内……ええ、その通りなのです! 一刻も早く、森乃進の仇を……」
討とう。そう続けようとした羽入の言葉を城之内は制す。
「違うぜ、羽入ちゃんよ。爺さんをこんな目に合わせた奴は、ぶっ飛ばして土下座させて詫びさせるさ。
でもな、俺たちがやらなきゃいけないことは他にある。このゲームをぶっ壊すって、でっかい目的がな!」

城之内は、復讐に囚われなかった。
それを、薄情と思う者もいるかもしれない。
だが、出会って僅かな二人に、しかし絆は確かにあった。
それを知っているからこそ、羽入はその選択に感動さえ覚える。
「城之内……城之内は気高き精神を持っているのです。
ええ、その目的を果たしましょう! あなたにならば、その望みを叶えられるのです!」
城之内は力強くうなずく。
その目には、どんな苦難にも負けない力強さが秘められていた。
「爺さんの分も、頑張ろうぜ羽入ちゃん! 見せてやるんだ、俺たちの結束のちかr」

刹那。
トイレの壁が一瞬光りを放った。
光は熱へと変わり、衝撃へと変わり、壁を破壊した。
その衝撃は天井までも崩し
ガレキが、羽入と城之内の姿を飲み込んでいった。

「あはははは! 凄い凄い! 弾幕と違って汚いけど、凄い威力なんだねぇ」
フランは、クリムゾンの破壊力に満足げな笑みを浮かべていた。
自身の力を使わずにトイレをガレキに変えた威力はすさまじいものだった。
だが、クリムゾンはあくまで銃。それが一撃でトイレを破壊できるだろうか?
その秘密は、クリムゾンが進化する銃であることにあった。
使い込まれるたびに溜まった進化に必要なゲージ。
死体であろうと、人を撃てば撃つほど溜まる負の力。
その第一段階の進化は、敵の位置を表示する「サイトスコープ」。
それによって、近くの人間の居場所は簡単に見つけられた。



そして、森乃進を殺害したことで、きっちりと第二段階に進化するだけのゲージが溜まったのだ。
フランが選んだ進化は、ミサイル。
銃弾を一度のみミサイルへ変換し、トイレの壁に打ち込んだのだ。
「あれ、誰がどこにいるか見えなくなっちゃった」
「サイトスコープ」の機能までなくなるほどゲージを消費してしまったらしい。
だが、フランは気にしない。
「まぁいいや。また嫌な奴を何人か殺せば元に戻るよね」

マガジンを交換し、空になったマガジンを捨てる。
歩き出し、次はどうしようかと考えるフラン。
その耳に、ありえない音が聞こえる。
ガレキを吹き飛ばす音。フランは振り返り、その音の正体を目撃する。
潰れたはずの羽入がそこにいた。
打撲や擦り傷こそあるが、自力で這い出してきたらしい。
「へぇ、丈夫なのね。でも、もう一人はどうしたのかしら?」
フランの軽口に、羽入は歯をギリッと食いしばり片手に持つ「ソレ」を見せた。
「……無駄と知りつつ、手を伸ばした。だが、ガレキの中から引き寄せられたのは、これのみであった」
真っ赤に染まった、ディパック。
さらにそれには、毛髪や肉片らしきものまで付着している。
「アハハハハ! 残念ねぇ、あの男は……」
「……そうだ。運命を打開できたであろう尊き精神の持ち主、城之内克也は死んだ。
秋山森乃進同様、あなたに命を摘み取られた」
羽入の様子がおかしいことに、フランは気がつかない。
ただ、ディムロスの説教とどこか被り、フランの精神を逆撫でた。

「うるさいなぁ。
私を愛してくれない人なんて……壊れちゃえ!」
クリムゾンの引き金を引く。
連続で三発。リズム良く破裂音が響く。
オプション銃の効力は失われたが、人一人程度簡単に壊せる。

ただし、当たればの話であるが。




「あれ?」
クリムゾンの扱い方を、フランはある程度理解し始めていた。
弾幕的に言えば、少しズレが生じる直線弾。
そのズレも、相手の中心を狙い何発か撃てばどれかは当たる。
だから、体のどこかに当たると確信していたソレが当たらなかったことにフランは疑問符を浮かべた。
「もう、壊れてよ!」
再び、三度続けて引き金を引く。
それでも、弾は羽入の後ろに弾痕を残すのみであった。

「どうした、人ならざる者よ。それでは人の子らとなんら変わらぬぞ?」
「うるさいなぁ! 一発でも当たればゲームオーバーなのに!」
カチッ、カチッと言う音に、弾が切れたことに気がつく。
弾を込めるべきか、弾幕で吹き飛ばすべきか。
フランが思考した隙に、羽入は駆けていた。
羽入が構えるのは刀。それを見ても、フランは笑うばかりだ。
まっすぐに飛んでくるなら、打ち落とす。
「これで、ゲームオーバーなのさ!」
弾幕を展開しようとクリムゾンを手放し力を込める。
フランの動きを察したのか、羽入の表情が驚きに変わる。
「遅いよ、あんたも潰れちゃ―――」
その発言は最後まで口にされることはなく、また間違いでもあった。
「飛天御剣流―――九頭龍閃」
羽入はすでにフランの眼前まで肉薄し、九撃も放っていたのだから。

『壱』唐竹、『弐』袈裟斬り、『参』右薙ぎ、『肆』右斬上げ、『伍』逆風、『陸』左斬上げ、『漆』左薙ぎ、『捌』逆袈裟、『玖』刺突

九方向へのほぼ同時の斬撃。
その名を、飛天御剣流「九頭龍閃」。
「(この技は……まさか、あの本を読んだから、なのでしょうか)」
羽入の驚きは、突進したときに自然と頭の中にこの技が浮かんだことによるものだった。
『玖』である刺突が、本に書いていた通りの柄による一撃であったため命を絶つには至らない。



それでも、余りある威力にフランは壁まで一直線に吹き飛ばされる。

「こ、のぉ……あっれ?」
砕かれた壁から這い出てきたフランは、そのまま前のめりに倒れた。
この技は、本来体格の良い者が使うことによって真価を発揮する。
羽入の体格は一般的女性と大差はなく、本来の威力には程遠い。
だが、それを叩き込んだ相手は羽入よりも小さなフランドール・スカーレット。
相手を行動不能にする威力は十分にあった。

「―――それでは私に勝つことはできない。私をただの人と侮ったのが間違いであったな」
被っていた帽子は、いつの間にか落ちていた。
頭から覗く角に、フランは相手が人ではないことを知った。
「何よ、あんたも鬼だったの? そのくせに巫女で妖怪退治なんておかしいねぇ」
「巫女ではない。私は神……オヤシロ様などと呼ばれ恐れ崇められる、祟り神……それが私だ」
話しながら近づく羽入から離れようともがくフラン。
だが、まったく自由に動かない体はそれを許さなかった。
死にたくない―――その思いがフランの意識を支配する。

「く、くず鉄のかかし! ――あ、あれ?」
なんとかカードを掲げ、宣言する。
しかし、使用制限時間内である今は無意味であることをフランは知らない。
「……残念ながら」
目の前まで近づいてた羽入はフランからカードを奪う。
「これは使用から半日はただの紙へと戻る。その行為は無意味だ」
フランを見下ろす羽入の目は、まるで生き物を見るものではない。
路傍の石か、何かとてもつまらないものを見下す目だった。

だが、そこまでだった。
それ以上、羽入がフランを殺すわけでもなく会話もない。
「(どういうこと? ……もしかして)」
フランはある仮説にたどり着き……口にした。
「見逃して、くれるの?」






「……城之内は決断した。けして復讐に囚われないと。
ならば、仲間である私はその意思を可能な限り尊重したい」

やっぱりだ。
フランは目の前の人間……もとい神は思った通り『まとも』らしい。
仲間を殺されてなお、常識的な「歪みない」存在であり続ける。

「神の名に懸けて誓おう。あなたの命を奪うことはしない」
「へぇ……優しいのねぇ」
殺せるのに殺さない。
ほんの数時間前、フランが行おうとしたことである。
その結果は、思い出すのも嫌になる。
「(いいよ。ここで殺さなかったことを後悔させてあげるから)」
灰化した腕の治りは遅く、再生には夜までかかるだろう。
たとえここでクリムゾンを奪われても、体が治れば生身でも戦える。
先ほどの攻撃でスーツは破れ、今ディパックにある仮面では日光の脅威から逃れることはできない。
それも、デパート内で代用品を探せばいい。
準備を整えれば、今の立場を逆にできる。
目の前の神を、骨も残さず壊しつくすことも。

「―――ですが、その心根は捨て置けない」
その言葉の意味を、フランには理解できなかった。
フランは説教でもされるのかと、心底嫌そうな顔をして、

迷い無く手の甲を貫いた刀に、悲鳴と苦悶の表情に塗り替えられた。
「殺さぬと誓おう――殺しはせぬと誓おう。
あなたには、あなたが犯した罪を知ってもらわねばならぬのですから」
「ううう……な、何をする気よ!」
「私の友人の一族に伝わる手法を真似させてもらう。
ほんの少し、死んだ二人の痛みを知ってもらうとしよう」
そんな、とフランは抗議の声を上げる。



「よく回る口だ。ならば引き金を引く手などいらぬだろう」
「えっ?」
刀が掌から抜けていた。
否、そもそも気づけば腕から
「ア、アアアアアア…………!!!」
手が、腕から切り離されていた。
この程度の怪我、普段ならどうということはない。
だが、既にフランは左腕がないのだ。
両手を失ったフランは、立ち上がることもままならない。
「(嫌、嫌、嫌嫌嫌―――そ、そうだ!)」
スーツは破れている。つまり、翼も出ているのだ。
目の前の相手から逃げるため、空に飛び上がる。

「無駄です」
飛び上がろうとするフランの高度が低いうちに、羽入はその翼を無造作に掴んだ。

「ギッ―――!?」
小枝が折れるような音がして、地面に叩きつけられるフラン。
そして、刀が背中に振るわれた。
「~~~~~~~~~~~~~ッッ!!!??」
翼は、根元から刈り取られた。

狂ったように床を転がるフランの足に、刀を突き刺す。
もはや悲鳴すら上げず、フランは小刻みに痙攣を始めていた。
「……?」
羽入の耳に、大きな羽音が聞こえる。
振り返れば、そこには大きな蜂がいた。
「あなたは……むてきまるか。済まない、あなたの主人は……」
むてきまるは、ディパックに大きな針を向ける。
「……これを持つ者が主人、ということですか? ……ならばむてきまる、手伝ってもらおう」
突然現れた大きな蜂。
身動きできないフランに、それは恐怖の存在でしかなかった。



「ぁ――――――ヤメ、テ」
「安心せよ――死にはしない」
そして、羽入は口にする。

「やどりぎのタネ」と。

「か……は……」
植えつけられたタネは、フランを苗床に成長していく。
傷すら治らぬフランに、生命力そのものを吸う行為は地獄の時間だった
そして、しばらくしてタネは枯れた。
「……ぁ、ぅ」
体力を吸い尽くされたフランは、身動き一つしなかった。


「……人ならざる子よ。これからも続けるが、何か言いたいことはあるか?」
「――――――もう、いいでしょ。これじゃ、死んじゃう、じゃない」
その胸ぐらを羽入が掴む。
「あの二人は……泣き言一つ口にすることもできず死んでいった。
……答えよ。なぜ二人を殺した!」
「うる……さいっ!」
返ってきた返答は、噛み付きだった。
「ぐ……あぅ!」
だが、どういうわけかフランはいつの間にか組み伏せられていた。

「……そっか。おかしいと思ったら、あんたの能力って咲夜と同じなのね」

最初に、フランの銃が当たらなかったのは照準の問題だけではなかった。
オヤシロ様の能力、時間操作。
引き金が引かれるたびにそれを使用し、銃弾を避けていたのだ。
「答えよ。その命を摘み取られたくなくば」
自分と同じ能力、という言葉に反応した羽入だったが、それよりも返答を促した。




「……私は、狂気を持ってるんだって。嫌な奴が苦しむのを見ると楽しいの。
私にとって、一番楽しいことがそれなの。それ以外の遊びなんて、知らないもの。
私には『歪みある生き方』以外できない。『歪みない生き方』をしようと思ったけど、苦しくて仕方がなかった!
こんな私でも愛してくれる人がいる! だからいいの! 私は自分が楽しく生きるの!」
肩で息をしながら、フランは叫ぶ。
「それが、二人を殺したり理由か?」
「……そうだよ」
一瞬の沈黙のあと、聞こえたのはため息だった。

「初めに言ったとおり、あなたを殺すつもりはないのです。
ただ、「歪みある」あなたをこのままにしておくわけにはいきません」
「また殺すから? アハハハハハハハハハハ!!!
無理よ、無理! 私は壊すわ、殺すわ! 嫌な奴はみんな殺してやる!」

「―――ええ。それについては問題ないと思うのですよ」
拷問の受けすぎで、耳までおかしくなったのだろうかとフランは自身を疑った。
羽入の口調が若干、元の柔らかいものに変わっていたが、そこまでは気がつかない。
「世の中には、どうしようもないムシケラは存在してしまうのです。
それを狩るならば、あなたを止める理由など、本来はまったくありはしない。
城之内も森乃進もルガールも、この意見に異を唱えるかもしれませんが」
困ったように、フラン以上に危険な発現をする神。
だが、古来より人と接してきた羽入は十二分に知っている。
素晴らしい人間を食いつぶす、どうしようもないクズはたしかにいる。
100年以上繰り返しても、綺麗な鉄平とはついぞ会えなかったように。
だから、それが死のうと羽入は自業自得と思うだけだ。

「……なら、私の歪みを治す必要なんてないじゃない。
二度と私に近づかなければいいのよ……アンタだけは許さないけどねぇ」
精一杯の殺気を放つフランに、羽入は首を横に振る。
「まだわからないのですか、フランドール・スカーレット。
あなたは、全てを壊したいと言いながら愛を求めている。






その矛盾を、「歪みある」と言わずなんと言えば良いのです?」
「そ、それは……よ、弱い奴なんて、私の友達になんてなれない、もの」
そう言うフランの脳裏に、テトが、ラガナーが、ゆっくりが浮かぶ。
自分より弱くても、彼らは自分と行動していたではないか、と。
「今までと、発言が違っているのですよ。
フランドールはこう言っていたではないですか。―――「嫌な奴を殺す」と。
ならば教えて欲しいのです。城之内の、森乃進の、ルガールの、どこが嫌な奴だったのか」
「そ、それは―――ぁ」

答えなければとフランは思い――しかし何も答えられなかった。
フランにはわからない。
城之内が、森乃進が、ルガールが、アカギと、殺した男と同じ嫌な奴だったのか。
なぜなら
「わから、ない……話してなんか、ないもの」

「歪みある生き方」と「歪みない生き方」
ラガナーの意思がどうだったかは知るところではない。
ともかく羽入は、そんなものはそれまでの人生で異なってくると判断した。
これが自分の生き方だと信じて疑わなければ、「歪みない生き方」であることに違いない。
それが間違っていると思ってしまったとき、初めて「歪みある生き方」へと変わるのだと。
――とはいえ、その多くはそう簡単に変えられるものではない。
フランドールの押さえ切れない狂気のように。

「(フランドールの狂気は、一生消えぬ深きもの。
ですが、彼女は生きたいと願い、愛されたいとも願っているのです。
ならば、その「方向性」なら正せると思ったのは間違いではなかったのです)」
無差別な狂気は、その命も、共に歩む者も得られない。
羽入は知らないが、アカギこそがまさにそれだった。
アカギに触発され狂気を開放したフランだったが、そのベクトルは異なっていた。
見敵必殺では、フランの望みは叶わない。
それがフランの発言と行動を微妙にズレさせ……「歪み」を作り出していたのだろう。




「あなたは恐れの象徴である吸血鬼。鬼は恐れられぬはずがない。
たとえ、あなたの友人であっても同じこと。
それでも、あなたを好いてくれることは、あなたが一番知っているはずなのです」
「うるさい。お前が美鈴や魔理沙のことを口にしないで」
だが、それに思い当たることはフランにはいくつもあった。
「おっかないわねぇ」などと言いながら、ごく稀に会えばそれなりに相手をしてくれる霊夢。
「おお、怖い怖い」などと言いつつ、弾幕ごっこの後にも遊んでくれる魔理沙。
美鈴も、怖がりながらも忠誠を誓うと約束してくれた。

「……ありがと。じゃあ、フランちゃん……無理しないでね?」
その誰より弱いテトは、最後まで自分のことを気にかけてくれていた。

「……城之内も、森乃進も、良き人間でした」
「やめてよ」
「特に城之内は――とても面白い遊戯を知っていたのです」
その言葉に、フランは目を見開く。
「ですが、それを知る機会は永遠に失われた。それが運命だったのでしょう」
「うんめい、ですって?」
運命という言葉に、フランは強く反応した。

「運命とは切り開くことが難しい絶対の力。私には城之内と森乃進の運命を切り開く力が無かった。
フランドールがこのまま「歪んだ生き方」をするのも、運命ならば仕方がないのです」
運命。それはフランの姉、レミリアが多用する口癖。
そんなことをフランは認めたくないし、信じない。
「運命運命……そんなもの、壊せばいいのよ」
すでに力など無いはずのフランの体から、殺気が蘇る。
「運命なんて、私の能力で壊してやるわ。
――そう。あんたに弄ばれる運命だってねぇ!」
羽入が危険を感じ離れるよりも速く。
手首だけになったフランの腕から、一発の弾が生み出され羽入を襲った。


「がぁっ!?」
羽入は血を吐きながら倒れこむ。
「ご忠告どうも。お礼に、アンタは「私の意志で」グチャグチャにして殺してあげるよぉぉ!!!」
羽入の狙い通り、狂気の方向性は正された。
もちろん、散々嬲ってくれた羽入へ向けられるように。
「くっ―――!」
羽入が何かをフランめがけて投げる。
避ける体力も体も持たないフランは、それを顔面に浴びる。
「うぅ!? なに、コレ」
妙な匂いのする何かが潰れ、目に汁が入りしみる。
「これくらい……!」
涙で歪む視界に、あの大きな蜂がいた。
何やら奇妙な光を放つと、フランの視界を包み込み、景色が歪む。

「なに、これ。こんなもの……効かないよ!」
フランは、渾身の力で羽入に飛び掛り、首に噛み付いた。
妙な味だったが、神様の血はこういう味なのだろうと我慢した。
抵抗はまったくなく、血を吸い尽くした羽入は恐怖の表情をしたまま死んでいた。
「アハハハハハハ!! 誓ってあげるよ、オヤシロ様!!
あんたの言うとおり、アンタみたいな嫌な奴だけを殺しますってね!」
フランは心の底から笑った。
狂気を秘めた、しかし本当に楽しそうな笑顔で。


「ア、レ?」
頭がクラッとして、気がつくとフランは目の前の死体が消えていた。
「気でも失ってたのかな? あの蜂は……いないみたいね」
羽入がいた場所には、血痕と帽子だけが残っていた。
「あの蜂が持って帰ったのかなぁ。んー、まぁいいや」
死体を嬲る気も失せていたフランは、気にしないことにした。
落ちていたディパックも這って集めておく。クリムゾンも無事だった。
血まみれのディパック……羽入の仲間が持っていたものも落ちていた。



中身は羽入と共に蜂が持っていったのか、基本的な支給品しか入っていなかったため捨て置く。

「んー、神様の血を吸ったおかげかなぁ。凄く体調がいいや……手と翼がどうにかなれば完璧かな」
昼のせいなのか、再生は体力が戻っても遅いままだった。
翼にいたっては、二度と戻るかわからない。
「とりあえず拾っておこう。後で固定しておけば、くっつくかもしれないし」
血溜まりに落ちていた、自分の翼と指を荷物に入れておく。

「どうしようかなぁ……あっ」
いいものを見つけた、とフランは目を輝かせ這いつくばりながら進んだ。
「んしょ、っと」
フランが見つけたものは、買い物に使うカートだった。
それを支えにして、歩くことにしたのだ。
「荷物も中に入れてーっと。服でも探そうかなぁ、これじゃ外に出れないし」
コロコロと車輪を転がして進むフランの目の前に、書店が広がっていた。
「服はないのかなぁ……あれ?」
本屋を一瞥したフランの視界に、一冊の本が目に止まる。

『⑨でもわかるデュエルモンスターズ公式ルールガイドブック』
間違いなく、先ほど聞いた面白いゲームについての本だろう。
「やったー! 何が運命よ、あっさり打ち破れたじゃない」
喜び勇んで、本を手に取ろうとして……取る手がないことを思い出した。
「なんとか、こう……あー、弾幕やったら壊れるよねぇ」
やっぱり本なんて嫌いだ。
「こういうときにテトがいたらなぁ。それか……」
壊れたトイレを見る。
その下には、本など見ずともスラスラ答えられる人間がいた。

「うーん……ごめんね」
少し迷った後にそれだけ言って、フランは服を探しに本屋を離れた。
フランドールは、ようやく自分らしさを取り戻した。
気に入らない奴は殺してしまおう。戦うのは好きなんだから我慢する必要はない。
話して楽しい奴なら仲良くなろう。面白い遊びを知っていれば教えてもらおう。
「とりあえずお話、だったよね。でも、アイツみたいに攻撃してきたら殺しちゃおうかな」
殺して楽しいことと、殺さずに楽しいことを、両方楽しむのだ。


それが、その極端さこそがフランの狂気との付き合い方だった。
――これが、最後の決断となるかは誰にもわかりはしないのだが。

そして最後まで、フランは気がつかなかった。
近くに落ちていた、水分の一滴も残っていない、牙の痕が残る赤い野菜の存在に。

F-3 デパート内/一日目・昼】
【フランドール・スカーレット@東方project】
【状態】:体力全快、全身に拷問痕、翼喪失、左肩に銃痕、両手喪失、左腕が一部灰化、足に刺し傷
【装備】:ショッピングカート
【持物】:基本支給品一式*2、クリムゾン(弾数0/6、予備弾12/36)@デスクリムゾン、セーブに使って良い帽子@キャプテン翼
ゼロの仮面@コードギアス、射影機(07式フィルム:28/30)@零~zero~、予備07式フィルム30枚、フランの翼と指
【思考】歪みない生き方=今まで通りの自分の生き方をする。
1、外に出れる服を探す。
2、嫌な奴を殺す(アカギ(名前は知らない)、ブロリー)
3、嫌な奴かは話して決める。襲ってくる奴は殺す。
4、本屋にあるDMの本を読みたい。
5、手が再生しないと何もできないよ。
6、映画館どうしよう。
※「ゼロの衣装セット」は仮面以外破れました。太陽に晒されれば死に至ります。
※美鈴達と情報交換をしました。
※体の欠損の再生速度、および再生の可否は不明です。次の書き手に一任します。
※くず鉄のかかしの使用制限を知りました。
※フランは羽入の名前を知らず、オヤシロ様とだけしか知りません。
※クリムゾンの進化ゲージは初期値に戻りました。
※本来より速く、二、三人の殺害(もしくは死体撃ち)でゲージは最大に溜まるようです。



sm120:アカギーポッターと誰得の部屋 時系列順 sm121:惨劇起きてすぐ覚醒~狂気の最終鬼畜オヤシロ様(後編)
sm120:アカギーポッターと誰得の部屋 投下順 sm121:惨劇起きてすぐ覚醒~狂気の最終鬼畜オヤシロ様(後編)
sm107:歪んだ狂気 -DistortedPain- フランドール・スカーレット sm121:惨劇起きてすぐ覚醒~狂気の最終鬼畜オヤシロ様(後編)
sm92:最強墓場計画 日下部みさお sm121:惨劇起きてすぐ覚醒~狂気の最終鬼畜オヤシロ様(後編)
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