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**スレ>>945-947 午後の保健室
午後の木漏れ日も優しく、窓からは秋だというのに暖かい日差しが舞い込んでくる。
きょうは一日静かだったな。保健室がこんなに大人しい日は久しぶり。外から生徒たちの声が聞こえてくる。
カチッカチッと秒針は一日の終わりを迎え入れようとしている。それにしても眠いな。本当に眠い。
髪を掻き揚げ、わたしはデスクに肘付いてため息。保健室独特のクスリの匂いもわたしにとっては落ち着く香り。
この白衣だっていちばんのお気に入り。この服さえ着ていれば、どんな怪我でも治してしまう自信さえ出てくる。
大事なのは身体で感じる事、感性って物は不思議だ。ネコであるわたしは感性のまま、生きるのがベストなのか。
今まで教師になる為に、勉強してきた『理屈』って物を全てぶっ壊してしまえと言うのか、と最近ふと思う。
ほかのネコたちはこの時間、時の流れを感じるまま居眠りでもしているのだろうに。それにしても、眠い。
しかし、無自覚な扉はわたしの睡魔を追い払ってくれる。仕事だぞ、シロ。
「シロせんせいー。痛いニャー」
コレッタが膝をかばいながら保健室にやって来る。学校中を走ってばかりいるから、転んだりするんだ。
そう、優しく諭しながら丸椅子に座らせ、痛くないとコレッタを安心さながら消毒薬を棚から取り出そうとする、が。
…わからない。どれだろう…。いつも使っているはずだぞ、いつもの消毒薬。考えれば考えるほど、分からない。
後ろではぐずりながら膝を手で押さえて、必死に痛みを堪えるコレッタ。その子を苦しみから解き放つクスリを扱えるのは
わたしなんだぞ。なのに、わからない。棚のガラスに映るわたしの困り果てた顔は呆れるぐらい情けなかった。
「せんせい…、ぐすん…」
どうする、シロ。正念場だ。子ネコが泣いている。困った顔は見せられない。カチッカチッと秒針は責め立てる。
再び入り口が開く音がわたしのネコミミに入ってくる。小さな影が入って来た気がする。誰だ、わたしの背中を叩くヤツは。
もしかして、その手でわたしの誇りである白衣を破りにやって来たのか。言っておくけど、今、わたしは非力だ。
土砂降りの中一人木陰に取り残された、ずぶ濡れの細いネコだ。ここから一歩も動けないなんて、きみが見たら笑ってしまうだろう。
「ぼくに任せてください!シロ先生!!」
聞き覚えのある大きな声。もしかして、わたしに傘を差し伸べてきてくれたのか。きみはわたしが知っているヤツのはず。
後ろは怖くて振り向けない。わたしはきみを信じていいのか。その傘の持ち主は見覚えのある顔。
小さな身体で学校中を駆け回る、サン・スーシ先生。
「ほら…右から三番目の瓶ですよ。ほら!」
「ええ?」
「それです!それ!今度はピンセットにガーゼを用意しなきゃ!」
「え、えっとお…どれだったかな」
消毒薬片手にまごつくわたしに、テキパキと保健室の勝手を知っているかのように指示を出すサン先生。
サン先生の指示を受ける度に、だんだんと少しずつ何かを思い出していった。大切なのは感じる事なのだろうか。
「えっと、次は…そうだ!ガーゼで患部を…」
「いててててて!!!!痛いニャー!」
「そうです!そうです!さすがシロ先生は上手いなあ」
染みる消毒に声を張り上げるコレッタの姿に不安を感じたが、そんなものサン先生の声で吹き飛んだ気がする。
―――治療も無事に終わり、絆創膏を貼ったコレッタはぐすんと泣きながら保健室を後にした。
「あの…サン先生」
「ん?」
「大変申し訳ございませんでした」
わたしは謝った。頭をブンと下げて感謝の意味を示す。そしてわたしの不甲斐なさをサン先生に見せてしまったわたしを
サン先生はどのように思っているのだろうか。鼻でせせら笑ってもかまわない、侮蔑の目で見下げてもかまわない。先生、答えは…なんですか。
「シロ先生、格好よかったですよ」
何でもない、短い言葉にわたしは救われた気がする。土砂降りはいつの間にか上がり、外は青い空に美しい虹。
その空の下、照れくさい気になる細いネコ。そんな寒さに震える細いネコをふっさふさの毛並みで暖めてくれているのは
…紛れも無くサン先生だ。そんなサン先生は背中を見せながら、わたしに労いの言葉をかけてくれたのだ。
「ふう…悪いが…わたしなんだか疲れて…」
「ははっ、先生もネコなんですね。お昼寝がお仕事のようなものでしょ?」
「うるさい、サン!」
「ははっ」
いつの間にか戸棚からコーヒーカップを取り出し、あっつあつのコーヒーをわたしに勧めるサン先生、
その優しさにいたく感激しながら、わたしのメガネを湯気で曇らせる。ハンカチでメガネを拭くと、視界が開ける。
その晴れ渡ったメガネの視界から、コーヒーカップを持っているサン先生のメガネも、わたしと同じく曇らせているのが見えた。
……誰だ。こんなマンガ描いたのは。しかもわたしのデスクの上に、おもてにして置いていったヤツは。しかも絵が上手い。
どうして、わたしがサン先生の助けでコレッタの怪我の世話をしてやっているんだ。かすり傷ぐらい、自分で治療できるぞ。
『サン先生、大変申し訳ございませんでした』って、台詞。言うもんか、こんなこと。
犯人は分かっている。これ以上はもう言わない。証拠がベッドに残っている。このイヌの毛は…サン先生だ。
今度会ったら説教だ。そして…マンガの中とは言え、わたしのコーヒーを勝手に飲むな。
おしまい。
関連:[[白先生>スレ>>122 白先生と]] [[サン・スーシ先生>スレ>>956 「ぼくのヴィジョンが爆発さ!」]] [[コレッタ>スレ>>164 体操服ブルマ]]
**スレ>>945-947 午後の保健室
午後の木漏れ日も優しく、窓からは秋だというのに暖かい日差しが舞い込んでくる。
きょうは一日静かだったな。保健室がこんなに大人しい日は久しぶり。外から生徒たちの声が聞こえてくる。
カチッカチッと秒針は一日の終わりを迎え入れようとしている。それにしても眠いな。本当に眠い。
髪を掻き揚げ、わたしはデスクに肘付いてため息。保健室独特のクスリの匂いもわたしにとっては落ち着く香り。
この白衣だっていちばんのお気に入り。この服さえ着ていれば、どんな怪我でも治してしまう自信さえ出てくる。
大事なのは身体で感じる事、感性って物は不思議だ。ネコであるわたしは感性のまま、生きるのがベストなのか。
今まで教師になる為に、勉強してきた『理屈』って物を全てぶっ壊してしまえと言うのか、と最近ふと思う。
ほかのネコたちはこの時間、時の流れを感じるまま居眠りでもしているのだろうに。それにしても、眠い。
しかし、無自覚な扉はわたしの睡魔を追い払ってくれる。仕事だぞ、シロ。
「シロせんせいー。痛いニャー」
コレッタが膝をかばいながら保健室にやって来る。学校中を走ってばかりいるから、転んだりするんだ。
そう、優しく諭しながら丸椅子に座らせ、痛くないとコレッタを安心さながら消毒薬を棚から取り出そうとする、が。
…わからない。どれだろう…。いつも使っているはずだぞ、いつもの消毒薬。考えれば考えるほど、分からない。
後ろではぐずりながら膝を手で押さえて、必死に痛みを堪えるコレッタ。その子を苦しみから解き放つクスリを扱えるのは
わたしなんだぞ。なのに、わからない。棚のガラスに映るわたしの困り果てた顔は呆れるぐらい情けなかった。
「せんせい…、ぐすん…」
どうする、シロ。正念場だ。子ネコが泣いている。困った顔は見せられない。カチッカチッと秒針は責め立てる。
再び入り口が開く音がわたしのネコミミに入ってくる。小さな影が入って来た気がする。誰だ、わたしの背中を叩くヤツは。
もしかして、その手でわたしの誇りである白衣を破りにやって来たのか。言っておくけど、今、わたしは非力だ。
土砂降りの中一人木陰に取り残された、ずぶ濡れの細いネコだ。ここから一歩も動けないなんて、きみが見たら笑ってしまうだろう。
「ぼくに任せてください!シロ先生!!」
聞き覚えのある大きな声。もしかして、わたしに傘を差し伸べてきてくれたのか。きみはわたしが知っているヤツのはず。
後ろは怖くて振り向けない。わたしはきみを信じていいのか。その傘の持ち主は見覚えのある顔。
小さな身体で学校中を駆け回る、サン・スーシ先生。
「ほら…右から三番目の瓶ですよ。ほら!」
「ええ?」
「それです!それ!今度はピンセットにガーゼを用意しなきゃ!」
「え、えっとお…どれだったかな」
消毒薬片手にまごつくわたしに、テキパキと保健室の勝手を知っているかのように指示を出すサン先生。
サン先生の指示を受ける度に、だんだんと少しずつ何かを思い出していった。大切なのは感じる事なのだろうか。
「えっと、次は…そうだ!ガーゼで患部を…」
「いててててて!!!!痛いニャー!」
「そうです!そうです!さすがシロ先生は上手いなあ」
染みる消毒に声を張り上げるコレッタの姿に不安を感じたが、そんなものサン先生の声で吹き飛んだ気がする。
―――治療も無事に終わり、絆創膏を貼ったコレッタはぐすんと泣きながら保健室を後にした。
「あの…サン先生」
「ん?」
「大変申し訳ございませんでした」
わたしは謝った。頭をブンと下げて感謝の意味を示す。そしてわたしの不甲斐なさをサン先生に見せてしまったわたしを
サン先生はどのように思っているのだろうか。鼻でせせら笑ってもかまわない、侮蔑の目で見下げてもかまわない。先生、答えは…なんですか。
「シロ先生、格好よかったですよ」
何でもない、短い言葉にわたしは救われた気がする。土砂降りはいつの間にか上がり、外は青い空に美しい虹。
その空の下、照れくさい気になる細いネコ。そんな寒さに震える細いネコをふっさふさの毛並みで暖めてくれているのは
…紛れも無くサン先生だ。そんなサン先生は背中を見せながら、わたしに労いの言葉をかけてくれたのだ。
「ふう…悪いが…わたしなんだか疲れて…」
「ははっ、先生もネコなんですね。お昼寝がお仕事のようなものでしょ?」
「うるさい、サン!」
「ははっ」
いつの間にか戸棚からコーヒーカップを取り出し、あっつあつのコーヒーをわたしに勧めるサン先生、
その優しさにいたく感激しながら、わたしのメガネを湯気で曇らせる。ハンカチでメガネを拭くと、視界が開ける。
その晴れ渡ったメガネの視界から、コーヒーカップを持っているサン先生のメガネも、わたしと同じく曇らせているのが見えた。
……誰だ。こんなマンガ描いたのは。しかもわたしのデスクの上に、おもてにして置いていったヤツは。しかも絵が上手い。
どうして、わたしがサン先生の助けでコレッタの怪我の世話をしてやっているんだ。かすり傷ぐらい、自分で治療できるぞ。
『サン先生、大変申し訳ございませんでした』って、台詞。言うもんか、こんなこと。
犯人は分かっている。これ以上はもう言わない。証拠がベッドに残っている。このイヌの毛は…サン先生だ。
今度会ったら説教だ。そして…マンガの中とは言え、わたしのコーヒーを勝手に飲むな。
おしまい。
関連:[[白先生>スレ>>122 白先生と]] [[サンスーシ先生>スレ>>956 「ぼくのヴィジョンが爆発さ!」]] [[コレッタ>スレ>>164 体操服ブルマ]]
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