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「血に洗われて眠る星のルガール -THE KING OF FIGHTERS-」(2009/09/26 (土) 20:57:52) の最新版変更点
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*血に洗われて眠る星のルガール -THE KING OF FIGHTERS- ◆F.EmGSxYug
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草原の上に、太陽が昇りつつある。
例え殺し合いの場であろうと、日光は平和に、平等に人々の上に降り注ぐ。
だが……日光が照らしているものの一つ、
デパートの中で吸血鬼が大惨事を起こしているのは外の人間には知る由もない。
宇宙そのものを破壊しつくす、悪魔でさえも。
「どういうことだァ……これは?」
F-3の草原に降り立ったブロリーが、呟きながら立ち尽くす。
元々ブロリーは頭のいいほうではないし、瞬間移動という概念も無い。
ブロリーのスピードならば、普通に移動しただけで瞬間移動するように相手は見える。
宇宙空間ですら生身で移動できる彼にとって、ワープなどという事象は未経験だった。
ましてや相手を無理やりテレポートさせるような道具など、想像の範疇外である。
ただ分かるのは、獲物に逃げられたということ。
「……チッ」
舌打ちをしながら、首を動かす。周囲に人影は見当たらない。
その姿はとうの昔にスーパーサイヤ人でなくなっていた。
ブロリーの実力ならば、一日中スーパーサイヤ人の状態を保つことも可能だ。
それが戻っているのは、戦闘を強制終了され興冷めしたから。
川に下りて水を舐める。塩辛くは無い。つまり、淡水。
ならば、EかFのどこかであるとはブロリーにも見当が付いた。
様々な惑星を旅した身分だ、それくらいの知能はある。逆に言えば、そこまでだが。
「もう終わりか……」
戦いが強制終了したことで、更にブロリーの苛立ちは募る。
その視界にあるのはすぐ側にある建物、デパート。
いっそあの建造物を破壊しつくそうか――
そうブロリーが思考しかけた矢先。
「む?」
その視界の端に、ふと何かが移る。動くものが。
それがあったのは、川。当然、彼の興味はそこへと移る。
そう。時間帯にして、デパート内部でフランドールが暴れている頃は。
その時間帯は、ルガールが川に流されている頃でもあった。
「……クククッ」
ブロリーはニヤリと邪悪な笑みを浮かべ、歩き出す。
幸運だったのは、デパートの中にいた者達。
彼らが外に出る前に、ブロリーは興味を失ってその場を離れていたのだから。
不幸だったのは――ブロリーの興味を引き、追跡されることになったルガールである。
■
「しゅーぞーさんは無事なのかな……」
「……待ちたまえ」
ルガールが、突如警戒を顕にして荷物を置く。
美希が呟くと同時に、遠くで何かが震えたような音が響いたのだ。
距離の関係上、河のせせらぎと変わらない程度の音量ではあったが……
それはルガールの警戒レベルを一気に最大まで押し上げて余りあるものだった。
「どうしたの?」
まだ疑問符を浮かべたままの美希に、ルガールは答えない。その表情は真剣そのもの。
感覚を最大限に引き締めたルガールの耳に、
ブロリーの足音が響き始めるのはそう時間が掛からなかった。
そして、二人の目の前にブロリーが姿を現すのも。
ルガールから数十メートルほどの所まで来たところで、ブロリーの足が止まる。
その表情にあるのは、露骨な戦意……いや、殺意だった。
ブロリーが危険人物だとはルガールには言葉を交わすまでもなく分かることだったが、
それでも念のために声を掛けた。
「……先ほどの音の主は君かね。
ただ動くだけで騒音問題とは、運送した時はどうなるか気になる所ではあるな」
『……気をつけろ。こいつはただの人間ではない』
「見れば分かる……!」
ディムロスの言葉に、そう返すルガール。
あらゆる格闘技と運送技に精通する彼にとって、相手の資質を見抜くことなど容易い。
勝てるかどうかは、別問題だが。
「私の名前はルガール・バーンシュタイン。運送会社の社長を務めている。
よろしければ、君の名前もお聞かせ願いたいな」
「ブロリー、です……」
「こんにちは~。
私は美希って言って、アイドルを……」
「……下がりたまえ、美希君」
「え?」
自分も自己紹介をしようと前に出た美希を、ルガールの腕が制止する。
同時にブロリーとルガールの視線が交錯した、刹那。
「フン!」
「烈風拳!」
一気に突進を開始した剛体へ、地を這う気弾が衝突する。
だが、ブロリーは微動だにしない。突進が止まるどころか、減速すらしない。
(烈風拳で怯みすらしないとは……だが!)
相手の頑丈さに流石のルガールと言えども驚いたが、既に次弾は撃ってある。
烈風拳が巻き起こした土煙の中を変わらず突進するブロリーの身体に、
続いて放たれていた宙を飛ぶ気弾、カイザーウェイブが着弾した。
更に煙が舞い上がる。依然ブロリーは止まらない。
だが視界が隠されたその隙に、既にルガールが猛進している――!
「――運送!」
「ヌァッ!?」
ブロリーの巨体が一瞬にして動いた。首に叩き込まれたルガールの腕によって。
吹き飛ばされたのではない。文字通り、「運ばれた」のだ。
ラリアットをぶつけた相手を放さず、そのまま一気に叩きつける。
これぞルガール運送の代表技、ゴッドプレス――!
……だが、素人である美希でさえ、明らかな異常に気付いた。
運送していたルガールが止まる。まるで押し負けたかのように、その勢いが消える。
その表情が苦痛に歪んでいるのは……ブロリーではなく、ルガール。
「ルガールさん!?」
「美希君、私の荷物を持ってここから離れたまえ……
どうやらこの男は、荷物を捨ててもなお容易く運ばせてくれないようだ」
ルガールの顔に、汗が滲む。
その腕は、ブロリーの顔に当たってはいない――
ブロリーの手が、その寸前でルガールの腕を握り締めていたのだ。
故に、ゴッドプレスは止められた。ブロリーの豪力によって。
そしてその圧力に、ぎちぎちとルガールの骨が悲鳴を上げている。
いかにルガールといえど、涼しい顔をしていられる状態ではない。
「早く行きたまえ!」
「は、はい!」
慌てて走り出す美希。
それを目で追いながら、ブロリーがにやりと笑う。
「他人の心配をする前に自分の身を心配したらどうだ……?」
「言ってくれる!」
ルガールの脚が垂直に蹴り上がる。過たず、それはブロリーの顎にヒットした。
だが、その身体は揺るぎもしない。
「その程度で……」
「――ハッ!」
瞬間、上がりきった脚が今度は振り下ろされた。
まるで重力ごと上下反転したような踵落としが、脳天に突き刺さる。
これは予想外だったのか、さしものブロリーも怯む。
その隙にルガールは拘束から逃れ、距離を取っていた。
「どうした? 辛そうだぞ……」
「ふん。
その言葉、そっくりそのまま返させて貰おう――カイザーフェニックス!!」
言葉と同時にルガールは両腕を広げ、構える。
そして前方に腕を突き出すと共に撃ち出される無数の気弾……!
次々と着弾する。場が土煙に覆われる。
数秒後経っても、ルガールは撃つ手を緩めず、ブロリーもまた煙から出てこない。
――少しは効いたか?
そう、ルガールは思考しかけ。
「クククッ!!!」
そして、それは正解ではないと思い知らされた。
スーパーサイヤ人にすらなっていないブロリーが、
口から流れた血を舐めつつ煙の中から現れる。先ほどとは完全に逆の立場。
それに反応する余裕はない。かろうじて、出てきたのが視認できただけ。
煙でルガールの視界が潰れていた隙に、ブロリーは最高速に達していた。
巨腕がルガールに直撃し……直後、ルガールの背中に衝撃が走る。
最高速で飛行したブロリーが、坂までルガールを運送していた。
その威力たるや、まるで隕石が落ちてきたようなクレーターが出来るほど。
無論、中心部にある隕石はルガールである。しかし。
「ほぉ……?」
ブロリーの腕もまた、直撃していない。ルガールの腕に止められていた。
……そう、立場は完全に逆だ。運送が止められることまで、含めて。
スーパーサイヤ人にすらなっていない上、
何重にも制限が掛かっているブロリーの攻撃を止められないほどルガールは弱くはない。
「レディは丁重にもてなすのがマナーというもの……
君のように粗野なだけの運送は見逃すわけには、いかん……!」
「時間稼ぎか。そうかそうか……
ちゃんとアイツが逃げ切れるといいなァ……?」
そう呟いて、ブロリーはルガールから離れる。
そのままクレーターから抜け出す暇も与えずに、気弾を一つルガールへ向けて放つ。
とっさにガードを固めるルガール。だが、気弾は、その目前で止まった。
「な……?」
ルガールが疑問に思った瞬間、その気弾は反転して宙を舞う。
思わず目でその動きを追い……先にあるものに、思わず息を詰まらせた。
気弾が新たな目標として追跡しているのは……橋を渡っている最中の、美希。
「いかん、美希君、逃げ……!!」
叫ぼうと、もう遅い。
過たず橋に着弾した気弾は爆発する。そこに情はなく、隙もなく。
……まるで埃を払うかのように、美希を上空へと吹き飛ばしていった。
「ククク、ハハハハハハ、ハーハッハッハッハ!!!」
高笑いを始めるブロリー。
ブロリーはただ相手を殺すことをよしとしない。一撃で即死させず手加減していたぶり、
或いは相手ではなく大事なものを狙い、目の前で奪い去る。
故に悪魔。全宇宙を殲滅しつくす、悪魔の権化である。
「……そうか、君の性分はよく分かった」
それを目の前にして、ルガールは静かに立ち上がった。
非戦闘員を安全な場所に逃がすというのも、ある意味「運ぶ」という事象だ。
しかし、ブロリーの気弾によって美希は吹き飛ばされ、空へと運ばれた。
どちらも運送と取れなくも無い……
だが、荷物を粗雑に扱う運送などルガールが認めるはずも無い。
「――ならば、こちらもそれ相応の運送でやらせて貰おう!」
そう叫ぶと同時に服の一部が弾け飛び、金色の髪が銀色に染まる。
引きちぎった眼帯から現れるは、赤く染まった眼。
……殺意の波動と暗黒パワーの両方を全開にした状態。
人は今の彼の姿をこう呼ぶ――ゴッド・ルガールと。
それに只ならぬものを感じたか、ブロリーは笑いを止め。
「ンンンンンンゥ……
ハァァァアアアアアアアア!!!
金色の閃光が走る。ブロリーにもまた、変化が訪れる。
黒色の髪は金色に逆立ち、その身に纏うは黄金の炎。
……戦闘力が通常の50倍まで上昇する、スーパーサイヤ人の姿。
ブロリーは破壊衝動のままに宙へ飛び上がり、敵目掛けて急降下を開始する。
自分以上の変化を見ても、ルガールは冷静だった。
降りてくる――否、落ちてくる相手へ跳び上がり、足を振り上げる!
「ジェノサイドカッ!!!」
その脚は華麗な円を描く。まるで吸い込まれるように、ブロリーの額に打ち込まれる。
だが……ブロリーは怯むどころか、それを受けて寧ろ笑みさえ浮かべていた。
「ぬあっ!?」
ブロリーの拳が、ルガールに直撃する。
吹き飛ばされ地面に倒れこむ相手の頭を、更に容赦なく掴み叩きつける。
割れた。ルガールの頭ではなく、コンクリートで補強された川岸が。
そのまま地面ごと水へと叩き込もうとする直前、ルガールが消えた。
「はっはァ!」
「ヌゥ!?」
いつの間にかブロリーの背後に回りこんだルガールが、首へと回し蹴りを叩き込む。
ゴッドレーン。阿修羅閃空と対を成す、殺意の波動による移動術。
だが。必殺の意図で放った蹴りは、傷一つさえも負わすことができていなかった。
「ちぃっ……がッ!?」
蹴りの勢いを残したまま、右拳を叩き込もうとするルガール。
しかし、その腹部に強烈な裏拳がカウンターでめり込んでいた。
まるでボールのように吹き飛ばされ、川岸に叩きつけられる。
それも美希が渡る予定だった向かい側の岸まで、放物線すら描かずに。
「その程度のパワーアップで、この俺を倒せると思っていたのか?」
ブロリーは、追わない。土煙の中出てこない相手を視認しようとしない。
そのまま、埋もれたままのルガール目掛けて緑色の弾を放ち――
それはそっくりそのまま、ブロリー目掛けて返ってきた。
「ヌゥ!?」
とっさに両腕で受け止めると同時に、土煙の中からルガールが現れる。
その周囲を覆っているのはダークバリア。飛び道具を反射する防護壁。
飛び道具である限り、このバリアの前に反射されるという理を覆すことは出来ない。
「チ、厄介なものを……」
舌打ちをしながらも、川を跳び越してルガールへ迫るブロリー。
その首に、再びルガールのラリアットが直撃した。
前回と違うのはガードされていないこと、そして勢いが段違いであること。
勢いのままルガールは荷物ごと川を跳び越し……対岸へと相手を運送する!
「ぬぁぁぁああああああ!」
烈昂の気合いと共に、ルガールは元いた北側の岸へブロリーを叩きつけた。
ただ相手を坂にぶつけるだけでは飽きたらず、同時に暗黒パワーが迸る。
巨大な爆発と共に坂が崩れ、その中にブロリーもまた埋もれていく。
ギガンティックプレッシャー。
ルガールの誇る運送の極致が、伝説のスーパーサイヤ人を地中へと運送した。
「……ぐ……力を使いすぎたか……」
頭を抑えよろめきながらも、なんとか後退するルガール。
暗黒パワーと殺意の波動、その両方を顕在化させた今の状態は極めて不安定なものだ。
攻めているうちはいいが、一度戦闘不能に追い込まれればそれで終わり。
致命傷を追っていなくとも、自分の過剰な力に飲み込まれ死ぬ。
疑うまでも無くルガールは消耗している。だが、休もうと膝を折るわけにもいかない。
太陽がしっかり身体を照らしているというのに。
まるで殺気を当てられているがごとく寒さを感じるというのはどういうことか。
「……ここまで来ると逆に興味深いものだ」
しばらく後、予想通りの物を見ると同時にルガールは吐き捨てた。
目に映っているものは言うまでもない。崩れ落ちた土砂の中から姿を現した、ブロリーだ。
その姿は、一筋頭から血が流れているだけで……傷は見えない。
「少々しつこすぎるな、君は」
息を荒げながら、呟く。
流石のルガールと言えども、辟易せずにはいられない頑丈さ。
だが諦めるわけにはいかない。賭け金は、自分の命だけではないのだから。
■
「い、いったーい……」
美希は生きていた。地面に倒れこんでいるが、大した怪我は無い。
理由は二つ。
ゴムゴムの身の能力と、美希を攻撃したときのブロリーがスーパーサイヤ人でなかったこと。
彼女は空へと吹き飛ばされ、勢いがなくなると共に今度は地上に落ちたが……
単純な上昇・及び落下ならあくまで打撃。ゴムゆとりである今の美希なら耐えられる。
もちろんゴムにも伸びる限界がある以上、吸収しきれる打撃に限度はある。
その点は、ブロリーがスーパーサイヤ人状態でなかったことに助けられた。
もっとも尖った小石による擦り傷などは、さすがに耐えられないが。
それでも、痛みを堪えて美希は立ち上がる。
今彼女がいるのは、F-4とF-5の境界上。
あの土煙の中でルガールが美希の無事を確認できたことは偶然だった。
自分から姿を現し対岸へ運送したのも、ブロリーの注意を自分へと向けるためである。
そんなことは美希には分からないし、助けられたことさえ分かっていない。
分かっていないが、とりあえず自分がこの場にいてはルガールの邪魔になることは分かった。
だから走る。逃げるのではなく、ルガールを助けようと。
「しゅーぞーさんでも誰でもいいから……早く……!」
誰か、戦える人を連れて来るために。
【F-4とF-5境界線上 /1日目・昼】
【星井美希@THE IDOLM@STER】
[状態]:ゴムゆとり、全身に擦り傷、疲労により熱血沈静化
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×3、モンスターボール(おにぽん)@いかなるバグにも動じずポケモン赤を実況、
新型萌えもんパッチ@ポケットモンスターで擬人化してみた、ねるねるね3種セット@ねるねるね、
ディムロス@テイルズオブデスティニー、不明支給品*0~2(武器はない)
[思考・状況]
1.人は殺したくないの。
2.雪歩を探すの。
3.誰かルガールさんを助けてくれる人を探すの。
4.ゲームに乗らず、人を殺さずゲームを終わらせるために、首輪を外すの。
5.レッドさんの言うこともわかるの。悪い人とあったら説得できるの?
6.しゅーぞーさんが絶対に来てくれる事を信じるの。
7.でぃおさんに謝ってもらうの。もし襲ってきたら……
8.ルガールさんは良い人なの。ディムロスさんは剣なの。
9.水は怖かったの。
※ゴムゴムの実@ワンピースを食べました。能力者になったことに少し気がつきました。
※サンレッドをヒーロー役の俳優だと思っています
※ルガール、ディムロスと情報交換しました。
■
巨腕が振るわれる。掠めるだけで並みの人間は死ぬそれを、ルガールは掻い潜る。
ブロリーの攻撃は何の技術も無い。素人がただ適当に腕を振っているのと変わらない。
――ただ、その速度がとんでもないものである、ということを除けば。
ブロリーは何一つ技術と言うものを知らないし、知る必要も無かったのだろう。
生まれ持ったものだけで、ブロリーは星を破壊できるのだから。
故に、ルガールがブロリーに勝るのはたったの二つ……技術と知識だけであり、
それがこの闘いにおける、か細い命綱だった。
懐に潜り込んだルガールの左腕が、ブロリーの首に叩き込まれる。
もう何十と繰り返したのに、ブロリーは意に介していない。
それどころか、ルガールの方が疲労で速度が鈍化し、後退が遅れている始末。
――左拳を、掴まれた。
「ぐ……あ!」
苦悶の声が漏れる。
ブロリーが手を握ると共に、その中にあったもの……ルガールの左拳が握り潰された。
それでも痛みを堪え、左手をぐちゃぐちゃにしながら後退する。
……理不尽極まりない勝負だ。
ルガールはいくら殴ろうとブロリーに傷を負わせられず、
逆にブロリーの一撃は甚大なダメージを負わせる。
これを理不尽と呼ばずなんと呼ぼう。
もちろん相手は腹部が弱点な事くらい、とうの昔にルガールにも分かっている。
だがブロリーは、腹部を意識してガードしている。それを掻い潜るのは容易ではない。
もちろん、ゴッドレーンで背後に回ることはできる。
できるが、そこから腹部を狙うのは位置的に無理だ。
(……すまんな、息子よ。この腕ではもう運送は引退のようだ。しかし!!!)
だからこそ、狙いは首。或いは首に巻かれたモノ。
元々自分の肉体の頑強さに任せ、ガードをしないのがブロリーの性分。
更に腹部を意識しているため他の部分はがら空きになっている。
(首輪を付けている以上は、これを爆発させれば殺せるはず!)
美希を逃がした後、ルガールは執拗にブロリーの首を狙っていた。
それも、左側の一点。同じ地点に、何度も何度も寸分違わず……
そう、文字通り一寸のズレもなく衝撃を与え続けてきたのだ。
恐らく、首、あるいは首に巻かれたモノの負荷は相当なものになっているはず。
その負荷を顕在化させる一撃を叩き込むべく、ルガールは突進を開始する。
「無駄なことを……今楽にしてやる……!」
右腕が、風より早く追ってくる。
それを寸前で避けて、ルガールは右へと走った。ブロリーはそれに反応できない。
今までルガールは左に動き続けたが故に、そちらに目を慣らされている。
懐に潜り込んで放つはラストジャッジメント。
左拳を失った故に連打数は落ちているが、構わない。
一足速く自分の腹へと守っているブロリーの左腕も、構わない。
それらを無視し、全ての打撃を右首に撃ち込む。
その位置は、今まで打ち込んだ一点の正反対側。
衝撃は散々撃ち込んできた左側へと伝わり――累積したダメージが首を砕く。
あるいは首に巻かれたモノの耐久力が限界に達し、爆発する。
その、はずだった。
ブロリーの首から、血が流れ始める。
その首に巻かれたモノにヒビが入り始める。
だが――それだけだ。
「キサマァ……!」
砕けたのは、ルガールの甘い予想。
首が砕けているのなら、残っているのなら……声など出せるはずが無い。
(首は折れず、爆発もしない……か……)
冷えこんだ思考でそう呟いたルガールの身体に、蹴りが叩き込まれる。
それで肋骨どころか、胃が粉々になった。血が逆流して吐き出される。
更に倒れこむその顔を掴み、その身体を持ち上げるブロリー。
思わず、ルガールは笑った。あまりもの力量差に、笑うしかなかった。
同時に――零距離でブロリーの気弾を撃ち込まれた体が、爆発した。
■
ルガールは知らない。ブロリーの首に巻かれたモノは首輪ではないことに。
ブロリーの首輪にあたるものは、心臓に取り付けられている。
首に巻かれていたのはリミッター。それが損傷したのだ。
万全な状態ならばともかく、損傷した状態でいつまで無事にブロリーを抑えられるか。
リミッターは常時、ブロリーの強大な気の奔流に晒されているのだ。
もし耐え切れず砕け散れば、それはブロリーの制限が一つ減るということを意味する。
もっとも、ブロリー自身もそんなことには気付いていないが。
「……ハ、アアアアアアア」
傷ついた首を抑え、苦しげに息を吐き出すブロリー。
ルガールの攻撃は致命傷に至らないとは言え、ダメージとしては十分だったのだ。
ブロリーに四重の制限が掛かっているとは言え、
一対一でダメージを与えられただけでもルガールは賞賛に値する。
彼が与えた衝撃は、首を砕くには至らずともしっかりと累積していたのだ。
自らに走る痛みに、ギリ、とブロリーは歯をかみ締める。
「舐めた真似を……
いいだろう、あの女もすぐに貴様の所へ送ってやる……!」
轟音を響き渡らせて、ブロリーはその場を飛び去った。目指す先は、当然南。
……そう。ブロリーもまた、美希が無事だったことを確認していたのだ。
ただしこの場合は偶然ではなく必然。
遠くの星に気弾を撃ち込むブロリーの視力は、半端なものではないのだから。
沈んだ神が行った行為は、悪魔を倒す一助となるのか。
或いは、神の死を糧として悪魔は更に拘束を引きちぎるのか。
それはまだ、誰にも分からない。
【F-4 橋 /1日目・昼】
【ブロリー@ドラゴンボールZ】
【状態】疲労(中)、全身に軽い怪我、右足首骨折 、腹に深刻なダメージ、
首にダメージ(中)
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品1~3
【思考・状況】
[基本思考]全てを破壊しつくすだけだぁ!
1:ルガールへの怒りが収まらないので、美希を殺す。
2:腹の攻撃を極力避ける。
※腹への攻撃に対して対処出来る様になりました。
※首のリミッターが小破しました。今後、壊れる可能性があります。
&color(red){【ルガール・バーンシュタイン@MUGEN 死亡】 }
|sm129:[[言葉にするのなら 「ロクデナシ」]]|[[時系列順>第二回放送までの本編SS]]|sm132:[[エチゼンとバンパイア]]|
|sm130:[[Chain of Memories]]|[[投下順>101~150]]|sm132:[[エチゼンとバンパイア]]|
|sm121:[[惨劇起きてすぐ覚醒~狂気の最終鬼畜オヤシロ様(後編)]]|星井美希|sm156:[[Legendary Crisis!!]]|
|sm119:[[トキが危険を修正するようです]]|ブロリー|sm156:[[Legendary Crisis!!]]|
|sm121:[[惨劇起きてすぐ覚醒~狂気の最終鬼畜オヤシロ様(後編)]]|&color(red){ルガール・バーンシュタイン}|&color(red){死亡}|
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*血に洗われて眠る星のルガール -THE KING OF FIGHTERS- ◆F.EmGSxYug
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#aa(){草原の上に、太陽が昇りつつある。
例え殺し合いの場であろうと、日光は平和に、平等に人々の上に降り注ぐ。
だが……日光が照らしているものの一つ、
デパートの中で吸血鬼が大惨事を起こしているのは外の人間には知る由もない。
宇宙そのものを破壊しつくす、悪魔でさえも。
「どういうことだァ……これは?」
F-3の草原に降り立ったブロリーが、呟きながら立ち尽くす。
元々ブロリーは頭のいいほうではないし、瞬間移動という概念も無い。
ブロリーのスピードならば、普通に移動しただけで瞬間移動するように相手は見える。
宇宙空間ですら生身で移動できる彼にとって、ワープなどという事象は未経験だった。
ましてや相手を無理やりテレポートさせるような道具など、想像の範疇外である。
ただ分かるのは、獲物に逃げられたということ。
「……チッ」
舌打ちをしながら、首を動かす。周囲に人影は見当たらない。
その姿はとうの昔にスーパーサイヤ人でなくなっていた。
ブロリーの実力ならば、一日中スーパーサイヤ人の状態を保つことも可能だ。
それが戻っているのは、戦闘を強制終了され興冷めしたから。
川に下りて水を舐める。塩辛くは無い。つまり、淡水。
ならば、EかFのどこかであるとはブロリーにも見当が付いた。
様々な惑星を旅した身分だ、それくらいの知能はある。逆に言えば、そこまでだが。
「もう終わりか……」
戦いが強制終了したことで、更にブロリーの苛立ちは募る。
その視界にあるのはすぐ側にある建物、デパート。
いっそあの建造物を破壊しつくそうか――
そうブロリーが思考しかけた矢先。
「む?」
その視界の端に、ふと何かが移る。動くものが。
それがあったのは、川。当然、彼の興味はそこへと移る。
そう。時間帯にして、デパート内部でフランドールが暴れている頃は。
その時間帯は、ルガールが川に流されている頃でもあった。
「……クククッ」
ブロリーはニヤリと邪悪な笑みを浮かべ、歩き出す。
幸運だったのは、デパートの中にいた者達。
彼らが外に出る前に、ブロリーは興味を失ってその場を離れていたのだから。
不幸だったのは――ブロリーの興味を引き、追跡されることになったルガールである。
■
「しゅーぞーさんは無事なのかな……」
「……待ちたまえ」
ルガールが、突如警戒を顕にして荷物を置く。
美希が呟くと同時に、遠くで何かが震えたような音が響いたのだ。
距離の関係上、河のせせらぎと変わらない程度の音量ではあったが……
それはルガールの警戒レベルを一気に最大まで押し上げて余りあるものだった。
「どうしたの?」
まだ疑問符を浮かべたままの美希に、ルガールは答えない。その表情は真剣そのもの。
感覚を最大限に引き締めたルガールの耳に、
ブロリーの足音が響き始めるのはそう時間が掛からなかった。
そして、二人の目の前にブロリーが姿を現すのも。
ルガールから数十メートルほどの所まで来たところで、ブロリーの足が止まる。
その表情にあるのは、露骨な戦意……いや、殺意だった。
ブロリーが危険人物だとはルガールには言葉を交わすまでもなく分かることだったが、
それでも念のために声を掛けた。
「……先ほどの音の主は君かね。
ただ動くだけで騒音問題とは、運送した時はどうなるか気になる所ではあるな」
『……気をつけろ。こいつはただの人間ではない』
「見れば分かる……!」
ディムロスの言葉に、そう返すルガール。
あらゆる格闘技と運送技に精通する彼にとって、相手の資質を見抜くことなど容易い。
勝てるかどうかは、別問題だが。
「私の名前はルガール・バーンシュタイン。運送会社の社長を務めている。
よろしければ、君の名前もお聞かせ願いたいな」
「ブロリー、です……」
「こんにちは~。
私は美希って言って、アイドルを……」
「……下がりたまえ、美希君」
「え?」
自分も自己紹介をしようと前に出た美希を、ルガールの腕が制止する。
同時にブロリーとルガールの視線が交錯した、刹那。
「フン!」
「烈風拳!」
一気に突進を開始した剛体へ、地を這う気弾が衝突する。
だが、ブロリーは微動だにしない。突進が止まるどころか、減速すらしない。
(烈風拳で怯みすらしないとは……だが!)
相手の頑丈さに流石のルガールと言えども驚いたが、既に次弾は撃ってある。
烈風拳が巻き起こした土煙の中を変わらず突進するブロリーの身体に、
続いて放たれていた宙を飛ぶ気弾、カイザーウェイブが着弾した。
更に煙が舞い上がる。依然ブロリーは止まらない。
だが視界が隠されたその隙に、既にルガールが猛進している――!
「――運送!」
「ヌァッ!?」
ブロリーの巨体が一瞬にして動いた。首に叩き込まれたルガールの腕によって。
吹き飛ばされたのではない。文字通り、「運ばれた」のだ。
ラリアットをぶつけた相手を放さず、そのまま一気に叩きつける。
これぞルガール運送の代表技、ゴッドプレス――!
……だが、素人である美希でさえ、明らかな異常に気付いた。
運送していたルガールが止まる。まるで押し負けたかのように、その勢いが消える。
その表情が苦痛に歪んでいるのは……ブロリーではなく、ルガール。
「ルガールさん!?」
「美希君、私の荷物を持ってここから離れたまえ……
どうやらこの男は、荷物を捨ててもなお容易く運ばせてくれないようだ」
ルガールの顔に、汗が滲む。
その腕は、ブロリーの顔に当たってはいない――
ブロリーの手が、その寸前でルガールの腕を握り締めていたのだ。
故に、ゴッドプレスは止められた。ブロリーの豪力によって。
そしてその圧力に、ぎちぎちとルガールの骨が悲鳴を上げている。
いかにルガールといえど、涼しい顔をしていられる状態ではない。
「早く行きたまえ!」
「は、はい!」
慌てて走り出す美希。
それを目で追いながら、ブロリーがにやりと笑う。
「他人の心配をする前に自分の身を心配したらどうだ……?」
「言ってくれる!」
ルガールの脚が垂直に蹴り上がる。過たず、それはブロリーの顎にヒットした。
だが、その身体は揺るぎもしない。
「その程度で……」
「――ハッ!」
瞬間、上がりきった脚が今度は振り下ろされた。
まるで重力ごと上下反転したような踵落としが、脳天に突き刺さる。
これは予想外だったのか、さしものブロリーも怯む。
その隙にルガールは拘束から逃れ、距離を取っていた。
「どうした? 辛そうだぞ……」
「ふん。
その言葉、そっくりそのまま返させて貰おう――カイザーフェニックス!!」
言葉と同時にルガールは両腕を広げ、構える。
そして前方に腕を突き出すと共に撃ち出される無数の気弾……!
次々と着弾する。場が土煙に覆われる。
数秒後経っても、ルガールは撃つ手を緩めず、ブロリーもまた煙から出てこない。
――少しは効いたか?
そう、ルガールは思考しかけ。
「クククッ!!!」
そして、それは正解ではないと思い知らされた。
スーパーサイヤ人にすらなっていないブロリーが、
口から流れた血を舐めつつ煙の中から現れる。先ほどとは完全に逆の立場。
それに反応する余裕はない。かろうじて、出てきたのが視認できただけ。
煙でルガールの視界が潰れていた隙に、ブロリーは最高速に達していた。
巨腕がルガールに直撃し……直後、ルガールの背中に衝撃が走る。
最高速で飛行したブロリーが、坂までルガールを運送していた。
その威力たるや、まるで隕石が落ちてきたようなクレーターが出来るほど。
無論、中心部にある隕石はルガールである。しかし。
「ほぉ……?」
ブロリーの腕もまた、直撃していない。ルガールの腕に止められていた。
……そう、立場は完全に逆だ。運送が止められることまで、含めて。
スーパーサイヤ人にすらなっていない上、
何重にも制限が掛かっているブロリーの攻撃を止められないほどルガールは弱くはない。
「レディは丁重にもてなすのがマナーというもの……
君のように粗野なだけの運送は見逃すわけには、いかん……!」
「時間稼ぎか。そうかそうか……
ちゃんとアイツが逃げ切れるといいなァ……?」
そう呟いて、ブロリーはルガールから離れる。
そのままクレーターから抜け出す暇も与えずに、気弾を一つルガールへ向けて放つ。
とっさにガードを固めるルガール。だが、気弾は、その目前で止まった。
「な……?」
ルガールが疑問に思った瞬間、その気弾は反転して宙を舞う。
思わず目でその動きを追い……先にあるものに、思わず息を詰まらせた。
気弾が新たな目標として追跡しているのは……橋を渡っている最中の、美希。
「いかん、美希君、逃げ……!!」
叫ぼうと、もう遅い。
過たず橋に着弾した気弾は爆発する。そこに情はなく、隙もなく。
……まるで埃を払うかのように、美希を上空へと吹き飛ばしていった。
「ククク、ハハハハハハ、ハーハッハッハッハ!!!」
高笑いを始めるブロリー。
ブロリーはただ相手を殺すことをよしとしない。一撃で即死させず手加減していたぶり、
或いは相手ではなく大事なものを狙い、目の前で奪い去る。
故に悪魔。全宇宙を殲滅しつくす、悪魔の権化である。
「……そうか、君の性分はよく分かった」
それを目の前にして、ルガールは静かに立ち上がった。
非戦闘員を安全な場所に逃がすというのも、ある意味「運ぶ」という事象だ。
しかし、ブロリーの気弾によって美希は吹き飛ばされ、空へと運ばれた。
どちらも運送と取れなくも無い……
だが、荷物を粗雑に扱う運送などルガールが認めるはずも無い。
「――ならば、こちらもそれ相応の運送でやらせて貰おう!」
そう叫ぶと同時に服の一部が弾け飛び、金色の髪が銀色に染まる。
引きちぎった眼帯から現れるは、赤く染まった眼。
……殺意の波動と暗黒パワーの両方を全開にした状態。
人は今の彼の姿をこう呼ぶ――ゴッド・ルガールと。
それに只ならぬものを感じたか、ブロリーは笑いを止め。
「ンンンンンンゥ……
ハァァァアアアアアアアア!!!
金色の閃光が走る。ブロリーにもまた、変化が訪れる。
黒色の髪は金色に逆立ち、その身に纏うは黄金の炎。
……戦闘力が通常の50倍まで上昇する、スーパーサイヤ人の姿。
ブロリーは破壊衝動のままに宙へ飛び上がり、敵目掛けて急降下を開始する。
自分以上の変化を見ても、ルガールは冷静だった。
降りてくる――否、落ちてくる相手へ跳び上がり、足を振り上げる!
「ジェノサイドカッ!!!」
その脚は華麗な円を描く。まるで吸い込まれるように、ブロリーの額に打ち込まれる。
だが……ブロリーは怯むどころか、それを受けて寧ろ笑みさえ浮かべていた。
「ぬあっ!?」
ブロリーの拳が、ルガールに直撃する。
吹き飛ばされ地面に倒れこむ相手の頭を、更に容赦なく掴み叩きつける。
割れた。ルガールの頭ではなく、コンクリートで補強された川岸が。
そのまま地面ごと水へと叩き込もうとする直前、ルガールが消えた。
「はっはァ!」
「ヌゥ!?」
いつの間にかブロリーの背後に回りこんだルガールが、首へと回し蹴りを叩き込む。
ゴッドレーン。阿修羅閃空と対を成す、殺意の波動による移動術。
だが。必殺の意図で放った蹴りは、傷一つさえも負わすことができていなかった。
「ちぃっ……がッ!?」
蹴りの勢いを残したまま、右拳を叩き込もうとするルガール。
しかし、その腹部に強烈な裏拳がカウンターでめり込んでいた。
まるでボールのように吹き飛ばされ、川岸に叩きつけられる。
それも美希が渡る予定だった向かい側の岸まで、放物線すら描かずに。
「その程度のパワーアップで、この俺を倒せると思っていたのか?」
ブロリーは、追わない。土煙の中出てこない相手を視認しようとしない。
そのまま、埋もれたままのルガール目掛けて緑色の弾を放ち――
それはそっくりそのまま、ブロリー目掛けて返ってきた。
「ヌゥ!?」
とっさに両腕で受け止めると同時に、土煙の中からルガールが現れる。
その周囲を覆っているのはダークバリア。飛び道具を反射する防護壁。
飛び道具である限り、このバリアの前に反射されるという理を覆すことは出来ない。
「チ、厄介なものを……」
舌打ちをしながらも、川を跳び越してルガールへ迫るブロリー。
その首に、再びルガールのラリアットが直撃した。
前回と違うのはガードされていないこと、そして勢いが段違いであること。
勢いのままルガールは荷物ごと川を跳び越し……対岸へと相手を運送する!
「ぬぁぁぁああああああ!」
烈昂の気合いと共に、ルガールは元いた北側の岸へブロリーを叩きつけた。
ただ相手を坂にぶつけるだけでは飽きたらず、同時に暗黒パワーが迸る。
巨大な爆発と共に坂が崩れ、その中にブロリーもまた埋もれていく。
ギガンティックプレッシャー。
ルガールの誇る運送の極致が、伝説のスーパーサイヤ人を地中へと運送した。
「……ぐ……力を使いすぎたか……」
頭を抑えよろめきながらも、なんとか後退するルガール。
暗黒パワーと殺意の波動、その両方を顕在化させた今の状態は極めて不安定なものだ。
攻めているうちはいいが、一度戦闘不能に追い込まれればそれで終わり。
致命傷を追っていなくとも、自分の過剰な力に飲み込まれ死ぬ。
疑うまでも無くルガールは消耗している。だが、休もうと膝を折るわけにもいかない。
太陽がしっかり身体を照らしているというのに。
まるで殺気を当てられているがごとく寒さを感じるというのはどういうことか。
「……ここまで来ると逆に興味深いものだ」
しばらく後、予想通りの物を見ると同時にルガールは吐き捨てた。
目に映っているものは言うまでもない。崩れ落ちた土砂の中から姿を現した、ブロリーだ。
その姿は、一筋頭から血が流れているだけで……傷は見えない。
「少々しつこすぎるな、君は」
息を荒げながら、呟く。
流石のルガールと言えども、辟易せずにはいられない頑丈さ。
だが諦めるわけにはいかない。賭け金は、自分の命だけではないのだから。
■
「い、いったーい……」
美希は生きていた。地面に倒れこんでいるが、大した怪我は無い。
理由は二つ。
ゴムゴムの身の能力と、美希を攻撃したときのブロリーがスーパーサイヤ人でなかったこと。
彼女は空へと吹き飛ばされ、勢いがなくなると共に今度は地上に落ちたが……
単純な上昇・及び落下ならあくまで打撃。ゴムゆとりである今の美希なら耐えられる。
もちろんゴムにも伸びる限界がある以上、吸収しきれる打撃に限度はある。
その点は、ブロリーがスーパーサイヤ人状態でなかったことに助けられた。
もっとも尖った小石による擦り傷などは、さすがに耐えられないが。
それでも、痛みを堪えて美希は立ち上がる。}
今彼女がいるのは、F-4とF-5の境界上。
あの土煙の中でルガールが美希の無事を確認できたことは偶然だった。
自分から姿を現し対岸へ運送したのも、ブロリーの注意を自分へと向けるためである。
そんなことは美希には分からないし、助けられたことさえ分かっていない。
分かっていないが、とりあえず自分がこの場にいてはルガールの邪魔になることは分かった。
だから走る。逃げるのではなく、ルガールを助けようと。
#aa(){「しゅーぞーさんでも誰でもいいから……早く……!」}
誰か、戦える人を連れて来るために。
【F-4とF-5境界線上 /1日目・昼】
【星井美希@THE IDOLM@STER】
[状態]:ゴムゆとり、全身に擦り傷、疲労により熱血沈静化
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×3、モンスターボール(おにぽん)@いかなるバグにも動じずポケモン赤を実況、
新型萌えもんパッチ@ポケットモンスターで擬人化してみた、ねるねるね3種セット@ねるねるね、
ディムロス@テイルズオブデスティニー、不明支給品*0~2(武器はない)
[思考・状況]
1.人は殺したくないの。
2.雪歩を探すの。
3.誰かルガールさんを助けてくれる人を探すの。
4.ゲームに乗らず、人を殺さずゲームを終わらせるために、首輪を外すの。
5.レッドさんの言うこともわかるの。悪い人とあったら説得できるの?
6.しゅーぞーさんが絶対に来てくれる事を信じるの。
7.でぃおさんに謝ってもらうの。もし襲ってきたら……
8.ルガールさんは良い人なの。ディムロスさんは剣なの。
9.水は怖かったの。
※ゴムゴムの実@ワンピースを食べました。能力者になったことに少し気がつきました。
※サンレッドをヒーロー役の俳優だと思っています
※ルガール、ディムロスと情報交換しました。
■
#aa(){巨腕が振るわれる。掠めるだけで並みの人間は死ぬそれを、ルガールは掻い潜る。
ブロリーの攻撃は何の技術も無い。素人がただ適当に腕を振っているのと変わらない。
――ただ、その速度がとんでもないものである、ということを除けば。
ブロリーは何一つ技術と言うものを知らないし、知る必要も無かったのだろう。
生まれ持ったものだけで、ブロリーは星を破壊できるのだから。
故に、ルガールがブロリーに勝るのはたったの二つ……技術と知識だけであり、
それがこの闘いにおける、か細い命綱だった。
懐に潜り込んだルガールの左腕が、ブロリーの首に叩き込まれる。
もう何十と繰り返したのに、ブロリーは意に介していない。
それどころか、ルガールの方が疲労で速度が鈍化し、後退が遅れている始末。
――左拳を、掴まれた。
「ぐ……あ!」
苦悶の声が漏れる。
ブロリーが手を握ると共に、その中にあったもの……ルガールの左拳が握り潰された。
それでも痛みを堪え、左手をぐちゃぐちゃにしながら後退する。
……理不尽極まりない勝負だ。
ルガールはいくら殴ろうとブロリーに傷を負わせられず、
逆にブロリーの一撃は甚大なダメージを負わせる。
これを理不尽と呼ばずなんと呼ぼう。
もちろん相手は腹部が弱点な事くらい、とうの昔にルガールにも分かっている。
だがブロリーは、腹部を意識してガードしている。それを掻い潜るのは容易ではない。
もちろん、ゴッドレーンで背後に回ることはできる。
できるが、そこから腹部を狙うのは位置的に無理だ。
(……すまんな、息子よ。この腕ではもう運送は引退のようだ。しかし!!!)
だからこそ、狙いは首。或いは首に巻かれたモノ。
元々自分の肉体の頑強さに任せ、ガードをしないのがブロリーの性分。
更に腹部を意識しているため他の部分はがら空きになっている。
(首輪を付けている以上は、これを爆発させれば殺せるはず!)
美希を逃がした後、ルガールは執拗にブロリーの首を狙っていた。
それも、左側の一点。同じ地点に、何度も何度も寸分違わず……
そう、文字通り一寸のズレもなく衝撃を与え続けてきたのだ。
恐らく、首、あるいは首に巻かれたモノの負荷は相当なものになっているはず。
その負荷を顕在化させる一撃を叩き込むべく、ルガールは突進を開始する。
「無駄なことを……今楽にしてやる……!」
右腕が、風より早く追ってくる。
それを寸前で避けて、ルガールは右へと走った。ブロリーはそれに反応できない。
今までルガールは左に動き続けたが故に、そちらに目を慣らされている。
懐に潜り込んで放つはラストジャッジメント。
左拳を失った故に連打数は落ちているが、構わない。
一足速く自分の腹へと守っているブロリーの左腕も、構わない。
それらを無視し、全ての打撃を右首に撃ち込む。
その位置は、今まで打ち込んだ一点の正反対側。
衝撃は散々撃ち込んできた左側へと伝わり――累積したダメージが首を砕く。
あるいは首に巻かれたモノの耐久力が限界に達し、爆発する。
その、はずだった。
ブロリーの首から、血が流れ始める。
その首に巻かれたモノにヒビが入り始める。
だが――それだけだ。
「キサマァ……!」
砕けたのは、ルガールの甘い予想。
首が砕けているのなら、残っているのなら……声など出せるはずが無い。
(首は折れず、爆発もしない……か……)
冷えこんだ思考でそう呟いたルガールの身体に、蹴りが叩き込まれる。
それで肋骨どころか、胃が粉々になった。血が逆流して吐き出される。
更に倒れこむその顔を掴み、その身体を持ち上げるブロリー。
思わず、ルガールは笑った。あまりもの力量差に、笑うしかなかった。
同時に――零距離でブロリーの気弾を撃ち込まれた体が、爆発した。
■
ルガールは知らない。ブロリーの首に巻かれたモノは首輪ではないことに。
ブロリーの首輪にあたるものは、心臓に取り付けられている。
首に巻かれていたのはリミッター。それが損傷したのだ。
万全な状態ならばともかく、損傷した状態でいつまで無事にブロリーを抑えられるか。
リミッターは常時、ブロリーの強大な気の奔流に晒されているのだ。
もし耐え切れず砕け散れば、それはブロリーの制限が一つ減るということを意味する。
もっとも、ブロリー自身もそんなことには気付いていないが。
「……ハ、アアアアアアア」
傷ついた首を抑え、苦しげに息を吐き出すブロリー。
ルガールの攻撃は致命傷に至らないとは言え、ダメージとしては十分だったのだ。
ブロリーに四重の制限が掛かっているとは言え、
一対一でダメージを与えられただけでもルガールは賞賛に値する。
彼が与えた衝撃は、首を砕くには至らずともしっかりと累積していたのだ。
自らに走る痛みに、ギリ、とブロリーは歯をかみ締める。
「舐めた真似を……
いいだろう、あの女もすぐに貴様の所へ送ってやる……!」
轟音を響き渡らせて、ブロリーはその場を飛び去った。目指す先は、当然南。
……そう。ブロリーもまた、美希が無事だったことを確認していたのだ。
ただしこの場合は偶然ではなく必然。
遠くの星に気弾を撃ち込むブロリーの視力は、半端なものではないのだから。}
沈んだ神が行った行為は、悪魔を倒す一助となるのか。
或いは、神の死を糧として悪魔は更に拘束を引きちぎるのか。
それはまだ、誰にも分からない。
【F-4 橋 /1日目・昼】
【ブロリー@ドラゴンボールZ】
【状態】疲労(中)、全身に軽い怪我、右足首骨折 、腹に深刻なダメージ、
首にダメージ(中)
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品1~3
【思考・状況】
[基本思考]全てを破壊しつくすだけだぁ!
1:ルガールへの怒りが収まらないので、美希を殺す。
2:腹の攻撃を極力避ける。
※腹への攻撃に対して対処出来る様になりました。
※首のリミッターが小破しました。今後、壊れる可能性があります。
&color(red){【ルガール・バーンシュタイン@MUGEN 死亡】 }
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