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「さいあく」
「しゃーねーじゃん」
全く同じように肩をすくめるソウルとマカ。視線の先には毒々しい色のアメリカンチェリー。
以前、泊まりに来たクロナが気に入ったと言っていた。と、しかし昨日渡すのを忘れて今日になったらあら、まあ。まっ茶色?
たしかに。ひと山4DC$、はわりかし痛い。6DC$のやつにしなくてよかったと見てとれる。
「まっ茶色と抹茶色。まぎらわしい。きっちり区別をつけるべきだ。言葉的に。」
「よくわかんないこといってないで。私もクロナと食べるの楽しみにしてたのに」
「悪いね、いやまったく。俺ら課外連チャンでさ。これから。」
「う、ううん…と、とんでもないよ。えっと、ね、それ、僕食べていいの?」

ややあって。
今はクロナの膝元に鎮座している籠いっぱいの毒物とそれへの対処の仕方を見学することになった俺。
クロナは悪くなさそうなものの選別にかかる。一個あれば良いほうだろう。
なんせ買った当日に駄目になってるような果物だ。すぐに紫から茶色へ、薄情なものである。
「…あった」
拾い上げられたそれはたしかに色も鮮やか。
歯の食い込む音が見えるような軽快さでそれをクロナはするりと食べた。
腐った部分をかんで吐き出す。
「イタイものが、好きなのか」
「…?う、うん、まあ…不自然なものじゃなきゃ」
言って薄く笑ったようだ。
この状況にその作り笑いのほうが場違い、不自然だと思う。
ただあいつのくちびるの端にあかい果汁があるのに気づいてしまって、スイッチが入る。
さっきまで考えてた野暮ったいことを口にするのはやめだ。食らい付こう。
唇は合わせずに赤を舐めとって、鎖骨に接吻けを落とす。
「キッド」
「おまえ、昔のことは、まだ大事か?」
「なに?だ大事?………大事だよ、キッド、いた、ちょっと…」
「痛くする、と言ったはずだ」
口の端を吊り上げた。
過去とは残像、廃材、腐った残飯。抱いていたらお前が腐るだけだ。
「…ったくするとは、いってない」
恨めしげに見上げる顔を、にらむかキスするか迷ったので、キスすることにした。
びくりと痙攣する体。そういうところだけは無駄に美しい。母親の影がちらつく。

俺は過去に拘っていられない。今この一瞬も人間はどこかで死に絶えているのだから。
ずっと昔に拘泥してるおまえを見てるとこっちまで胃が痛くなる。
胃は、もう少し下だったはずだが。
「だ、だってさ、しょうがない、よ。…僕だって、捨て、たい、と思うけど、」
「けど、なんだ」
どこかの趣味の最悪なお貴族様の話を思い出す。
オルレアンの乙女の近くで生きて、彼女に恋をした男。
そいつに倣って、捻りあげられた(というか俺がやった)手首を優しく舐める。
そのお貴族さまとやらは、裁かれこの世の人間でなくなった乙女に焦がれるあまり、
男装の少女だった彼女に似た幼い少年たちを玩具として好き勝手に弄び金の使いすぎで処分された。
そいつのもっとも趣味がよろしい行為は、少年を従者にはりつけさせて、恐怖におびえる幼い少年のもとへ さも善人のように駆けつけて。
「あぅ…っ」
安堵に変わった表情を、たたきつぶす。
狂った王の娯楽か。






著者コメント

魔女裁判・異端審問ネタより派生しました。
ふたなりの魔女として火あぶりにされたジャンヌ・ダルクと青髭ジル・ド・レで正解です。