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1話


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「んっ……」
 目覚めはいつも清々しい。
 時間は五時を示しているが、窓から入ってくる光は朝日ではなく、赤く沈みかかっている夕日だ。
「もう五時か……」
 私はそう言ってしぶしぶ立ち上がり、背伸びをする。
 そのまま私は台所に向かった。
「まだ残ってたかな?」
 私は食糧庫と呼んでいる棚を開ける。
「後四個にもなってたか、注文しておかなきゃ」
 私は食糧庫からカップ麺を取り出し、棚の戸を閉める。
 最近カップ麺の中に入っている肉が変わったらしく、今持っているので変わる前の肉が入っているカップ麺とはさよならだ。
 などと、対して思い入れもない事を考え、お湯を電気ポットで沸かす。この電気ポットはすぐに沸かせる優れもので、大変重宝している。ただ、電子レンジやらオーブンやらと一緒に電気器具を使うとブレーカーが時たま落ちるくらい電力消費が多いのがたまに傷だ。
 私はポットに蛇口を捻り水をいれて、専用の器具に台座に差し込んでコンセントを差し込み、電源を入れる。
 その後私はテレビを付ける。パソコンは常時動いているので、スクリーンセーバーを終わらせる為にマウスを軽く動かす。画面には株の情報がオンラインで上下している。
 ここまで言えば分かると思うけど私は株、正確には主に仕手株の取り引きで生活している。といっても既に蓄えた金が十億に行くか行かないか程あり、税金もしっかり払っている。この仕手株というのはギャンブル株とも呼ばれる事もあり、その名前の通り、一日の落差が激しいのだ。これは株価の安い低位株で、空売りが可能で発行株数の少ない銘柄がターゲットにし、仕手と呼ばれる投機家が利益を得るために利用する事が多い株式である。しかしは流石に投機家というのはかなりの資産家でもあり、たまにとんでもなく幅が上がったり下がったりするが、大規模な時は少ない。
 私がこの仕手株をやり始めたのは数年前の事だった。私は当時高校生だったのだが、家は俗に言うちょっとした富豪層あたりに属していて、親からいつも高望みをされていたのだ。私はそのことに嫌気がさし、通帳だけもって家出をした。
 もちろん最初は働こうとも思ったが、結局働かずじまいで、私はとあるネットカフェで株を始めた。最初はもちろん数万程度だったがいつの間にか十万、二十万、三十万と増えて行き、私は通帳にあった五百万近くの金を五十万まで減らしてしまった。私にはもう後がなく、その時はとんでもない後悔をしていた。株なんてものに簡単につぎ込むのは馬鹿だった事をその時やっと気付いた。だが、家に戻る事も出来ず、絶望していた。私が仕手株を知ったのはそんな時だった。私は最後の賭けに出た。そしたらだ、その時丁度大規模な仕手戦が行われており、私はどういうものなのか詳しくもないのに適当にやって、結果は五十万だった残金が二百万まで増えたのだ。私にはこれしかないと思った。その後は普通の株も成功し、仕手株と合わせて一気に資金が膨れ上がった。二百万が更に増えて行き、一億を達したとき、家も一括で購入した。
 その後は私は家の中にずっといた。要は引きこもりの様な状態で、世間的には無職とも呼ばれるだろう。
 しかし今では私は家の中に完全に閉じこもっていたのであまり気にはしていなかった。

 そこで電気ポットが湯を沸かし、電源が落ちたのを確認した。
 私はカップ麺のビニールを剥がし、蓋を開けお湯を入れる。
 相変わらず蓋に書いてある、お湯に入れて三分は長い気がしているので、いつも二分で食べている。
「飽きない?」
「飽きないわよ」
「体に良くないよ?」
「体は気にしてないわよ」
「ぬー」
「はー」
 私は後ろから声をかけてきた「それ」に答える。
 だけど私は後ろを見ない。それは誰か分かっているからじゃなくて、誰も「見えない」からだ。
 いつも私の背中にくっついていて、時々声をかけてくれる。おかげで退屈も忘れそうだ。
 だけど私はそれが何なのか知らないけど、知りたいと思う事もなかった。要はそれだけの「それ」なのだろう。
 多分幽霊みたいなものだと思ってはいるが、幽霊じゃ声は聞こえないだろう。きっと幻聴なのかもしれないが、それでも別に良かった。私は何かも分からない「それ」といる時間が楽しい。