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2話


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月光(ユェグァン)皇子は手紙を書き上げ、静かに筆を置いた。

 真夜中を少し過ぎた頃だった。月光は窓の外を見上げた。

今宵の月のなんと見事なことか。薄いくもの切れ間から顔を覗かせる三日月は

どこか思わせぶりな貴婦人のようだった。

 皇子は、ふとある女性のことを思い出した。何度となく想いを伝え、腕の中

に納めようともすり抜けて消えてしまう、そんな人だった。

 皇子は、ふっと自嘲気味の笑みを漏らした。この手紙が意中の姫へのものな

らば今日の気分はどんなに違っていただろう。

 皇子は手紙を丁寧にたたみ、蝋に封印を押すと、暗闇にむかって小さく

囁いた。

「銀鹿(インルー)、参れ」

 背後で人影が揺れた。現れた小柄な男は皇子にひざまずいて答えた。

「参りました、殿下」 皇子は、自らに仕える『盾』の一人に手紙を渡した。

 「誰にも見つからないよう、確実に届けなさい。特に『龍(ロン)』達には

気をつけなさい。このことが陛下の耳に入れば全てが水の泡だ。

わかっているね。」

 銀鹿は短く「はっ」と答え、一礼すると、再び暗闇に溶け込んだ。皇子は、

『盾』が消えるのを見届けると、寝具に潜り込み、ゆっくりと浅い眠りに落ち

ていった。


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