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黄昏夢幻 Ⅰ

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 ……やさしい香りで目が覚めた。

 うっすらと開けた目に黄ともオレンジともつかぬ色が飛び込んできて、反射的に閉じる。まぶた越しに見える外の明るさが、今が夜ではないということを教えてくれた。
 というか自分はいつの間に寝たのだろうか。読んでなかった小説を読んでいたのが最後の記憶だ。

 そういえば、さっきからのこの香りはなんだろうか。
 もう一度眠りに落ちてしまいそうな、安らげる香り。でも、何の香りだっただろう? 思い出せない。

 不意に、視界が暗くなった。いや、まぶたの上に注ぐ光が遮られたのだろう。
 でもなんだ? ゆっくりと目を開けた。

「!」

 びびった。目の前に一人の女性がいた。
 大人だろうが、微妙にあどけなさが残る顔をしている人だ。背中ぐらいまでありそうな長い髪がリボンで一つにまとめられている。今時あまり見ないゆったりとしたワンピース、それに麦わら帽子なのがやけに印象的だ。

 向こうも少しびっくりしたのか、僅かに目を見開いて少し固まっていたが、やがて動き出して俺の前から退いた。うわ、また眩しい。とりあえず上体を起こすと、背中に草がたくさんついていた。

「うわ、やばっ……」

 手で払うも簡単には落ちず、微妙に届かない所まで草がついている。さてどうしようかと迷ったが、その時何かが背中をはたいてくれた。

「ん、あ、ありがとうございます」

 さっきの女性だった。女性は小さく微笑むと俺に何かを差し出す。寝る直前まで読んでいた(はずの)小説だった。
 俺が小説を受け取ると、女性は立ち上がって向こうへと去っていった。





 残ったのは小説と、さっき感じたあの香り。
 ……そういえば、彼女は一体誰だったんだろう?