神は、地上に火、水、風、緑、光、地、知識の賢者を遣わした。
賢者たちの統治は地上人の光になると神は信じて・・・。
賢者たちの統治は百年の時まで続いた。
賢者たちの住まう塔を慌ただしく進む水の賢者、ミリス。
透き通る水のような袖を翻して、美しい髪を靡かせ、重々しい扉を押しあけた。
「エルノーヴァ!炎狐人が彩魚人を攻め入るの!なんとかしてちょうだい!」
部屋に座っていた賢者たちがざわついた。
上座に座っていた知識の賢者エルノーヴァが閉じていた目を開き、緑の眼が覗かせた。
「またですか・・・。今度は私には止められません。火の賢者ヒュールドランに任せましょう。
ですが、今回きりです。今度はそうはいきません。依存はありませんね?」
誰も依存は言わなかった。
「では、ヒュールドラン。行ってきてください。」
席に座っていた赤毛の炎のような紅い眼した青年が立ち上がり、
「はい。では、失礼します。」
エルノーヴァに一礼をして青年は退室してしまった。
ミリスは定位置につくと、エルノーヴァに言った。
「エルノーヴァ、地上人は争いばかりする。最近は酷くなってくるばかりではないですか。」
「でも、私たちの使命は彼らを統治すること。これでいいのです。滅ぼすことではないのです。」
緑の賢者、エノリスはエルノーヴァに聞いた。
「エルノーヴァは争いを止める方法は分からないの?」
「私はそんなことは知りえません。彼らに因縁があるにしろ、ないにしろ、関係ないこと。
いけないことを神の代わりに躾けるのが我らの使命です。」
「そうなのかな?」
「事実そうじゃないんですか?私たちにできるのはこれだけなんですから。」
「でも、躾けるのとは違うんじゃない?どちらかというと、義務付ける感じね。」
今まで黙っていた風の賢者、ヨーゼフは耳を澄ませていた手を下ろした。
「天上で争いが起こると風が言っている。」
「ヨーゼフ、神はなんと?」
「止めようとなさっています。ですが、様子は芳しくありません。」
エルノーヴァは溜め息をついて、窓を見上げた。
「世界のバランスが可笑しくなっているのですか?天上人が争いなど・・・。」
これが波乱の始まり。
そう、まだ始まりでしかなくて、大きな波紋はまだまだある。
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