ほぅ…なんと美しい
その紅は椿か…
これはお武家様
この雪の日に如何なされた
椿…椿や
何故、主は雪に咲く…
死装束、美しい主には映えて
痛い…
お武家様
椿は雪に咲くもの
この死装束…覚悟なるもの…ゆえに…
はて…のぅ、椿…その花、我が為咲かせてみぬか…?
あの雪の日、抜け忍だった俺を拾ったお武家様は
上総様…蔵伊里 上総様だった
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「弥助!!弥助はどこにいる!」
あの日以来、俺は上総様から
『弥助』の名を貰い
蔵伊里家の忍をやっている
「弥助ー!!はよ、出て来ぬか!」
…若干のやりずらさを感じながらも
それなりに楽しかった
下で騒いでいるのが冒頭のお武家様とは誰も思うまい
俺だって思わなかったし
「やーすー「ここに居ますよ。休憩中だったんですけど」遅いわぁ!!俺を待たせるなっ!!」
どこのガキだ…
30過ぎたオッサンが元気に城の中走り回るなっ!!
「で?今回は?」
「……え?あ、上様が近々…戦をなさるとおっしゃった」
どこに意識飛ばしてんだコラァ…
戦…と言う単語に上総様の顔が
嫌そうに歪む
この御仁は乱世には珍しく
戦が嫌いな方だ…力が全ての時代なのに…
「弥助…お前は戦に染まるな」
「…。」
「戦は…力ある者の道楽…力無き者の声が聞こえぬ悲しきモノ…」
俺の頭を撫でながら
上総様はもの寂しげに呟いた…
「上総様、戦忍の俺に…云わないでください。戦に赴き主を守るのが戦忍の…生きる道」
その言葉に上総様は悲しそうに笑った
戦う、闘う…
それがこの乱世を生きる唯一の術
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