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殺人請負ネット番外編-諦-


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「諦……?諦ってば人の話聞いてる?」
「……っ、ああ何だ?聞いてなかった」
「諦ってば、も~っ」

 俺こと古宮 諦(フルノミヤ アキラ)は、最近理由もない空しさ、虚無感に襲われている。運動はもちろん、勉強もでき、彼女までいる。世で言う完璧な人間だ。だが、何かが足りない。パズルでいうならば、メインのところのワンピースが足りないという感じで、はたまたロボットで例えるならば、操縦者のいないような感じだ。そしてそれは、何をやっても埋まるどころか逆に開いてゆくのだ。秋の落ち葉と夕日がこんな思いをさせているのか?

「諦ぁ~、今度の土曜日……その……暇?」
「ああ、どうかしたのか?」
「いや……、で……デートしたいなぁ……、なんて」
「別に何でもいいけど」
「本当……!?ありがとう」

デート、か。これで俺の空しさが埋まるのならば、何でもやってやる。ああ、でもこれで埋まらなかった時用に、一応自殺を助けてくれるサイトも調べておくか。と思っているうちに、分かれ道についていた。

「それじゃあバイバイ、土曜日楽しみにしてるよ」
「ああ、じゃあな墨華」

墨華とは彼女の名前である。本名は田中 墨華(タナカ スミカ)。まあ、虚無なものを埋めるために付き合っているだけなので、正直どうでもいい存在だ。こうして俺は、一人で夕日をバックに家路を辿っていく。変哲のない帰り道だ。そして家に着くと同時に、PCの前へと向かった。

 カチッ、カチッ――。

はぁ……、と俺はため息をついた。信頼のおけそうなサイトは見つからないのだ。大体、パステルカラーの背景の請負場所とか、いかにもという雰囲気がなく、また遊びにしか見えない。こうして俺は、11件12件――と調べていく。そうして17件目、黒い背景に白い文字のサイトが画面に浮かび上がった。

「ここは珍しく、まともそうな所だな・・・」

俺はここに来た依頼者たちのスレッドを見る。およそ、50人ぐらいの人がここの管理人と思われる駿河心象に殺されたのだろう。そして、俺はあることに気がついた。どれもこれも最後のところに画像がついているのだ。会話を読んでいくと、どうやらこれは依頼者の死体写真らしい。それは信頼を持ってもらうために載せているっぽい。そして俺は躊躇なく、その画像を開いた。

「うわあああああああああああああああああああああああ」

 俺は思わず絶叫してしまった。気を落ち着け、もう一度まじまじと画面を見つめる。そこには血が大量に流れ出て濡れた草地と死体、そして様々な尿などの排泄物が落ちていて、カラスは近くも遠くもない距離にいる。管理人がいなくなった後に死体を喰うつもりなのだろう。そしてご丁寧に、凶器ともいえる血のついた洋包丁まで写っている。俺は正直恐怖を感じていた。人間らしいといえば人間らしい行動だ。だが、それに関わらず手はマウスを動かし、次の画像を開いていく。それと同時平行して、俺の感情は高まる。足りなかったワンピースが見つかったようだ。操縦者が見つかったようだ。日の沈んだ暗い部屋の中に浮かぶ諦の小さな笑いは、誰も、そして俺も気がつかなかった。

「ぁは……あはははは……」

 こうして俺は日夜、暇さえあればあのサイトを見つめていた。かすかな笑い声を立てて。墨華もそんな俺を変な目で見ていた。あどけなく、そして冷たさを隠したような目で……。

「諦、遂に明日だね、デート」
「ん……、ああ」
「じゃあ、明日の午前11時。桜架遊園地で待ち合わせね」
「ああ」
「ところで諦、最近何見てるの?」
「……秘密」

殺人請負ネットを見ているなんて言えない。

「ふ~ん、彼女にも教えてくれないんだ」
「ああ、教えたところでどうもこうもならないしな」
「ひっどいなー、もぅ」

ひどくても別にいい。俺の言っていることはほとんど正しいのだから。ああ、空気が冷える。

「あ、分かれ道についちゃった。それじゃあね、諦」
「……ああ、じゃあな墨華」

いつも通りに別れ、いつも通りの帰り道を通る。そしていつも通りに家に着き、PCの電源をつける。親はいない。親は正直にいうと、俺に期待をしていない。だから諦めるという意味を持つ諦と名づけたのだろう。まあ、どうでもいいことだが。そうして俺はいつも通りの生活を終えて、眠りについた。明日はデートだと、記憶にインプットして。

――デート当日。

俺は普段より少し早く起きた。やはり常識的に考えると、一足早く彼女を待っておくのが男だと思ったからだ。何度も言うような感じだが、彼女はどうでもいい存在である。まあ、そんな感じで俺は私服に着替え、パンを食べ、歯磨きをして待ち合わせ場所へと足を運んだ。正直面倒くさいが、自業自得なのだろう。

待ち合わせ時間から三十分後。

「諦ー、遅れてごめん」
「いや、大丈夫だ。さっききたばかりだし」

なんて、気をきかせた言葉を言う。にしても、なんで女はこんなに遅く来るのだろう。おかげで足が痛い。……五月蝿くなるのも嫌なのだが。そうして俺は墨華と様々なもので遊ぶ。ジェットコースター、お化け屋敷、メリーゴーランド、そしてカップル定番の観覧車。どれもこれも墨華の顔を輝かせたが、俺は全てがつまらなかった。胸を掠めるのはあの大量の血が溢れる死体。
ぞくぞくする。そうして俺たち二人は夕日の落ちかけた遊園地を後にする。

「楽しかったね、諦」
「ん……、ああそうだな」
「また……、いけるのかな」
「そうかもな」
「……いけたらいいね」
「ああ」

誰もいない裏道で、俺は本音を隠した機械みたいな返事を返す。話が切れて静かになる。何も聞こえない。その静寂を破ったのは着信音。俺のではない、墨華の携帯が鳴ったのだ。彼女はごめん、と一言俺に言って携帯を取る。

「もしもし」
『ああ、俺だよ俺』
「え……!勇(イサミ)!?」

彼女が発したのは、俺以外の男の名。

『今度の日曜さ――』
「ごめん、また後でかけなおしてくr――」

俺は彼女の携帯を取り上げた。墨華は慌てた顔をする。

『墨華?』
「もしもし」
『……お前誰だよ』
「墨華の彼氏ですが」
『はあ、んだとっ。俺がこいつの彼氏だぞ』

墨華の顔を見る。墨華は怯えた目でこちらを見ていた。ふん、二股……か。俺は彼女の携帯をそのままポケットに突っ込み、彼女に近づく。一歩、一歩確実に近づいていく。俺は彼女の首を掴む。

「いやっ、何をするの……?」

彼女は潤んだ瞳で俺を見る。俺はただ無言で彼女の首を絞めていく。力強くぎゅっと、ぎゅっと。

「いやあああああああああああぁぁぁ……」

彼女は弱弱しい声をあげて、その声は次第に闇の中に消えていった。俺は彼女の首から手を離す。ドサっと言う音と共に足元に崩れ落ちていく。俺はただ静かに彼女を見つめる。

――俺は彼女を殺したのか。

冷静だった。俺はこれは二股をした罰だ、これは常識だと思いながら彼女の耳元に取り上げた携帯を置く。静かな顔からは目が飛び出しかけており、また汗や尿、排泄物が体中から出てきていた。俺はこの死体をそのまま置いて、裏道を出て行った。これが俺の初めての殺人であった。

その後、俺はこのことに興奮を覚え、駿河心象の模倣したサイトを作った。殺人請負ネット――俺の快楽を味わう所。といっても、始めは誰にも書き込みがされなかったので自作自演をすることにした。諦という名をつけられた哀れな生贄を俺は殺した。そう……、本当は自分を殺したかったのだ。