「カゲリ」
「ん、どうしたカガリ?」
「その……これ」
「ん、どうしたカガリ?」
「その……これ」
カガリはそう呟くようにカゲリに言うと、小さな絹の袋を拙者に手渡してきた。これは……何だ?袋を開けて覗くと、中には小さな、それでいて日光をよく反射する石が入っていた。
「これは?」
「そ……その、ばれんたいんという日だから」
「ばれんたいん?」
「うむ、西洋の行事で異性に『ちょこれいと』というものを送るのだ。」
「詳しいな、カガリは。流石、とでもいうべきか」
「当たり前じゃ。これでも姫だったのじゃぞ?」
「確かに。でも……何で石?」
「う……」
「そ……その、ばれんたいんという日だから」
「ばれんたいん?」
「うむ、西洋の行事で異性に『ちょこれいと』というものを送るのだ。」
「詳しいな、カガリは。流石、とでもいうべきか」
「当たり前じゃ。これでも姫だったのじゃぞ?」
「確かに。でも……何で石?」
「う……」
カガリは濁った声を小さくあげると、急に俯いた。顔を覗き込むとその顔は真っ赤で、すぐに背けられてしまった。
「こ、これはだな……この辺りに『ちょこれいと』など売っておらぬし、金も……ないからじゃ」
納得。……やはり何かお返ししたほうがいいよな?
「カガリ、ありがとうな。ところで、これのお返しをする日はあるのか?」
「ん……、三月十四日にあるが」
「そうか、だったらその日に何かお返しをやるよ」
「な、べべべべ別にいらんっっ」
「いや、期待しておきな」
「ん……、三月十四日にあるが」
「そうか、だったらその日に何かお返しをやるよ」
「な、べべべべ別にいらんっっ」
「いや、期待しておきな」
強引にそう言い切ると、拙者はもらった袋を首にかけ、先に進みだした。
「あっ、待て、待つのじゃー」