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早朝

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【失恋した小人と失恋予定の美少年】



言うまでもなく、現在の時間帯は朝。
さらに細かく、具体的に言うと――太陽が全身をさらけ出し、尚且つ、まだ微かに肌寒いくらいの時間。
唐突に、

チョキン

と、朝の澄んだ空気に音が響くと同時に――切れた銀髪が光を反射しながら、空中に舞った。
「・・・・タイニー、まさかとは思いますが、変に切ってないですよね」
木製の小さな椅子に座る、銀髪の子供がどこか大人びた調子で、背後に立つオレンジ色の髪の少年――否、少年の様な少女に確認すると、
「それはいささか愚問だと思うよ、マニ。僕にそんなこと聞く前に、答はもうとっくのとうに分かってるんじゃないのかい?」
そして、ケラケラと笑い、タイニーは再びマニの銀髪に手をかけ、手に持った銀の鋏で、

チョキン

と、切る。
「だけどさ、驚いたよ・・・・まさか君がテディベアになっていた時でも髪の毛は伸びていたなんてね・・・・身長も伸びたんじゃないのかい?」
「どうでしょうね、僕には分かりません」
マニはまるで興味が無いというように、短く答える。すると続けて、思い出したように、
「そういえば――レンシーが夜中、また旅に行きましたよ」
「へえ、そうかい。今度はいつ帰ってくるのさ」
マニがレンシーが旅たつ直前に問うた質問を、同じようにタイニーはマニに聞く。
その間も、

チョキン、チョキン

と、リズムよく金属音は鳴らされていく。
突然。
「多分、レンシーとは・・・・もう会うことはないと思うよ・・・・」
「何だって!?」
刹那、

ヂョキン!

という音と、明らかに尋常ではない多さの髪が、地面に落ちる音が聞こえた。
「・・・・今、すごく嫌な音が聞こえたんですけど・・・・」
「そんなことより、もう会えないってどういうことさ!」
「・・・・」
マニは己の髪の状態を気にしながらも、とりあえず、自分が夜中に偶然聞いた、レンシーが独白したことを簡潔に話した。
すると、タイニーはふうん、と納得したように言って、
「けど、それもレンシーらしいよね。あいつは空気のような男だったし、それに――どんな奴でも平等に、幸せにさせようとしていた・・・・本当に、レンシーらしいよ」

いつになく優しいオレンジ色の眼で、思い出すように語ると、

チョキン

と、作業を再開した。
その時、後ろから。
「おーい! 二人とも、クルーが入院してる病院ってどこだっけ?!」
来て早々、大声でそんな事を問う女性は――いつもは後頭部で結ってある茶髪を下ろしていて、普段の彼女よりも大人っぽい雰囲気をかもちだしていた。
すると、タイニーが口を開き、
「ああ、それなら・・・・」
「この道を真っ直ぐ言って、最初の曲がり角を右に曲がってください。そのまま進んでいけば、左にクルーのいる病院が在るはずです。多分、その道の途中でまだ宴のために大きな作業をしていると思いますから・・・・事故には気をつけて行ってください」
タイニーの声を遮って、マニが早口で説明すると、
「そっか、ご親切にどうもありがとうね、マニ」
とびっきりの笑顔で、しかも感謝の言葉を付けると――手を振って、言われたとおりの道を走って行った。
そして、しばらく無音の時間が過ぎて――

チョキン

と、鋏が鳴る。
「あれ、いいのかい? 自分の想い人と他の男をくっつけるような真似しちゃって」
ケラケラと笑い、タイニーは鋏を銀髪の下に這わせ――切ろうとした、が。
「僕が失恋したっていうんですか?」
その言葉に、タイニーは少し戸惑う。
「僕は今だって――彼女に、恋してます。勿論、だからといってクルーが憎いわけじゃありません。ありきたりですけど、僕は彼女が幸せなら、それでいい――

――例え、それがどんな形でも、僕はそれで幸福になれる」

だから僕は道を教えた。
だから僕は笑っている。
だから――

チョキン、

チョキン、

チョキン、

…………。

「だから――タイニー、何で泣いているのさ」
「・・・・五月蝿い。黙って座っててよ」
「了解です」
言われたとおり、髪が切り終わるまで、マニは黙って座っていた。
僕から君へのメッセージは、きっと正しく伝わったかな、と思いながら――。

朝。
太陽が全身をさらけ出し、尚且つ、まだ微かに肌寒いくらいの時間。

タイニーの涙は、銀髪の上で綺麗に光っていた。