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二人の騎士vsファント


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チェインと少年がにらみあっている頃。

アブソーはリビーをしばっていた縄を解きにかかりながら、問う。
「あの、リビーさんですよね・・・・?」
「へ? あ、うん。そうだよ」
「大丈夫でしたか?」
すると、リビーはうなだれたクルーに目を向けて。
「私は平気なんですけど、アポトニティー様が・・・・」
アブソーはちょうど縄を解き終わり、リビーはクルーへと駆け寄った。
「アポトニティー様・・・・ごめんなさい――」

今、再生してあげます。

そして、リビーは己の手をバットで殴られた部分に手をかざした。
リビーが徐々に手に力をこめていくと、手が光りだした。
「リビーさん、それって・・・・」
「『再生』の力」
アブソーの言葉を断ち切り、言ったその言葉はどこか誇らしげで、
「人の傷を再生して、もとに戻す力です」

+++

チェインが剣を横向きに持ち替えたのが、戦いの合図となった。

チェインは少年に向かって走り、剣を扇状に振った。
少年は後ろに避けた後、チェインに近付き、ナイフを振るう。
チェインはそれに対応するように、剣を振るった。
少年が言う。
「ふーん。なかなかやるね、君も。伊達に八妖精ではないって訳か」
「あたりめぇーだ、ろ!!」
チェインは力任せに剣でナイフを飛ばした。
「あ、」
「もらったぁああ!!」
チェインは少年に突きを繰り出す。

そして、腕を伸ばしきった時、少年は消えていた。

「あ? どこだ!」
跳んだのか! と言いながら、チェインは上に視線を向ける。
少年の姿は無かった。
すると、背後から風を斬る音。
急いで振り返る。
ナイフが真っ直ぐと飛んできていた。
「やっば・・・・!」
チェインは横へ跳んで、難を逃れると、ナイフの飛んできた方へと剣を向けて。
「後ろからなんて卑怯だぞ、ファント!!」
「卑怯では無いですよ」
背後に囁かれたその声は、どこか冷たかった。
「勝負に――卑怯も何も無いでしょう」

ましてや私は、ファントなんですから。

そして、少年は自分で飛ばしたナイフを獲って、目の前の獲物へと振るった。
「これで、幕を閉じましょう」

そして、金属音が聞こえた。
それは、つまり。
金属と金属がぶつかりあう音。

一つは勿論、少年の持った灰色のナイフ。
そして、もう一つは――何だ?
チェインは剣を自分の前に構えていたので、これで防御できないことは一目瞭然だった。

――なら、もう一つの金属って・・・・?

チェインは首だけ振り向いた。
そこで見えたのは、驚いた表情の少年、そして――

「まったく、世話のかかる男ですね」

群青色に輝く剣を持った、クルーだった。

「なんで、起きちゃってるんだよ?」
少年がクルーに訊いた。
「リビーが再生してくれたんですよ」
「へぇー・・・。けれど、そんな早く直るものなの?」
「殴った人が子供だから、あまり傷は深刻では無かったようですよ」
「あぁ、そっか!! 今度からは気をつけないと」
何故か被害者と加害者で和やかに会話を進めている二人に、チェインは唖然としつつも、己の剣をふるって、少年に牽制を与える。
「うわっ、馬鹿。卑怯だぞ!」
上体を反らして剣を避けた少年に、さっきと言ってること違くねぇか、と思いながらも、チェインは少年と一旦距離をとる。
勿論、隣にはクルーがいた。
ふと、チェインが問う。
「お前、無理はしてねぇよな」
クルーはその言葉に、目をパチクリさせた後、信じられないといった口調で答えた。
「無理はしてませんよ。チェイン、私のことを心配してくれて「ばっ! ち、違ぇよ」
ただ、今後の戦闘に支障が無いか確認を・・・・など、言い訳を並べるチェインにクルーは軽く笑って、
「チェイン、私は嬉しいですよ。貴方が心配してくれて・・・・」

私はチェインの親友になって、とても幸せですよ。

最後は心の中で呟いて、クルーは剣を構える。
「貴方こそ、私の足手まといにならないように」
「はぁ?! んなわけねぇだろ。そもそも、怪我してるお前に「チェイン」
クルーはチェインの言葉を断ち切って、言う。

「助けてくれて、ありがとう」

クルーはそう言って、こちらを眺めて暇そうにしていた――もう不意打ちをするつもりはないらしい――少年に向かって、突きを繰り出す。

その後ろでチェインは、目を見開いていた目を閉じ、ため息をついて、
「俺はお前のそういうとこが嫌いだよ」
呟いて、剣を構える。

刃と刃が交錯し、緊迫感に溢れた空気は充満しているあるお店の中で、少年は叫ぶ。
「ちょっと待て!! 私がいくらファントといえども、こんな子供の姿じゃ貴方達二人も相手できない!!」
「はっ! そんなこと知るか」
残酷にそう継げて、チェインはクルーの横から少年の後ろへと回り込んだ。
――しっかし、『あの』クルー相手にナイフ一本で対応できるなんて。やっぱ魔力だけじゃなくて体術も並じゃねぇな。
「ま、クルーがナイフ持っていたとしても、クルーが優勢なのは変わらねぇがな」
「ほぉ、チェインも私を褒めることがあるのですね」
「うるせぇ、お前は黙って剣振ってろ」

そうして敵に感心しながらも、その敵に向かって無情に剣を振り下ろした。
いわば少年を挟み撃ち。
チェインの攻撃を避けたらクルーの鮮やかな剣を受けてしまう。
かと言って後ろに下がれば、チェインの致命的な一撃を食らってしまう。
そして、彼は、
「ふふふ。ここが見せ場ですかね」
何故か不敵に笑って、少年はパチンと指を鳴らした。
瞬間。
周りにいた数名のすでに負傷した人間が、チェインの前に立たされた。
「なっ――!」
「まさか、あのマグマのことを忘れたわけじゃ、ありませんよね?」

私はある程度の洗脳が、できる。そして人間もソレの例外では無い。

少年の、赤い眼はそう語った。
そしてチェインの剣の勢いは、止まらない。
無実な人間の脳天に剣が堕ちていく。
このままじゃこのままじゃこのままじゃ―――・・・・

そして、結果的に剣は寸でのところで、停止した。

しかし、犠牲が無かったとは言い切れない。
チェインの剣を素手で、クルーが握って止めていた。
クルーの両手の隙間からポタポタと雫のように垂れるそれは、赤かった。
「っ痛・・・・」
「おま、早く手を離せ!!」
クルーがやんわりと離すのと、クルーの血で赤くなった床に、金色の剣が音をたてて落ちたのは同時だった。チェインは服をちぎって傷に包帯のように巻きつけた。
それを見て、少年は言う。
「なんという・・・・なんという笑劇だ! たかが人間のために剣を握る手を犠牲にするなんて!! そんな傷ではまともに私と戦うことはできませんね!!」
「黙れ餓鬼!!」
チェインは一人、立ち上がって、

「俺はお前じゃないんだよ」

チェインは再度剣を構えなおすと、少年の前へと歩いていく。
「何ですか? まさか、一人で戦うつもりですか? 貴方も見たでしょう、私がクルーと互角に戦った所を! つまり、貴方は勝利の最低限の条件としても、クルーよりも強くなければ私には勝てないんですよ?」 
チェインは、すでに少年の前に立っている。
「確かにクルーは俺よりも強いし、お前も俺よりも強いかもしれない。だが、だからといってお前に負ける気がしねぇんだよ。これっぽっちもな」
「ふふふふ、それこそ笑劇ですね。いや、自意識過剰な主人公の悲劇ともとれますね。ふふふ」
手で口を抑えて笑うその姿は、はたから見れば普通の子供だったので、チェインは一瞬己が誰と戦っているのか分からなくなった。
そしてチェインは口を開いて、

「俺とお前じゃ違うことがあるんだよ。それが、俺がお前に勝つ理由だ」

言って、剣の切っ先を少年に向ける。
「すいません。意味が分かりませんね」
手をひらひらと振って、少年は答える。
「ま、そうだろうな。んじゃあ、こっちからいくぞ――「戦う前にいいですか?」
剣を降る直前の格好で止まったチェインは、怪訝そうな顔を作る。
そして、少年は言った。
「二人のお嬢さんと一人の紳士はどこに行きました?」

+++

二人のお嬢さんは走っていた。
「本当にこっちに走って行ったのですか?」
「そのはずよ!!」

二人はクルーがまだ負傷していない時、店の外で怪しい男を発見したのだ。
身なりは全身黒ずくめに加え、手にはなにやら大きな入れ物を持っていた。
それをリビーが発見して、今のような状況になっているのだった。

「だけど、もしも悪い人だったら、どうしますか?」
「その時は私が羽を剣に変えて戦います!!」
「そんな、無茶はしないでください、リビーさん」
「その台詞、ついでに貴方に返しますよ、えーと・・・・」
そこでリビーは隣で一緒に走る少女の名前を知らないことに気付き、問うた。
「貴方、名前は?」
「そういえば、名乗っていませんでしたね。私はアブソーです」
「アブソー・・・・」

――どこかで聞いたような・・・・。

「あ」
「ん? どうしまし・・・・」
そこで二人が見たもの。

赤く赤く燃える、炎だった。

+++

少年が動いた。
チェインが避けるように上体を反らすと、ナイフの刃が頬を掠める。

あの後、やはり実力はファントの方が若干勝っていたが、姿が子供なので決定的で致命的な攻撃をチェインに与えられずにいた。
そのチェインはというと、おもに上半身にかすり傷を負っていた。
その原因は、さきほどのような状況が続いていることを示していた。
つまり。
チェインは避けることもままならないでいたのだ。

「ん? さっきから逃げてばかりじゃない? さっきの威勢はどこにいったのかな?」
「うるせぇ、こっちにも作戦ってものがあるんだよ」
「へぇー、そう」
興味なさげにそう返すと、少年は容赦なく刃を振るう。
「くっ・・・・」
チェインはその高速のナイフ捌きに、ただただ剣で防御することしかできなかった。
刃と刃のぶつかる音が連続して、まるでオルゴールのメロディーのように聞こえる。
少年はその旋律に酔いしれたように、踊るようにナイフを動かした。
そして。
「それっ!」
そんな声と共に、隙のできたチェインの胸に――心臓に向かってナイフを突く。
「こっ・・の・・・・」
チェインは体を横にずらして、かろうじて危機をのりこえた。
腕にかすり傷をのこして。
そこで唐突に、少年が気付いたように言う。
「そうだね。そろそろこの笑劇にも飽きてきたし――」

「今度こそ幕を堕ろそうか」

と。
少年はチェインに向かって床を蹴り、突進する。
「・・・・一騎打ちって訳かよ」
ぼそりと呟き、チェインは少年の攻撃を待つように、その場で剣を構えた。
少年が走りながら叫ぶ。
「喰らえっ!」
手に持っていたナイフを、投擲した。
チェインは慌てて剣を使ってナイフをはじいた。

――・・・・何で、自ら武器を捨てた?

チェインはすでに目前にいる少年の手を見た。

そこには、少年がさきほど人間から拝借したもう一本のナイフが光を反射して、光っていた。

「やばっ・・・・!!」
チェインには剣を振る時間など、無かった。
少年は言う。

「Good bye a brave knight」

赤が、舞った。

+++

「どどど、どうしましょうアブソー様!!」
「わわわ、分かりません!!」
どもる二人の前には、炎。
まだあまり大きな炎とは言えないとはいえ、それは十分少女達にとって脅威となった。

炎は建物を出るための唯一のルートを、塞いでいた。
故に、脅威。

「じゃあ、さっきの人は、火をつけるために・・・・」
「ということは、あの男もファントに操られていたのね。もう! せっかくアポトニティー様と良い雰囲気だったのに!!」
そう言って悪態をつくリビーに、アブソーは冷静に言う。
「あの・・・・リビーさん。取り敢えず、ここは危険ですし、戻りませんか?」
言った瞬間。炎から火の粉が散って、さらに火の手を広げた。
リビーはそれを見て、改めて状況を確認し、
「そ、そうね。一旦戻りま――」
振り返って、歩こうとした――その先に、いた。

クルーが立っていた。

「クルーさん?」「あ、アポトニティー様?!」
二人の輪唱に、クルーは答えた。
「手を、治療してくれませんか――」
そして、刹那。
クルーは炎を発見する。

+++

「ちっ、思ったよりも痛ってぇな」
「・・・・ふふふ。本当に勇気ある騎士ですね。貴方は」
どうじに呆れますけどね、と言う少年のナイフは、チェインの体に突き刺さってはいなかった。

ナイフはチェインに片手で握られて、止まっていた。

「クルーのアレを見てな。あれはもしかしたら使えるんじゃないかと思った」
『アレ』とは、勿論クルーが両手を使ってチェインの剣を止めたことである。
「そうですか。なかなか模倣の才能があるようですね」
おどけて言うと、少年はチェインに問う。
「それで、ここからどうするおつもりで?」
チェインはナイフを防御するために、やむなく剣を落としていた。
つまり、武器が無い。
「剣を持っていない騎士【ナイト】は、ただの人ですよ」
少年はさらにナイフを押す力を強める。それに比例し、チェインの顔も歪んでいく。
「はっ! けど俺は人は人でも妖精だ!!」

そして――そして、一瞬の刻が過ぎ。
チェインの手は光った。

少年が気付いた時には、ナイフの刃は、紙になっていた。
「へ、『変化』の力・・・・」
「じゃあな!! 餓鬼はおとなしく寝てろ!!」
チェインは無傷だった片方の手を強く握って拳を作り、それを思いっきり少年の顔面に喰らわせた。
少年の体は後方まで飛び、そのまま倒れて、そして、動かなかった。
それを見て、チェインは安堵のため息を吐き、そして息を吸い、
「痛ってぇえええ!! 今頃痛みがじわじわときたぁああ!!」
手を押さえながら、叫んだのだった。