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向日葵の悲劇、八妖精の戦闘


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「一つ確認させてくれ」
チェインは珍しくまじめな顔で言うと、目の前のテディベアを睨みつけて、
「お前は妖精界で一番の美少年で、八妖精になった最年少の妖精のマニなのか!?」
早口で、叫んだ。
すると、チェインの下にある地面がうごめきだし、文字が描かれた。
[YES]
「嘘だろ! そんなわけない「だけどチェイン、実際にあったんだ」だけど・・・」
ティーはマニを抱き上げ、マニを指差した。
「これがなによりの証拠だろ?」
[これじゃないよ。マニだよ]
「あぁ、ごめんね。マニ」
ティーは、急に暴れだしたそれをあやすように頭を撫でた。
「あの・・・さっきから気になっていたんですが・・・」
アブソーは、風で消えかかっていたYESの文字を指して、マニに尋ねた。
「何故マニさんは砂で文字が書けるんですか?」
マニはその問いに対して、
[これは僕の力。『実操』の力。生き物が触れる物を、全て思いのままに操れるんだよ]
砂、で答えた。
「マニさんはすごいですね!」
少女はテディベアに近付くと、ティーと一緒に頭を撫で始めた。
マニの顔は赤くなっていった。
その瞬間、チェインとクルーは二人して同じ事を思った。

――マニ・・・羨ましすぎる・・・。

――マニ・・・羨ましいです・・・。

+++

クルーはそんな微笑ましい場面の中、こう切り出した。
「マニがテディベアになったしまったのは分かりましたが、そもそも何故こんな事に?」
すると、クルーの足元がうごめき始めた。
[一人だけ、犯人に心当たりがあるよ]
皆の顔が緊張で強張る。
「それは・・・誰ですか」
クルーのそんな問いに、マニは簡潔に、こう答えた。
[時空に飛ばされる前に、タイニーに変なジュースを飲まされたんだよ]
皆は、すぐに納得した。

+++

「・・・へックション!」
[大丈夫? 風でもこじらせた?]
「いや・・・いたって健康だけど・・・」
[ふーん。誰かが君の噂でもしてるんじゃない?]
城の庭で、花を通じて巨木と話す少女はケラケラと笑って。
「僕は色んなイタズラしてるから、噂の心当たりが多すぎるよ!」

+++

「だからさ、チェイン。 もう少しここにいてくれない?」
「そんなこと言われたって・・・」
「だけどチェインさん、見捨てるのは良くないですよ?」
アブソーのその言葉に、チェインは何も言い返せなかった。

時は少し遡る。
タイニーのジュースの騒動があったあと、
チェインはもう一度マニに質問した。
「マニはこんなのになっても、マニだ。八妖精には変わりないんだろ?」
[こんなの、っていう表現は気に入らないけど。確かにその通り、儀式はできるよ]
するとチェインはみんなに向かって、
「じゃあ、ここに長居する理由もないってことで「まだ帰らないで!」・・・ティー?」
ティーは重苦しく、口を開いた。

「このままだと――アルファが、死んじゃうんだ」

「・・・その原因は、おそらくはあの向日葵」
「向日葵たちが、アルファさんを苦しめているのですか?」
「少し違うよ、アブソー」
ティーはマニを抱く力を、少し強めた。
そして、ゆっくりと口を話し出す。
「あの向日葵は、いわばこの時空の太陽そのもの。太陽はいかなる時でも、生きるものに『生』を与える」
すると、砂が再びうごめいた。
[だけど、最近向日葵の花が枯れ始めているんだよ]
「だから、もし太陽がなくなったら・・・アルファは・・・・」
珍しく泣きそうなティーを見て、事の重大さを理解したクルーは、ティーの手をとって。
「そんなに心配しなくてもいいですよ。ここに私がいる限りは、ね」

+++

「・・・分かった、俺も残る。だけど、何で向日葵が枯れ始めているんだ?
強い魔力を持つあの向日葵が、枯れるなんてことはないはずだろ?」
「チェインにしては珍しく頭が回りますね」
チェインはクルーを、一瞬睨んだ。
「私、あなたたちが来る前にずっと向日葵を観察してたの」
「それで・・・何か見たんですか?」
そんな少女の問いに、ティーはおおげさな身振りをいれて、言った。

「一輪の向日葵が、突然赤く光って、そのまま・・・枯れたの」

+++

現在、アブソー達のいる時空には、夜というものがない。
向日葵達が一日中太陽として活動することで、夜の時間も昼のようにしてしまうのだ。
そして空が明るい今、実質的には夜の刻に、アブソーとチェインは隣同士で座っていた。

「あったかい・・・ですね」
「そうだな」
「なんだか、眠くなりますね・・・」
「俺達は今見張りをやっているんだろ? 今は眠いのを我慢しろ」
「あぁ、そうでした。・・・向日葵達が枯れてしまう瞬間を見ていないと・・・」
アブソー達は、とりあえず向日葵が枯れる原因を調べましょう、というクルーの提案の下、アブソーとチェイン、そしてクルーとティーの二手に分かれて向日葵達を見張ることになったのだ。
しかし、本来はこの時間にはもうすでに夢の中、のアブソーにとっては、この仕事は難しいものだったらしく、もうすでに彼女のまぶたが落ち始めていた。
「・・・そんなに眠いか?」
「・・・いえ・・・大丈夫・・・ですよ」
「もう目が開いてないけど」
「そんなこと・・・ないです」
そんな虚ろなアブソーを見かねたチェインは、
「眠いんだったら寝とけ。何かあったらすぐに起こすから」
「じゃあ・・・お言葉に甘えて・・・」
アブソーはそういい残して、完全に思考を停止し、眠りについた。
頭をチェインの左肩に乗せて。
「・・・え。そこで・・・?!」
チェインの顔は一瞬で見事に赤くなった。

――か、顔が・・・近い近い!!

チェインはその後、左の方向を見ることはなかった。
だが、しっかりと、チェインは左肩を通じて彼女の温かさと儚さを感じた。

+++

そのころ、アルファに乗って見張り中の二人は。
「・・ん?」
「どうしたの?」
「いや、チェインの心が動揺していたので、何かと思ったら・・・」
「アブソー関係・・・だった?」
クルーはその言葉に、ティーの声色を真似て、
「ビンゴ」
とだけ言った。
「はは、全然似てないよ!」
「そうですか? けっこう自信はあったのですが・・・・・あ」
「今度は何?」
クルーは振り向いて、
「ティー、マグマは生き物なのですか?」

+++

――とても暇です。・・・とても。

マニは『実操』の力で自分の体を動かし、比較的見晴らしのいい場所にいた。
見上げると、アルファがゆっくりと飛んでいる。

――ティーはクルーと二人っきりですし、気に入りません。

そして、マニはふと視線を動かした。
そこには、茎の部分がほのかに赤い向日葵があった。

――あれって・・・。

すると、頭上から声と風が降ってきた。
「マニ! あなたも気付いたんですね!!」
風の音に負けないように、クルーは声を張り上げて続ける。
「その現象の原因が分かりました!」
それを聞いたマニは地面に大きな文字を書いた。
[原因? いったいなんですか?]
クルーはいっそう声を張り上げて答えた。
「生きているマグマです!!」

+++

「はぁ・・・おい・・・無事か?」
「チェインさんのおかげで無傷です。チェインさんこそ、大丈夫なんですか?」
「俺は・・・はぁ・・・八妖精だぞ・・・傷一つついてねぇよ・・・」
チェインはアブソーにそう答えると、『マグマ』に向かって剣を振り下ろした。
マグマは剣に触れた瞬間、ジュッ、っと音を立てて、しぼんで消えた。

――くそ、お前ら! 一体何者なのか分からないが、よくも、よくも・・・。

チェインは近くにいたマグマに向かって走っていく。

――アブソーとの時間を邪魔しやがって!!

剣はマグマの中心を貫いた。
「許さない、絶対に」

+++

「マグマが生きているなんてありえるのか?」
「普通はありえませんが、実際に動いていますし・・・」
[なにより、ここは時空です]
「それもそうですね。あ・・・」
「どうしたの? クルー」
クルーは羽を剣に変えると、二人を見据えて、
「チェインとアブソーがマグマに襲われているので、助けに行きます」
そして走り出した。
[どうしたの? 追わないの?]
マニはそうティーに尋ねた。
するとティーは、さきほどのクルーと同じ動作をした。

手に持っていたのは――七色に輝く剣。
そして、それがマニに対しての答えだった。

「もちろん。行くしか無いじゃん」
ティーは、マニを片手に持って、走り出した。

+++

「あれが・・・向日葵が枯れた原因の・・・」
助太刀をするため、チェインのところに向かったクルーが見たものは、真っ赤にうごめく「何か」と、その赤の中にいる二つの人影。
その一人は金色に輝く剣を持ち、もう一人はその後ろでうずくまっていた。
「アブソーをかばいながら戦うなんて・・・いくらなんでも無茶しずぎですよ」
クルーは己の手にある青く輝く剣を握りなおし、二人の下へ走っていった。
そして、クルーが走り去った後に、また人影一つ。

+++

赤いマグマが、チェインの頭に向かって飛ぶ。
チェインはそれを気配で感じ、正面にいたマグマを切った剣をそくざに引き、
そのままソレに向かって振り下ろした。
「アブソー! ふせろ!」
周りをうかがうために立ち上がろうとしたアブソーにそう叫ぶと、
チェインは、また次のマグマに剣を振るった。
「チェインさん!」
どうした?! と返す暇はなかった。
背後からマグマの集団がまとめて飛んでくる。
「よけてください!!」

――ダメダ。ソシタラ、オマエガ・・・。

「私の事はいいです! お願いです! チェインさん!!」
もう、「危険」はすぐそこまで迫っていた。
チェインは決めた。
いや、もうずっと前から、時空に旅たつ前から決めていた。

『お前のことを、命を懸けてでも守ってやる。絶対にな』

それは、彼が彼女へと送った言葉。
決意、約束、契約。
そのどれにも属さない、それはただの言葉。
だけど、その言葉は確かに、彼の心に根をはやし、息づいている。
例え、彼女がソレを忘れていても、これから一生、彼はソレを忘れない。
チェインは彼女の盾となることを決めた。
彼は静かに目をつぶった。

そしてその瞬間、もう一人の騎士【ナイト】が現れた。

チェインが目を再び開けると、そこには赤かったマグマたちと、黒髪の青年がいた。
「まったく、チェインは私がいないと何もできないんですね」
チェインは目を見開いた後、フッと笑って、
「俺はお前のそういうところが嫌いだよ」
クルーに背を向け、再び剣を持ち舞い始めた。

――クルー・アポトニティーが剣を持ったら、それはすなわち「無敵」に等しい。

そんなことを、昔誰かが言っていたことを、チェインは先頭の真っ只中で思い出していた。
「はっ!」
クルーは素早く剣を回したり、時には振り下ろし、
文字通りバッサバッサと、マグマを倒していった。
「チェイン、いくらなんでも敵が多すぎます! ここはいったん引きましょう」
「俺も逃げようとしたさ! けど、マグマが密集しすぎて逃げ道がねぇんだよ!」
チェインの言ったとおり、周りには赤い絨毯でもひいたように、マグマたちがうごめいていた。
そこで、アブソーはふと視線を横にずらした瞬間、気付いた。
「あの、チェインさん、クルーさん。あれって、ティーさんじゃないですか?」
クルーが即座にアブソーの視線の先を追うと、
そこに微かに見えたのは、ゆれる茶髪だった。
「そうだ、ティーの力なら・・・」
クルーは先ほど見えた場所を確認すると、
そこに向かってマグマを倒しながら走っていった。

――やっぱり、あいつは格が違う。キレもスピードもパワーも。

チェインは一人考える。
クルーは昔から戦いのセンスはあったが、運動能力が低かった。
八妖精になると決まったときに、まず選ばれたものがやることは二つ。
名前の力の訓練と、『武器』の訓練。
二つ目は平たく言えば、剣の訓練、というものだった。
そこで、クルーは自ら気付いたのだ。

自分には体力はないけど、テクニックはある。
クルーが剣術が得意なのはただ昔から努力を積んできたから、という理由だけではない。
彼は剣との相性がすこぶる良いのだ。

ただ、それだけ。

+++

「ティー、お迎えにあがりましたよ」
「そんなかっこつけなくていいから・・・私がしようとしてること、分かってるでしょ?」
クルーは襲ってきたマグマを切りながら答えた。
「えぇ、そのために来ましたから」
「なら援護お願いね」
ティーはそれだけ言うと、地面に手をつけて、力をこめた。
そして、地面はティーの手から徐々に青くなっていく。
その『青』は、地面を伝ってマグマにも伝わっていく。
そして、マグマは己の変化に気付くと、凍ったように固まってしまった。

――否、凍ったのだ。

その一連の場面を見たアブソーは、チェインに尋ねた。
「何故、何故マグマたちは凍ってしまったんですか?」
チェインは剣を羽に戻すと、答えた。
「ティーの『色彩』の力で生んだ色には様々なものに影響を及ぼす効果もあるんだ」

ただ、それだけ。

一方、ティーに危ないから、と言われて
おとなしく戦いのさなかからはずれたところにいたマニは、一人心の中で呟いた。

――剣の扱いもまだまともにできないのに・・・本当に危ないのはあなたの方です。

空からアルファの雄たけびが聞こえた。