マンチSS3

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だれでも歓迎! 編集

マンチ・グループSS


合計点<+21/『早めの対策が大切です』まで>




『神様は少女の形』<+3/千尋>


―結昨日家にて

才「『結昨日家がプリンまみれ』事件についての報告です。主犯はやはり命(めい)でした。」
雪「はー、あの子には困ったもんだねぇ。無生物に「命」を与える能力、もう少しまともに使って欲しいなぁ。
  でも彼女の能力はこんな長時間続かないし、ましてや巨大化とか分裂とかはできなかったと思うんだけど。」

そう言いながら、結昨日家当主である結昨日雪(ゆき)は目の前のドデカプリンをつつく。

才「どうも小さな子たちにも手伝わせたようです。
  増(ふえ)の物質分裂能力『フエちゃんのポケット』と大(だい)の物質巨大化能力『イッツア・スモール・ワールド』を、
  呪(のろ)の他人の「能力」を「状態異常」として付加する能力『呪化』でプリンに与えて、
  さらに永(えい)の状態異常の効果時間を「永続」にする『悪夢はずっと』を使えば勝手にプリンが増えていくよ、
  という感じにそそのかしたみたいですね。」
雪「‥‥、それでそのプリンにはすでに命の『インスタント ライフ』が掛けられていたわけね。
  というかそのコンボは強力だね‥‥。」
才「とりあえず子供たちに指導はしました。
  みなプリンで窒息死しかけたことがトラウマになったみたいで素直に聞いてくれそうです。
  泉(いずみ)がバステ解除能力「仮初めオアシス」を使ってくれなければ本当に危なかったですしね。
  それでこの唯一残ったプリンはどうされるつもりですか?」
雪「うーん、じゃぁこの子は結昨日プリンと名付けよう!」
才「‥‥、猿、蛙の次はプリンですか‥‥。」
雪「結昨日家は命と力の有るモノは受け入れるよ。」
才「さすがにコレに命があるというのには無理がないですか?力も別にコレ自身の能力と言うわけでもないですし。」
雪「あはは、まぁそれもそうだけど、この子には「自我」が芽生え始めてるから大丈夫だよ。
  だからこそ名前が無いとかわいそうだしね。
  それに、結昨日家としても媚を売っといた方がいいと思うし。」
才「媚?誰にです?」
雪「私はさー、プリンももちろんすきだけど、ヴァニラアイスが一番好きなんだよねー。それはみんなも、もちろん命も知ってる。
  それに、あの冷蔵庫にはプリンだけじゃなくてゼリーだろうと杏仁豆腐だろうとなんだって揃ってた。
  なんで命はプリンを選んだんだろうね?」
才「‥‥あの子のことですから特に理由は無いんじゃないでしょうか。」
雪「うん、そうかもね。でも神様がプリンを好きで好きでたまらなくてでっかいプリンが食べたいがために、
  うちの子たちを使ってこの子を生みだしたんだとしたら、結昨日家のアピールぐらいはしといても罰は当たらないんじゃないかな。
  まぁ食べられるか否かはこの子自身が決めることだけどさ。
才「はぁ‥‥。」
雪「うわ、そんな人を「何この人いきなり神様とか言いだすの?」って顔で見ないでよ!
  なんかそういうのが「視」えたんだよ!
  ‥‥お、この子また分裂始めたぞ。」

 ** ***

―自我が薄かった頃の記憶はあまり無いのだけれど、この時のことは何故かよく覚えている。
 私を見る雪様の目が母親のそれによく似ていたからかもしれない。
 ‥‥、もっとも自分はプリンだからその辺の感情に自信は無いのだけれど。

 そして、私は今一人の少女の前にいる。
 私は今の今まで例え神様にだって食べられてやるつもりはなかったのだけれど、
 彼女のプリンの食べっぷりを見て、気持ちが揺らいでしまった。
 その表情が、彼女がどれだけプリンを愛しているかを物語っていた。
 何というか、その、ここまで幸せそうな顔をされるとプリン冥利に尽きるというやつだ。

 思えばプリンとしては分不相応なプリン生を送ってきた。
 結昨日家での生活もマンチグループでの生活もどれも本当に楽しかった。
 だからもし私が「神様に望まれて」生まれてきたのなら、私はきちんと恩返しをしないといけないと思う。
 目の前の少女はもしかしたら神様「代理」かも知れないけれど、大本の神様まで幸せにしてみせよう。
 味にはすこぶる自信があるのだ。
 私は、私固有の能力「擬人化」を解いて、普通の、ただしサイズは超特大のプリンに戻る。


神様、さぁ召し上がれ。


『前哨戦』<+2/千尋:関口はまたレイプか(´・ω・`)>


(に、逃げなきゃ、逃げなければ……!)
校舎の中を関口は走っている。
ついさっき、カッターナイフを持った変な女に、何か知らないが死刑宣告をされて、尋常ではない勢いで切りかかられた。
いまだ首がつながっているのは幸運だとしか言いようがない。いや、悪運か。
恐怖のあまり錯乱しながらも、その足は止まらない。
と。
視界を赤いものがよぎった。
(……?)
思わず足を止めてしまう。とたんに身体を疲労と倦怠感が襲うが、次の瞬間にはそれも吹き飛んだ。
そこにいたのは女の子だった。
「――――う、」
ただの女の子ではない。赤い頭巾の可憐な女の子だ。
「ううう、」
そしてものすごく被虐感あふれる女の子だ。
思わず滅茶苦茶にしてやりたくなるオーラ満開だ。
「ううううおおおおおおおおー!」
本能に従い、関口は彼女目がけて飛びかかる。だが……
「おおおおおーー……おおっ!?」
なぜか赤頭巾の姿がかき消えた。床に激突する関口。
「な……ど、どこ行ったんだ! くそ、せっかく一世一代のチャンスだったってのに……! 誰だ、この世界を全年齢向け設定にした奴は……畜生……畜生……!」
関口は面くらい、そして、思い切り慟哭する。

それが最後だった。

関口は潰れて死んだ。
突如出現したミサイルが、屋上を貫き、上階の天井を引き裂き、関口を押し潰したのだ。
関口に着弾したミサイルは、直後に爆発し、核の炎を辺りに撒き散らす――だが。
奇妙なことに、爆炎は関口から一定の距離で遮断されているようだ。
さらに、よく見ると、超高温の熱にも関わらず、床や校舎の壁面には傷一つついていない。
これが今回の「転校生」の能力。
自らのミサイルが効果を発揮したことを彼女も気づいただろう。
間もなく開戦されるチート会とマンチ・グループの抗争……その場に現れるのも、時間の問題だ。


それから、ほどなくして。
「ああ、いい曲だった」
先ほど、ミサイルが炸裂した場所に、赤頭巾は降り立った。
彼女のもとへ、EA01が歩いてくる。
先ほど赤頭巾の姿が消えたのは、EA01の演奏能力の効果だったようだ。
「ご利用ありがとうございました」
「うん。じゃあ、さっそくもう一曲……」
「ただいま能力使用後の休止モードで運用中です。次回能力発動可能時間まであと32分です」
「ええー」
肩を落とす赤頭巾。
上に目をやると、派手な破壊跡が見えた。
そこから、眩い陽光が差し込んでくる。
「暖かい日になりそうね。選抜メンバーの人たちは大丈夫かしら」
戦闘開始まで、いくばくもない。


『開戦は突然に』<+1/千尋>


「ニュースニュース!『サファイアラクーンの誘拐魔またも現る』だってさー。」
ある日の朝。月読零華は報道部の号外を持ってマンチ小屋に顔を出した。

「今月に入ってからもう5人なんだって。凄いペースだねー」
「誘拐のぉ…。身代金の要求があったわけじゃなかろう。そういうのは失踪いうんじゃ」
駒沢の表情が僅かに堅くなったのを榎本は見逃さなかった。

「おおかたどっかの誰かが殺して死体を埋めただけじゃろう。
 5人の素性を良く調べれば共通点があるかも知れんぞ」
「あはは、この学校ならそういうこともあるかもしれませんね。
 でも僕が聞いた話ではみんな一般人で、部活にも入ってないんじゃなかったかな」
「お、駒沢さん詳しいねー。もしかして被害者と知り合いだったり?」
「い、いや、全然そういうんじゃなくて。たまたま小耳に挟んだだけですよ。」

月読と駒沢のやりとりを眺めながら榎本は目を細める。
(部活にはいっとらん、のぉ。手芸部は謎の非公認組織。失踪者とは駒沢に返り討ちにされた追っ手というところか)

「組長!組長ってば。聞いてます?」
「ん?なんじゃ」
「やっぱり聞いてなーい。駒沢君も誘拐魔なんていないって言うんですよ。組長もそう思います?」
「…いや、おるかもしれんのう」
「やったー、これで2体1だー。ほれほれ、駒沢君、降参しなさい」

(ただの噂でも、あの女の耳に入ったら本当になるけんのぉ)

ガラガラッ
そこに勢い込んでやってきたのはDr.ルナだった。
彼女にしては珍しく狼狽した様子で、顔色も青ざめている。
「お、おい月読ッ、人工精霊たちをどっかにやったか?」
「え、知りませんよ。どうかしましたか?」
「私の研究室ごと破壊されて誰かに持ち去られているんだ。クソッ
 スズハラか、某国か…いや、一番怪しいのはチート会だ。
 ああーもう!この学校の治安の悪さには本当にウンザリする!!!
 組長!早急に兵隊を集めてくれ。すぐにでもあいつらを壊滅させよう」
「ふん、丁度いい機会じゃ。準備せぇ、12時になったら殴り込みじゃ。」

ダンゲロスKING 開戦!
(月読とルナは心労のため休憩しています)


番外編『もう一つの決戦…!!(リザーバー遅刻の理由)』<+2/千尋:どんな冷蔵庫なら結昨日が入るんだw>


サファイアラクーンの誘拐魔(以下、サファイア)は、決戦前にある場所を訪れていた。
希望崎学園の校舎裏にある古い建物…今は使われておらず、立ち入りが禁止されている旧校舎…
そこには、チート会のリザーバー達と、彼らによって捕えられたマンチグループのリザーバー達がいた。
マンチグループ陣営の者達が捕まったのは、決戦を前に浮足立った不意を突かれての失態であった。
ある者は柱に縛りつけられ、またある者は鍵付きの冷蔵庫に閉じ込められていた…
幸い深淵の昌石、ディック、文字化けはマンチの一員とはみなされなかったのか、その辺に放置されていたが
彼らだけでここにいる全員を倒してマンチ軍を救出することは難しそうであった。

「どうだ?こいつらの様子は…」
冷酷な笑みで仲間達に声をかけるサファイア。
「ええ、おとなしいモンですよ、サファイアさん。捕まえる際も隙だらけで簡単に倒せました。
 天下に名を轟かせるマンチグループの名が聞いて呆れるぜ。
 こんな奴らが下にいるんじゃあキングの奴もさぞかし苦労してるんだろうな!」

「くっ…、貴様ら絶対に許さんぞ!」
悔しそうにチート会の者達を睨みつけるマンチ軍。
「お前らもだ、木陰、雨月!易々と敵の陣営に寝返るとはどういうつもりだ!」
敵のリザーバー達の中にはマンチ軍を裏切った木陰と雨月の姿もあった。
二人とも無表情のまま押し黙り、表情から彼らの感情を読み取ることはできそうになかった。代わりにサファイアが口を開く。
「それはお互い様だろう、こちらの軍にも敵に寝返った愚か者どもがいるのだからな。
 そうだろう?赤頭巾、白金、それと…ここにはいないようだが、駒沢の奴もだな。
 マンチに肩入れするとは馬鹿な事をしたな。裏切り者がどうなるのか、身を以って思い知るがいい。」

「…さて、それじゃあここはお前らに任せて、私もそろそろ戦いの準備をしにいくとするか。
 戦闘が始まる前に人質を用意しておかんとな。
 くくく…大切な家族や友人を人質に取られたマンチ軍の怒りと恐怖に満ちた顔が目に浮かぶようだ…」
不敵な笑みと共にその場を去ろうとするサファイア。

「おい、待ちなよ青ダヌキ。」
サファイアの足が止まった。声をかけたのはダンゲロス子だった。
「そう、お前に言ったんだよ青ダヌキ。…タバコ持ってない?今朝から一本も吸ってないから、頭がどうにかなりそうなんだけど。」
「……………ふん、ツイてるな、箱ごとやるよ。」
一瞬睨みつけた後、ダンゲロス子の足元にタバコを投げつけるとサファイアは足早に旧校舎を去っていった。

「チッ、メンソールか…まあいいや、ないよりマシだ。ちょっと誰か咥えさせてくれない?両手縛られてたら拾えないんだけど。」
何をこんな時に呑気なことを言っているのか…チート会の者達が呆れている中、雨月が面倒くさそうにタバコを拾ってダンゲロス子に咥えさせた。
「…火は?」
「ありがと、火はいいのよ。自分で点けるから」
「………?」
次の瞬間、ダンゲロス子が自身の縛られているロープを焼き切って雨月に襲いかかった。
何が起こったのか瞬時に判断がつかず、呆気にとられているチート軍の一瞬の隙をついて、深淵、ディック、文字化けも背後から奇襲を仕掛けた。
冷蔵庫からは、鍵をこじ開けて結昨日とドリアンが飛び出し、他の者達も次々に拘束を解いて戦いに躍り出た。
全員、誰かが行動を起こすのを待ち構えていただけだったのだ。

「急げ、もう間もなく戦いが始まってしまうぞ!!」
「早くこいつらを片づけて榎本達のところに駆けつけるんだ!」

「ま、まずいぞ。なんてことだ!マンチ軍の奴らを逃がしてしまった…!早くENTさんに知らせないと…!!」



両軍主力の激突は目前まで迫っていた…!!


『キノシタ キョウスケ』<+2/千尋:多重人格だったのか……>


我々はスズハラ機関にある機密文書を入手した。
3年前・・・・、つまり、2009年に起きた希望崎学園内の抗争を検証するためだ。

この文書には世界中のありとあらゆる魔人の情報が記載されている。
機関に所属するエージェントが世界各地で活動を行う際、そこにいる魔人の情報を得るために使用されているのだ。
そのNo.5の項に木下恭介、彼のことが書いてある。
国家のEFB指定を受けてない魔人の中で、唯一SS級の評価をされていた。

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(文書より抜粋)

魔人名:キノシタ キョウスケ
性別:男
総合危険度:SS級

この魔人には3つの人格が存在している。
その人格によって、強さ、特殊能力が違ってくるので注意が必要である。
もし遭遇した場合、彼がどの人格でいるのか早急に確認することが急務と言える。

1.木下 鏡介
危険度:D級
攻撃:20 防御:15 体力:10 精神:10 

特殊能力「空間湾曲」
自分の場所へ敵を引き寄せ殴る。

評価:体の頑強さに加え、特殊能力も優秀ではある。しかし、知能は高くないので、脅威度は低い。


2.木下 恭介
危険度:B級
攻撃:20 防御:0 体力:5 精神:5

特殊能力「びちびちびっち」
淫獣ダラムを操り、広範囲に攻撃を加えてくる。

評価:広範囲の攻撃が厄介であるが、当機関の工作員であれば倒せなくはないだろう。が、油断をしてはいけない。


3.木下 狂介
危険度:SS級
攻撃:不明 防御:不明 体力:不明 精神:不明

特殊能力「不明」

評価:この人格は現在のところ1回しか観測されていない。2009年に希望崎学園で起きた抗争で、木下 恭介から狂介に変わったときだけである。
当時、希望崎学園に潜入していた2人の工作員は、以下のようなメッセージを送信し、直後に消息を絶っている。

「最愛の者が窮地に陥ったとき、・・・あ、悪魔が貌を出す。」
「全ての空間が捻じ曲がったような、圧倒的な暴力・・・存在感・・。」

抗争後の現地調査で、木下狂介の周囲300mに存在した生命は全て活動を停止していたことが確認されている。
ただし、これは能力による現象ではなく、単純な暴力による所為であることも調査で分かっている。
この人格の情報は不明な部分が多く、早急な調査が求められている。

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王女エリエスと護衛騎士ファイエルvsロイド安藤SS『前哨戦』<+1/千尋:最後に覚醒したのが残念!>


「Oh!アイムソーリー、ごめんナサイ」
「なんなんですの……あなたは……?」
「ナンナンデスノォ、AN☆AT☆AH☆A?」
「こやつ……。どけ! 死にたくなければな」
 ファイエルは目の前の外国人の男に切っ先を向ける。
「ヨワイイヌホドヨクホエル。まっことーにザンネンデース」
 エリエスとファイエルは今日行われるマンチ・グループとチート会の戦争に参加するはずだった。
 しかし、空港を降りてしばらくした後に、この外国人の男に道を阻まれてしまっていた。
「本当に殺すぞ?」
「NO!SOジャナイデス! PAWAA!TEKUNIKKU!SUBETEのMENでこちらがUWまわってMAASU!」
「あなたは、私たちの恐ろしさを知らないようですわね」
 エリエスが憐憫の眼差しをその外国人に向ける。
「美しいコスプレのお嬢sann! アナタガタハ、タイヘンなミッスィをおかしましタア」
「名を名乗れぇ!」
 ファイエルが激昂する。
 エリエスは平静を装っているが、額の青筋を隠せない。
「美しいコスプレのお嬢サン……SONNAフィエスをしテいルト、シュワになってしまいますYO☆」
「不快です! 切って捨ててしまいなさい!」
 ファイエルが待ってましたといわんばかりの反応で男に切りかかる。
 男はとっさに退き、難を逃れる。
「なにしゃがんだ……」
 男の眼がねが外れる。
「魂の鼓動を見せてやる! センチメンタルアウトローブルース!」
 黒人のビジョンが現れ、相手は死ぬ。


『早めの対策が大切です』<+1/千尋>


「今年は新型の五月病が流行るみたいだけど、お嬢さんはもう対策は済んでるかい?」
と、三田に尋ねられ返答に困る千尋、五月病の対策といきなり言われても、訳が分からない。
「新型の五月病、えっ五月病って移るんですか?」
「ああ、最近発見されたU型(別名:雨月型)は特別らしくて、人から人へ無差別に移って罹った人をニートにしちゃうらしいんだよ。」
「まあ怖いですわね。」
「でも、これさえ飲んでいれば大丈夫。このDr.ルナ特製のカプセルを毎日1つ飲むだけで簡単に予防出来るんだよ。」
「それは、すごいです。その薬はどこで頂けるのですか?」
「丁度、持ち合わせがあるから一瓶あげちゃおう。」
そう言って、カプセルの入った瓶と一緒に、水の入ったコップを差し出す。
「それはご親切にどうもありがとうございます。」
コップを受け取り、すぐにカプセルを飲む千尋。
「これで、五月病対策はバッチリだ。」
「バッチリですね。」

このやり取りによって、この世界に人から人へ無差別に感染するが、薬を飲むだけで簡単に予防出来る。
新型の五月病、U型五月病が誕生し、猛威を振るい始める。
(具体的には雨月の能力が敵味方問わずになって、薬で予防出来るようになる。)


『擦れ違う二人』<+1/千尋>


雨月がチート会に引き抜かれた次の日、マンチグループは、メンバーに緊急招集を掛けた。
その事を榎本和馬から聞かされたルナは、何時ものように、雨月を迎えに行こうとするが、榎本にその必要は無いと言われる。
不審に思いつつも会議室に到着すると、すでにメンバーが集まっていたが3人ほど足りない。しかし榎本は俺達で最後だと言う。
会議の翌日に緊急招集と有っては、他のメンバー達も落ち着きが無い。口々に話し合っている。
「私語は慎め、これより会議を始める。」
そう榎本は一喝して会議を始めた。
「まず、我々は極秘裏にチート会のメンバーの切り崩し工作を行っており、チート会からメンバーを3人引き抜くことに成功した。
もういいぞ、入ってきてくれ。」
呼びかけると部屋に、男が両手に少女を侍らせた状態で現れ、男どもの嫉妬の視線を浴びたり、
二人の少女がどっちがより駒沢の事が好きかの言い争いが流血沙汰に発展し掛けたり、色々と脱線して、
ようやく次の議題、チート会側に寝返った、MUSASHI、木陰タツキ、雨月病の3人に対する対策へと移った。
ルナは、周りの状況から薄々はその事に気付いていたが、実際に言われるとかなりショックが大きく。
さらに、雨月対策として、取り合えずルナの開発した雨月の能力を防ぐ薬を全員分用意する。
と言う事が決定した事もそれに追い討ちを掛けた。
会議が終了し、ルナは一人で帰ったが、その帰り道でルナはチート会のメンバーと歩いている雨月を見つけた。
思わず駆け寄り、襟首を締め上げながら「あんたはあたしの患者なんだから勝手に居なくなるんじゃない!!」と問い詰めるルナに、
雨月は、「お前と居ると疲れるんだよ。もうほっといてくれ!!」と声を荒げて怒鳴る。
そんな雨月を見たのは初めてだったルナは、一瞬驚いたように動きを止めたが、「このバカ!!」と言う声と共に平手打ちを食らわせる。
「分かったわよ、もう知らない、あんたなんか勝手にどこへでも行けばいいわ。雨月のバカ、死んじゃえー!!」と言い放って駆け去った。
「死んじゃえ・・・か」
「追い掛けなくていいでござるか?」そう尋ねる服部に雨月は打たれた頬を押さえながら「ああ、清々したぜ」と答えた。
しかし、その打たれた頬は、今まで殴られたどんな攻撃よりも痛かった。

それから数日後、チート会にて
「雨月病の様子はどうですか?」という寂聴の質問に対して
セバスチャン「アイツは中々のニートだ。」
服部「女に振られてたでござるよ。」
播磨「少々落ち込んでいるようだ。何か悩みがあるのかもしれんな。」
夜渡「昼間セバスチャン達と一緒に家に遊びに来たりしてるわ。」
誘拐魔 「毎日、会ったら挨拶してくれる。」
王女エリエス「毎日、わらわのところへご機嫌伺いに来るぞ、これもわらわの美しさの・・・以下略」
どうやら、雨月は毎日ちゃんとメンバー達のところへ顔を出しているようだ。
やる気の無さは相変わらずだが、特に大きな問題は起こっていない。
同じくマンチグループから引き抜いたメンバー達とも、何かを企んでいるような様子は無い。
マンチグループと接触しようとする動きも無い。
取り敢えず今のところは大丈夫だろう、寂聴はそう判断した。
五月病を理由にほとんど学校に来ていなかった雨月の普段の様子を知っている者は、チート会にはほとんど居らず、
その者達も仲間を裏切ってこちらに付いたんだから、少しでも好感度を稼ごうと必死なんだろうと大して気にも留めなかった。
だから気付かなかった、雨月のやる気は日々低下しているというのに、毎日必ず全員のメンバーに会って回っている。
という事実に、雨月は五月病を装いつつ、全力でチート会の士気を下げて回っていた。

その頃ルナは全員分の完成させ、一息ついていた。
この薬は、タミフルXにも含まれている。精神に高揚感をもたらし、恐怖心を打ち消す成分を人体に害にならない程度に
ブレンドした栄養剤であり、結局のところプラシーボとさほど変わらない代物である。しかしながら、病は気からという言葉もある。
むしろ魔人にはこういった薬の方が効果があったりするのだ。ふと、机の上の瓶が目に止まる。
それは、雨月を治療するために作った薬の試作品で危険度で言えばタミフルXとほとんど変わらない劇薬である。
「あいつの場合は、こんな薬使わないで、何か目標を見つけてそれに、全力で打ち込んでくれればそれが一番なんだけどな・・・。
ってなんでそこで雨月が出てくるのよあいつは敵よ敵、あいつがどうなろうが知ったこっちゃ無いんだから。
とにかく頼まれた分は完成したんだから今日はもう寝よう、うんそうしよう。」
次の日には、メンバー全員に薬が行き渡り、マンチグループの雨月対策は万全となった。


『瀬戸内寂聴の暗躍』<+1/千尋>


会議が終わり、家路へと急ぐ雨月を一人の尼さんが呼び止める。
「五月病の雨月病さんですね?」
「誰ですか貴方は、その呼び名は好きじゃないんですけど」
「それは失礼いたしました。私はチート会の瀬戸内寂聴と申します。今回は貴方をチート会へお誘いするために参りました。」
「つまり、引き抜きって事ですか?面倒臭いんでそういうのはパスの方向で」
「あらあら、そんな事仰ってよろしいのですか」
(何だ、断ったら殺すとでも言うのか?)
「話は変わりますが、最近この辺りで行方不明者が出ているのはご存知ですか?」
(?なんだ急に・・・)
「真夜中に現れるという吸血鬼の話は?」
(吸血鬼・・・確かチート会にそう呼ばれている奴らが居たな、行方不明・・・、噂に聞くサファイアラクーンの誘拐魔か!!)
雨月の顔色が変わったことに気付いたのか、寂聴は笑みを浮かべながら
「ご存知のようですわね。そう言えば、貴方のお友達のルナさんでしたか、何時も遅くまで学校に残っていらっしゃるとか。
物騒な世の中ですから、女性のそれも夜道の一人歩きは危険ですわよ。」
「貴様まさか!!」
普段の何事にも関心が無い様子が嘘のように、怒りを露にする雨月に対し、寂聴は
「あら、そんなお顔も出来るのですね。」と涼しげな様子でこちらの答えを待っている。
「分かった、チート会に入る。入ればいいんだろう」
「了承して下さって嬉しいですわ。歓迎いたしますわよ。五月病の雨月病さん。」
(俺が嫌っていることを承知の上で二つ名を強調するとは、どこまでも人の神経を逆撫でする奴だ。)
「では、明日他のメンバーとの顔合わせが有りますので準備をして置いて下さい。
こちらから迎えの者を送りますから。それではまた明日。」
そう言って悠然と去って行く寂聴の姿が視界から消えるまで、その背中を雨月は睨み付けていた。


『雨月病とDr.ルナ』<+1/千尋>


時間的には、雨月が引き抜かれる前日の話です。

雨月病は、学校には行かない、理由は特に無い、強いて言えば五月病とはそういうものだからだ。
しかし、今日はダメなようだ。理由は、さっきからあの女が家のチャイムを連打し続けているからだ。
そうなると次は・・・「雨月、入るわよ」という言葉に続いてガラスの割れる音が、
今日は窓からか、そう思っている間にもドアノブを破壊して白衣を着た女が部屋に侵入してくる。
この女はDr.ルナ、名字は知らない。
ただ分かっていることはこの女が俺を自分の患者だと言って、俺の五月病を治そうとしているらしいということだけだ。
「雨月、今日はグループの会議の日でしょう学校行くわよ」
「行かない、僕は病気なんだ」と、病弱な青年っぽく言ってみる。
無言で頭を殴られた。だがここで引き下がるわけにはいかない。
「会議なんて面倒臭い、学校なんか行きたくない」と能力を発動させる。
これで、同じように会議に参加する気をなくしてくれれば、学校に行かずにすむはず。
今度は、愛用のねじきり拷問具で殴られた。イタイ・・・というか瀕死です。
「あんまりあたしの手を煩わせないで頂戴。キッチリ30%に手加減するの結構難しいのよ」
そんなあと5%狂ったら死ぬような危険なことは止めてください。ってあれ?様子が何時もと変わってない。
「あのう、つかぬ事をお聞きしますが、ご気分は?」
「ああ、あんたの能力なら効いてないわよ」
「!!」
「要は、気持ちが落ち込まないようにすればいいのよ」と言って白衣のポケットからカプセルの入った瓶を取り出す。
「うちのメンバーはある程度耐性が出来てたから、簡単だったわ」
雨月は自らのアイデンティティーを打ち砕かれ唖然としている。
ルナは、そんな雨月をしばらく見つめていたが、手早く傷の手当てをするとパジャマの襟を掴んで文字通り学校へと引きずって行った。
雨月は、色々と無茶苦茶な奴だけどちゃんと手当てもしてくれたし意外と優しいところもあるんだな、などと考えながら大人しく引きずられて行った。

だが、この時二人の姿を影からじっと見つめている人物がいることに二人は全く気が付いていなかった。


末那識千尋SS『プリンの暗喩』<+1/千尋:まあお下品>



 世界には4つの奇跡がある。

 一つ目は言わずものがな。
 我らがチート会とマンチ・グループの総大将

 もう一つは王女エリエスと護衛騎士ファイエルだ。
 彼らの犯した過ちは、この世界を揺り動かす。
 デスシャドウと呼ばれる破壊の権化。
 それはサヘートマヘートを揺るがし、ルンビニーを崩壊させた。

 セバスチャン・ポポルニートは、それを退治するために立ち上がった戦士であり、執事だった。
 しかしニートだった。
 この矛盾が両陣営を再び混乱させた。

 そして、今世界にはプリンだけが浮いている。
 プリンはいいものだ。
 しかし食べすぎは体に悪い。

 末那識千尋は、天使だ。
 しかし酔っ払いにもなる。
 それと同じだ。


 天才科学者Dr.ルナは言った。
「世界はプリンでできている」
「それでもプリンは震えてる」
「プリンは社会的な食べ物である」
 Dr.ルナはこれをOPPA(オーピーピーエー)ファースト理論と呼んだ。

 以下のような目撃例が、東京都足立区の公園でたびたび見られる。

「砂場にいた子供たちが突然腹部を押さえて笑い出し、おいしそうに砂山の山頂にしゃぶりつく」

 傍目にはおかしなこの光景も、OPPAファースト理論で全て説明がつく。

 ようするに、大人たちがおいしそうに、ベッドでプリンにかぶりつくのと同じ原理である。

 世界には4つの奇跡がある。
 うち一つは、今回の抗争、そのものに起因する、
 しかし、最後の一つはまるで違う。

 夕焼けの大地はこげ茶色。
 夕焼けの雲は何の色? 美しい黄色い繭の色。
 この二つのコントラストが、我々に思い出させてくれる原風景は、幼いころ口に含んだプリンの味。
 プルンと震える癒しの色合い。
 大人になっても我々は忘れない。

 プリンの魅力とは何であるか?
 末那識千尋ならきっとこう答えてくれるだろう。

「お母さんの味」


『フジ道は死狂ひなり』<+3/千尋>


フジ一族に御那魅急襲なる秘剣あり
クワガタ組組長榎本和馬をして「神妙古今に比類なし」と言わしめたり

フジギリの攻撃回数は常よりも一度多く
その時フジギリが様した科人六名のうち二名の首は
切断された後になお炎で焼かれていたという

―中略―

とある武家屋敷の庭にて、マンチグループのメンバーが勢ぞろいしている。
その中心で、捕らえられ縛られている男―駒沢。

「か 神宿内どの、このように縛られていては先生に礼を尽くすことはでき申さぬ」
「頭を下げてはならぬ おぬしはただまっすぐに先生を見据えるのだ」
「決して動いてはならぬ」

そう言って、神宿内憲次は持っていたプリンのカラメルを額につける。
他のマンチグループのメンバーもそれにならう。

(こ…こいつら…何の呪いだ…)

ふと、障子に映る影。
「おでましになられる」

そこから現れたのは白髪の剣士、フジギリであった。

フジギリが心の平衡を失ったのはいつの頃からであろう
聖天使猫姫の痛い発言を聞いた時ではなかったか

よろめきながら近づくフジギリ。
うろたえる駒沢。

「か 神宿内どの」
(ズムッ)
神宿内の骨子術が駒沢の所作を封じた

そこに駆けてくるのは木下恭介。
木下は駒沢の頭にプリンをのせる。

(な…)

「え…えあぁ」
「えあーたんではございませぬ
 それなるは当グループの門を叩きし者」

その刹那、フジギリの眼が鷹のように鋭く光り、
一瞬にして頭上のプリンを2度、両断した。

「お美事」
「お美事にございまする」

この様切こそマンチグループの入門儀式
カラメルプリンである


『アグレッシブ幸一に関する報告』<+2/千尋>


  • アグレッシブ幸一は頑固者である。
彼は頑なに自分の意見を曲げない。
人から何か意見を言われると、脊髄反射で「いや、それはちがう」と答える男だ。
自分が間違っている場合でも「僕が言いたいのはそういう意味じゃない。君には難しかったかな。せめて熱力学第二法則くらいは勉強してもらわないとね」などと相手が閉口するまで話を逸らし続け、自分が正しいという立場を譲らない。
彼がイケメンでありながら決して友達がいない理由である。
もっとも彼自身は自分がイケメンでないから差別されているのだと思い込んでいるようだが。

  • アグレッシブ幸一は社会人である。
都内の進学校から公立大学に進み、そこそこ優秀な成績で卒業した。
しかし面接のスキルが壊滅的なのでどこの企業からもお呼びがかからなかった。
もちろん彼自身は自分がイケメンでないから差別されているのだと思い込んでいる。

  • アグレッシブ幸一は被害妄想である。
彼は自分のPCを他人に持ち去られることを極度に警戒しているようだ。
最近彼は特殊な専用電源と専用ケーブルでないと電気が取れないように本体を改造したらしい。
一般のコンセントを使って起動するとハードディスクは粉々だ。
さらには電源ごと持っていかれないように、重りを付けた上に厳重に固定した。
つまり初期位置以外ではパソコンを使用することが出来ないのだ。


以上のことから、一つの結論が導き出せる。
  • アグレッシブ幸一と希望崎学園には何の関係もない。

彼が今回の戦いに参加することになったのはどういったわけだったのか。
友達のいない彼のこと、知り合いからお呼びがかかったという理由ではありえない。
例えそうだとしてもそれに協力する理由などないのだ。
この“ありえない登場人物”こそ、今回の戦争に識家の思惑が絡んでいるという証拠ではないだろうか。
『ラージギール』。因縁を操作する能力であればこのようなことも可能であろう。
そして彼が自分のPCに異常にこだわる理由。それは彼が所持していると噂される『アカシックレコートに干渉する』手段がまさにそこに備わっているからではないかと推測できる。
アカシックレコードとの干渉。
これがルンビニーと無関係であるとは到底思われない。
今後も引き続きアグレッシブ幸一の調査を行っていく必要があるだろう。

スズハラ機関所属 エルサイス研究員のレポートより

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