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367 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/09/06(水) 01:28:37.83 DP5UMu4Z0

俺は、今日この日のために自分を鍛え、磨き上げてきた
身体を鍛えて大抵のスポーツはこなせるようになった
勉強も得意じゃなかったが、懸命に勉強して平均点以上はキープしている
ファッションなんて興味なかったが、必死に取り残されないように付いていった
男にも女にも積極的に交流をはかり、親しみやすいキャラになったつもりだ
さすがに金もかかった、だからバイトだってこなしてきた
そして、ついに運命の時は来た
今日、今この時のために俺は心血を注いできたのだ
さあ、いくぞ!
俺「俺と付き合ってくれないか?」
女「…ごめんなさい」
玉砕した、あっけなく敗れ去った
これでもかというほどの完敗だった
悲しいかな、どれだけ頑張っても顔だけは並以上にはなれなかったのだ
こうして、俺の男としての最後の賭けは失敗した


368 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/09/06(水) 01:29:36.53 DP5UMu4Z0

失意のまま帰宅した俺は失恋の悲しみを洗い流すかのようにシャワーを浴びた
ふと鏡が目に入る
そこには俺が今日まで築き上げてきた成果が映る
ちょいブサプチマッチョの俺の姿…我ながらちょっとキモく感じた
俺は今まで一体何をやってきたのかと、虚しさに気分が沈みかける
パシィッ!
両頬を張って気合を入れる
いかんいかん、くよくよするのは男らしくない
明日からも何事もなかったようにいつもどおりで行くんだ
男はこんな時こそクールでなくちゃいけない
俺は自分の信じる人生哲学に従った
そして、男らしく落ち着いて構えた俺は…


369 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/09/06(水) 01:31:16.61 DP5UMu4Z0

ある日曜日の朝
目が覚めると見なれないモノがあった
「なんだこれ?」
そう言って、聞こえた声は何かおかしい
ベッドから飛び上がる、急ぎ事態を把握しようとする
これは…女になってしまったのか?
マジか、もうかよ?ちょっと落ち着きすぎてた?
やべぇ、もっとなりふり構わず行っとくべきだったのか…

しばし呆然としたが、次第に新しい身体が気にかかってくる
俺の男の象徴は…やはりない
胸は…異常にでかい、何だこの大きさは?
局部にばかり目が行ってしまうが、全身も見回す
俺の鍛えに鍛えた筋肉はどこへ消えた?
全身すっかり細くなってしまっていた
太って脂肪の塊になるよりはマシだったが…
脂肪の塊?…これか、俺の筋肉は全部この無駄にでかい胸になってしまったのか?


370 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/09/06(水) 01:32:07.10 DP5UMu4Z0

俺は、思い立ったように洗面台へ向かう
ある期待が頭によぎったのだ
「ブサイクな奴ほど美人や可愛い女の子になる」
全く何の根拠もない噂だったが、やはり気になる
16年間彼女が出来なかったこの俺だ、十分なブサメンと言えるだろう
噂が本当ならば俺もそこそこの美人になっていたっておかしくない
そんな淡い期待を持つ俺に、鏡の野郎は静かに現実を叩きつける
まぁ、微妙だった
ブサではない、まぁ男の頃の俺の感覚からすりゃ十分いける、許容範囲だ
だがどう見ても、お世辞にも美人じゃあない、可愛いかと言えばもっと遠くなる
まぁこんなもんか、所詮は都市伝説、童貞シンデレラ物語などそうそうないのだよ
しかし…あらためて鏡を見る
正面から出るとやっぱりでけぇ、グラビアにも負けてねぇ、むしろ勝ってんじゃね?
さすがに、下着くらいは用意しねぇとな…
俺はさっさと頭を切り替えると、新しい生活の準備に走った


371 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/09/06(水) 01:33:15.44 DP5UMu4Z0

女性化、今では珍しくないこととはいえさすがに戸惑いはある
だが、うだうだやってはいられない、学校にはちゃんと行かないとな
男はこれくらいでうろたえたりはしないもんだ、いや、身体はもう女ではあるが…
休みのうちに服は新調しておいた
とはいえ、男が着ても違和感のないようなものが中心だ
身体が女になったとはいえ、俺の意識はまだ男だったから
制服も女子用は買わなかった、今まで来ていた男子用をリサイズしただけだ
明らかな女物はブラくらいか、さすがにこれ位はしとかないとヤバそうだと思ったからだ
しかし…未だに男らしくあろうとすることが、逆に女々しいのではないかというよく判らん考えもよぎる
こんなことでこの先やっていけるのか…
俺はその考えを押し込める、俺は俺らしく生きる…後はなるようになるだろう

さすがに女の身体っていうのは複雑、っていうか面倒なものだ
色々と勝手がわからないが、親に相談するのもやりにくい
だが、俺はすぐに慣れることができた
男の時に女友達も積極的に作っていたから、女になってもすぐに学校でも馴染めたし
色々と教えてくれて助かっている
…ただ、たまに玩具にされてんじゃねーかということもあってそれはそれで大変だ
大変と言えば男共だ、電車に乗れば痴漢にあうし、学校に行けば告白される
身体はともかく、思いっきり男丸出しの俺に一体何の冗談なんだと思う
それもこれもこの無駄にでかい胸のせいだろう
お前らおっぱいでかけりゃ何でも良いのかと問い詰めたい
だが、男の時の俺を思い返せば激しく同意せざるを得ないのだからどうしようもない


372 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/09/06(水) 01:34:26.59 DP5UMu4Z0

この日も俺は告白を受けた
俺ももう手馴れたものだ
俺なんかに告白しに来る奴は大抵、冗談半分やからかいに来た奴
後は俺の事なんかよく知らない、胸だけ見て一目惚れしましたとかいう奴だ
まぁどっちにせよ、俺は男に興味はなかった
女の身体になって結構経つが、俺の意識はまだ完全に男だった
しかし、今度の奴はまた変わった…つーか小柄で小奇麗な顔した奴だった
一瞬、本当に男かと疑ったくらいだ
まあそれはそれとして、俺はいつもどおりの返事をする
俺「悪いけどさ、俺は男と付き合うつもりはないから」
男の子「やっぱり、だめですか…」
俺「知ってるか判らんけど、俺は元々男だし、そういう気にはなれんよ」
男の子「まだ、やっぱり女の子の方が好きなの?」
妙なことを聞いてくる、前もこんなことを聞いてきた男がいたな
その後散々レズ呼ばわりされたが、意識が男なんだからレズも何もないだろうに
俺「ん?あぁ、そうだな、女の方がまだマシなんじゃね?」
どう思われるかは勝手だが、こう言っとけばとりあえず諦めるだろう
男の子「ん…、そっか、やっぱり……ごめんなさい」
そう言って男の子は去っていった、予定通りだ。ていうかやっぱりってなんだよ、おい


373 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/09/06(水) 01:35:21.73 DP5UMu4Z0

-数ヶ月が経つ
もうこの生活にも完全に慣れた
俺は相変わらず、男として生きている
どうしようもなく自分が女である場面はあったが、それでも俺の意識が男であることに変わりはなかった
相変わらず、男に異性としての興味はない
だが、さすがにこの身体になってからは女と恋愛って訳にもいかなかった
女になって当初の目的は失われたものの、習慣ってやつは続いていた
俺は相変わらず身体を鍛え、勉強やバイトに精を出していた
男の時みたいにナンパに費やす時間がなくなった分、勉強やトレーニングに集中できた
深夜通販番組の運動器具紹介のお姉さんに匹敵する腹筋が俺の自慢だ
最近は鍛えすぎて友人に引かれることが多いのが悩みの種だった
正直やりすぎちまったかとも思う
さすがにここまで来ると、告白してくるような物好きも殆ど居なくなった
しかし、今日は珍しく呼び出しを受けた、久しぶりのことだ
「いまどき、ラブレターかよ」
まだ物好きが居たのか、それともこの鍛えた身体を笑うつもりなのか
面倒ではあったが、俺は呼び出された場所へと向かった


374 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/09/06(水) 01:36:12.96 DP5UMu4Z0

呼び出された場所に付く、男の姿はない
おいおい、仮にも女を呼びつけて待たせる気か?
いや、本当に仮だけどな…そんなことを思っているとすぐに後ろから声がした
「あっ、すみません先輩…待ちましたか?」
男じゃない、来たのは…女の子だった
俺「あれ?この呼び出しってお前?」
俺はラブレターかと思っていた手紙をヒラヒラさせる
女の子「はい、そうです」
俺「そうですって、お前…女じゃん?」
女の子「…先輩が女の子の方が好きって言ったから」
俺「言ったっけか?そんなこと…でもお前、俺のことなんて良く知らないだろ?俺なんかのどこがいいんだ?冷やかしはゴメンだぜ?」
女の子「そんなことないです!ずっと、見てました…あなたが男だった時からずっと…明るくて逞しくて、カッコいいと思ってました、ずっと憧れてたんです」
おいおい、男の俺がカッコよかったら俺は女になんかなってねーぞ
女の子「いつも頑張ってる先輩がすきなんです、だから…先輩が女の子になった時、告白したけど…男はだめだって、女の子の方がいいって言ったから…」
そんなことあったっけか、正直今まで受けた告白なんて聞き流していたから、どれのことだか思い出せない
女の子「だから、今度は僕が女の子になってから…告白しようと思って…あの、やっぱり…だめ、ですか?」
今にも泣きそうな顔だった


375 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/09/06(水) 01:37:18.07 DP5UMu4Z0

俺は、今までこんなに思われたことがあっただろうか?
俺の男の時の努力は無駄じゃなかったのか、見てくれている人がいたのか
自分自身のことを思い返してみる、男の時の俺は女の子に好かれようと必死だった
でも今のこいつほど必死だったか?本気だったか?俺は…ただ彼女が欲しいだけで、誰かを本気で好きになったことなんてなかったんじゃないだろうか
そう思うと、なんだか自分が情けなくなった…そして、この子の思いが嬉しかった…だが…
俺「逆なら…よかったのにな、俺が男のままで、お前が先に女になってたら…」
意味のない仮定だ、そもそも俺が…この子が男の時の告白をちゃんと聞いていたらまた違ったのかもしれない…
いや、その方が現実的だったはずだ、だがもう…俺たちは2人とも女の身体なんだ
女の子「あの…ごめんなさい、何度も…しつこく…っ」
そう言って彼女は走り去ろうとした
俺「ちょっ…まてよっ!」
瞬間的に彼女の手を掴む
女の子「…っ、痛っ…」
いかん、つい強く握りすぎたか
俺「待ってくれ、逃げるなよ、嬉しかったんだから」
俺「俺たちもう、どっちも女の身体になっちまったし…いきなり恋人ってのは無理だけどさ、とりあえず友達、じゃだめか?」
今度は、俺が待つ…彼女の目から光るものが落ちる
女の子「…うん、それで…いい、ありがとう」
彼女は泣いていた、だけど、やっと笑ってくれた

世の中スムーズに行かないものだ、だけどどうにもならないことをくよくよ考えてもしょうがない
今は、この新しい出会いを大切にすることを考えよう、これからどうなるかはわからないが…


376 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/09/06(水) 01:38:18.66 DP5UMu4Z0

エピローグ

僕は、昔施設で暮らしていた…らしい
今はよく覚えていない、物心ついたころには新しい家族と暮らすことになっていたから
今の僕の家族はお母さんとお姉ちゃんだ
皆血の繋がりはないけれど、他所の家族には負けないと思う
僕の家族はちょっと変わっている
お母さんとお姉ちゃんは親子なのに1つしか違わない
お母さんは家事も少しはするけど、いつも会社に仕事に行く
お姉ちゃんはいつも家で家事をしている
いつも僕の面倒を見てくれてたのもお姉ちゃんだった
僕「それじゃ、お母さん学校行ってきまーす」
スパーンッ!
僕の後頭部が吹っ飛んだかと思った
母「俺のことはお父さんと呼べっていつも言ってるだろうが!」
姉「お父さん、馬鹿力なんだからちょっとは加減してあげてね?」
お姉ちゃんがお母さんにお弁当を渡しながら僕の心配をする
お母さんは厳しいけど、お姉ちゃんはいつも僕の味方だ
僕「ありがとうお姉ちゃん、じゃあ行ってきまーす」
母「こらっ!お姉ちゃんじゃなくてお母さんだって言ってんだろ!」
お母さん達をからかいながら、僕は走って家を飛び出す
でも、たまに言われた通りに呼ぶと、2人とも本当に嬉しそうな顔をしてくれる
僕はそんなお母さん達と一緒にいるのが大好きだ
ちょっと他の家とは違うけど、この家の子になれて本当によかったと思ってる

                                       終
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