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美香(2) 安価命名 ◆bXy6n9iBgQ

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374 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/09(月) 00:07:59.16 fuWbwRjt0

「あはは、それは確かに大変かもだねぇ。」
「ちょっ、笑い事じゃないですよ。」
「だいじょぶだいじょぶ!気にしなければ無問題」
「変におろおろしてる方が逆に駄目だと思うネ」
「そんなもんですかね」
「そうそっ。もっと他のこと心配した方がいいよぉ。」

―――以上、ユカリンに相談した結果。

「アンタなんかしようってんじゃないわよね?」
「なな、何言ってんだよ!」
「この年で女湯に入るなんて・・・」
「俺、今女だってば!」
「・・・なのよねぇ・・・」
「だからこうして相談を!」
「そうね、せめて前隠すのは忘れないこと。」
「はぁ・・・」
「女性らしく、つつましく!」
「へぇ・・・」

―――以上、お袋様のアドバイス。

「おう、そうか、まぁ慣れるしかないだろう。」
「そうだよね。」
「ふーむ。(ジョリジョリ)」
「どうしたのさ?」
「うらやま――」

―――以上、一般の中年男性の感想。


377 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/09(月) 00:11:50.89 fuWbwRjt0

ウチの学園では人間関係や上下関係など、またその中での駆け引きなんかが重視されている。
卒後、社会では教養やそういうものがモノを言う、という見方かららしい。
その一環として年度の初めには、一・二年生のオリエンテーションが開かれる。

俺は、その行事中三回も訪れる『女子と一緒にお風呂☆』という甘く切ない響きの行為に、困っていた。

まだまだ俺の中身は男が抜け切っていない。
何故俺が女体化してしまったか。答えは簡単、童貞だったからだ。
さて、俺は女に興味が無いウホッなオトコノコでも、勉強やスポーツに打ち込みすぎて女が見えていなかったわけでもない。
当然、色恋沙汰が学校であれば噂を聞いて楽しんだ。
誰が誰に告白して砕け散ったとか、誰が誰と付き合って第三者が告白前に砕け散ったとか。
思い起こせば近しい男どもは彼女いなかったなぁ・・・ははは・・・・俺もだけど・・・

いや、今は自らの悲痛な歴史を振り返るときじゃない。
いまだ女を異性という区切りで見てしまうことに注目すべきだ。
クラスで隣に座る女の子の裸体をジロジロ見ないとも限らないし、いっぱしの女子高生らしく振舞えるかが重要である。
せっかく自己の平穏のために名前も変えて隠してきたんだ。
万に一つでもしぐさが原因で女体化がバレた、なんて馬鹿らしい。

俺はそれへの対処を身近な三人を相談していた。


379 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/09(月) 00:16:49.95 fuWbwRjt0

以下は得られた成果である。

 1.下手に意識しない。
 2.恥じらいと共にあれ。
 3.慣れる。

1は分かる。2もまま、日本人らしい。
3は・・・うん、まぁそうだねお父ちゃん。プロテインだね。

ゆうしゃ は くじけぬこころ を てにいれた!
ごめん! うそだ!

テクニックでなく気合を教えられたが、そんなんで納得しない俺は妙な同じ夢を見るようになっていた。

 ふわふわとした世界の中、俺は女生徒群の中に紛れ、今まさに温泉に浸かろうとしていた。
 熱めの湯の感触を感じながら女生徒を見回す。
 おっと、これはおっぱい祭りって奴ですな。ふひひ・・・げふんげふん!

 『おっきい』のや『ちっちゃい』のや『キレイ』なのや『ぺたん』なの、よりどりみどりだ。
 南風には乗っていないのが残念だ。
 うひょひょ、と鼻の下を伸ばしきょろきょろと見回す。
 その時誰かが叫んだ。
 「キャアアァァァ!コブラ!コブラが鎌首を上げてる!」


381 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/09(月) 00:23:16.16 fuWbwRjt0

コブラティックスクリーム(?)によってびくぅっ!と身体をはね、目を覚ます。
その後激しく拍動する胸に手を当て、現在あるべきふくらみと、現在あってはならないモノを確認し、
ああ、バレてない良かった良かった。と安心して寝ては、また同じ夢を繰り返し覚め・・・というループ地獄な日が続いた。

ああ。昔の俺がコブラだったかどうか、ご想像にお任せしよう。
俺の口からは怖くて言えない・・・
っていうか平均サイズって誰が何人分測ったんだよ!
畜生めが!

そんな眠れぬ俺をよそに日付は進んでオリエンテーション前日。

「それじゃあ今から組み合わせ発表するからな。」
小林はそういうと名前、所属グループと読み上げていく。
はきはきとした声がフィルターを通してぼーっとした俺の頭に情報をねじ込む。
寝かせてくれ。

「相沢 『群青-3』 石田―――」

グループは『マゼンダ』『群青』『アイボリー』『漆黒』の四色のどれかの布地で、
1から30までの番号がプリントされたゼッケンで分けられた。


743 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/10(火) 00:41:02.28 jR4TWlZF0

まぁ後回しで投下
――――――――――――――――――――――――――――
サクサクと、微妙な色について以外ツッコミもなしで、バラバラの数字、色のゼッケンを手渡された。
ちなみに俺は『漆黒-14』を受け取った。

グループ公開を終えて小林はオリエンテーションの最終確認を始める。
「いいか、オリエンテーションだからって気を抜くな。毎年そのせいでケガ人も出てる。」
クラスがざわざわしだした。
いつも爽やかに薄笑いを浮かべる小林が神妙な顔をしていたせいだ。
どうやら真剣らしい。
俺の頭も「話を聞けモード」に意向した。

「詳しい事はいえないが、生っちょろいこと考えてるとただツライだけになるからな。(中略;この間五分)
 各自、全力を出して頑張ること。幸運を祈る。」
そう締めくくって小林はHRを終了した。

なんだ?幸運をって。
それに最終確認の中でもプログラムの内容は全く知らされてないぞ?
生徒がつかんでいる情報は飯の時間と起床時間、あとは動きやすい服とジャージを持ってくるってことだけだ。

なにやらひっかかる小林の物言いに、むむ、と考え込んでいると、後ろから元気な声。
「みーかー」
ユカリ先輩が一音ごとにエクスクラメーションマークを伴って駆けてくる。
「やっ。元気?」
俺に追いついて背中をぺしぺし叩きながら話しかけてくる。

いつもどおりの笑顔に俺もつられて微笑み、はい、と応えてから
「先輩も元気そうですね。」と返した。
「そっりゃあ元気だよー 明日から、キミ、オリエンテーションじゃないのさー」
あなたは何事にも関係無くいつもお元気です。


745 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/10(火) 00:44:11.92 jR4TWlZF0

そのあとすっ、と眉根にシワをよせ、
「ってかそろそろ敬語止めようよー とっつきづらいじゃん。」
と冗談めいた言い方をする。
とっつきづらいって本気だろうか?

へぇ?と苦笑しながらそれでも俺は従うことにして
「うん。分かった」
それを聞いたユカリさん、すぐさま距離つめ、
「よぉ~し、よしよしよしよし.... 良いコだねぇ~」
ムツ○ロウさんの口調となでなでコンボ。
先輩の甘い香りのするホールドを感じながら、
『男が』やられたらたまんないだろうなぁ。うふふ・・・
なんてね・・・

しばしやわらかい感触を堪能した俺は、人が見てますってば、と振り払い、
やっとさっきから気になっていたことを聞いた。
さっきの忠告を思い出し、なるたけタメ語で、だ。

「明日からってどんなコトするの?」

先輩は質問に対しふむ、と下唇に人差し指を置いてから思案するようなしてないような顔をする。

やや間があって、やっと小首を捻ってから、ふふふと含み笑いとともに

「さあ?」

な、なんだってーー!?
―――て言わないのか。おいっ。


746 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/10(火) 00:50:09.23 jR4TWlZF0

Q;大変なの?
「どーでしょうね?」
Q;ご飯美味しい?
「神のみぞ知る、だね(キュピーン)」
Q;「バナナっておやつに入る?」
「お弁当箱の中なら入りませ~ん」

駄目だ。具体的なトコには触れずに完全にかわされる。
ユカリンはしつこく食い下がる俺をあしらうのが、これまたえらい楽しいらしく、
駅に着くころにはニコニコ三割増し(当社比)だった。
ふぅ、まあ結局何も聞け出せなかったけど、楽しかったし、いいさ。
なでなでで元は取ったし。

改札を通り、振り返ると改札の向こうでぴょんぴょん跳ねつつ、またねーっと手をぶんぶん振っている。

ホント元気だなぁ、あの人。
あ、おじさんに手ぶつけた。
はは、謝ってる謝ってる。

俺はその光景を思い出し、にまにましながら電車に揺られて自宅へと・・・


で、三夜連続おっぱい祭りの初日。
バスから降り、というより降ろされた俺達生徒は、
目をらんらんと輝かせた校長からとんでもないことを聞かされみんな困惑した表情を隠せないでいた。

「下手すると三泊とも屋外ですので頑張ってくださいね」

えーっと。祭りの心配は後でしたほうが良さそうだな。


242 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/11(水) 21:09:57.68 ZtxBSrDj0

学生×泊りがけ×お楽しみ=【   】ときたら普通【 】の中には何が入るんだろうか。

枕投げか、女湯覗きか、他には猥談や恋バナで夜を明かしたりだとか。
教師に発見され正座させられるコトとなっても、笑い話となろう。それも一つのお楽しみだしな。
(作者はそれで足が痺れたまま歩いてコケて、足骨折したまま二日間過ごしてあげくに紫の風船みたいになってたから笑えなかった。)
さて、ウチの学園ではカッコ内にどんな言葉が入るんだろうね。

「はぁ?知るか!」ってか?俺もそうさ。
ヴィトゲンシュタインの言うように、「語りえぬものには沈黙しなきゃならない」のさ。俺の口からはなんとも言えないさ。

さぁ、判断はみんなに任せて、コトの成り行きをお話しましょうかね。

我ら生徒は、オリエンテーションという名目の元、バスに揺られ移動した。
目的地は学園の所有している森らしい。
なんでも学園長の家系の地主が学びの場として提供したとかなんだとか。
高速道路を駆ける数百名の大所帯は一時過ぎに目的の場所へと到着した。
教師達の先導により、バスから降りて森の中へと歩いていく。

しばらく荷物を抱えてホテルはどこか、と視線を走らせながら歩くこと五分、一行は開けた土地に到着した。
森の中にぽっかりと空いたこのスペースには、朝礼台のような丸太で組まれた粗雑な台が一つ、しつらえてあるだけだ。
木々から抜け出したスクールメイツは一瞬広場を見渡してから、後続者たちに押されてこの空間に入っていく。

生徒全員がいることを確認してから、学園長は登壇なさった。
マイクを握り、軽く叩いてスピーカーとの具合を調べてから口を開く。
『おはよう、みなさん』


243 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/11(水) 21:15:29.22 ZtxBSrDj0

主に二年生の間からおはようございます、と返事が起こる。
生真面目に挨拶を送る上級生に関心し、ふと目をやると、二年生はなぜかみんなジャージか野戦服のような色気の無い服着ている。
しかもみんな妙に顔付きが真剣。なんでだろう。
挨拶を聞きとめ、全員におじいちゃん笑顔を振りまいた。そして増幅された声を皆に伝える。
『下手すると三泊とも屋外ですので頑張ってくださいね』
話が、全く見えない。

活き活きとした我が学園のトップは、これまた目をらんらんと輝かせて話を続けようとしたが、ここで女教頭が壇上に躍り出てマイクをひったくる。
そして女教頭は顔にかかる髪を軽く払ってから、キリリとした眉を微塵も動かさず話を始める。
『えー、それではこの行事について説明します』
入学式当日、生徒並びにその保護者達に見せた威厳はどこへやら、学園長は子供っぽく教頭ふくれっつらを向けている。
それを尻目に平然と説明を始める女史。毎年こんなことやってんのか。
『わが学園のオリエンテーションとは―――』

 四色に分けられた組でポイント争奪戦を繰り広げ、半日ごとに順位で宿や食事が決まるシステムだそうな。
 ランダムに決められた組み合わせでいかに動くか、いかに団体に貢献するかという
 柔軟に人間関係を築き、社会に出てから役立つ経験を云々かんぬん――という目的でこの行事は行われているらしい。(うろ覚え)

 宿と食事は大まかに、順位によって次の通りとなる。 
  一位 ホテル(二人部屋) 洋食のコース料理等
  二位 ホテル(四人部屋) バイキングスタイル
  三位 ホテル(大部屋)  弁当支給
  四位 屋外(テント)   自炊(食材は学校で用意)
『―――ということで健闘を祈ります』


244 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/11(水) 21:20:43.51 ZtxBSrDj0

ざわ・・・ざわ・・・と生徒間に不安が伝播していく。
「テント!?あたし枕無いと眠れないよ・・・」
「なんだよそれ、格差ありすぎだろ・・・」
「大部屋って・・・男子も一緒?ありえないんだけど」と生徒口々に思ったことを呟き始めた。
といってもそれは一年の間だけで、当然去年も経験した二年生達は次の言葉をじっと待っていた。
経験者は背中で語っている。種目はなんだ、と。とっとと種目を話せ、と。

教頭からマイクを返してもらってぱっと顔を輝かせた学園長はやっとプログラムを告げた。
『一日目、種目は「狩り」です。それでは、グループに別れて準備を始めてください』
役目を終えた校長はニコニコと生徒を見つめるのみである。
詳しい事はそれぞれで聞け、ということらしい。
俺もその言葉に従い『漆黒-14』のゼッケンをバッグから取り出し、同輩を探し始めた。
で、グループに分かれて俺は自らの額をパシンと叩いた。

「やっ。美香!」

け っ き ょ く 同 じ 班 な の ね 。
『漆黒-14』には俺を除き、男子生徒二名、女子生徒二名で構成され、女生徒のうち一人は何を隠そう、藤井ユカリ先輩であった。
いやぁ、すごい偶然もあったもんだ。つかランダムってウソだろ。絶対。


245 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/11(水) 21:26:08.33 ZtxBSrDj0

デコに手を当てた俺を無視し、ユカリンは男子生徒の片割れを紹介し始めた。
「こちら、二年のナオタ君」
よろしく、と紹介された男子は手を差し出す。俺もその手を握り返すと、
「青山直太です。蓮本さんだね?」
ああ、もうこっちのことはある程度伝わってるのね。笑顔ガールが女体化までは伝えてくれてないと信じよう。

「ナオタ君は剣道部員で今回は、きみ、班長さんだから偉いんだよ?」
「ははは」
185cmはかたいと思われる長身のナオタ青年は、清涼感溢れる人物で、水洗便所のように清らかな声で笑う。
「偉い偉くないはともかく、これから四日間よろしくね」
整った歯並びを見せつけてから、会釈をする。

残りの人員については、俺が合流する前に自己紹介を済ませたらしい。
ユカリ先輩が無礼にも、もとい無邪気に指を指しながら名前を教えてくれた。
男子は鈴木亮輔、一年生で中肉中背の、良くも悪くも特徴の無い平凡な生徒。
そして女子は、村上遥という無表情だが端正な顔立ちでショートの栗毛が似合う一年生。
結構な上玉・シッダールタだ。すまん。流してくれ。

「ども、スズキッス。よろしくお願いします」ぺこぺこしながらスズキが言う。
ちょっと間を空けて、自分の番だと自覚したハルカちゃんは下を向いて
「ボク・・・その・・・・よろしく」と言ってぺこりと頭を下げた。
そして、俺、と言い掛けた口をいったん閉じて、「私は蓮本ミカ。よろしくね」と握手を求めた。
スズキは赤面しながらそれに応え、ハルカはちょっと握って、さっと手を引っ込めた。
なんだ。無愛想だな。

程なく先輩達のリードの元、あらかた各組のグループ内での自己紹介が終わり、各色の組長達が声を張り出した。
「俺はーマゼンダのーー!」「ボクはーー!!」「しっこk――」
あああ、うっさい。割愛しよう。


246 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/11(水) 21:28:29.11 ZtxBSrDj0

組長の文字通り激しい激励に続き、各員にメッシュ地のキャップとタグが二枚、それぞれ配られた。色はもちろん、各組の色に対応している。
先輩方の話によると、『狩り』の標的はお互いのタグとキャップらしい。
各組、1000の持ち点からスタートし、『狩り』中では終了時に手元に残ったそれらの数でポイントが増減されるそうだ。

「タグ一枚が五点で、帽子一つで十五点。組長の班はそれぞれのポイントが4倍加算されるから、結構大きいよ」とナオタ先輩。
「自分の帽子が取られたら、キミ、狩った得点半減だから気を付けてね」とこちらはユカリンだ。
お二人とも目に力がこもってます。

『開始まであと一分です。各自、準備を終えて下さい』突如スピーカーが叫ぶ。
「ちょ!」
まだ自分ジャージですらないんですが!
急いで余分な荷物をバッグに詰め込み、ゼッケン、タグ、帽子をつける。
「髪結ったほうが良いね」とユカリンが帽子を被る前にゴムでまとめてくれた。
「ほらっ似合ってる似合ってる!」ぱちぱち手を叩きながら喜ぶユカリン。
「そ、そうですか?」
「ほら、また敬語!」びしっと指を突き出す。
「あ、すいま・・ごめ―――」


247 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/11(水) 21:31:42.84 ZtxBSrDj0

『10秒前』
「二人とも始まるよ!」ナオタ先輩だ。
「ごめんごめん!」
「さぁ集中集中!!」
熱いなぁ。
『5秒前』
「そういえばこれ、何分やるんですか?」ナオタ先輩に訊く。
「何分?・・・えーと」
「えーっと」先輩二人で顔を見合わせ考える。
『2・・・1・・・スタート!』
周りが駆け出し、漆黒-14も走り出す。
そして森へと突っ込みながら二人が同時に叫んだ。

「「たぶん300分くらい!」」

「え?は?ちょ!」


542 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/14(土) 00:52:27.52 kpJI6SG50

木々の間に、班とはぐれたらしい男二人がうろついている。
片方の男が興奮して声をあげた。
「おい、見ろよ!帽子が落ちてるぜ!」
「ホントだ。間抜けが落としていったんだな」
「これで十五点ゲッ―――」

ずぼっ

「「なっ!落とし穴!?」」
気持ち悪いくらいにハモる二人組に声が降って来る。
「いやぁ、悪いねぇキミ達?」
そして木の上から女子生徒達――ユカリンと俺だ――が降って来た。
「「お、おんな!?」」
気持ち悪いくらいにハモる二人組をよそに俺達は距離を詰める。
「じゃっ、これもらってくね☆」
とユカリンはぴっぴっ、とマジックテープをはがす音をさせて、二人からタグを奪い、次いで帽子も手中に収めていく。
最後に、囮の帽子のホコリを払って持ち去る。(以上、ユカリンの行為は全て眩しい笑顔で行われた)
気持ち悪いくらいにハモる二人組は落とし穴に腰まではまり、ぽかんと口を開けてそれを見送った―――

―――今から約三時間前。開始から十分後、やっとのことでスズキ、ハルカ、俺は息をついていた。
二人の先輩はハイペースで、全員が顔から汗を滴らせる。
着替えやらなんやら詰まったバッグをそれぞれ持ってのランニングだ。キツいのなんの。
俺はと言うと久しぶりのランニングに足の裏がつりそうになっていて、スズキはぜぇぜぇと犬のように息を吐く。
そしてハルカは水筒を両手で持って可愛らしくこくこくと飲んでいた。


545 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/14(土) 00:55:39.04 kpJI6SG50

ナオタは周りを警戒してから口を開いた。
「これから、僕達の班はトラップを張る」
「そんなのやってる内にこっちが狩られちゃいませんか?」
俺はそんな悠長な、といった口調で尋ねる。それを支持するように
「そう・・・っすよ。蓮・・・本さんの言う・・・とおりっす」とスズキ。
息を整えながらしゃべるコイツの顔に、俺への微妙な下心が見え隠れするが目をつむってやろう。
そして四人が最後の一人の意見を聞こうと視線を集める。
「・・・」

「・・・」

「・・・?」(←視線にやっと気づいた)
ハルカちゃん。キミは特になにも無さそうだね。うん。

しばしの沈黙をものともせずに
「その辺は組長とすでに話し合ってるから大丈夫」
とにっこりと笑ってナオタは説明を始めた。
「まず、漆黒はさっきの広場から数十m毎にゲリラを備えてる」ゲリラと来たか。
来る時にデカイ森だとは思ったが、作戦の話を聞くと脳内MAPがさらに拡張される。
「選ばれたのは二年のみで、かなり動ける奴ばかりなんだ」
「撹乱して時間を稼いでいる間に、キミ、トラップを仕掛けるってわけさ」
説明の後で俺とユカリ先輩、スズキとハルカちゃんとナオタ先輩の二手に分かれて動くことになった。

二人きりになってからユカリンは自分のバッグをごそごそ漁り、中から長物と衣服を取り出した。
「『ここ掘れスコップ』ー!と『コレ着ろジャージ』ー!」
「・・・・」
わぁい、ドラ●もん、道具に夢が無いよ。


546 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/14(土) 00:59:24.94 kpJI6SG50

そして今。
「いやいや、今年の男の子は無用心だね~」
大漁、大漁、と狩った獲物を握り締めながら上機嫌に話すユカリン。
既に八人の生徒を陥れた俺達、悪女(?)はそこそこの得点を稼いだ。

 「うおっ!?」
 「ぬふぅ!」
 「ひでぶっ!」
 「罠じゃ!これは孔明の―――アッー!」

と腰までハマる彼らから着実に二人ともゼッケンがタグで埋まっていた。
狩ったタグはゼッケンに貼り付けで、自分のじゃないキャップは手持ちなので今は二人ともごちゃごちゃした格好だ。
それもこれもゲリラ部隊が上手いこと他の班の戦力を分散させ、トラップの効果を上げていたからだ。
しかし時間を稼がれても、落とし穴はそう簡単に掘れるモノじゃない。
普通の人の場合は、だけどな。

女体化によって俺が怪力を得てから三週間強。
俺の怪力もいまでは『ちょっと力持ち』くらいに抑えられるようになっていた。
柔らかめの地質も助けて、最初の二時間で四箇所、大人二人はゆうにハマる大きさの落とし穴を掘ることができた。
各所の落とし穴にカムフラージュを施し、木の上や草陰で待ち、まんまと狩って立ち去る。
そして振り切ったら戻って仕掛けなおす、というイタズラのような一時間が過ぎていた。
隠れて仕掛けての繰り返しだが、だんだんとハイになってきた俺は、
缶蹴りやケー泥(ユカリンいわく「泥ケーじゃないの!?」)を思い出した。


547 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/14(土) 01:02:31.40 kpJI6SG50

懐かしい雰囲気にふけっていると、突如どこかから「藤井さん」と声がする。
そして声に続いて、すっ、と木の陰から姿を現したのは、ナオタ先輩だ。
「やっナオタ君!そっちはどう?」上機嫌を振りまいて藤井さんことユカリさんは返事をした。
ナオタ先輩はスズキとハルカちゃんをどこかに待機させているらしい。
「タグ7にキャップ3。スズキ君が見つかってキャップとタグを取られたって言ってた」
「ハルカちゃんは?」
「うん。上手くやってくれてる。かなりの活躍ぶりだよ」
上手くやってる、の意味や他に訊きたいコトを後回しにして、俺は最優先だと思う事項について口を開いた。
「そろそろこっちは引き時みたいです」
明らかにトラップだ、と勘ぐる二年は別として、狩られた生徒同士に情報が伝わり始めたらしく、
いまやここら一帯に生徒はほとんど近寄らない。

ふむ、と口元に手をやるナオタ先輩。
「そうだね、それじゃ本隊と―――」
ぱきっ。
俺達三人の近くで枝を踏み折る音がする。
三人ともぎくっと身をこわばらせ、即座に俺達は音の方向に身構えた。

カンフースターの構えで男一人女二人が見やると、なんてことない、味方だ。
「・・・あの」ぽつぽつと言葉を繰る栗毛の女生徒、ハルカちゃんがそこにいた。
俺達はほっと胸をなでおろし、ナオタが声をかける。
「どうした?スズキ君は?」
「えと・・・置いてきました」
へっ?とユカリンが声をあげる。
「どうしたの?何かあった?」と心配そうな顔で訊く。
「その・・・燃えてます・・・」
確かにウチの学園の上級生は大半がすごい燃えてるよな。
不燃ごみに出したら怒られそうなくらいに。


548 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/14(土) 01:04:28.37 kpJI6SG50

「へぇ?もえ・・てる・・?」
俺と同じく理解できないらしく、ユカリンが呟く。
「村上さん、なんか見えたの?」こっちはナオタ先輩だ。

「その・・・組の本隊が・・・燃えてます」
ナオタとユカリンがぎょっとした顔をしてハルカに近寄る。
「どどど、どっちの方?」といつになく真剣な顔でユカリンが問うと、ハルカはすぅっと指を木々の中に向ける。
まさかこのコちょっと電波なコなのかしら。
しかしそちらを一瞬見たナオタ先輩は俺とハルカちゃん二人に向き直って、こう叫んだ。
「二人とも着いて来て!」

わけの分からぬ俺をそのままに中距離走を敢行しようとする先輩方。
ちょっとちょっと、訊きたいコトが結構ある。
本隊って何よ?
なんでハルカちゃんの言葉そんなに信用するわけ?

俺はあるかどうかも分からない火事場へとダッシュしてる間に、質問をぶつけようと試みた。
が、あまりにもペースが早く、走っていると脳みそより脚に酸素が送られ、結局すっかり忘れていた。

「美香っ!」
横から出てきた他の組の生徒を目の端で捉え、ユカリ先輩が「やっちゃって」と俺に声をかける。
俺は初日に力を見せびらかすなとか言っていた張本人がこんな事言うなんて、と思ったが、
ウインクしてから俺にだけ聞こえるように「緊急事態☆」と呟いたので結局は従った。
ふう、やれやれ。走っているので返事をする余裕はない。俺は代わりに行為で示した。


549 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/14(土) 01:06:03.23 kpJI6SG50

「せいっ」
「うぼっ!」
ゼッケンのタグに伸びてくる手を払いのけ、軽く握った拳を鳩尾に押し込む。
走っているので例の怪力はかなり抑えておいた。
「次っ!」
「はいなっ」
「ぐ!」
「今度は右!」
「やっ」
「ぶふぉっ!」

それにしてもこの女体化男、ノリノリである。

そんなこんなでようやく着いた途端、俺は思わず熱気にむせた。

そこでは生徒達が火と戦っている最中だった。

――――――――――――――――――――――――――
今回はここまでです。


792 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/15(日) 01:07:35.96 wiUcNzDz0

「いや~!わりぃわりぃ!ちょいと小腹が空いたんでウィンナーでも焼こうかとしてたら火が風で飛んじまってよぉ!」
ガハハ、と笑い飛ばすこの大柄かつ土方焼けの兄ちゃんは漆黒の組長、黒岩鉄夫。
あぐらをかきつつ頭をボリボリやり、灰で黒くなった顔でナオタ先輩を見上げている。
「何言ってんだよてっちゃん!ウィンナーどころか生徒がこんがりになっちゃうとこだったろ!?」
ナオタがハンサム顔を赤くして声を荒げている。
「男子生徒が焼けてたら、その股から一本ずつウィンナーが採集できたな!それともキノコか?ぶははは!」
「~~~~!!!! お前って奴はぁぁ!!!!」
「まーまー、誰も怪我人出さなくて良かったじゃない」
とユカリンが二人に割ってはいると、すすけた顔の黒岩は
「全くその通りだ藤井!焦ったのなんのって!」とまた笑い始めた。

コトの発端はてっちゃんの言うように火の不始末だったそうな。
『狩り』中は、ほとんどの場合組長の班を中心に何班かが本隊と呼ばれる陣を作るらしい。
本隊の役割は次の三つ。
 ・組長の班を守る
 ・作戦の指揮を取る
 ・組員の水分や栄養を補給する
長丁場を乗り切るためにどこからとも無く生まれ、もはやほとんど伝統となった制度だそうだ。
そして上記の「栄養補給」の項目を果たそうと組長自らが率先して頑張り、結果火事もどきを起こしてしまったという。

やれやれ・・・なんだかなぁ。

―――鎮火してから数十分後。
アナウンスで狩りの『打ち切り』が伝えられ、生徒は始めの広場に集まった。
俺達のトラップやゲリラの成果もむなしく漆黒はボヤの責任を取って屋外泊が決定された。
トップは、本隊を組まずにガンガン攻めまくったマゼンダ。そしてアイボリー、群青と続く。
本隊とか組まない方が勝てたんじゃねえか。という思いを俺に植え付け、一同解散。


793 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/15(日) 01:10:35.94 wiUcNzDz0

790おやすみだみゅん
――――――――――――――――――――
最下位以外は宿泊施設に移動を始め、残された漆黒組は肩を落としげんなり顔でぶつくさ言っていた。
それを見て黒岩は、漆黒の生徒全員に声を張り上げる。
「すまねぇっ!全くもって俺のせいだ!文句やなんかはちゃんと受け止める!悪かった!」
そういって、ずざっと音を立てつつ土下座の体勢をとり、「この通りだ!」と叫ぶ。
急な行動に驚いた生徒一同は、雑談や文句を一切止めた。
そして言葉を受けた上級生達は、やや間をおいてから(最下位の元凶の)てっちゃんに感涙し始める。
「気にすんなてっちゃん!」
「点差が開いたわけじゃないよ!」
といろんなところから大声が上がった。
その間一年はちょっと引いていた事は言うまでもない。

土下座を解いた黒岩は「おお!心の友よ!」と駆け寄る組員を抱きしめ、
そして今度は自身が組員に胴上げされ・・・っておい。どこぞのガキ大将とB組が混ざってるぞ。
しかもガキ大将はいやに鼻につく映画版の方だ。
あー、くさいくさい。

それから、持ち直した黒岩は張り切ってテント設営を開始した。

時刻は六時半。
ほとんどの生徒が自分達の寝床を確保し、広場がテントで集落と化した頃、俺はというとぐったりしていた。
「ぐはぁ・・・」
トラップ待ちをしていたとは言え、非日常的行動が多くて足が鉛のように重い。
春先の爽やかな風が無ければ気が参って死んでしまうだろう。
テントに入って休もう・・・として俺は、腕を掴まれた。


794 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/15(日) 01:14:56.47 wiUcNzDz0

掴んだ主は誰あろう、にこっとしたユカリン。もう片手にはハルカちゃんをぶら下げている。
そして「美香っ、行くよっ」とハルカちゃんと俺を引っ張ってぐんぐん歩き出し始めた。
「ねぇっ、ちょっ、どこ行くの?」
周りを見るとタオルや服を持った女生徒が同じ方向に向かっている。

「決まってるでしょ?」
振り返って笑顔を向けてくる。
「オ・フ・ロ☆」

「お・・・」
「そう、お風呂。行くよっ!」
ぐいぐい
「・・・♪」
心なしかハルカちゃんの無表情にもうれしそうな色が見える。

無言で掴まれていない腕でガッツポーズをとる。
こんだけ疲れて、そんでも屋外で寝ることになったんだ。
女体化バレだとか、もはや知るか!
そんなんは脇に転がしておいて、おっぱい祭りを楽しまなければどこで元を取る!
ここに来る前に心配していたオパーイ祭りが、今!俺の脚に羽を付けた!


795 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/15(日) 01:18:11.93 wiUcNzDz0

「どこにあんの?」
ハイになって俺は自然なタメ語で話かける。
「あっちの山へちょちょっと、ね」
山、と言われたが、ろくすっぽそれを見ないで返事をする。
「はいはい、わっかりましたぁ!」
「・・・♪」
サクッと着替えの準備をしに戻って、聖地へと向かいました。
おそらくそれぞれに違う意味の笑顔で。


てなわけで土臭さとはやっとおさらば☆
次回「ドキッ!女だらけのおっぱい祭り!」をお楽しみに☆


870 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/15(日) 14:17:04.56 wiUcNzDz0

―――川のせせらぎをバックに歩くこと十五分。
森や山の麓の足場が悪いので、距離に対して時間がやたらとかかったが、ようやく到着。
そして俺はその場で鼻血を吹きそうになった。

屋外組のみ露天風呂が自然の温泉で、湧き出る温泉は広く深く、そして脱衣場のようなモンが無い。
つまりはみんなが服をそこらで普通に脱いでいたのだ。
しかもタオルで体全体を隠しているのはホントに数人で、一年生と思しき女の子達だった。
若い肌が揉んだり触ったり泳いだりで大賑わいだ。まさにおっぱい祭り!なのだが・・・

「はいはい、そこの一年生。女同士なんだから隠さなくてもいいじゃない」
「えっ、は、はぁ」
ちょっと離れて服を脱ぎだした俺は上級生にやさしく声をかけられる。
そう声をかけてくれた先輩もまた、タオルでバミューダトライアングルのみ隠している。

俺は結局祭りの会場に来て、情けないことに萎縮しまっているのだ。もちろん息子の話ではない。
にごり湯で無かったら鼻血を盛大に吹いていたかもしれん。
盗み見てやろうと思うのは隠れているからあって、いざ目の前にさらされると目のやり場に困る。
チラリズムの分からない連中には分からないだろうけど。
堂々とした女傑達に俺は畏敬の念を感じるよ。ホント。
もちろん、可愛い所だけを集めたメンバーというわけではない。
逆の意味で凄いのも何人かいる。
外見で判断するのはよろしくないとは思うが、しかしその辺は、ほら、ねえ?
フィルターかけて見ないことにしてるわけよ。


872 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/15(日) 14:21:35.35 wiUcNzDz0

ちなみにユカリンは、ばばっと脱いでとっくに温泉にダイブしていた。
「ほああぁ~ びば・おんせん~」
「こーらっ、ユカ!アンタせめて体にかけ湯するとか気にしなさいよ!」
「いいじゃ~ん。無礼講だよぉ~」
注意をものともせずに、今は仰向けに浮かび、胸を救命ブイさながらにふわふわと・・・。
母さん、恥じらいなんてもんはとっくに日本から消えてるよ。

いそいそと服を脱ぎ終わり、やっと湯船に入る。
深いので立ったまんまでエントリー。じわっと熱が体を包む。
「「はああぁ~」」
誰かとため息が重なる。
そして目が合い、笑いかけられた。大人びた巨乳さんだ。
「はじめまして」
「は、はじめました」
はっ、日本語がっ。
そのヒトは俺の言葉にクスクス笑って、
「アンタ名前は?」と訊いてきた。
美香です、と自己紹介すると、
「そう。一年だよね?あたしも一年なんだ」
「えぇっ!?」

どうみても年上な彼女は、あたしは服部綾香と名乗りながら温泉を横断して来た。
水の抵抗で胸がふわりふわりと浮き沈みする。ポイズンforアイ。英語に自信はない。
隣りに来て、天を仰ぎつつ話始めた。


873 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/15(日) 14:25:21.75 wiUcNzDz0

「ホント今日は疲れちゃった。まさか初日にこんなんやらされるとは思っても見なかったなぁ」
「う、うん」
出るとこの出たボディが凶器にも匹敵するほどの何かを放ち、俺は圧倒された。
纏め上げた髪もうなじを文字通り必殺の業である。
ん?日本語がおかしい?
いかんいかん、我輩は女である。名は既にある。

「服部さんは何やってたの?」
「本隊で給仕やってた。てっちゃんさんが火事起こすまでは、だけど」と茶目っ気たっぷりに言う。
っていうか、と言って普通の顔に戻って続けようとする。
「あたしのことは”綾香”って呼んでよ。中学でも何度も言ってきたんだけどさ、なかなか『さん』付け止めてくれなかったんだよ」
中学生の頃にすでにこれだけのオーラを持っていたってことか。凄いな。
「姐さん、とか言ってる奴もいて困ったよ。ほら、アタシ老けて見えるじゃん?」
「老けてる?」
「そう・・・だからあんまり友達もいなくてさ・・・」
深刻な顔をしてうつむく。しまった。地雷踏んだか?

しかし、一瞬間を置いてアヤカが吹き出した。なんだ冗談か、とつられて俺も笑う。
そのあとやっと俺は返事をした。
「えーっと、それじゃ、よろしく・・・アヤカ?」
「うん、よろしくね。ミカ」
そして湯面の上に拳を出す。初対面なのに馴染みの男みたいなことをするな・・・。
俺はそれに軽く自分の拳を重ねて微笑んでから他愛も無い話に花を咲かせた。

俺は女になってから、初めて同姓の友達を作れた事にすぐには気付かなかった。
まぁ大切なことってのはすぐには気付かないもんだ。
ユカリン主催の「可愛い一年生コンテスト」なるものに引っ張り出されたせいもあるけど。


874 名前:安価命名 ◆bXy6n9iBgQ 本日のレス 投稿日:2006/10/15(日) 14:28:39.58 wiUcNzDz0

班の可愛い子を選抜し、自己紹介をさせたり、歌わせたり・・・
ニヤニヤと先輩達のイジワルな視線にさらされる。

「優勝は、蓮本美っ香ちゃーん!!」

で優勝してしまう俺。
素っ裸で岩場に立たされ、右手を審査員長のユカリンに掲げられ・・・
外気に触れて寒い。っていうか俺の中で男が急速に遠ざかっていく(汗

やっと温泉に再び入り込む。
空は既に暗くなり、先輩一同が準備していたろうそくに明かりが灯っていた。
「ぷっ!アンタ大人気だね!」
早速砕けた様子でアヤカが近寄ってくる。
「寒いよぅ」とふざけてアヤカに擦り寄る。
「おおよしよし、可哀想なコだこと」ノリのいいコだ。
あんまり女の子と話している感じではない。
まさか・・・いや、まさかな・・・。

ふふっと笑ってから俺は呟く。
「アヤカって面白いね」
「アンタもね?」
そう言って軽く肩をぶつけてくる。

明るい先輩、新しい友達に囲まれた俺は、温泉とは別の理由で温かさを感じていた。
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