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*** 704 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/09/03(日) 04:21:59.91 R6QdpQe60
―――眩しい陽光に目を刺されて目を覚ます
いつもの朝、変わらない日常
しかし、妙に体が重い
微かに予感が走り体中に手を這わせる
滑らかな肌、柔らかい二の腕、そして僅かな胸の膨らみ
そして手は下腹部に達し、予感は核心へと変わる
そうか
僕は女になってしまったのだ
こういう形で文章を書くのは初めてなので筆が稚拙な上に
何故、男が女体かするかとかをメインに置いた話なのでエロスとかあんまりないです
それでもよければwktkしてくれれば続きを投下します
*** 710 名前:704 投稿日:2006/09/03(日) 05:08:52.34 R6QdpQe60
性交を体験したことの無い少年が
その二次成長を終える頃に突然女性の体になってしまう
こんな突拍子もない奇病が世の中に現れだしたのは今から50年程前の事だったか
当初は女体化した少年が現れる度に大騒ぎになったらしいが
今では性交を済ませていない少年は唯一つの例外もなく女性に変わるので
この社会は既にそれを当然のこととして受け入れてしまっている。
そして女性化した少年達は殆どの場合
今までの環境に慣れる事が出来ず、ひっそりと姿を消し
どこかで女として再出発する
僕は別に女性に変わることを望んだわけではない
だが率先して童貞を捨てることもしなかった
身の回りに女性化した人が余り居なかったので、
自分の体に確実に訪れるであろうその変化に対して
余り実感が湧かなかったのかもしれない。
だが実際にそれは起こってしまった
僕の薄弱な意思など関係なく
片桐真琴はこれからの人生を女として歩んでいかなくてはいけないのだ
保守ついでにちょっと続きを投下
*** 721 名前:704 投稿日:2006/09/03(日) 07:22:45.05 R6QdpQe60
僕の体に起こった途轍もない変化などどこ吹く風と
腹の虫がその存在を主張してきたので
寝巻きのままリビングへ降り、早目の朝食を摂る
因みに両親は長期旅行中だ。
朝食を終えた頃には気分も落ち着いてきたので
いつも通りに顔を洗い、着替える。
昨日まで袖を通していた詰襟は
女性になって全体的に痩身になっていたのと
悲しいかな、僕の胸部の膨らみは微小な物だったので
今日も簡単に袖を通す事が出来た
冬に変わりつつある空気を身に受けて竦みつつ
ずいぶん重く感じられる鞄を抱えて学校へと向かう
僕の通う学校は、ぬるいことで有名な二流の私立校で
家からは電車を使って40分程だ。数年前まで男子校だったのだが
僕が入学した年から「女性化した生徒の過ごしやすい環境を作る」
と言う名目の元、めでたく共学になった
尤も、女性化してなお学校に留まる人物など一人もいなくて
普通の女生徒が少数在籍しているだけだが。
空気を読まずに続きを投下。このまま話の触りまで書いて
wktkが無かったら投下止めときます
*** 722 名前:704 投稿日:2006/09/03(日) 07:31:29.49 R6QdpQe60
やわらかい光が差し込む通勤電車の中
席に座って電車の揺れに身を任せながら
僕の身の回りで唯一女性化した
人物であろう部活の先輩に思いを巡らす
あれは二年前の冬のことだったか―――
*** 723 名前:704 投稿日:2006/09/03(日) 07:32:04.43 R6QdpQe60
先輩がレポートを打つタイプ音だけが淀み無く響く部室で
僕は、部員が置いていった雑誌を何の気なしにめくっていた。
先輩はふと手を止めると、僕に
「片桐、俺は童貞なんだ」と、言った。
突然の告白に戸惑い、気のない返事を返すと
「お前は女になってみたいと思うか?」と続けた
僕は少し考えると
「生涯女性で暮らすのは不便だと思うので遠慮しますよ」と答えた
「俺は女になると思う、今の体に執着が無い訳ではないし
今からでも何とかできないことはないが・・・・
自分の体に起こる途轍も無い変化を体験してみたいと言う気持ちもある」
「変わった後はどうするつもりですか?どこか遠くへ行くんですか?」
「いや、この学校を離れるつもりはないぞ。ここのユルい空気は好きだからな」
「そうですか、でももしここを離れることになっても
一度必ずここに顔出してくださいよ。部長の引継ぎとかもありますし」
「それもそうだな」
先輩、もとい部長は肩を震わせると再びレポートのタイプに戻り
僕は再び雑誌に目を落とした。
その三日後、部長は誰にも別れを告げずに転校していった
女性化した体にショックを受けて誰にも言えず姿を消したのだと噂された
取り合えず此処までです、昼過ぎに戻ってくるかもです
*** 962 名前:704 投稿日:2006/09/03(日) 17:39:45.89 R6QdpQe60
夜中に書いてた奴の続きです
学校に着くと直ぐに保健室に連れて行かれて
体を色々と調べられた。
まあ尤も殆ど健康診断の延長の様な物なのだが
特殊な状況にも拘わらず保健室の中年女医は黙々と仕事をこなす。
こう言う事にもやはりマニュアルがあるのだろうか
「男子生徒が女体化した時の心得白書」
分厚い羊皮紙に手書き(もちろん羽ペン使用)で
『女性化した男児を扱うときに気をつけるべき事は云々・・・・』
などと書いてあるわけだ
・・・・・ちょっと見てみたい気もする
「・・・・・・ったわよ」
「え?」
「終わったわよ」
間抜けな妄想に沈んでる間に検査は終了してしまったらしい。
「全く、そんなことになって動揺する気持ちも分かるけれど、しっかりしなさい。
私はあなたの下着を買ってくるから暫くそこで待ってなさいよ。わかった?」
返事をすると女医は直ぐに部屋を出て行き、
僕は一人、保健室に取り残された
*** 7 名前:704 投稿日:2006/09/03(日) 18:21:54.32 R6QdpQe60
椅子に座ったまま部屋中を見回す
ふと時計に目をやると、もう三時間目が始まっている
いつもなら慌てて教室に向かう所だが
今日はもう暫くはここで待機だ。
耳を澄ませば確かに授業の音が聞こえてくるのに、自分はここに独り。
なんとも妙な感覚。
実は聞こえてくる音も幻聴で、扉を開けたらそこには何も無いかもしれない。
世界はとっくに無くなっていて、自分はそれに気付かず
こんなところに座りこけている大間抜けなのかもしれない。そんな思いに囚われる
次々と沸いてくる妙な幻想を振り払うように立ち上がると
視界の隅に洗面台が映った。
目覚めてから、自身に起きた変化を認める事をがなんとなく恐ろしく、
洗顔の時や電車の中で意図して自分の顔を見ないようにしてきたが
あれで自分の姿をしっかりと確認すれば、この妙な靄も吹き飛ぶだろう。
どんな姿が写っても驚かないぞと決意を固め、鏡の前に立った
「・・・・・・あ」
1乙です
*** 239 名前:704 投稿日:2006/09/03(日) 23:05:18.35 R6QdpQe60
驚くまいと決めていた覚悟は
鏡の中にいる人物よってあっさりと消し飛ばされる。
陶磁器のような白く滑らかな肌
均整の取れた細い体付き
大きな目と整った顔
それらを全て兼ね揃えた「彼女」は
まるで、精巧な人形のような印象すら受ける
そして何より
鏡に映っているのは間違いなく自分自身なのだ。
自分の冗長な駄文と遅筆に嫌気が刺してきたので
一度首を吊って、明日の昼ごろ蘇生してまとめて投下しようと思う次第
その頃には誰も覚えてないか(゚∀。)ワヒャヒャヒャヒャヒャヒャ
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*** 404 名前:前スレ887 投稿日:2006/09/06(水) 04:30:11.88 szbRmnm60
一応、前からの続き物だけれど
たぶん誰も見てなかっただろうから
単独で読んでも問題ないように作り直した
夜間、スレ保守してくれている人たちに捧ぐ。
女性化してから数日が過ぎた
始めの3日程は何もかも上手く行っていたと思う
皆、すっかりお人形みたいな容姿になった私に戸惑いつつも
以前と同じ様に接してくれていたし
私も、変わらぬ態度でクラスメイト達と接そうとしていた。
時には、わざとらしく女らしいポーズなどを取ったりして
皆の笑いを取ったりもした。
しかし、ここ2,3日はどうも様子がおかしい
今朝も、女性化以前の自分になら
通りすがりに容赦なくウェスタンラリアットを食らわせて来た様な奴が
私を見るなり、おもむろに距離をとって、笑顔を造った後に
「お、おはようー」である。
そんなこんなで、日が経つにつれて教室に居づらくなってきて
休み時間の大半を部室で過ごす様になった
*** 405 名前:前スレ887 投稿日:2006/09/06(水) 04:31:56.83 szbRmnm60
女性化して六日目、始業二十分前には学校に着いてしまったので
真っ直ぐ教室に行かず、部室の方で時間を潰すことにした
私の部は総勢10名程なので部員は皆、仲が良く
放課後以外にも良くここでだべっている輩がいる
だが流石にこんな時間には誰も・・・・・・・・居た。
部員が一人こちらに背を向けて、黙々と勉強をしている
「おはよー高橋」
「おう」
軽く挨拶を交わしつつ、適当な席に座る。
高橋とは、入学して以来、部活もクラスもずっと一緒で
彼は180越えで私は150半ばだった為、凸凹コンビなどと揶揄されたこともある
ここ数日も、変わらない態度で接してくれている唯一の生徒だ。
私は今も高橋のことを親友だと思っている、だが彼はどうだろう?
*** 406 名前:前スレ887 投稿日:2006/09/06(水) 04:33:00.19 szbRmnm60
妥当な話題を選びつつ、慎重に話しかける
「何やってるの?宿題?」
「ああ、古文の現代文訳のプリントだよ」
いつもと変わらぬ口調に、安堵を覚える。
・・・・・・・それと、どうでも良い事だが、そいつの提出期限はおとといだ
「私はもう提出したから教えてあげようか?」
立ち上がり、机の上に広げてあるプリントを覗き込みつつ提案する
・・・・・・・・・あんまり、と言うか殆ど進んでない
「いや、自力でやるよ。」
提出期限は守らないのに、相変わらず変な所で几帳面な奴だ
高橋の陣取っている席を離れ、さっきの椅子に再び腰掛ける
「そういえばお前、未だに詰襟なんだな」
顔だけこっちに向けて高橋が話しかける
「うん、女子用のブレザーは一品ずつ注文するらしいから。
でも今日の昼ごろには届くって」
「そうか」
取り留めの無い日常会話。それが今の私には非常に有り難かった
*** 407 名前:前スレ887 投稿日:2006/09/06(水) 04:33:31.99 szbRmnm60
それが十分ほど続き、気分が良くなった私はついつい余計なことを口にしてしまう
「そういえば、最近クラスの皆の態度がおかしい気がするんだけど」と
「そ、そうか?特に変じゃないと思うけどな?」
「そんなこと無いって、確かに始めの3日くらいはいつも通りだったけど
今では、私が近づくだけで皆黙っちゃうし。
何か、皆で私に隠し事でもしてるみたいな態度を取るんだよ?」
「一時的なものじゃないのか、お前が変わって3日経って、改めて冷静に見てみたら
以前のお前のイメージと違いすぎて、皆、戸惑っているだけだって」
「そんなことないよ。この間だって―――」
「変わったのは、俺等じゃなくてお前じゃないのか?」
「え?」
高橋は呟く様にそう言うと、再び宿題に戻ってしまう
結局、会話は始業のベルが鳴るまでずっと途切れたままだった
*** 408 名前:前スレ887 投稿日:2006/09/06(水) 04:35:13.84 szbRmnm60
あの後、一度も高橋と会話を交わすことが出来ないまま昼休みになった
私は、高橋に言われた言葉の意味を考える
確かに、六日前よりはこの体にずいぶんと慣れたし
ブラのホックも簡単に留められるようになってきた
話し言葉も、自分でも気付かない内に女言葉になってきている
でも、多分高橋が言いたかったのはそう言う表面的な事ではなくて―――
「おい!片桐!」
突然呼びかけられて我に帰り、声の主の方を振り返ってみる
「なんだ・・・金本か・・・」
私は、男の頃からどうにもコイツには良い印象が無い
特に親しい訳でもない私に、やたらと馴れ馴れしい口調で話しかけてきたり
購買で鉢合わせると、いきなり金を貸してくれと頼んできたり
貸してやった資料集が二ヶ月近く戻ってこなかったり
どれも、些細なことだし、本人にしてみれば悪意は無いのだろうが、
私は出来れば体育会系とは関わりたくない人間なので、いい迷惑だ。
「担任が、『制服が届いたから、社会科資料室に来い』ってよ!」
「そう・・・・どうもありがとう」
立ち上がって、資料室に向かおうとすると、何故か付いてくる
「あれ、どうしたの?」
「連れて来いって言われてンだから、仕方ね―じゃん」
「はあ・・・・・」
意味も無く疲れてきた・・・・・。制服受け取ったら早退しようかな・・・・・。
*** 409 名前:前スレ887 投稿日:2006/09/06(水) 04:36:48.61 szbRmnm60
資料室に到着する。
おもむろにノックを二回すると「失礼しまーす」と言い、扉を開ける
そこはかとなくかび臭い室内。
一生において一度も必要とする時が来なさそうな分厚い資料の数々
・・・・・・・・・・しかし、誰も居ない。そして後ろには未だに居る金元。
「誰も居ないけど・・・?」
「すぐに来るンじゃねえの?」
私としては、君に来世からのお迎えが早く来て欲しい
それにしても、何故わざわざ社会科の資料室で制服の受け渡しを?
まあ、恐らく着替える場所を確保してくれたと言うことなのだろうが、
それなら保健室のほうが良い。
ひょっとして、担任が社会科なので、普段使ってないここを
使ってみたくなったのかもしれない。
そんなことを考えていると、校内放送が掛かる
『えー、高校一年生、片桐真琴、制服が届いているので購買まで――――』
最後までは聞き取れなかった、心臓が凍りつく
視界を扉の方にやると、おりしもスライド式の扉が閉められ、鍵が掛けられる音がする。
「・・・・・・・っ!!!!!!」
何とか逃げられる場所は無いかと探す。
無理だ。この教室は狭く、出入り口は1つ、しかも4階。
「こんな事をしてどうするつもりなの!」
逃げられない事が解ったので、説得に一縷の望みを託す。
「お前だって元男なら、これから何をするかぐらいわかンだろ」
分からない。元男である私を、どうしてわざわざ襲おうとするのか
じわじわとにじり寄って来る。たったそれだけの事が、どうしようもなく恐ろしい。
何もされていないのに、息が上がってくる
離れようと後ずさるが、直ぐに窓まで着いてしまう
*** 410 名前:前スレ887 投稿日:2006/09/06(水) 04:37:21.51 szbRmnm60
悲鳴を上げ助けを呼ぼうと、息を吸い込んだ瞬間。
地面を蹴り、それが襲い掛かってくる。
右腕で無理矢理、口を押さえつけられ、引きずり倒される、痛い。
力の限り右腕を振り、何度も顔面を殴りつける、全く怯まない。
右腕を掴み、体の下に押し込むと体重を掛ける。
肺から強引に空気が押し出され、咳き込む。
ささやかな抵抗をしていた左腕を掴むと、床に押し付ける。
詰襟の縫い目が破れる音がする。
抵抗できない私の上で「それ」が喚く
「あんまり暴れンじゃねえよ、直ぐに良くしてやるからよ」
何を言っているのか、意味は解らない。
さらに体重が掛かってくる。気が飛びそうになる。
苦しい。助けて。誰か。
*** 411 名前:前スレ887 投稿日:2006/09/06(水) 04:39:43.73 szbRmnm60
その瞬間、ドアが激しく叩かれる。
「真琴、ここに居るんだろ!?開けてくれ!!!!」
上に載っている「それ」の動きが止まる。
かろうじて自由に動く左足をばたばたと動かす
ドアが、2,3度ガタガタ鳴った後、外側から蹴られて吹き飛ばされる
同時に、入ってきた人間を突き飛ばして「それ」は逃げていった
「おい、大丈夫か?」
逃げていった相手に一瞥をくれた後、こちらに近づいてくる。
高橋、来てくれたのか。と言いたかったのだが、何故か言葉が出ない
「全く、あの野郎も馬鹿なことやりやがって」
逃げていった「それ」に愚痴をこぼしながら、手を差し伸べてくる
こちらも手を伸ばす。手が触れる。ゴツゴツとした。男の。
気が付いたときには、その手を振りほどいていた。
「・・・・・・・・・あ」
高橋が驚いた表情を見せる。
やめてくれ。そんな目で見るな。
居た堪れなくなり、その場から逃げる。
走り出すと、止まっていた涙が溢れ出す
後ろからの制止の声を聞きながら、
もう此処には二度と戻れないであろうことを感じていた。
取り合えず、一章抜きで書けるのはこの当たりまでです
保守がんばって。お休み。
***189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/09/09(土) 04:55:11.15 0EqFGibX0
お早う。 夜中に保守をがんばってくれている人の為に
前スレ>>404の続きを書いた。
学校を逃げ出してから一週間ほど経った
今は、2階の自室の窓辺に座り、閉めたカーテンの隙間から表を見ている。
僅かに食べて、用を足して、後は此処に痴呆の様に座り込んでいるだけ
悪夢にうなされ、ゆっくり心を休める事すら許されずにいる。
あの日、家まで逃げ帰ると、電話のベルが鳴っていた。
受話器を上げると、担任のものらしき声が聞こえたのですぐに切った。
何度切っても掛かってくるのでジャックを引き抜いた。
すると、今度は直接尋ねてくるようになった。
色々な人が来た。
先ず担任が来た、高橋も部員を連れて来た、金本の両親らしき人も来た
警察官も来た、よくわからない背広姿の人も何組か来た。
それでも私は、ずっと此処に座り続けた。
その内、尋ねる人は少なくなってきて
涙もとっくに涸れ果てて、
元々、お人形みたいな手足はもっと細くなって
それでも私は、ずっと此処に座り続けた。
*** 190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/09/09(土) 04:55:50.63 0EqFGibX0
あの日から七回目の朝日が昇る
何時も通り窓際に座りながら、食事代わりのクラッカーを齧る
一枚を四半刻ほど掛けてどうにか胃に送り込む。
僅かに空腹を感じ、もう一枚取り出そうとしたが、止める
これ以上は戻すだけだ・・・・
何も考えていないと、直ぐに資料室でのことが思い起こされてしまうので
今頃はオーストラリアに居るであろう両親に思いをめぐらす
元気にしているだろうか
二人共、いつも働きづめで、ようやく取れた休みだった
私にさえ詳しい行き先は告げず、携帯すら置いて出掛けた。
今頃は二人で楽しくやっているだろうか
それなりに、仲の良い家族だったと思う。
二人共、凄いキャリアで、仕事をやめることが出来ずに
それでも家庭を持ちたくて、
僅かな時間の中で必死に私を育ててくれて、
そんな中で私は育ってきた。
尤も、小さい頃から主婦の代わりをさせられたのには
子供心に閉口したものだが
やはり、私が女に変わってしまった事を知ったら驚くだろうか
そういえば父さんは女の子を欲しがっていたようだった
喜んでくれるだろうか、この姿なら――――
*** 191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/09/09(土) 04:57:17.18 0EqFGibX0
そこで思考は途切れ、我に返る
荒れ始めている肌
すっかり細くなってしまった手足
着ている服はヨレヨレで、染みも付いている
女になった日に買った可愛らしい手鏡に顔を映すと
痩せた顔にくまが出ている。酷い顔。
女に変わって数日の間、
入浴の時、すっかり変わった自分の体にドキドキしたり
母さんの化粧品を使い、見よう見まねで化粧して
姿鏡の中に写った自分を見て笑ったりしたのが、今となっては酷く惨めだ
静かに消えてしまいたい、このまま、独りで。
何もしないまま時間が経って、そろそろ日も落ちる。
「今日は誰も来なかったな・・・・・」
そんな自分の独り言に悲しくなる。
あんな目にあったのに、これだけ心が痛いのに
私は未だ、誰かに救ってもらえることを何処かで夢見ているのか・・・・・・
*** 192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/09/09(土) 04:59:10.22 0EqFGibX0
折りしも、前の道に車が止まる、見覚えの無い車だ。
その中から、これまた見覚えの無いスーツ姿が数人降りてくる
まあ、誰だろうと関係ない。
ああいう輩は、呼び鈴を鳴らして、暫く待てば、仕事を終えた顔で帰っていく。
案の定、呼び鈴が鳴る。二度、三度。
四度目は無い。最短記録更新だ。
帰っていく背中を見ようと少し体を持上げた時、微かな違和感に襲われる。
玄関前には一人しか居ない。二人来たはずなのに
錆び付いていた感情がゆっくりと目を覚ます。何かおかしい。
音を立てずに階段を下りる。
階段の途中で、周りを見回す。
「・・・・・・・・・!!!」
リビングの窓に穴が開けられ、そこから人の手が入り込み、鍵を開けようとしていた。
二階に駆け戻る。
さっきまでの堂々巡りの思考は、目の前の危機に打ち砕かれた。
動物的な何かが、私にこの場を切り抜けることを強要してくる。
部屋を見回すと、道路側ではなく、お隣に向いている窓を開ける。
玄関の辺りからは死角だ。隣の庭に飛び降りれさえすれば、
取り合えずとはいえ、この危機は脱することが出来る。やれるだろうか?
*** 193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/09/09(土) 05:02:04.86 0EqFGibX0
やるしかない。僅かな覚悟を携え、窓辺から跳躍する。
一瞬の無重力期間を経て、お隣の庭の植え込みに転落する。
痛い、生きてる、良かった。
今の音で気付かれたかもしれない、体に付いた葉も払わずに立ち上がる
玄関まで移動すると、そっと自分の家の方向を覗く
車はこちらに背を向けて止められている。
問題は、車の前に立っている人だ。
此処から曲がり角までの十数メートルを移動する間
何かの気まぐれでこちらを見れば終わりだ。
かなり分が悪い。というかほぼ絶望的だろう。
折角立ち上がった心が、また折れそうになる
『このまま、此処でじっとしていれば?』
案外灯台下暗しで案外見つからないかもしれない
『それとも、此処の住人に庇って貰うと言うのは?』
お隣さんとはいえ殆ど交流など無かったが、
事情を話せば何とかしてくれるかもしれない
『もういっそ、大人しくあの背広服たちの前に出て行くというのは?』
実は、あのおじさん達は、警察か何かで、
私が中で衰弱して倒れていると思い、調べに来ただけなのかもしれない
そんな都合の良い妄想ばかりが浮かぶ。
*** 194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/09/09(土) 05:03:50.02 0EqFGibX0
「論外よ。全部」
私が家の中に居ないことは、直にでも知れる。もう時間は無い。
自分に活を入れると、一気に走り出す。全力疾走だ。
後17メートル。
突然酷使された全身の関節と筋肉が悲鳴を上げる
後13メートル
空腹と、渇きが突然やって来る。世界が揺れる。
必死に抑えているつもりでも足音が鳴る
後9メートル
バランスを崩す、どうにか立て直して前進する
後5メートル
息が切れてくる、でもゴールが近づく。あと少し・・・・・
4・・・・3・・・・2・・・1・・・・
「居たぞ!」
そこで後ろから絶望的な声が聞こえてくる。
しかし、そのまま角を曲がると、覚悟を決める。何処までも逃げてやる。
僅かにペースを落とし、息を整えると再加速する。
もうあんな奴に、二度とこの自分を好きにさせるものか――――
*** 237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/09/12(火) 04:05:23.67 TFLRdBoh0
保守ついでに 前スレ189の続き
乱れ切った息を整え、もう動けないと主張する体を休ませる。
あの後、暫く鬼ごっこを続け、
ようやく安全と思しき場所に辿り着く、
家から十五分ほどの商店街、その裏路地だ。
両脇は店の背中に囲まれ、行き止まりになっているデットスペース。
その一番奥に置いてある冷房の室外機と壁との間に身を潜めている。
何度か、表をそれらしき気配が通り過ぎたが
ここに空間があることにすら気付かないのだろう
精々、入り口から少し覗き込む程度で満足していく様だ。
相変わらず体はボロボロで、もう動けそうになかったが
息を整え、心臓がまともな速さで鼓動し始めると
数分前まで体を包んでいた異様な興奮状態も治まり、色々と考える余裕が出てくる
一番重要な事は、今晩の宿をどうするかということだ。
もう家には戻れないだろう。
しかも、着の身着のまま飛び出してきたので、悲しいかな、一銭も持ち合わせがない。
つまり、ホテルに宿泊する事はおろか、電車に乗ることも電話をすることも出来ない。
尤も、たとえ小銭があっても、何処かに行く当ても、誰か助けを呼ぶ当ても無い訳だが。
こんな時、地元に通っていれば助けを求められる人が何人かは居たかもしれない。
しかし、小学校の頃の友人とは友好関係が絶えて久しい。
まあ、それなりに仲の良い友人も居たので
突然押しかけても一泊ぐらいさせてもらえたかもしれない・・・・・女でなければ。
*** 238 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/09/12(火) 04:06:22.36 TFLRdBoh0
どうにもならない思考の堂々巡り。
そろそろ日も暮れだす。腹の虫が鳴る。冬になりかけた風が身に染みる。
室外機と壁の間で凍える自分。
暖かい家も、それなりに楽しかった学校も、今は何もかも遠い。
「・・・・っえっぐ・・・・・どうして私ばかりこんな目にぃ・・・・・・」
とっくに枯れ果てたと思っていた涙が零れだす。
しっかりしなくてはと思っても、嗚咽が漏れる。
すっかり冷たくなった手の甲に涙が落ちる。熱い。
もう限界だ、何処か暖かい場所を探そう。
三十分程歩いて、追跡の輪から逃れられたと思ったら、
コンビニにでも入ればいい。
それでも見つかったら・・・・・・なに、その時は運が悪かっただけだ。
やれるだけやったのなら、後悔は無い。多分。
自分に気合を入れると、涙を払い立ち上がる。
目標という活力を入れられた体は、もう少しなら動けると伝えて来る。
・・・・・・・・・が、
*** 240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/09/12(火) 04:07:18.19 TFLRdBoh0
「嘘でしょ・・・・」
立ち上がった正にその時、見覚えのある手が前の通りに現れた。
一時間ほど前、私の家のリビングの窓から入り込んでいたあの手!
顔がこちらを向く、視線が合う。もう駄目だ。
男は、無線らしきものを取り出して、二言三言交わすと、こちらに寄ってくる。
何とか横をすり抜けて逃げ出せないかと走り出した瞬間、足がもつれて転ぶ。
痛い。もう立ち上がれそうに無い。必死に這って壁まで後退する。
「やめて・・・・・やめてよ・・・・・」
必死に言葉を紡いで、ささやかな抵抗を試みる。
全く動じない、同じペースで歩いてくる。
にじり寄って来る異質な存在。資料室での恐怖が蘇る。
伸びてくる手、両手両足をばたつかせるが、あっさりと壁に押さえつけられる
突然、体が酷使され、気を遣りそうになる。
それでも、もがく。自分自身、抵抗しているのか、
それとも陸に揚った魚の様に体を震わせているだけなのか解らなくなってくる。
気が遠くなる。次に目覚めたら私はどうなっているだろう?
と、その時。
*** 241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/09/12(火) 04:08:21.89 TFLRdBoh0
「ちょっとおじさん、女の子が嫌だと言ったら、止めてあげるのがマナーって奴じゃない?」
なんて、場違いな声が聞こえてきた。
振り返ろうとした男の首筋に、回し蹴りがクリーンヒットする。
自分を押さえつけていた人間が吹き飛び、私はまた地面に体が落とされる。
そこで、目の前の人物への視界が開ける。女性だ。
でかい。170近くあるだろう。着込んだジーパンとジャケットが良く似合っている。
「早く!来なさい!」
そんな私の考えをよそに、その女の人は慌てて手を差し出してくる。
ほんの一瞬、この人もぐるかも知れないという考えが浮かんだが、
頭から血を流して白目向いてる男を見て、それは無いだろうと思い直す。
どの道、私に選択権など無い。ささやかな覚悟を決めると、
しっかりとその手を握り返した。
*** 243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/09/12(火) 04:10:21.86 TFLRdBoh0
知らない女性に、半ば体を抱えられる様にして走る。
相当走りずらい筈だが、居に介する様子も無い。
「頑張りなさい!この先に車付けさせてあるから!」
むしろ自分の息が切れてくる。
だが、体を支えてもらえばもう少しは進めそうだ。
しかし、妙な違和感を感じる。
この女性。何処かで会った気がしてならない。
顔に見覚えは無いのは間違いない。
というか、殆ど男子校のような環境だったのだ。
女性に会えば覚えている。これほど長身ならなおさらだ。
どちらかというと、その仕草を何処かで・・・・・
「・・・・・・あ」
ひょっとしたら女性化した誰かかもしれない。
とすれば思い当たる節がある。
三年前、女性化を目前にして忽然と姿を消した――――
体の方が限界を超えたらしい、体の動きが止まる。
薄くなって行く意識の中で、必死に語りかける
「・・・・せん・・・・ぱ」
支えてくれる人物の反応を見ぬまま、意識は途切れた。
たかがスレッド1つ。駄文で保守してやる!
というか、こんな時間まで何やってんだ俺('A`)
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